| 厳しくハードなお仕事の後の休暇・・・。 それはとっても楽しく待ち遠しいもの。 でも、今回はそうはならなかった。 逗留先のホテルに着く早々、アラミスから緊急コール。 提出書類の不備ということで、最初からやり直しを命ぜられた。 ジョウは拒否したいのをグッと堪えて、命令を飲んでいた。 自分のミスだからしょうがない。そう言ってドンゴに連絡してミネルバから資料を取り寄せて一人部屋に閉じこもった。 いつもの買い物ならジョウかリッキーを連れて出かけるのだが、生憎ジョウはまだ部屋に篭って仕事中。 今日もリッキーをお供にと思ったものの、今日はタロスが早々に連れ出していった。 まあ二日間買い物にずっとつき合わせたから流石に三日目は逃げるよね。 ということで、アルフィンは一人で行く買い物をすることにした。 ランジェリーショッピング。 これは一度ジョウをつき合わそうとしたが、絶対ダメだと怒られた。 男の人がショップに入るのも外で待ってるのも恥ずかしくて耐えられないってことらしい。 恋人同士で買い物にくるカップルもいるのに、これだけはジョウは譲らなかった。 以来、ネットで取り寄せるか、自分一人で買い物に行くことにしている。 そして、予定通り一人で出かけ、今しがたホテルに戻って来た。 アルフィンは木製の重厚なドアを開けて、エントランスからリビングに入った。 休暇の初日から仕事にジョウを取られてアルフィンは面白くない。 そろそろ限界の三日目の夕方、リビングを突っ切って自分の部屋に戻った。 手には一つだけ薄い紫色の大きな紐付き紙袋が握られている。 早速、ベッドに上がって座り込むと袋に手を入れて中の物を取り出した。 「やあん、これカワイイ♪」 アルフィンが袋から取り出した物、薄いブルーのベビードール。 レースをストラップ部分と裾に使っているが、胸元が立体裁断できっちりとアルフィンの体型に合うように仕立てられていた。 他にも仕立てたのか、まだ袋の中には何枚か見える。 アルフィンは今、取り出したベビードールを取り合えず横に置くと、もう一度袋の中に手を入れた。ごそごそと奥の方から二枚、黒いベビードールを引っ張り出した。 一枚はシンプルなデザインのスリップ風ベビードール。 胸元と両サイドが細い紐で結ぶタイプの身体の線がくっきり出るタイプ。 もう一枚は甘いフリル一杯のベビードール。 大きく開いた胸元へフリルが紅いリボンで手繰り寄せられており、前開きタイプのふんわりした動きが出るタイプ。 まったく違うタイプだが、黒色ということもあり実用性を考えたが、考えた挙句購入することにした。 いつも同じ様なタイプじゃワードローブの中がつまらない。少しぐらい大胆なものがあってもいいかな、そんな気持ちもあった。 今までそういう大人っぽいランジェリー類は、憧れはあったが購入したことはなかった。 どちらかといえば甘いタイプかすっきりスポーティなタイプが多い。 でも、ジョウと関係を持つようになってからちょっとランジェリーにもいつも以上に考えるようになった。 できれば、ジョウの好みが分かれば一番いいのだが、彼はあまりこの手の話題は得意ではない。 なんでも可愛いと言ってくれる。 それはそれで嬉しいが、年頃の女としては彼の前では綺麗に装いたい。 例え、ベッドの上でも・・・。 今回はその一つの試みとしてタイプの違うランジェリーに手を出してみたのだ。 そして、どうせ見せるならブラやショーツよりもベビードールの方がネットで見た映像では美しく見えた。 ふと、今日購入したベビードールを着て、少し彼を誘惑してみたい気持ちが沸き起こった。 色々悩んだ挙句、今日は黒の甘いフリルいっぱいのベビードールを着ることにした。 薄いブルーとどちらにするか悩んだが、今宿泊しているホテルの内装が薄い青系統で統一されていて、着ると部屋に溶け込んでしまうような感じがしたので思い切って黒を着ることにした。 そうと決まれば、他のベビードールたちを袋に詰めクローゼットに仕舞いこんだ。 決戦は夜、敵である仕事からジョウを取り返す武器は手に入った。 今のアルフィンには、ジョウを奪うものは敵以外の何者でもない。 後は実行あるのみ。 ―――お願い!ちゃんとジョウのハートを射抜いてね、ベビードールちゃん♪ アルフィンは黒のベビードールに軽くキスをした。
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