Sweet Time
(現在 書庫移動作品1 を表示中)

HOME HELP 新規投稿 新着小説 トピック表示 検索 書庫

[ 最新投稿及び投稿フォームをトップへ ]

■224 / inTopicNo.1)  NO TITLE
  
□投稿者/ 柊里音 -(2004/01/30(Fri) 18:09:35)
    恋人たちがキスを繰り返す。
    ただそれだけの映像が流れている。
    擦れ気味な女性ボーカリストの歌声が情感を煽る。
    エンドロールの間も歌声は続き、話の余韻を物語っていた。



    ほおっと溜息をついた彼女は隣のオトコの肩をつついた。
    「終わったわよ」
    「・・・・え?」
    「終わったっていってんの。まったくもう。ずっと寝てるんだから・・・」
    言葉とは裏腹にややもすれば含み笑いをこめたような口調で、クセのある髪をつまんだ。
    「いてっ」
    「すっごい熟睡してたみたいだから、刺激与えないと眼はさめないでしょ?」
    「・・・・・眼さましてどーすんだ?」

    う〜ん、と手足を伸ばし、くきくきと首をならす。
    「さ。起きた起きた」
    「・・・・・・ムードない・・・」
    先ほどとはうってかわって、拗ねた口調でぼそりと呟き、ブランケットをずりあげると、その中に身を沈めた。
    確かに今、肩を抱いていたはずなのに、するりと抜け出された手前、手持ち無沙汰になって空を彷徨っていた腕をぽとりと落とす。
    振動で、かすかにベッドがきしんだ。

    「おい」
    「・・・なによ」
    「終わったっていったんじゃないのか?」
    「そうよ」
    「なに寝てんだよ」
    「だって映画おわっちゃったんだもん」
    「だから起こしたんだろ?」
    「別に」
    「起こした」
    「違うもん」

    そういうと、彼女はぷいっと彼に背中を向けた。
    陽光に煌くブロンドは、月に照らされ昼間とは違う妖しい輝きを放ちながら、ベッドにもたれる彼の腰の辺りに渦巻いていた。
    その髪を一房握り、さらさらと指の間からこぼしてみた。
    さらさら。さらさら。
    指の隙間を通り過ぎる金の絹糸は、立ち上る甘い馨りで鼻腔をくすぐった。

    ・・・ジョウといっしょにみたかったのに。・・・

    小さく囁くような声を聞き逃す事はなかった。
    「拗ねたのか?」
    「・・・・・もうねむいの」

    彼女の幼さの残したような口調に、すこし含んだ笑いをこぼす。

    アルフィンが見たがっていた映画は、少し、いや、かなり自分にはくすぐったいもので、これはもうさっさと寝たふりをしてしまおうと肩にもたれてはみたものの、昨日までの睡眠不足は正直で、ぼそぼそ呟くせりふは心地よく、すんなりと誘われていったのは事実だ。
    きっとそれは、彼女にもわかっていたことだろう。
    だから身じろぎもせずに、自分がもたれきった姿勢での映画鑑賞になったに違いない。
    それに通常、彼女が見たがる部類のものではなく、きっと今の2人を意識して見たがったのだということくらいはわかる。
    しかしながら、男の眼からして、ことさら自分の眼からして、小洒落た粋な演出、気障な台詞というものは、こっぱづかしい事この上ないもので、逆に萎えそうになる。
    まあ、長い付き合い、彼女にもわかるだろう。
    それなのに、拗ねて不貞寝をしているような態度をとるというのは、ひとえに「誕生日だったから、なんでも言うことをきいてやる」といった自分への報復だと思う。

    「・・ジョウもうちょっと向こうによってよ」

    口にはださず、頭で何かれと考えつつ、彼女の髪を弄び続けていたひとところの間、2人で眠るにはやや広いくらいのベッドで彼女が窮屈さを感じているとは思えない。
    ブランケットを胸元に掻き寄せつつ、むっくりと起き上がると、髪で遊ばないで。と冷たい一言を残し、またもや視界の端に消えようとしていた。
    彼女が倒れこむ動作と同じく、自分の腕を彼女の肩に廻し、引き寄せ抱え込みそのまま押し倒す。
    大きくスプリングが揺らいだ。

引用返信 削除キー/
■225 / inTopicNo.2)  NO TITLE
□投稿者/ 柊里音 -(2004/01/30(Fri) 18:18:16)
    「なんで拗ねてんだ?」
    気がついていないフリをして、上目使いの碧眼を覗き込むようにたずねてみた。
    蒼い月明かりを映しこむ瞳を捕らえようとしていたのに、小さな抵抗を試みられた。
    瞼に軽い口付けを落としてみる。
    状況は変わらない。
    向こうがその気ならば、となだらかな曲線を描く躯体の側面をつい、と指でなぞってみた。

    「ひゃああ!っばっばばばかあ!くすぐったいじゃない〜〜」

    抵抗の声は聞こえないフリを決め込み、額の髪のはえぎわに満遍なく、軽いくちづけをおとしていった。
    かたちのよい耳をなぞり、耳朶を甘噛みする。
    すこし、鼻にかかった甘い吐息をかみ殺すように息をつめる真下の彼女を眺め見た。

    今、自分の眼に映る彼女はすこし蒸気しているであろう頬も、陶器のような透ける白い肌も、蒼い月明かりに晒されている。
    まばゆく、魔やかしげで、美しいと思う。
    柔らかな双丘にはつんと上を向く頂きと、先ほど自分がつけたシルシ。
    よく見れば、首筋にも、今指でなぞってきたくびれた腰にも、投げ出されている腕にも、いたるところにちいさな刻印をつけていた。
    ふと視線を戻すと、念願の碧い瞳を捕らえることができた。
    瞳の奥にちらりと覗く紫がかる揺らぎは、期待していたものに相違ない。

    何もいわず、もう一度軽いキスを頬や額に落としてみた。
    目に留まった白い腕に、手を伸ばし指先を絡めた。
    きれいに整えられた爪を頂く指に、くちづけを落とし自分の頬に当てた。
    視線は彼女の瞳に合わせたまま。

    「あなたのくちびるはあたたかいわ」
    じっとこちらを見たまま、唐突に彼女の唇から言葉が漏れた。
    「でも、私の望んだくちづけじゃないの」
    「?!」
    「そうね、あなたの腕はあたたかいわ」
    「でも、わたしの望んだあたたかさじゃないの」
    「????」

    くすり

    まじまじと見つめた彼女はいきなり口元をゆがめ、白い歯を覗かせていた。
    「・・・・なんだそれ?」
    「さっきの映画のせりふ」
    「・・・・ああ・・」
    ほっとした表情を探るような瞳は、愉しげに蒼い光を映しこんで煌めいている。

    「・・・・あの映画、つまんなかったわ」
    「そうなのか?」
    「だって、一人で見たってつまんないもん」
    「どういう内容だったんだ?」
    う〜〜〜ん・・・・と眉を顰めてなにかを考えるような眼差しを遠くに向けて、碧眼の視線が外れた。
    ゆるりとした仕草で絡まった指を解き、白い腕を首に絡ませてきた。
    彼女の視線が外れたことで、一瞬眉を顰めた自分を見透かしたように廻された腕がおかしかった。
    幼い少女のような、少し甘えるような口調で話す。
    こんな喋り方をするのは俺の前でこうしているときだけだ。
    自分だけが聞くことの出来る、声をしばし聞き惚れる。
    彼女の声は耳に甘く響き、発する吐息すらも甘い馨りがした。
    言葉に合わせて上下する胸元はふるふると揺らぎ、誘われるように顔を埋めて柔らかな胸から響く声を聴いた。

    そんなかんじの映画、ね。聴いてた?

    髪の中に埋められていく指先は、さっき自分がくちづけたものに相違ないはずで。
    髪を梳く指先は、顔を埋める胸元にも劣らないほど温かく感じられ、ぴりぴりと頭に響くような甘い刺激を醸し出した。

    ねえ。また寝ちゃった?

    頭の上と、胸の中から、少し溜息交じりの声を聴く。
    このまま時間に流されるのも悪くないかもしれない。
    こんなにものんびりと、暖かい気持ちのまま。

    もう。しかたないなあ・・・。


    もう少ししたら、彼女は重いからどいて、と言い出すのだろう。
    それまで、この胸の中で微睡むのもいいかもしれない。
    胸の中から、聴こえてくる規則正しい音に我知らず口元が緩み、腕の中の彼女はまやかしでもなんでもなく。
    月の灯りに照らされる陶器の様な肌から発せられる意外なほどの温もりに安堵する。

    もう、重いんだからね。

    ぼそり、と呟いた一言にちょっとした悪戯心が芽生えた。


    がばりと上がり、互いの前髪が擦れ合うほどに顔を近づけてみた。
    瞳は少女のそれとは違い、昼間みた海のように深い色を湛える碧さだった。
    なにもかも包み込むような不思議な碧さを湛えている、彼女の瞳の中に自分の姿を見た。
    誘うように少し開き気味な唇に吸い寄せられるようにくちづけた。
    やさしく、軽いくちづけを落とす。
    わざと音をたてて、余韻を残してみた。

    「だましたの?」
    「そんな余裕ない」
    「ふふ・・・」


    なにもかも余裕があるわけじゃない。
    彼女を愛することも。
    いつまでも、こうして腕に抱き続けるということを望んでいることも。
    毎日は充実し、日々エキサイティングで飽くことはない人生だと思う。
    このまま、安穏とした日々を送りたいとは思わない。
    このまま、こうして自分を信じて、仲間を信じて戦いながら生きていくのだろう。
    その傍らには、こうして、この瞳に見つめられていたいと思う。
    手に入れたと思う、すべてを貪ったと思う。
    それでも飽くことはない。
    愛しさは、増していくばかりだと。

    狂わせてみたい。

    多分それは男の願望と、欲望と嫉妬。
    彼女から、どんどん引き出してゆき手に入れる。
    聖女のような微笑を苦痛に歪みつつも快楽を貪る妖艶な笑みに。
    澄んだ透明な碧い光に揺らめく蒼い炎を。
    映ろいゆく面影すら、すべてを手に入れたいと思う。

    瞳に移りこむ景色は、今は、自分ひとりでなければならない。

    「なにみてんだ」
    彼女が、ぼんやりと自分ではないものを見つめていることを気がついた。
    肩越しに視線が漂っている。
    やや非難めいた口調に、ゆっくりこちらに瞳を向ける。
    「なにも・・・・・・」
    「ん?」
    「ジョウしかみえない」

    至極満足のいく回答にくちづけで答える。
    深く唇を合わせ、貪りあう。
    互いの舌が絡み合う。
    夢中で角度を変え味わい、先ほどの願望を行動に移す。

    舞い降りてきた天使は、二度と飛び立つ事のないようにすべてをもぎ取り懐深く抱き続けてやる。
    貪欲な欲求は収まる事をしらず、苛まれていく。

    「狂ったのは俺か?」
    しらずに口からでた言葉に、彼女が聞き漏らすはずもない。
    「狂わせたのが私なら、最高のプレゼント」
    愛しいという言葉では言い表せない想いは、飽くことない欲望へとすりかわり明けない夜は更けていく。


















引用返信 削除キー/
■226 / inTopicNo.3)   NO TITLE
□投稿者/ 柊里音 -(2004/01/30(Fri) 18:21:09)
    あとがき。

    久々にリハビリしたらエロブツ(え?一応・・・)
    う〜〜〜ん。なんだかこの2人。かなり変わってきてしまって反省・・・。
    ま。この板だったらゆるしてもらえるよね。はっはっは〜。

    ・・・・・精進します。・・・

    ご拝読ありがとうございました。<m(__)m>   つばめ。
fin.
引用返信 削除キー/



タイトル内ページ移動 / << 0 >>

このトピックに書きこむ

書庫移動作品には書き込み不可

Pass/

HOME HELP 新規投稿 新着小説 トピック表示 検索 書庫

- Child Tree -