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■1205 / inTopicNo.1)  ・・・だってそう見えました
  
□投稿者/ とむ -(2006/08/03(Thu) 16:33:19)
    惑星ドルロイ。

    それは惑星の大半を大海原で覆われた美しい海洋惑星だが、一方でクラッシャーご用達の武器や船の修理を行う工場、薬品を製造する企業が乱立する工業惑星の顔も持つ。宇宙港を利用するのは、企業で働く技術者や研究員、そしてクラッシャーが圧倒的に多く、ひとたび空港内に足を踏み入れると赤・青・グリーン・黒・シルバーや白のクラッシュジャケットを着た人々がまるで熱帯魚のように見えカラフルな限りだ。しかし、カラフルなジャケットの上に乗っかるのは、ほとんどがごつく宇宙焼けした男の顔・顔・顔。屈強な体格の男たち。どんな欲目で見てもむさくるしさは隠しようもない。


    大抵彼らは、自分の船のメンテナンスのためにこの惑星に降り立ち、それが終了するまでなんとなく宇宙港内で時間をやり過ごす。そのため、宇宙港内には彼らのためのゲームセンターやらカフェ・バー、レストランなどが多数造られており、クラッシャー達は、そこで思い思いの時を過ごすのが常であった。
    なにより、普段は宇宙空間での不自由な生活を余儀なくされている彼らである。少しでも普段から張り詰めている緊張を解きほぐしてあげようという、宇宙港の配慮もある。
    宇宙空間で必要な日常品から、女性に見せるのは少々憚られる内容の雑誌まで幅広い商品が港内には置いてあり、男の遊び場という雰囲気がむんむんと漂っていた。

    実際、港内のロビーで横になる者や適当な雑誌を買ってはなんとなくページをめくる者、一杯やりながらメンテナンスの終了を待つ者、ゲームセンターでタバコを吹かしてゲームをしながら時間をつぶす者など、人それぞれである。


    そんな中。


    宇宙港内のカフェ・バーに一組の男女が入ってきた。
    男は真っ青のクラッシュジャケットを着た黒髪で精悍な顔つきの青年。一方、女は男より多少年下であろうか真っ赤なクラッシュジャケットを着た、おそろしくスタイルのいい金髪碧眼の可憐な少女。
    二人は連れ立って歩きカフェ・バーのカウンターでコーヒーを注文し、コーヒーを受け取ったかと思うと、バーの一番奥にあるボックス席へ腰をおろした。そして二人で顔を寄せ合い、親密そうに話し始めた。女の方は男になにか耳打ちをしながら話している。

    カフェ・バーにいた客の視線が、一気に二人に集中した。
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■1206 / inTopicNo.2)  Re[1]: ・・・だってそう見えました
□投稿者/ とむ -(2006/08/03(Thu) 20:20:11)
    無理もない。

    ただでさえ暑苦しい男ばかりで、よどんでいた空気の店の中に、まるでモデルかと見まごうばかりの涼やかなカップルが入ってきたのだ。
    おまけにそれは同業者で、男の方は銀河にその名が知れ渡った特AAAクラスのクラッシャー。数多くの難しい依頼を請け負い、伝説を作り上げている男である。
    そして女の方も、元ピザンの王女であったにも関わらず、その身分を捨ててクラッシャーへ転身した驚くべき経歴の持ち主だ。その美しさ、愛らしさは業界でも1,2位を争うアイドル的存在。彼女がこの男のチームに無理やり押しかけ、チームに加わった話は有名で、当時アラミスでも一大センセーションを呼んだほどだ。
    しかも、この男のチームには次から次へと依頼が舞い込みアラミスにはめったに立ち寄ることがない。初めて直に女の顔を見たクラッシャーも多かった。


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■1207 / inTopicNo.3)  Re[2]: ・・・だってそう見えました
□投稿者/ とむ -(2006/08/03(Thu) 22:24:36)
    「・・・いいな、チクショウ」
    「アレだろ、元ピザンのお姫様っていう航法士」

    「・・・うっはー。カワエエな〜」
    「いやに接近して話し込んでんじゃねーか。なあ、あの二人ってデキてんのか?」
    「聞いたことねーな。でも、アレだ。お姫さん、ジョウに惚れて押しかけてきたんだろ?」
    「マジかよ。あんなにかわいいとはな」

    「うまくやったよなあ。ジョウのヤツ。あんなカワイコちゃんがチームの中にいたら、俺だって張り切るゼ」
    「仕事への意欲ってモンが違うよなあ」
    「安心しろ。間違ってもお前のとこにはあんなカワイコちゃんは密航してこない」
    「ぬかせ!!余計なお世話だ」

    「・・・やっぱ、デキてんだろうなあ」
    「・・・だろ〜な〜」


    ・・・はああ。

    そんな羨望のため息が、カフェ・バーの中でいくつも聞かれた時。
    噂の的となっている二人はと言えば。


    (以下、すべて小声である!!)

    「・・・で、どこまで記憶があるんだ?」
    「店の壁に落書きして、ウェイターを殴っちゃった辺り?」
    「・・・あのなあ」
    「だって、ジュースにアルコールが混ぜられたなんて知らなかったんだもん」
    「今回で4度目だぜ。いくら弁償することになったのか知ってんのか?」
    「悪かったってば。でも、仕方ないじゃない。文句はリッキーの馬鹿に言ってくれる?あたしだって嵌められたみたいなもんじゃない。アイツがジュースにウィスキーなんて混ぜなけりゃ、あんなに悪酔いしないわよ」
    「フツー気付くだろ。こんな度々、飲み屋ぶっ潰しちゃあ、そのうちアラミスにもばれる」
    「ジョウ、監督責任重大よ」
    「しゃあしゃあと言うなっての。どうすんだよ、ファイターの修理代。片肺しかないんだぞ、来月まで」
    「だから無茶しちゃ駄目って言ったじゃない。いつもそれでファイター壊しちゃってさ」
    「俺の場合は仕事上のトラブルだ。仕方ないだろ。とにかく、アルフィン来月1ヶ月減俸だからな。しっかり反省しろよ」
    「な!なーんであたしだけなの。無謀な操縦してばっかで、ファイター壊しまくってるジョウに言われたかないわよ。だいたい、リッキーだって同罪でしょ。あたしを減俸するならアイツもそうして」
    「・・・最近、問題のすり替えでは天下一品だな」
    「ジョウこそ最近、無計画なプランが多すぎじゃない?特AAAの資格、大丈夫?」
    お互いの顔を見合わせ、冷笑を浮かべあう二人であった。




    「・・・・っかー。微笑み合ってるぜ。あの二人」
    「チクショウ。今度会ったら絶対奢らせてやるぜ、ジョウのやつ」
    「あまり見せつけんじゃねーぞ、コラ!!」
    「アツイねえ。このやろー!!!」

    カフェ・バー内の男達の羨望・野次はヒートアップするばかりであったが、案外、実情は見た目とはかけ離れたところにあるものである。


    果たして、後日、アラミス宛にミネルバから何通目かの始末書が届けられることとなったのであった。






fin.
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