| ・・・・ザワザワザワ
とある春の昼下がり。 聞こえてくるのは見渡す限りに広がる草原の音と、遠い雲の上で鳴いているヒバリの声。
頭の上に生茂る黄緑色の葉っぱの間からは、春の木漏れ日がキラキラと反射している。
次の仕事までに空いた一日だけのオフ。
ミネルバの調整のために立ち寄ったこの惑星でエアカーをレンタルし、あたし達は行き先を決めないドライブに出た。エアカーから見える景色は、ぴかぴかに煌く春の空気の粒、横長に広がる緑の草原、そしてそのところどころに滲んだように見える黄色の花畑。 草原の上は、真っ青な空がこれでもかというくらい広がって、昔見たパノラマ写真のようだ。
エアカーは、そんなパノラマ写真のような風景をぬって、焦らず急がずのんびりと、悠々気ままにハイウェイを滑っていったーーー。
そして。
もうすぐお昼にさしかかろうかという頃に、あたし達はまるで天まで届きそうな枝を目いっぱい広げている大木を見つけた。
樹齢はどれくらいだろう。
まるで空に向かって腕を広げ、ありったけの太陽の光をかき集めようとしているかのように、その枝にはたくさんの新芽が芽吹き、それらは光に向かって大きく葉を広げていた。そして、その小さな葉っぱ達が春の風に撫でられて、さわさわと音を立てあたし達をその木陰に誘ってきた。
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