| 惑星ドルロイ。
それは惑星の大半を大海原で覆われた美しい海洋惑星だが、一方でクラッシャーご用達の武器や船の修理を行う工場、薬品を製造する企業が乱立する工業惑星の顔も持つ。宇宙港を利用するのは、企業で働く技術者や研究員、そしてクラッシャーが圧倒的に多く、ひとたび空港内に足を踏み入れると赤・青・グリーン・黒・シルバーや白のクラッシュジャケットを着た人々がまるで熱帯魚のように見えカラフルな限りだ。しかし、カラフルなジャケットの上に乗っかるのは、ほとんどがごつく宇宙焼けした男の顔・顔・顔。屈強な体格の男たち。どんな欲目で見てもむさくるしさは隠しようもない。
大抵彼らは、自分の船のメンテナンスのためにこの惑星に降り立ち、それが終了するまでなんとなく宇宙港内で時間をやり過ごす。そのため、宇宙港内には彼らのためのゲームセンターやらカフェ・バー、レストランなどが多数造られており、クラッシャー達は、そこで思い思いの時を過ごすのが常であった。 なにより、普段は宇宙空間での不自由な生活を余儀なくされている彼らである。少しでも普段から張り詰めている緊張を解きほぐしてあげようという、宇宙港の配慮もある。 宇宙空間で必要な日常品から、女性に見せるのは少々憚られる内容の雑誌まで幅広い商品が港内には置いてあり、男の遊び場という雰囲気がむんむんと漂っていた。
実際、港内のロビーで横になる者や適当な雑誌を買ってはなんとなくページをめくる者、一杯やりながらメンテナンスの終了を待つ者、ゲームセンターでタバコを吹かしてゲームをしながら時間をつぶす者など、人それぞれである。
そんな中。
宇宙港内のカフェ・バーに一組の男女が入ってきた。 男は真っ青のクラッシュジャケットを着た黒髪で精悍な顔つきの青年。一方、女は男より多少年下であろうか真っ赤なクラッシュジャケットを着た、おそろしくスタイルのいい金髪碧眼の可憐な少女。 二人は連れ立って歩きカフェ・バーのカウンターでコーヒーを注文し、コーヒーを受け取ったかと思うと、バーの一番奥にあるボックス席へ腰をおろした。そして二人で顔を寄せ合い、親密そうに話し始めた。女の方は男になにか耳打ちをしながら話している。
カフェ・バーにいた客の視線が、一気に二人に集中した。
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