| 「おーねえちゃん!!」
勢いよく玄関ドアを開け放ち、6つ下の妹がロー・スクールから帰ってきた。 「おーねえちゃん、どこ!?」 玄関の目の前に広がるリビングルームで大声で叫んでいる。いつものことだけど興奮しまくり。 ばたばた走り続ける妹の足音は”ああ、ホントにアラミスに戻ってきたんだ”と実感させられる。良くも悪くも。 「2階のわたしの部屋!」 スツールから立ち上がり、ちょっとだけ部屋のドアを開いて妹に向けて叫ぶ。 すると、これまたドタドタと一気に階段を駆け上がる音がして、壊れるのではないかと思うほどの音を立てて勢い良くドアが開いた。 「おーねえちゃん!!」 ショルダーバッグをその小さな肩から斜めにぶら下げ、黄色いスクール帽をかぶった妹はハアハアと息を切らせてそこにいた。 「・・・・ルー、あんたドアは静かに開け閉めしろっていつも言ってるでしょ」 手にもっていた航空力学の参考書を机の引き出しにしまいながらわたしは注意した。久しぶりの休暇でアラミスに戻ったのにまたこいつのお守か・・。ああ、今回はどんなネタを仕入れてきたのか。 「それどこじゃないよ。おーねえちゃん」 ルーはそのエメラルドグリーンの大きな瞳をキラキラ輝かせながら嬉々として話し始めた。自信ありげに勝ち誇ったような不適な笑みを浮かべ、とにかく全身からヤル気と闘争心を放出している。 「コレ見て」 すかさずルーはA4版のレポート用紙の束をわたしの胸に押し付けた。 「ねえ、早く見て!」 「なに?」 なんだ、これは。 訝しげにその書類の束を手に取って表紙に視線を落とすと、そこにはまだ幼い綴り字でこうあった。
『リコールたんがんしょ』
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