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Re[3]: Dreams come true
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□投稿者/ 舞妓 -(2006/06/17(Sat) 23:34:35)
| ■No1156に投稿(舞妓さんの小説)
家に着いた。市内からやや郊外に寄った場所の、住宅街の一角だ。「グラント弁護士事務所」という小さな表札が出ている。 「ただいま、ジミー!ジョウさんが来てくれたよ!」 玄関から大きな声をかけると、どこかからドアの開く音がして、バタバタと子供の走る足音が聞こえてきた。 「こらジミー、走るな!今そっちへ行くから!」 グラントが怒鳴る。 その言葉が終らないうちに。 グリーンのパジャマを着た少年が、二階から走り降りてきた。 黒い髪、黒い瞳の、小柄な少年。 「やあジミー…」 ジョウが挨拶をしようとしたその時。 ジミーが満面の笑みでジョウに抱きついてきた。 「お兄ちゃん!」 こうやって走って抱きついてくるのは誰かに似ているな、と思ってジョウはつい笑い、少年を抱きかかえてやった。 「お兄ちゃんでなくて、ジョウでいいさ」 「だめだよー!」 ジミーは嬉しくてたまらない様子で、ジョウの腕に乗っかったままで言った。 「だってジョウは僕のお兄ちゃんだもん!お兄ちゃん、ダンお父さんの話を聞かせてよ!」 「…」 ジョウは一瞬、凍りついた。 数度、瞬きをして、一度呼吸をする。 そして。 「今、何て言った?」 ジミーに、聞いた。 「ジョウは僕のお兄ちゃんで、ダンは僕のお父さん!」 ジョウは、表情を固まらせたままゆっくりとグラントの方を見た。 グラントは相変わらずの穏やかな微笑を浮かべながら、ちょっとだけ肩をすくめ、言った。 「まあ、お茶でも飲みましょう。ゆっくりと。ジミー、これからお前は点滴の時間だろう。ジョウさんと遊ぶのは、点滴が終ってからだ」 「うん、わかった。じゃあお兄ちゃん、僕一時間くらい点滴なんだ。終ったら、話聞かせてね!」 「わ、わかった…」 素直に二階に戻っていく少年の後姿を見送ってジョウは棒立ちになっていた。
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