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■136 / inTopicNo.1)  D's says
  
□投稿者/ love -(2002/06/26(Wed) 06:12:29)

    ここのところなんだかひどく疲れていて、何も手に付かなかった。
    実際、仕事は忙しかった。
    やっている自分で言うのも何だが、こんなやくざな商売がやっていける世の中というのも、それはそれで憂鬱だというものだ。
    宇宙の壊し屋、やばいことの方が血が騒ぐというそんなやっかいな男とたちが互いに手を結びあい助け合わそうというその無謀な政策を、ダンはひたすら地道に築こうと努力してきた。でも、なかなか難しい。そりゃあ、そうだ。大体チームメイトの-----クラッシャーは数人レベルでチームを組み活動する------ 男たちだって、眉唾物と決めかけて、協力してるんだか、どうだか。
    まあ、いいさ。ダンは言葉にならないようにつぶやく。この先絶対時代を創ってやる。
    いつもは冷たいと言われる彼にもまだ少年のようにときめく部分が残っていた。
    久しぶりの休みを前に、愚痴言うのも何だし、このまま惰眠に突入しよう。目が覚めればそこは・・・
    ダンの心はもうアラミスへ飛んでいた。

    エアポートには誰も迎えにでてきていなかった。そりゃあ、そうだ、自分たちが帰国を知らせたのはついほんの30分ぐらい前のことだった。
    ダンのチームはまとめて仕事を片づけ、しばらく休んでおのおのの生活を楽しむようになっていた。だいたいの目安はあるものの、ダンのチームはプライベート面ではスケジュール通りになど行動しなかった。今回もその口。思いの外早く仕事が片づいたので、ダンはアラミスでの休暇を提案した。提案などという生やさしい口調ではなく、それは「命令」に近かった。
    ダンにはアラミスに妻がいる。まだ結婚して間もないので、「そりゃあ帰りたいでしょうね」とタロスがつぶやき、ガンビーノと、バードが頷く。それで決定した。



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■137 / inTopicNo.2)  Re[1]: D's says
□投稿者/ love -(2002/06/26(Wed) 06:15:54)

    ただいま。と声をかけそうになって、ダンは一瞬ひるんだ。
    ダンの目の前には、いつものように妻であるユリアがいた。
    ユリアは黒い束ねた髪を空中に踊らせながら振り向いた。そして笑顔。
    彼が声をかけ損ねたのは、現れた彼女があまりにもやつれた笑顔をしていたからだった。


    今までだったら驚かないだろう。彼女もついこないいだまでは宇宙の中で生活する女だったし、今はダンの仕事を陰ながらサポートしており、書類や渉外など数多くの仕事をこなしていた。かなり助かる、いや、彼女の功績は大きいと言わなければなるまい。
    実際、若者の2倍の時を過ごしてみると、いかにその若さ故の暴走が危険で、甘き誘惑であり、進んで命をかけるものが後を絶たないむなしさも見えてくる。何か自分が年を重ねた分の責任、そんなものだろうか。
    ただ[これ]のことを考えると、宇宙にいるときのように心が弾んだ。
    ふとしたきっかけでこの跳ねっ返りと呼んでいた女性を手に入れてから、自分の人生に少しだけ弱気なるところができた。しかし今まで弱さだと思ってきた”守る”という行為は、あらゆるものから愛しいものを昇華させる余裕のあるものだけができる、強さの証明であるとも思った。
    結婚を決めたとき、彼女に[これ]の話を聞かせた。あざ笑うでもなく、変に諭すわけでもなく、
    「あなたらしいわ。あなたにしかできないわね、ダン。」と背中を押してくれる。
    人生も半分以上、いや出会いはもっと早かったのに、彼女なしでどうやって生きてきたんだろうか?と問わずにはいられない。思ったより自分がウブだと言うことに気づいたダンだった。



    ・・・だからやつれる、ということは珍しいことではなかった。それはそれで申し訳ないとは思っているダンだったが、今自分が行おうとしている仕事の前には、そんな同情はかえって失礼にも当たるような気がしていた。
    しかし、今彼女は・・・
    「お帰りなさい。もっと遅いかと思った。」
    「いや・・・その予定だったんだけど、君が、その・・・」
    ダンは彼女の顔からゆっくりを視線を彼女の腹部に移した。
    ユリアの腹部はゆったりと柔らかいカーブを描き、明らかにそこに何かの存在があることが誰の目にもわかるようになっていた。ユリアはゆっくりと視線をダンの見ている場所に移す。
    「あら?心配してくれたの?珍しいわね。」
    ユリアは妊娠していた。彼女が妊娠を告げたのは、前回の休暇で帰ったときだった。そのときで、もう5ヶ月と。ダンはそれを聞いたとき「ああ、そんなに帰ってなかったっけ。」としか思わなかったが、今は違う。今度は明らかに見た目が変わっており、ダンを激しく動揺させた。
    「う・・・」言葉に詰まる。彼女がそれを嫌みで言ったのではないにしろ、こんな妊婦を一人で数ヶ月もほおっておいた(と人は見るであろう)なんて、と今更ながらに後悔の嵐が吹く。
    「大丈夫。順調よ。ほら、今だって元気に動いて・・・わかるのかしらね、パパが帰ってきたって。」
    ユリアは愛おしそうにゆっくりを自分の腹をなでる。その微笑みは女神のようだ。神々しい・・・やつれたと思った顔が今度は官能的にも見える。ダンは見とれてしまって、その場で立ちつくしていた。
    「ね、さわってみる?前の時はわからなかったでしょう?」
    とユリアは急にダンの手を取って、自分の腹へ乗せた。
    「・・・・・」
    ダンは抵抗するまもなく、その物体を妻の衣服越しに触れることになった。
    嫌、ではないが、正直恐ろしかった。
    確かに自分のまいた種(!!)ではあるけど、それがこんなになるとは。もちろん彼は人間がどうやって子孫を繁栄させてきたのが知らないわけではないし、子供がどうやって母親の胎内で育つのかも知っていた。前回告げられた妊娠の報告通りであれば、今日ここで彼女がこういう体になっていたのも、全く正常な現象であった。ダンも仕事の合間に、仲間に見つからないようにこっそりと、少しずつその手の本を読んだりして、詳しいことは知らないまでも、ユリアがこういう腹をしているであろう事は想像できた。
    しかし------しかしである。実際に触れたそれは、ダンの想像以上の代物で、まだ見ないものに感じる恐ろしさをとっさに感じていたのであった。
    「ほら、こっちが背中で、ここが足かな?このあたりを蹴るから、ちょっと待ってみて。」ユリアはそんなダンの様子を楽しむように、彼の手をさらに強く腹にあてがった。
    「ね、今のわかった?」ユリアの期待を込めた視線を感じるが、ダンは正直に
    「いや、よく・・・お?」
    わからないと言おうとした時、かすかに手に振動が伝わる。
    はじめはぐにゅっと。そして次はぽこんと。
    「ね、ほら、今すごく蹴ったじゃない?私は少し痛いんだけど、そのくらいがわかりやすいでしょ?いい子ねえ、いいタイミングだわ。」
    ユリアは腹の中の胎動をダンと共有できた嬉しさを、素直に表す。
    「そ、そうだね・・・なんだか、なんて言うか、その・・・」
    ダンは照れくさくなって自分の髪の毛をまさぐる。本当にこういうとき、世の中の男どもはなんと答えるのだろう?
    「うふふ、ちょっと刺激が強すぎたかしら?さ、荷物を片づけて、シャワーでも浴びてゆっくりしてて。私はさっと夕食を用意するから。」
    「あれ?エストラは?」
    ダンは24時間で雇っているホームヘルパーを目で捜す。
    「今日は休暇にしたわ。」うふふと意味深に笑う彼女。
    「だって・・・」
    そのあと言葉を続けずに、ダンの鞄に手を伸ばすユリア。
    彼女はダンの荷物を運ぶように持ち上げかけたが、さすがにダンが止めた。
    「いや、いいよ、君。そんなお腹でこんなの持つなよ。俺、自分でやれるからさ。それより・・・」
    「・・・ん?」
    ユリアは持ちかけた鞄を取り上げられて、ふと上を向くとダンが彼女を見ていた。
    「ただいま。いつも長く留守にしてすまない。君がこんな時だって俺は・・・」
    ダンは罪の意識でその表情を曇らせていた。
    「ふふ、そんな顔しないでよ。私を誰だと思ってるの?世の英雄、クラッシャーダンの妻なのよ。あなたがそういう仕事をしていて愛したんだから。今更そんなこと言わないで。」ユリアは最初は元気よく笑いながら言っていたが、最後の方は自分に言い聞かせるように、ゆっくりとつぶやいた。
    「愛してるよ。」ダンはそう言うだけで必死だった。そしてゆっくりと彼女をカウチに導き座らせた。
    「愛してるよ。本当に君が強い女で助かってる。でも俺は・・・」
    ダンは静かにユリアを抱き寄せて、そのうなじに口づける。
    「強くなんかないわ・・・」
    ユリアはダンの胸に頭を預けながらつぶやく。じっくりと味わう彼の香り。それは愛している男が出すホルモンのようで、それを感じると、もうどうでもよくなってしまう。寂しかった夜にダンがいなかった、そういうこともすべて忘れさせてくれる麻薬のような香りが巡る。
    こういう麻薬を持つ男はそうそういない・・・それはユリアだけでなく、多くの女が語るところ。
    命知らずの男を持った女たちが、彼らの魅力を一言で言うならば・・・と続ける。
    そういう麻薬をダンは持っている。
    ・・・そしてもうすぐ生まれるであろうこの子も。
    女としては歓迎する麻薬であるが、母親となると話は別である。
    ユリアはお腹の子供が男の子であることを知ると、同時にそういう思いにとらわれた。
    ・・・まだ生まれてもいない子供に、妬くなんて。

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■138 / inTopicNo.3)  Re[2]: D's says
□投稿者/ love -(2002/06/26(Wed) 21:58:47)
    「今日は・・・」ダンがゆっくりと顔を起こす。ユリアはその声で現実に戻ってきた。
    「今日はゆっくりしよう。夕食の準備なんかどうでもいい、着替えてレストランに行こう。いつまでも二人で行ける訳じゃない。」
    ダンは立ち上がってユリアを促した。
    「いやだ、生まれたらいつでも行けるわ。赤ちゃんの時だけじゃない、親の外出が難しいのは。」
    ユリアはある種重い面もちのダンを笑った。
    ダンもつられる。「そ、そうだよな、そうか、そうだった・・・ははは」
    別に意識したわけではないけど、何となくダンには予感があったのかもしれない。親になるという気持ちの引き締まりが急激におそっているだけかもしれない。ユリアが聞き流してくれれば、なんて事ない台詞だったが、ああ言われてしまうと、ダンは、なぜ二人でいけるわけがないと思ったのだろう・・・という気持ちが増した。



    ダンの連れて行ってくれたレストランは、最近アラミスにできた話題のレストランだった。ムードある店構えに、最新のメニュー。ユリアはかなり満足して店を出るときは、もうこれでしばらくこられなくなっても大丈夫だわ!とお腹をたたいておどけて見せた。実際、お腹の子はまだ30週。まだ生まれるまで、2ヶ月を母と一緒に過ごす。もう一回ぐらい来れるだろうと、ダンが続けると、
    「あら、一人で行けというの?いやだわ、そんなの。」ユリアはダンにゆっくり腕を絡ませていった。
    ユリアは上気だっているのか、ふれる腕も暖かい。
    帰り道、二人は海辺の公園に車を止めて、砂浜に出た。ユリアは履いていたパンプスがきついといって脱いでいる。
    最近すぐこうなの。妊娠ってやっぱり太るのね・・・歌うようにつぶやく。文句を言ってるのだが、それは不思議と嫌みのない、幸せの歌のような響きを持っていた。
    ダンは絡ませている手を取り、その指先にキスをした。
    「くすぐったいわ」
    「なんだかこうしていたいんだよ。」
    ユリアはダンを微笑みながらみつけた。
    「あなたは私の・・・」
    「なに?」指先のキスをやめてそのままユリアを抱き寄せた。
    長いキス。





    そのまま動けなくなりそうなくらいの官能がおそってくる前に、二人はそこを後にした。
    さすがにそれはユリアの体に申し訳ない。
    ただ、彼女の体は強く火照っていて、ダンの体に熱を植え付ける。
    そんな思いを言葉にするのはちょっと気恥ずかしく、しばらく無言でドライブを楽しんだ。



    家に帰ってきたとき、テーブルの上に、患者用チャートとメモがおいてあった。
    メモの主はエストラで、それは明日の妊婦健診について書いてあった。きっとダンも行くだろうと、気を利かせて、必要な書類をおいておいてくれたようだ。
    「そうだったわ、ダン。困ったなあ、私今日いっぱい食べちゃったわ。明日健診で・・・」
    きつくなったパンプスを今度は本格的に放り投げると、ユリアはつぶやく。
    「なに?」ダンは服を脱ぎながら、ユリアに相づちを打つ。
    「うん、なんて事ないことなのよ。体重・・・その、あんまり増えるとおしかりを受けるのよ。今は栄養がいいでしょう?食べ過ぎはよくないんですって。赤ちゃんがデブになったら困るわ。」
    ユリアは最初は下を向いていたのだけど、途中から、選挙演説者のように力説しだした。
    それがおかしかったので、ダンは大きな声で笑った。
    「はは、赤ちゃんがデブになったら困るか。」
    「困るわ!だって・・・病気になったらいやだし・・・」
    ダンは我がチームの大きめな一団を思いだしてさらに笑った。
    「デブになったらか、そりゃあいい。女性は恋人だけじゃなくて、赤ん坊のスタイルまでにを使うのか」
    「あら、そういうけど、赤ちゃんのうちの健康な体を作るのは大事な事でしょう?私の・・・あなたの赤ちゃんだもの。大事にして何が悪いって言うの?」
    あまりのダンの笑い声に、すっかり気を悪くしたユリアは声を潜めて恨めしそうに見つめる。その瞳が熱い熱を持っているようだ。
    熱・・・
    ダンはふと気になってユリアのおでこに手を当てた。ユリアはそれを交わしながら
    「いやだ、そんなのでごまかさないで。私怒ったのよ。」
    ユリアは思いきり立ち上がる。
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■139 / inTopicNo.4)  Re[3]: D's says
□投稿者/ love -(2002/06/26(Wed) 22:00:03)
    「私がどんな気持ちでここで一人で寝ているか知ってる?赤ちゃんができてからだって・・・」
    ユリアはにじんだ涙を隠すように一度その細いあごを上に向けた。
    「赤ちゃんをおなかに宿しているとね、どうしようもなく気持ちが守りになってしまうの。だから、ちょっとした物音でも怖い。あなたがいないことには慣れていたつもりでも、いつもの数百倍も怖いのよ。このユリ様が!」
    ダンは黙って聞いていた。ユリアを見守る視線で。彼女がこんな風に泣き言を言うのははじめてで面食らっているのもあるが、やはり彼女の言うところの守りの姿勢というのは正しく、少々過剰反応に思えた。
    「怖い・・・か」
    「怖いわ。」
    ダンはすっと立ち上げると、何の前触れもなく、いきなりユリアを抱き上げた。
    「・・・!」声にならない声でユリアがダンに抗議する。
    一瞬ユリアは抱き上げられたかと思うと、次の瞬間には、ベッドの上にいた。ダンはふんわりとユリアを横たえた。
    「君がいやなら、俺は船を下りるよ。」
    ダンはできる限りの優しい声でユリアを包もうとした。そうずっとそうしたかったのだから。
    「ダン・・・」
    ダンはユリアに優しく口づけた。ユリアも両手でダンのほおを包み込むようにしてキスを受ける。少し冷たいダンの顔・・・
    「ねえ、ダン。愛しているわ。それだけでもう何もいらないはずだったの。」
    ダンはそのまま聞きながら彼女の唇、ほお、首筋を味わった。熱い吐息が、ダンに甘い時間の到達を告げる。
    「今やろうとしていることがほんの数年早くなるだけの話しだ。それはそれで問題はない。そうすればもっとこうしていられるし、君の寂しさを埋めてやれる。」キスをしながらなので、時々声がくぐもってしまうが彼の言うことに嘘はないと、ユリアは本能で知った。この人は本気だと。
    実際、ダンが船を下りるのかどうか、そしてそれをいつにするのかは、彼自身の悩みでもあった。
    仕事ともう一つの野望。
    「いやよ、やめて。そんなの。私のためにとか、そういうのはだめよ。らしくない。」
    ユリアはあつい息を吐きながらもはっきりとそういった。
    こうやっているとこんなにもダンの息吹を感じるのに。私はいったい何が不安だったのだろうと思えるほど、今は激しく感じている。そう、私はここに、彼のそばにいられる、彼の子供を宿せる、これ以上ない幸せをもらっていた。なのになぜ・・・ユリアは自分の感情をそのままでは受け入れられない気がした。
    「大丈夫、大丈夫よ。私なんだか気弱になってるわ、妊娠のせいね。久しぶりにあえたから、ちょっと涙腺がゆるんでるだけよ。ほら、赤ちゃんだって動いてる。ダメダメって・・・」
    ダンはユリアのお腹に手を当てた。ぽこんぽこんと元気に蹴り上げる胎児。愛しいユリアと俺の・・・赤ん坊。

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■142 / inTopicNo.5)  Re[4]: D's says>誤爆訂正です。
□投稿者/ love -(2002/06/28(Fri) 00:17:08)
    >「私がどんな気持ちでここで一人で寝ているか知ってる?赤ちゃんができてから
    >だって・・・」
    >ユリアはにじんだ涙を隠すように一度その細いあごを上に向けた。
    >「赤ちゃんをおなかに宿しているとね、どうしようもなく気持ちが守りになって
    >しまうの。だから、ちょっとした物音でも怖い。あなたがいないことには慣れて
    >いたつもりでも、いつもの数百倍も怖いのよ。このユリ様が!」

    すんません、アが抜けました。
    あるとないとではえらい違いです。

引用投稿 削除キー/
■143 / inTopicNo.6)  Re[5]: D's says
□投稿者/ love -(2002/06/28(Fri) 00:22:56)
    ダンは激しくユリアに口づける。
    ユリアは体を起こすとダンの胸の上に顔をおくようにして抱きつく。それを合図にダンはユリアの背中に手を回す。ゆっくりとなでるように、またさするように。
    「すてきね、あなた。」ユリアが目を閉じたまま上半身だけ少し上げて、ダンの上に四つんばいのようになった。着ているスリップドレスのせいで、おなかが大きく目立つことはなかったが、こういう角度でみると、ユリアのそれはかなり大きいように思えた。
    「ねえ、妊婦抱いたことある?」
    「これから初体験するところだよ」ゆっくりと上半身を起こしてユリアを抱き留める。
    「でも・・・いいんだろうか?」
    「だめって言ったら止められるの?」
    ユリアは言ってることは強気だが、もう体がぐらぐらでとろけそうな顔をしている。そっとダンの髪に手を添える。
    「無理だろうね。」
    ダンは本当はどうしたらいいのか、なんて考えてなかった。今までもダンは何度となくユリアを愛してきたが、その大部分は抑えきれない十分正直に従った上での行動だった。どうしようなどというHow toは必要なかった。
    だから今日も思うまま行動してもいいと思う。
    でも壊したらいけない宝物だから・・・

    (一部省略・・・本編公開するときまでお楽しみに?)

    ダンはそのまま崩れ落ちないで、体を支えた。そのままユリアから体をゆっくりと離した。
    離したくはなかったけど、これはしょうがない。つぶしそうだと本能的によけたのだった。そしてそのままユリアの隣へ移動した。

    「大丈夫か・・・」そっと目をつぶったままのユリアに口づける。
    「なんだか眠くなっちゃった・・・」
    「そっか・・・」
    ユリアは半寝ぼけ眼をあけて、
    「なんだかこれじゃ・・・寝るためにしたみたい。」
    少しの理性で睡魔と戦っているユリア。
    「そうでもいいだろう、少し休めよ。今日は夜無理したし」

    「うん・・・」

    おやすみ。
引用投稿 削除キー/
■152 / inTopicNo.7)  Re[6]: D's says
□投稿者/ love -(2002/07/24(Wed) 00:32:24)
    ちょうど座った格好になった二人はどちらともなく抱き合い、キスをした。熱い濃厚なキスに変わる頃、ユリアは全身をダンに預けることに何の疑問も思い浮かばなかった。
    ユリアも実は[その時]が怖かった。
    赤ちゃんは大丈夫だとか、安定期は大丈夫とか、そういう注意書きを読むことはあったけど、実際にその時がくるなどとは思わなかった。しかしそれ以上に怖かったのは・・・
    ダンは帰って始めにみたとき、ほんの少しだけだけど恐怖を感じていた。それはユリアの表面的な身体の変化だった。すぐに彼はそれに慣れたように見えたが、今度は体を預けるときにどういう反応を示すだろう。それは非常に恐ろしい気持ちだった。
    お腹の変化だけではなく、妊娠中はいろいろなところがそれに向かって変化する。彼はそれを見てどういうのか?
    ユリアはダンの気持ちが萎えるのをみたくなった。だから、ダンがユリアの胸にドレス越しに口づけたときは本当に息が詰まるようだった。
    「なんか大きくなった・・・」
    「ねえ、あんまり見ないで。はずかしいから。私・・・あなたの知らない女に変わってるから。」
    「じゃあ見ないよ。目をつぶってる。」ダンがさらに強く胸を愛撫する。
    ずっと前にユリアがしまっていた感覚がゆっくり顔を上げた。徐々に体が反応する。
    ユリアがのけぞる。・・・小さな声が漏れる。
    「きれいな声だ。楽器みたいだよ。」
    腰に回した手がゆっくりと愛撫をはじめる。そのままダンはユリアを見上げる。
    「きれいだよ、とっても。君はなにもわかってない。いやもっと綺麗になったよ。」
    「上手ね、合格点。」
    ダンはそのままユリアの腹部に口づけを移す。ぴんと張っているのがわかる。しかしすぐにその緊張をゆるめる。
    「なんだか不思議だ。ここに俺の子供?息子がいるんだろう?」
    ダンは愛しげに優しく腹部を抱きしめる。そんなダンの頭をユリアは抱きしめる。
    「そうよいるわ。今も元気に動いてる。もうすぐで私たちの元にくるの。」
    ダンはゆっくりをドレスをたぐり上げ、その腹部をじっくり眺めた。
    そっと中心線に向かってキスし、そのままそれを愛撫する。大きなおなかがごろんと生き物のようにに動く。軽く右上方に高さを見せたかと思うと、いつの間にかまた丸く収まる。
    「いや・・・見ない約束。」
    ダンはそれを聞こえない振りをしているか無視してるのか、そのままドレスははぎ取った。特にユリアは抵抗はしなかった。
    (一部中略)
引用投稿 削除キー/
■153 / inTopicNo.8)  Re[7]: D's says
□投稿者/ love -(2002/07/24(Wed) 00:33:18)
    ダンはそのまま崩れ落ちないで、体を支えた。そのままユリアから体をゆっくりと離した。
    離したくはなかったけど、これはしょうがない。つぶしそうだと本能的によけたのだった。そしてそのままユリアの隣へ移動した。

    「大丈夫か・・・」そっと目をつぶったままのユリアに口づける。
    「なんだか眠くなっちゃった・・・」
    「そっか・・・」
    ユリアは半寝ぼけ眼をあけて、
    「なんだかこれじゃ・・・寝るためにしたみたい。」
    少しの理性で睡魔と戦っているユリア。
    「そうでもいいだろう、少し休めよ。今日は夜無理したし」

    「うん・・・」

    おやすみ。
引用投稿 削除キー/
■154 / inTopicNo.9)  Re[8]: D's says
□投稿者/ love -(2002/07/24(Wed) 00:34:55)
    夢の中でダンは何か大きなものに飲み込まれていた。
    なま暖かい汚れた水、それは台風で水かさを増して荒れ狂う大河。
    ダンは大きな流木に突撃されないよう注意しながら、手頃な流木で体を浮かすことに成功した。
    「ユリ!ユリ!」
    ダンはそのくそ生意気で腹立たしい、自分の半分ほどしか人生経験のない女を必死になって捜していた。しかし見えるのは流木ばかりで、ともすれば自分こそ流れていきそうな濁流。見つかるはずがない、かわいそうだが、あのダムの決壊で二人は川に放り出された。川と言ってもこの台風で、大きくあれる魔王と化した川に、決壊したダムの水とともに放り出されたのである。いくらダンでも今回ばかりは[運]がよかったとしかいえなかった。かわいそうだがやられたんだ。
    頭ではそれがいつも任務の間にいつかは起こることで、十分その手の覚悟[仲間の事故]への対応は感情に流されてはいけないことを知っていた。しかし、そういったものが事もあろうにこのダンから剥がされようとは。
    冷静になりたくても唇がふるえて止まらない、たまらず満身の力を込めて彼女を呼ぶ。
    「ユリ!」


    _______________________
    汗がびっしょりになって飛び起きた。いやな夢を見た。まだ忘れていないそのこと・・・
    なぜ今になって、それをみたのだろうか、とダンは思う。
    どうやら大声は出なかったようで、ユリアは寝ている。
    最近どうもこのときのことが思い出されてならない。

    ダンは自分があの跳ねっ返り少女に心を奪われていたときのことをひどく不快な思いで迎えた。こんなに嫌な思いがするのに、どうして忘れないんだろう、必要なことは忘れることもあるというのに。
    寝ているユリアの髪をかき上げると、あのユリと同じ顔がでてくる。

    最初は絶対冗談だと思っていた。まさかあのはちゃめちゃ女のお遊びに引っかかるわけには行かないと思っていた。しかし、ユリアはまったく別人で、性格も強気ではあるが、もう少し何というか、素直であった。ダンはきっと[ユリ]への気持ちがブースターになったんだろうとは思う。しかし、ユリアのことは純粋に惹かれたし、[ユリ]のことは普段はそうそう思い出さない。全くイカレたことをしたもんだ・・・とあたりに言われた気がしたが、そういうことは気にしないつもりだった。

    ダンがユリアを知ったのは、本当に些細な事故の処理に当たったときだった。
    ダンはその事故の担当の星間警察官の刑事であったユリアと知り合い、瞬く間に恋に落ちた。
    あまりにも早急だったのかもしれないが、今手に入れないといけないような気がして、必死で口説き落とした(もちろんそんなに必死にならずとも、ユリアの方もダンの方に惚れていたのだけど)のであった。その仕事上、気は強いが、実は思いやりのある女で、ダンの事情もすぐに飲み込んだ。若い女にありがちがしつこさがなかったし(それは彼女が激務だったから)、体の相性は最高で、気がついたらアラミスに連れて来てしまっていた。

    そんなに掘れたユリアがいるそばなのに、またあの跳ねっ返りの夢を見るとは・・・
    ダンはゆっくり起きあがると、そのまま汗を流しにシャワーに入った。

引用投稿 削除キー/
■158 / inTopicNo.10)  Re[9]: D's says
□投稿者/ love -(2002/08/15(Thu) 11:47:15)

    翌日・・・
    ダンは初めてOBクリニック(産婦人科)の門をくぐることになった。
    この年で・・・周りのカップルたちは、確かに自分よりは一回りは若そうだった。
    ___なんだか親子のようだ___と思い、待合室のソファーにどっかりと腰を下ろすと、早々に目を閉じて籠もってしまうことにした。
    ピンクを基調にしたクリニックの調度品は、落ち着いてはいるものの、やはりダンのようなクラッシャーが日常いるような場所からはほど遠く「乙女チック」であった。もちろんそれは、クラッシャーのためではなく、出産する女性のためのものであるのは百も承知だが、それにしても、もう少し何とかならないものかと思った。
    ダンは年甲斐もなく【照れる】という感情に押しつぶされそうになった。
    そのあとユリアが受付をすませて、ダンの横へ座る。
    「・・・後悔してるんでしょ?」
    「・・・」答えがでてこなかったが、それが明快な返事となってしまった。
    「ごめんね、もう少ししたら呼ばれるから。そうしたら、個室での診察だから、大丈夫よ。」
    ユリアが少しうつむき加減に申し訳なさそうに言ったのを聞いて、ダンは目を開ける。その目に映っているのは、ユリアと同じように大きなお腹を抱えた妻をいたわる夫たち・・・つまり仲むつまじいカップル。自分がつきあってこなかったのだから、彼女はいつもはこんな中に一人でいたのであろう。嬉しい思いももちろんだが、心細い思いを抱えたときも、こうやって目の前では、優しくいたわりあう他人夫婦をみることしかなかったのだった。
    でも彼女はそれを責めずに、なれぬダンを気遣う。
    「・・・あまりにできすぎた女だよ、君は。」
    つじつまの合わない答えが返ってきたので、ユリアはいったいダンが何を言い出したのだろうといぶかしがった。
    「どうしたの?もし、居づらかったら帰っていてもいいわ・・・」
    「いや・・・そうじゃなくて。」
    ダンは今度はユリアの手に自分の手を重ねると、ゆっくり視線を合わして、向き合った。
    「つらかったんじゃないかと・・・思って。今まで。」
    ダンの手に力が入る。
    「ここへ来るときだけじゃない。今回の仕事は長かったし・・・いつでも一人で居たんだよな、君は・・・」
    「・・・そうよ、ダン。それが私の・・・・」
    ユリアもダンの手にもう一つの手を重ねてから、優しい微笑みをダンに向けた。
    「私の仕事だったから・・・一人でがんばるのが・・・でも思ったよりはよかったわよ。一人といっても、一人じゃないから。」
    ユリアはダンの手を取って、自分のお腹の上へ導いた。
    「ここであなたが・・・あなたの分身がいたからね。私は一人じゃなかったわ。あなたがいない分・・・深く感じれたかも・・・」
    そのとき、ユリアの名前が呼ばれ、彼女はゆっくり立ち上がった。
    ダンはまだユリアへの罪悪感や、彼女の強さへの感激で、しばらく心ここにあらずだったが、ユリアに促されてあわてて立ち上がると、診察室へ入っていった。






    「よくない兆候です。」
    一通りのスクリーニングをした医師は、その途中から確かに表情を変えた。ダンには、医師が何かを確認するよう、より丁寧にみているようにも思えた。
    そして、医師は検査の手をゆるめて、まずダンに向かってそう伝えた。
    「それは?」ダンにはまだあまりピンとこないせいもあり、冷静に聞き返す。
    ユリアは診察台の上に寝たままで怪訝な顔をして、医師とダンを交互に見ている。
    「見てください。」
    医師は超音波検査のスクリーンを拡大し、それをダンとユリアに向けた。スクリーンやキーボードを操作すると、いくつかの画像が現れたり、全くよくわからない数字が並んだ。
    「どうも胎児の具合がよくない兆候があります。ここを見てください・・・これが胎児の成長曲線です。いわゆる正常のパターンのグラフと重ねてみましょう・・・・」
    医師は今までのユリアのデーターと、前もってコンピューターに入力されているデーターをグラフにして見せた。確かにはずれているのが目で見える。それがどういう意味を持つのかはまだダンにはわからなかったが、まずユリアが反応する。
    「つまり、それは、赤ちゃんが危険・・・という意味でしょうか?」
    ユリアはゆっくりとそれでいて、強い口調で医師に尋ねた。でもその顔色は悪く、明らかに緊張している。
    「・・・今危険だとはいえません。しかし、他にも検査をしたところ、やはり胎児にとってはよくない兆候が見られます。そういう意味で【危険】といえます。」
    ユリアが息をのむ。見る見る涙が浮かんで、唇が震えだしているが、それでも取り乱したりはしなかった。ダンは背中に冷たいものを感じ、心臓の鼓動が早くなったのを自覚する。
    「・・・どう・・・どうすれば・・・どうなるというのですか?」
    ダンは心にある重い気持ちをはき出すように医師に尋ねた。本当は、もうパニックになりそうで、目の前の医師を揺さぶってでも、「大丈夫です」と言わせたい衝動に駆られていた。でもそれをして何か起こるわけではなく、かえってユリアを怖がらせてしまう・・・とギリギリの理性が自分を押さえているのがわかった。とにかくユリアと子供をどうすればいいのか、自分に何ができるのか、それを教えてほしかった。
    「万が一を考えて、厳重に胎児管理をしましょう。奥さんには入院していただいてもよろしいでしょうか?」
    医師は厳しい表情を変えなかったが、だいぶ口調は柔らかくなっていた。それはこの自覚の持てない緊急事態に出会った夫婦を助けようとしているかのようだった。






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■159 / inTopicNo.11)  Re[10]: D's says
□投稿者/ love -(2002/08/15(Thu) 11:47:44)
    「よく・・・わからないわ。どうしてこんな事になったの?」
    ユリアは日当たりのよい個室に入院した。部屋には花が飾られ、面会者のための応接セットがあった。やはりクリニックと同じように、ピンクを基調とした家庭的な雰囲気の部屋だった。
    ユリアは、数種類のモニターをつけられ、ベッドに寝ていた。自分は痛くも痒くもないのに、まるで重病人のごとくの扱いに戸惑っている。
    「私が・・・悪かったのかしら?赤ちゃんがおかしいって事は・・・」
    声が涙で震えてしまう。
    「違う、それは関係ないと言われただろう。君のせいじゃないよ。」
    ダンはユリアの横に腰をかけ、彼女の髪の毛をゆっくりと撫でながら、できるだけ優しい声をかけた。自分もユリアへの処置にショックを受け動転している。でもそれよりも心細いのは誰でもない、彼女自身だろうと、ダンは心を痛める。何とか慰めたかった。でもこの現実をどう受け止めればいいかはまだ自分にはわからなかった。
    「でも・・・でも・・・こんな事って。今だって、私は何ともないわ。でも、赤ちゃんにとっては・・・!!」
    ユリアはそのとき気づいてしまった。
    「もしかしたら今までも、知らないだけで・・・苦しめてしまっていたのかしら?!」
    最後の方はもう大きくなる声を抑えることができなった。
    「違う!そうじゃない!」
    ダンはユリアを抱きしめた。強く胸に抱き留めたが、それでも彼女は自分を追いつめ続ける。
    「私は、私は・・・自分の赤ちゃんなのに!!・・・私はもしかして、このまま赤ちゃんを・・・」
    ユリアはダンの腕を振り払うかのように暴れて、泣き叫ぶ。
    「違う、そうじゃない、誰にも予測できないことだと言っていただろう??」
    「私このまま、赤ちゃんを殺して・・・しまった・・・のかもしれな・・・」
    「違う!!!!」
    ユリアにつながれているモニター類が一斉に警報を鳴らし、それが一層ユリアを狂気に追い込んだ。
    「いやぁ・・・!」
    そのときすぐさま看護スタッフが数名駆けつけ、ダンは部屋から追い出された。
    落ち着かせるどころか、彼女をパニック状況に追い込んでしまったというショック、昨日はじめて【手】で感じることができた自分の子供の急変という事態に、ダンはその場から動けずにいた。
    ユリアはすぐ手当を受け、麻酔で眠らされる事になった。
    「あなたのせいではありません。こういう状況になったら、薬の力を借りてでもなければ、安らぐことはできないでしょう。」
    ダンに状況を説明した医師が、その話の最後にそっとつぶやいた。
    「あなたもです。」


    ダンは誰もいない自宅に帰ると、医師にもらった薬を飲み眠りについた。
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■204 / inTopicNo.12)  Re[11]: D's says
□投稿者/ love -(2002/10/07(Mon) 12:47:53)

    薬は夢もなにもない安眠を授けた代わりに、何ともいえない不快な目覚めを代償として要求してきた。
    ダンは陽差しでその安眠を破られ起きあがったところを、激しい嘔吐感に襲われた。
    あわてて洗面所に駆け込むが、ほぼ同時に胃液や胆汁だけがーーー昨日は結局なにも食べられていなかったーーー逆流を起こすのをただ耐えた。
    なにも出なくなっても、ただただ内蔵の逆流運動は続いた。





    落ち着くとゆっくり立ち上がり、冷たい水で顔を洗う。
    ごく自然に顔を上げると、鏡に自分の顔を見つけた。何とも憔悴した・・・

    ダンは昨日のユリアの入院という事実もかなりのショックではあったが、彼女が落ち着いて眠る顔を見たときから、段々に思い出してきたどす黒い記憶に悪酔いしたのだった。
    そう、彼女は何も知らない・・・・ハズだった。それをユリは望まなかったから。


    しかしどこかに・・・そう、あり得ないとは頭でわかっていても、今度のことが【例の記憶】とシンクロしているという思いはぬぐえなかった。
    それは・・・



    ____________________________________
    大いなるいいわけ
    この先はloveの病的妄想がかなり入っております。
    今までも相当原作設定無視できましたが、この先もさらに無視し続けて全く関係ない話しになっています。今手元に原作がないので、イメージと自分の都合主義で話が進んでいます。

    原作至上主義の方、キャラへの思い入れのある方はおすすめできません。もうキャラの名前だけ借りた話しですので、いわゆる設定を上手に生かされている二次小説を書かれている方の作品と同じだと思うと失望すること請け合いです。

    何を読んでも許せる心のゆとりのある状態の方で、この先も読みたいという方のみお進みくださいませ。

    と言い訳しないととても先へ進めない・・・

    _________________________________
    a few years ago


    とにかく逃げることが先決だと思った。
    今すぐは無理だと自分のカンも告げていた。そこにたとえ跳ねっ返りとはいえ、女だけをおいて撤退するなど言語道断・・・のプライドも、今は冷静な判断の元おとなしくしていた。
    少々傷物にはなるだろう・・・しかし死ぬよりはましだと、彼女の相方も言った。全く女は怖いと笑ったが、洒落になってない。

    綿密に計画を練って救出する。
    それがベストだ。


    俺の相棒も黙ってうなずく。言葉はでなかった。






    一夜明け、早速俺たちは彼女の救出プランの検討に入った。そうそうゆっくりはできない、しかし急いで相手に逆切れもされたくない・・・
    昨日は俺たちに気づいた【奴】は事もあろうに彼女の命を奪おうとした。【奴】は彼女に狂っているので、まさか命は奪わないだろうと思ったが、手元から奪われる位だったら、自らが消し去ろうというタイプだったようで、いきなり彼女の胸を打ち抜いた。
    当然急所ははずれたが・・・彼女もただではやられたくなかったようでさすがといえるかもしれない・・・そのまま走り去れるほど軽傷ではなかったし、俺たちも黙って【奴】が去るのを見るしかなかった。
    あのとき【奴】は・・・
    「私にとって大事なのは、私を愛するという形だ。それを拒むようなら必要はない・・・死んだとしても、それには意味はない。」
    と言った。
    含みはあるようだが、全く訳がわからない。狂人が普通に考えるわけはなかった。何か【奴】は切り札を持っているのだろう。
    彼女の相棒には悪いが、あまりに分が悪い。



    自分が無力だと言うことを神から告げられているような、そんな腹立たしい夜は静かに過ぎていった。





    ______________________________
    このあとクラッシュして書いたものが消えてストップ。
    その後絶不調・・・あああああ。
    すみませんすぎますね、本当に・・・
    でもさすがに放っておけないので「あとは勇気だけ」(核爆)でアップしました。
    図々しぃ!!!
引用投稿 削除キー/
■212 / inTopicNo.13)  Re[12]: D's says
□投稿者/ love -(2002/10/09(Wed) 05:48:00)
    ご注意

    この先は作者の妄想がかなり入っております。

    今までも相当原作設定無視できましたが、この先もさらに蒸しし続けて全く関係ない話しになっています。

    原作至上主義の方、キャラへの思い入れのある方にはおすすめできません。もうキャラの名前だけ借りた話しですので、いわゆる設定を上手に生かされている二次小説を書かれている方の作品と同じだと思うと失望すること請け合いです。



    何を読んでも許せる心のゆとりのある状態の方で、この先も読みたいという方のみお進みくださいませ。

    ただやはりPCとの相性が悪いのか、どうしてもアップが正常にならないので、どうしましょう・・・???
    またしくじったらごめんなさい。


    ___________________________

    This is side story of D's says.



    数年前。


    とにかく逃げることが先決だと思った。

    今すぐは無理だと自分のカンも告げていた。そこにたとえ跳ねっ返りとはいえ、女だけをおいて撤退するなど言語道断・・・のプライドも、今は冷静な判断の元おとなしくしていた。

    少々傷物にはなるだろう・・・しかし死ぬよりはましだと、彼女の相方も言った。全く女は怖いと笑ったが、洒落になってない。



    綿密に計画を練って救出する。

    それがベストだ。




    俺の相棒も黙ってうなずく。言葉はでなかった。








    一夜明け、早速俺たちは彼女の救出プランの検討に入った。そうそうゆっくりはできない、しかし急いで相手に逆切れもされたくない・・・

    昨日は俺たちに気づいた【奴】は事もあろうに彼女の命を奪おうとした。【奴】は彼女に狂っているので、まさか命は奪わないだろうと思ったが、手元から奪われる位だったら、自らが消し去ろうというタイプだったようで、いきなり彼女の胸を打ち抜いた。

    当然急所ははずれたが・・・彼女もただではやられたくなかったようでさすがといえるかもしれない・・・そのまま走り去れるほど軽傷ではなかったし、俺たちも黙って【奴】が去るのを見るしかなかった。

    あのとき【奴】は・・・

    「私にとって大事なのは、私を愛するという形だ。それを拒むようなら必要はない・・・死んだとしても、それには意味はない。」

    と言った。

    含みはあるようだが、全く訳がわからない。狂人が普通に考えるわけはなかった。何か【奴】は切り札を持っているのだろう。

    彼女の相方には悪いが、あまりに分が悪い。





    自分が無力だと言うことを神から告げられているような、そんな腹立たしい夜は静かに過ぎていった。





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■213 / inTopicNo.14)  Re[13]: D's says
□投稿者/ love -(2002/10/09(Wed) 05:48:49)
    そして数週間後。

    俺たちの綿密なプランは・・・結論から言えば成功した。

    大元の依頼のブツを取り戻すことはできたし、俺はそのまま俺の相方と帰れば済む話しではあった。




    しかし、最後で俺たち・・・いや俺は彼女の相方の依頼をしくじった。

    正式依頼ではないものの、明らかに巻き添えを食った形で、彼女を失ったわけだ。

    俺だって手ぶらで戻ったわけではない。

    【奴】の手元から、ぐったりとした彼女を奪い返してきたつもりだった。






    さっきまでは。






    ようやく連れ帰った彼女が意識を取り戻したのはつい先ほど。

    予想もできないきちがいに誘拐されたわけだし、やはりただで帰ってくるとは思えなかったという、彼女の相方は、柄にもなく泣いて彼女を抱きしめて迎えた。

    しかし、その彼女の口からは意外な返事が返された。




    「あなた・・・は誰?」

    俺たちはともかく、その相方のものまで記憶がないなんてと驚いたが、事態はさらにひどい状況だった。

    彼女を診察した医師は、彼女が記憶喪失などではなく、多重人格でもなく、そういう部分は正常だということを告げた。つまり他人だと言うこと。

    「そ、そんな馬鹿な・・・あいつは確かに・・・」

    彼女に狂ったように固執していた【奴】は、確かにこの彼女を連れて逃げようとし、そこを俺が・・・仕留めた。

    訝しがる俺にさらに医師は続ける。





    「諸検査の結果、彼女の細胞活動に年齢反応がありません・・・たぶん、彼女はあなた達のお探しのオリジナルのコピー・・・いわゆるクローンかと。」

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■214 / inTopicNo.15)  Re[14]: D's says
□投稿者/ love -(2002/10/09(Wed) 05:50:04)
    名をユリアといった。

    話しをしてみると、一応記憶だけは一人の人間として成長してきたらしい記憶があるようだ。ただ細かいところをつくと激しい頭痛に襲われてしまうためはっきりせず、ユリア派自分が何者であるのかとひどく怯えた状況を示していた。

    混乱をさせないよう、安静にするよう入院させ、俺たちは事の成り行きを調べることにした。

    彼女の相方が納得しない。そりゃあそうだ。




    彼女の相方が、ユリアを落ち着いて見たとき、見慣れないものをしていることに気がついた。俺たちはとっくに気づいたが、普段の彼女を知るわけではないので、特に気にとめてなかったが、相方はひどくそれに執着したので、ちょいと拝借してきた。

    それは・・・血のように赤いピジョンブラッド・・・今ではほとんど見られない過去の宝石ルビーの高級品のアンティークネックレスであった。

    相方は彼女がそれをしているところを見たことがないし、彼女の趣味じゃないねと訝しがった。もっともその直感こそが彼女がクローン体という別人であることを示していたわけだが。




    ネックレスを調べると、その中にマイクロチップを見つけた。

    それを再生することで恐ろしいものを目にすることになった。




    それは一つの研究施設のような映像だった。

    【奴】はいくつものクローンを作ってきたようで、画面にはおおよそこの世のものとは思えないような異型の物体・・・の標本のようなものが山のように撮されていた。



    そして恐ろしく不気味な【奴】が微笑みさえ浮かべ、こちらを挑発するかのように語り出す。

    「これを発見すると言うことは・・・もう薄々わかっているだろう。」

    「そう、おまえたちが連れて行ったのはユリであって、ユリではない。」

    「私の最高傑作としてこの世に出せる芸術品・・・ユリアだよ・・・美しいだろう・・・」

    処置台のようなものに横たわる二つの黒髪の若い女性・・・

    二人は驚くほど似通って・・・いや全くのコピーのように、眠る息さえ同調させていた。

    「最終段階に入っている。ユリアはこれからユリとして生きることになる。そしてお前たちが持っていくがよい。しかしオリジナルは帰さない。もう二度と刃向かわないよう・・・永遠に眠り続ける。美しいまま。」

    「しかし、オリジナルのユリは己の記憶をコピーに譲らないのだ。どのような方法を使っても。これはこれで新しい研究対象だが・・・意識がなくとも頑固なお嬢さんだ。」

    「だからお前たちはそのコピーがオリジナルではないとすぐ気づくだろうな・・・」





    途中からは目を背けるしかなかった。



    彼女の相方も呆然としている。

    それはそうだ。もう【奴】の手がかりはない。あそこにいれば確実に彼女も命を落としただろう。そうでなければ・・・いったい何処へ?








    「もう、あんたらは手を引いてほしい。」

    彼女の相方は静かに言った。その瞳に燃える炎を浮かべながらも冷静な声で。

    従うしかなかった。

    そして残された彼女・・・ユリアを預かった・・・

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■289 / inTopicNo.16)  Re[15]: D's says
□投稿者/ love -(2002/11/12(Tue) 03:53:27)

    ダンの記憶から再び真実が浮かんできた。




    できれば忘れていたかった思い過去。まだはっきりとはユリアにも語ってないその過去が今影響を与えているというのだろうか・・・

    あのとき、ユリアをクローンだと言った医師は、ユリアを連れて行くと申し出たダンを個室に呼び、重々しく話し始めた。
    「クローン人間がどういう人生を送るのか、生物体としての生命維持へのリスクは全くわかりません。ご存じの通り、クローン人間自体存在は違法ですし、研究も御法度ですから・・・データーがありません。しかし、彼女は非常に精度が高く吹く善されたというか、たぶん特定の検査でないとクローンであることはわからないと思われます。」
    「彼女の場合、自分の過去もちゃんと持たされていますし、事実を受け入れると言うことは非常に難しく、今後の人生には大きな理解者が必要と思われます・・・」
    「クラッシャーダン・・・あなたほどの人だったら、私などでは出来ないような解決方法を見つけられるかもしれない・・・そんな希望は持っています。だからお話ししました。」

    しかしダンはユリアを自分のチームに伴うつもりはなく、アラミスに連れて行き、不自由ない生活ができるように整えた部屋を用意した。そこでゆっくり休んで考えればいいと言い残し、また宇宙へ戻っていった。
    無責任ではあったが、まさか一緒に暮らすわけにも行かないし、自分と一緒では危険すぎると判断した。
    忙しく毎日を過ごすうち・・・この重い課題はだんだんとダンの記憶の奥へと沈む時間が増えていった。



    半年も過ぎた頃、ふとした依頼、中型宇宙船とタンカーの衝突事故処理にあたった時の担当警官を見たとたん、ダンのチームは総勢ひっくり返った。
    ユリアだった。
    ユリアはダンの作ってくれた環境で体を休め、どうせわからない過去にこだわるよりは前向きにと、着々と独り立ちしてしまっていた。こういうところはオリジナル譲りだろうか?
    はじめこそダンやタロスはユリアを責めてみたものの、逆に放って行かれたんだから好きにしていいじゃないかと言い返される始末だった。
    「アラミスに置いていったときとえらくキャラクターが違う・・・」とダンとタロスは心でつぶやいた。
    この自己処理の間、ダンは「置き去り」の罰と賞してユリアに様々な要求を強要され続けた。仕事のことならしょうがないが、プライベート時間ですらつきあわされ・・・処理解決の2週間の間に、はじめは渋ったダンも、いつしかそれがいやじゃなくなりはじめた。そして、自然に唇が合わさり・・・二人は魂を重ねる夜を過ごした。
    そうはなったものの、じゃあ一緒に、というわけにも行かず(もちろんユリアは腕には自信があったようだが、クローンの生態がわからないまま、無理はできなかった)、ダンの新たな苦悩が始まった。
    「じゃ。」と仕事が終われば別れるつもりが、ダンはユリアを手放すようなことはしなかった。これは、ただの直感だけの行動で、冷静さにかけるダンの行動にダンのチームメイトはどう反応していいのかわからないほどだった。
    そうやって、かなりあわただしく結婚という道を選択したのだが、二人はとてもしっくり長年つきあっていたように、幸せを育む夫婦となっていった。



    そうしてユリアが妊娠という事実を自覚した頃、ダンはあるイヤな思いを胸に抱くことになった。
    彼女の体はどうなるのか?そもそも妊娠など耐えられるのか?という不安。本人は自分の事実を知らないわけだし、ダンは調べたくとも、仕事が立て続けに詰まり、時間がなかった。
    ただ猛烈に嬉しい、という気持ちが勝り、その予感を確かめることははばかられてしまい、そのままにしていた。
    そして今回の急変。
    ユリアの身に何が起こるのだろうかという見えない恐怖がダンを襲う。
    ダンにはユリアがまず自分の体を責めたことが引っかかる。何か自分でも感じているのだろうか?





    ダンが病院に着くとユリアの病室があわただしく動き始めていた。何事かと駆け寄ると、ちょうど処置中の医師がダンに声をかける。
    「今、奥さんが意識を失いました。危険なので、帝王切開して出産させます!」
    ハンマーで頭を殴られたような感覚がダンを襲う。そのまま廊下に立ちつくすダンの前を慌ただしくユリアが運ばれていく。ダンは言われるまま書類にサインを機械的にしたものの、何が起きているのか全く把握できずにいた。


    30分もしたとき、ダンは医師に呼ばれ、NICUに入室した。
    そこでまだ小さな、1000gにも満たない我が子と・・・対面した。
    まだ赤に近い皮膚、細くて力の入らない四肢、訳のわからないチューブ類が纏う、あまりにも想像と違う赤ん坊が、小さな保育器の中でぐったりと横たわっていた。
    「男の子です。」と医師が声をかけてきた。
    元気だとはいえない状況だというのは見ればわかるが、医師の説明もその通りでシビアだった。確かにまだ処置は続けられており、落ち着くという状況でもないということは伝わってきており、ダンはあわただしい変化に完全において行かれて声も出せずいた。



    ダンはクラッシャーなので、自分が苦痛を味わうことには少々慣れてはいるものの、自分の「身内」が苦況に置かれ手出しができないという状況は、かつてないほどダンを打ちのめしていた。

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■319 / inTopicNo.17)  Re[16]: D's says
□投稿者/ love -(2002/11/15(Fri) 04:16:46)
    後ろ髪を引かれる思いで、ダンは【アトラス】へ戻っていった。
    もう休暇は終わった。クラッシャーダンに戻らなくてはならなかった。
    ユリアの意識はまだ戻らなかったし、子供の方もまだまだ訳のわからない治療中だったが、それは理由にならなかった。クラッシャーの地位もようやく日の目を見るようになってきているところで、悪評判を自分がたてるわけにはいかなかった。
    もうクラッシャーダンはプライバシー問題で行動できる立場になかった。



    足を引きずるように【アトラス】のリビングルームに戻ったダンにタロスから声が掛かる。
    「どうしました、おやっさん。休暇明けだってぇのに、渋い顔ですな。」
    「・・・ああ。」
    生返事のままソファーに腰を落とし、机の上の書類に目を通しはじめた。
    「ほっほっほ、聞くだけ野暮ってもんだ、タロス。身重の新妻おいていくんだ、わかりますぜぇ。」
    ガンビーノがそれとなく助け船を出す。ダンノ顔があまりに堅かったので、タロスの冷やかしが逆効果になりそうにならないよう、話しを動かそうとした。
    「クラッシャー家業もそういうところはいけ好かないねぇ。ほかは性に合ってるんだが・・・」
    ガンビーノは煎れ立てのコーヒーをダンの前に置く。タロスはそんなガンビーノから何かを感じ取り、話しを仕事に切り替える。
    そうやってダンはまだクラッシャーとして、宇宙に舞い戻っていった。








    ユリアが目を覚ましたのは、赤ん坊が生まれてから3日後だった。
    正確に言うと目を覚ましたと言うよりは、目を覚ますことを許された、が正しい。
    体調コントロールのため、薬で眠らされ、呼吸すら自由にさせてもらえなかったのだから。
    目を覚ますと担当医がおり、ユリアに状況を説明した。、
    「私はどのくらい眠っていたの?」
    「数日ですよ。仕方がありませんでした。あなたの命を守るためです。」
    「・・・いえ・・・ダンは・・・彼はどうしていますか?」
    医師は言いずらそうにさっきよりも小さな、でも優しい声でユリアにダンが仕事へ旅立っていることを伝えた。
    ユリアはそれを聞くと、ほっと息をつき、
    「よかった・・・」とつぶやいた。
    自分のために仕事を放り投げてしまわれては困る。
    「お子さんは、極少未熟児としてお生まれになりまして、今集中管理の元、懸命の治療が続いております。昨日よりは安定しているように聞いていますが・・・」
    「会えるんでしょうか・・・?」
    「もちろんです。ただあなたの場合は、まだベッドから起きることはできませんので、お子さんの映像をこちらへ送ってもらいますので、ここで観ることはできます。ごらんになりますか?」
    「あの・・・極少って・・・子供はどんな状態で・・・」
    「お子さんは小さくお生まれになり、やはり体の機能が十分でなかったんです。ただ非常強い生命力を感じますよ。」
    「見せてください。」


    医師はモニターをオンにして、なにやらパスワードを叩くと、画面に小さな物体が映し出された。
    「あの子が・・・」
    赤ん坊、と言うよりはまだ胎児のそれは、やや暗い赤い肌をしており、弱々しく横たわっている、顔は向こうを向いているが、目は特殊テープで保護され、なにやら口からチューブが入っており、胸の上や足にもいくつものコードがつながっている。折れそうな腕には点滴がつながれているが、その固定も痛々しい。胸やおなかが呼吸の度に動く以外は、あまり動いていない。
    見たこともないような子供の姿に、ユリアは大きくショックを受ける。
    「なんて・・・こと?」
    医師はすかさず説明をはじめる。
    「お顔のテープは目の保護です。今画面がかなり明るいですよね?黄疸の治療のために光線を当てています。まだ呼吸ができないので、呼吸器を入れています。これの山は越していますが、まだ抜くことはできません。胸の電極は心電図と呼吸のモニターで、足のものは酸素飽和度のモニターです。いずれもお子さんの状態を正確にキャッチするためのものですし、付けていることは悪いことではありません。そして、やはりまだミルクが飲めないので、点滴で栄養分を入れているんです。」
    医師の説明は淡々としていたが、やはり理由を聞くと少しは落ち着く。
    「かわいそう・・・に・・・」
    「お母さんのせいではありません。今は大変ですが・・・私も未熟児でしたが、このように生きております。」
    「先生が?」
    ユリアは驚いて医師を見上げる。医師は静かにほほえみうなずいた。
    「信じましょう。そしてあなたが彼の元へいけるように、早くよくなることですよ。」
    「彼・・・?男の子だったの?」
    そういえば、混乱していて、大事なことをユリアはまだ聞いていなかった。多分そうだという気持ちはしていた。
    「そうです。お名前はお決まりですか・・・?」
    「実はまだ相談してなかったのだけど・・・ダンはなんて言っていましたか・・・?」
    ユリアにはその子供の名前がわかっていたが、それをダンには言っていなかった。馬鹿にされそうだったから、生まれるまで黙っていようと思ったのだった。
    夢の中で、ユリアはダンと二人で一人の赤ん坊を抱いていた。そしてその赤ん坊を「ジョウ」と呼んでいた。あまりに幸せな夢だったので、そのままの名前を子供が男の子なら付けようと・・・ずっと思っていた。
    それを思うと悲しい気持ちになる。現実には、子供を抱いて微笑みあうような余裕はなかったのだったから。
    「ジョウだと・・・聞いています。」
    医師はあらかじめ書類や手続きのため、ダンから子供の名前を聞いていた。
    ユリアはそれを聞くと、大きく瞳を開き、みるみる潤ませはじめた。
    「そうです・・・ジョウ・・・です。」
    ユリアはダンも同じ夢を見たのかもしれない・・・遠く離れていても、自分たちの心が通っていたのかもしれない・・・心細さにつぶれそうになりながらも、不思議な心の絆を感じずにはいられなかった。



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