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■1228 / inTopicNo.1)  リコール!!
  
□投稿者/ とむ -(2006/09/07(Thu) 16:33:14)

    リコール〔RECALL〕:(名)−スル

                 公職にある者を有権者の意思により解職すること。
                 または、それを要求すること。
引用投稿 削除キー/
■1229 / inTopicNo.2)  Re[1]: リコール!!
□投稿者/ とむ -(2006/09/07(Thu) 17:18:20)
    「おーねえちゃん!!」

    勢いよく玄関ドアを開け放ち、6つ下の妹がロー・スクールから帰ってきた。
    「おーねえちゃん、どこ!?」
    玄関の目の前に広がるリビングルームで大声で叫んでいる。いつものことだけど興奮しまくり。
    ばたばた走り続ける妹の足音は”ああ、ホントにアラミスに戻ってきたんだ”と実感させられる。良くも悪くも。
    「2階のわたしの部屋!」
    スツールから立ち上がり、ちょっとだけ部屋のドアを開いて妹に向けて叫ぶ。
    すると、これまたドタドタと一気に階段を駆け上がる音がして、壊れるのではないかと思うほどの音を立てて勢い良くドアが開いた。
    「おーねえちゃん!!」
    ショルダーバッグをその小さな肩から斜めにぶら下げ、黄色いスクール帽をかぶった妹はハアハアと息を切らせてそこにいた。
    「・・・・ルー、あんたドアは静かに開け閉めしろっていつも言ってるでしょ」
    手にもっていた航空力学の参考書を机の引き出しにしまいながらわたしは注意した。久しぶりの休暇でアラミスに戻ったのにまたこいつのお守か・・。ああ、今回はどんなネタを仕入れてきたのか。
    「それどこじゃないよ。おーねえちゃん」
    ルーはそのエメラルドグリーンの大きな瞳をキラキラ輝かせながら嬉々として話し始めた。自信ありげに勝ち誇ったような不適な笑みを浮かべ、とにかく全身からヤル気と闘争心を放出している。
    「コレ見て」
    すかさずルーはA4版のレポート用紙の束をわたしの胸に押し付けた。
    「ねえ、早く見て!」
    「なに?」
    なんだ、これは。
    訝しげにその書類の束を手に取って表紙に視線を落とすと、そこにはまだ幼い綴り字でこうあった。


    『リコールたんがんしょ』
引用投稿 削除キー/
■1230 / inTopicNo.3)  Re[2]: リコール!!
□投稿者/ とむ -(2006/09/07(Thu) 17:50:47)
    リコール・・・・・・。

    はあ、とため息をつきつつわたしはヤル気満々の今年9歳になるルーを見つめた。
    今度はリコールか。

    ある意味、姉であるわたしをもはるかに凌駕する負けん気の強さである。
    まだ9歳なのに。頭にはヒヨコの様に黄色いスクール帽をかぶるスクール3年生のくせにだ。毎日毎日、よくぞこうもしつこくあの手この手を考え出す。
    学校の行き帰りに、この妹に追い回され挑戦を受け続けている5歳年下のあの坊やはさぞたいへんだろう。



    そう。
    我らが幼馴染み。あの有名なクラッシャー・ダンの一人息子ジョウ。
    あの子はここ毎日、ルーのスッポンさながらにしつこい襲撃に遭遇しているのだ。
    もともとわたし達3姉妹は、ジョウが気に入らない。おとうさまよりクラッシャーとしての実力はないくせにちやほやもてはやされるダンおじさん。嫌いではないけど、おとうさまがダンおじさんより下に見られるのは見捨てておけない。おまけにジョウ。
    なぜだか知らないけれど、おとうさまはやけにジョウを構う。娘のわたしたちより気にかけているのでは、と思うことすらある。
    ルーは特におとうさまが大好き。なかなか一緒に過ごす時間がないせいか、寂しがり屋で甘えん坊なところがある妹。本当は独り占めしたいところのはず。
    なのに、おとうさまはジョウを構う。家に連れてきたりドライブに連れて行ったり。
    そのたび、荒れ狂うルーを宥めるのだって大変なんだ。

    ここのところのお父さまは、仕事が忙しくて宇宙にいることの方が多かったから、ルーのジョウに対するヤキモチもある程度落ち着いてはいたのだが。

    もともと負けず嫌いのルーのジョウに対する怒りが一層強くなったのは2日前。

    おとうさまが、自分の船<モルダウ>にジョウを乗せたことが原因だ。
    なんてことはない。たまたまアラミスに戻った日に偶然ジョウに出くわした。船をドッグに入れる前に”乗ってみるか?”と何気なく声をかけたら”やった”と着いてきただけの話。しかも下校時のジョウは何人かの友達と一緒に歩いていて、そのまま自動的にその友人たちもくっついてきた。だから、ジョウだけが特別ってことではなかったんだけど・・・。

    なにせ、ルーはまだ一度も、<モルダウ>に乗ったことがない。今、クラッシャー見習で<モルダウ>に乗り込んでいるわたしでさえ、やっと3年前に乗せてもらった。
    「なんで、ジョウがお父さまの船に乗ったの?娘のあたしでさえ乗ったことないのにー!!」
    おとといの夜は最悪。
    ルーは狂ったように怒りまくり、ジョウに対する呪いの言葉を散々喚き散らした。
    ああ・・。気持ちは分かるがこっちは久しぶりの休暇なんだからゆっくりさせて欲しい。毎回毎回よくやるよ。



    かくしてルーは昨日の学校帰りジョウに対して奇襲をかけた。
    下校時に前を歩いていたジョウに背後から近づきいきなり飛び蹴りを喰らわせ、家から持ち出した掃除用の手袋をその顔面に叩き付けたのだ。

    「・・・痛ってえな!あにすんだよ!!」
    「うるさい!なにいい気になってんのよ。おとうさまが優しいからって調子に乗るんじゃない!!」
    「何のことだよ。ヒキョーだろ、後ろから蹴るなんて」
    「あんたみたいなちゃっかり野郎に言われたくない!だいたいずうずうしいったらありゃしない。乗るならあんたの親父の船に乗りなさいよ」
    「だってエギルおじさんから誘ってきたんだぜ。俺は別に・・」
    「うるさいうるさいうるさい!いいからソレを受け取りなさい、ジョウ!」
    「ソレって、コレ?」
    「そおよ」
    「なんだ、コレ?」
    「そんなことも知らないの?それは果し状よ。手袋を投げるって言うのは決闘を申し込むってイミなのよ。バッカね」
    「・・・果し状は白い手袋だろ。これゴム手袋じゃん。しかもピンク」
    「ううううるさい。仕方ないでしょ。家にはそれしかなかったんだもん。つべこべ言わず決闘しろ、ジョウ」
    「決闘って・・・・」
    ジョウは黄色いスクール帽を被ったルーを見て何を思っただろうか・・。

    帰ってきたルー曰く

    「・・バカらしい。付き合ってられっか」

    という捨て台詞を残し、ジョウはあっさりその場を立ち去ったらしい。


引用投稿 削除キー/
■1231 / inTopicNo.4)  Re[3]: リコール!!
□投稿者/ とむ -(2006/09/07(Thu) 18:02:30)
    案の定、ルーはキレた。
    怒りの対象であったジョウは結局ルーを相手にしなかった。これが、勝気なルーのプライドをいたく傷つけたことは想像がつくってもの。
    家に戻ったと思ったら、ことの成り行きを事細かにわたしに報告し、地団太を踏みながらまたもやこう言い放った。

    「もう、こうなったらホントに許さない。あいつを必ず生徒会長の座から引きずり落とす!!」
    「・・ジョウはまだ4年生でしょ。会長になる資格ができるのは5年生からじゃないの?」
    「アイツが5年生になったら会長に推薦するって動きが、一部のバカの間であるのよ」
    「へえ、まあジョウって頭良さそうだし」
    「親の七光りよ」
    ルーはきっぱりと言った。
    「授業だってよく脱走してるらしいわ。なにが優秀だ」
    ぐっと握りこぶしをつくって歯軋りをする。
    「あたしは、そんな会長は認めない。あいつにはこのスクールを引っ張っていく力なんかない。でも来年あたしはまだ4年生。だから嘆願書を作ってヤツをやめさせる」
    「まさか、署名を集める気?」
    「簡単よ。今日もそこそこ集まった。明日にはもっと集まる。みてろよジョウのヤツ。嘆願書を集めて校庭で反対ののろしを掲げた行進をしてやる」
    「デモ行進だわね。まるで」
    「そんな生易しいもんじゃないよ。おーねえちゃん」


    「これは革命なんだよ!」

    仁王立ちになって力説する妹の姿は、姉から見てもちと怖かった。


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■1232 / inTopicNo.5)  Re[4]: リコール!!
□投稿者/ とむ -(2006/09/07(Thu) 18:23:42)
    「・・で、署名がこれか」
    「そう、すごいでしょ。全部で50人分だよ。まだまだ集めてやる」
    昨日から今日で50人分を集めたか。今集めてもイミがないと思いつつ、わが妹ながら天晴れだ。

    レポート用紙を一枚めくる。

    すると、いきなりこの一文。

    『ジョウは親の七光りで会長になりました(まだだけど)。こんなずるいやり方はいけないと思います。じつりょくのない会長にわたしたちはついていけません。ジョウは会長をやめたほうがいいとおもいます』

    「・・・・・・・・」

    『ジョウはやめた方がいいとおもう人たち』(以下、署名欄)

    1)ルー    (首謀者。ロースクール3年生)
    2)ジル    (ルーの親友。同じクラス)
    3)マックス  (ジルのBF。同じクラス)
    4)ディック  (マックスの親友。隣のクラス)
    5)メアリー  (ディックの妹。5歳。キンダーガーデン)
    6)べス    (ルーの妹。5歳。字覚えたて。メアリーと同じクラス)
    7)ローラ   (メアリーとルーの担任。29歳)
    8)アン    (メアリーの母。26歳)
    9)ジョージ  (昨夜取ったピザの宅配配達員)
    10)マーサ  (クラッシャー評議会本部受付嬢。27歳)
       
           ↓
           
           ↓

       <中      略>

           ↓

    47)マイケル (近くのパン屋の職人)
    48)リーザ  (マイケルの奥さん)
    49)マーガレット(マイケルの同居中の母。76歳)
    50)エギル   (ルーに騙されて書いた)


    スクール関係者は首謀者を含んだ4名のみのこの状況・・。


    「・・・・ルー・・・・」
    「なに?」


    「悪いことは言わない。や め て お け 」

    「・・え〜〜〜!!!!!」



    ルー。

    当面のところは日々の勉強をマジメにしておくが勝ち。



fin.
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