| 「ジョウ」 操縦席に座っているタロスが声をかけてきた。さっきから面白そうに操縦席から横目でジョウの様子を伺っている。 ジョウは極めて冷静にその声に反応する。 「なんだ?」 両腕を胸の前で組み、メインスクリーンを睨む。今のところレーダーにもスクリーンにも異常はない。<ミネルバ>は順調に、そして極めて安定した航行を続けている。 「今のところ敵の姿は見えねえし予定通り小ワープのあと、プランどおりの陣容でいきますぜ?」 「オッケイ」 ジョウはタロスに一言答えた後、コンソールパネルにある格納庫へのインターコムをオンにした。 「リッキー、アルフィン。あと10分後にワープに入るぞ。戻って来い」 『あいよっ!』 『了解!』 軽快な二人の返事が返ってきた。 もうじき、ブリッジ内にチーム全員が顔を揃える。それぞれのシートに腰を下ろしワープに備えた準備に入る。護衛をしているクライアントの船をワープトレイサーでしっかり確認しつつ後を追う。そしてワープ終了後、3チームに分かれてクライアントの護衛にまわる。
そんなシュミレーションをしながら、ジョウは
−−−−−ザマアミロ
ボソッと口の中で呟く。
「なんですって?」 タロスは、その聞こえるか聞こえないかの呟きを聞き逃さなかった。 ジョウは両手を頭の後ろで組み、大きく伸びをしながら 「ん?別に?」 と、唇の端を少し上げ笑う。 「なんだか楽しそうですなあ、ジョウ」 「そうか?フツーだぜ」 何も気にしていないという素振りをするジョウの様子にタロスは笑いを噛み殺す。 「あの依頼人、アルフィンのことをやけに気にしてますがねえ」 何気なくメインスクリーンからジョウに視線を移しながら、タロスは操縦桿に右手を戻した。 「まあな。でも仕方ないだろ。仕事は仕事だ。あんまり我侭を言われても、依頼人の安全が優先だからな。こっちの指示に従ってもらう」 今度はしっかりタロスに顔を向けながら、ジョウは不敵な笑みを見せた。
ニヤリ
まさにそんな感じ。
「ジョウ」 「ん?」 「さては確信犯ですな」 「さあて、なんのことだか」
だから仕事に私情は挟まないように、というオハナシ。
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