| 約30分でメニューも決まり買出しリストも完成した。 彼女は、おもむろにピンクのサインペンを取り上げそれぞれに返事を書き始める。
『リッキーへ。 要望の3品+お菓子の件、了解。今月はもともとケーキを焼くつもりだったからちょうど良かった。例によって毒見・・あ、間違った。味見役の任を与えるので楽しみにしておくように。 大丈夫。命に別状はない。早々失敗はしない。と思う』
『ジョウヘ。 パスタとお魚料理の件、了解。コーヒーも足しておく。 ここしばらく、余りものが続いちゃってゴメン。しばらくは彩りある食卓を提供できると思うので期待してて。 味見はちゃんとしてるのよ。ただ、たま〜に自分でもコレはどうかって思うものが出来たときだけリッキーに渡してた。どこまで耐えられるのか興味があったの』
『タロスへ。 ワインに合う料理の件、了解。ちゃんと美味しいメニューを提供するから安心して。ワインもちょこっと足しとくね。 ジョウのバースデーを覚えてるなんてさすがね。多分本人は忘れてると思うから、そのまま秘密にしといてね。11月12月はイベントが多くて大変。予算繰り頑張るので協力してください』
すべて返事を書き終わり、封筒に入れて朝食のセットと共にそれぞれの席にそっと置く。
ああ、忙しい。 これから4人分の朝食を作らなければならないのだ。仕事があったらあったで疲れるし、なければないでイベントが盛りだくさん。まったく世話が焼けるったらありゃしない。ここにいる3人の男たちはそれぞれ味の好みも好きなものもバラバラなんだもん。ほんとに手間がかかるったら。 こんなか弱い女の子が汗くさい仕事のほかに家事全般も引き受けてよくやるわ。ピザンのお父さま、お母様が見たら泣くわね。王女時代の白魚の指は、もうこの世には存在しません。
でも、それはそれで嬉しいというかワクワクするというかドキドキしながら楽しんでいるあたしもいて。
ふふ。
飛んで火にいる夏の虫、というこの状況を自分から率先して作っちゃっている辺り、あたしも相当みんなに勝ち取られているな、と最近特に思うのだ。
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