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■140 / inTopicNo.1)  Lady!
  
□投稿者/ りこ -(2002/06/27(Thu) 23:12:39)
    まとまった休暇が取れると、アルフィンは美容院に行く。
    クラッシャーとは言え、アルフィンは青春真っ只中の乙女。
    お洒落だって、美容だって気になるのだ。
    特に、この仕事をしていると、日焼けはするし、かすり傷や打撲は絶えない、火傷だってするし、自慢の金髪もパサつくのだ。
    お肌の方は気になるとはいえ、まだ17歳という若さから、そんなに真剣にお手入れはしていなかったが、髪だけは美容院で切りそろえてもらい、トリートメントをしてもらう。
    髪がキレイになるだけではなく、そうやって大切に髪を扱ってもらうことで、自分が女の子であることを自覚するのだ。
    クラッシャーという家業は死ぬか生きるかという瀬戸際に立つことも多く、女だからと甘えてはいられない。
    仕事をする時は無理をしてでも弱音を見せないようにしていたが、、たまにはこんな女の子らしい時間を持つことが、1つの息抜きになっていた。

    少し纏まった休暇が取れた今、アルフィンは例によって美容院に行くことにした。
    ジョウ・タロス・リッキーの3人は、いつものごとくビーチでゴロゴロ昼寝タイムだ。
    行きつけの美容院は、銀河系全土にチェーン店を展開している<サロン・アフロディテ>。
    顧客には、それぞれの担当者が決まってついており、もし違う星に行ったとしても、ハイパーウェブを使って担当者と綿密なコンサルティングを行い、その担当者の指示にしたがって、各支店の美容師がカットやパーマ、トリートメントを行う。
    「アルフィン様、お久しぶりです」ピザンにいる頃からの担当のシルフィスと、アルフィンはハイパーウェブで、いつものようにコンサルティングを開始した。
    「髪の調子はいかがですか?今日はいつものようにトリートメントで?」
    いつもは「ええ、それでお願い。」というアルフィンだったが、今日の彼女は違った。
    「今日は、集中ケアのフルコースでお願いしたいの。」
    何か決心するように、アルフィンはそう言い放った。
    <サロン・アフロディテ>はヘアだけでなく、女性の美を全身からトータルケアする専門店であり、エステサロンでもあった。
    髪だけでなく、全身マッサージ、フェイシャル、全身トリートメント・パック・サウナなどさまざまなコースがある。
    3日間かけての宿泊美容コースもあるほどのこの店での、アルフィンは一日でケアする<集中ケアフルコース>を注文した。
    「まあ、今日はなんだか気合入っておりますのね。まだお若いのでそこまでされなくても良いと思いますけど。」
    「いいえ、若さに甘えていてはいけないわ。もっときれいになりたいの!」
    アルフィンは、強い決心を胸に秘め、そういい切った。
    いつもより気合の入ったアルフィンの迫力に、シルフィスも少し圧倒された様子だったがそれはこちらもプロ、すぐに笑顔になった。
    「承知いたしました。本日の担当者に連絡させましょう。あとはお肌の調子などによって、アルフィン様専用の集中ケアコースを考えさせていただきますわ。」

    かくして、アルフィンは一日がかりで集中ケアフルコースを終えた。
    アルフィンが店にやってきたのが開店と同時の10:00、終わったのが閉店と同時の21:00だった。
    本当に<集中ケアフルコース>だった。
    サウナから始り、身体の凝りをほぐすためのオイルマッサージ→昼食→髪のカット&トリートメント→足ツボマッサージ→午後のお茶タイム→リラックスのためのフラワーバス→フェイシャルスチーム→フェイシャルマッサージ→フェイシャルパック→夕食→二度目のフラワーバス→全身マッサージ・・・という気の遠くなるようなスケジュールだ。
    アルフィンも超リラックスし、「これで完璧にきれいになったわ!」と満足の様子だった。
    「これでもう、大人の女にも負けないわっ!」
    そう、アルフィンは、なぜか大人の女にモテるジョウにヤキモチを妬いていた。
    最近のテュポーンの一件では、ウーラという大人の女性と怪しげな雰囲気になっていた(と勝手に彼女が思いこんでいる)ジョウ。
    ジョウは本当は年上が好きなのかも!?と不安になったアルフィンは、大人の女性のようにエステのフルコースをやってみることによって、少しは自分にも大人の女の色気が出るのではないかと考えたのだ。
    いかにも短絡的な考えで、アルフィンらしいといえばらしいのだが・・・

    一日掛かりのエステが終わり、最後にもう一度担当者のシルフィスと連絡を取る。
    「集中ケアフルコースいかがでした?」シルフィスがアルフィンにきく。
    「うん、良かったと思うわ。」アルフィンは満足気に答えた。
    「アルフィン様、私からプレゼントがあるんです。今日初めてエステをやっていただいた記念ですわ。」
    今日、一日コースの担当者だったエステティシャンの女性が、小さな包みを持ってきた。
    「空けてみてくださいな。」シルフィスの言うとおり、その小さな包みを空けてみる。
    中にはピンクのきれいな小瓶が入っていた。
    「これは?」アルフィンが、小首を傾げてシルフィスに聞く。
    「私が、アルフィン様の雰囲気に合わせて選んだ香水です。いざという時にお使い下さい。」
    シルフィスは、少しいたずらっぽい笑顔を浮かべてそう言った。
    「急に集中ケアをするなんておっしゃるんですもの。どなたか大切な方のためでしょ?」
    ピザンでの王女時代から、アルフィンの担当をずっとしているだけあって、シルフィスにはお見通しのようだった。
    元は王女だったアルフィンだが、香水など今まで使ったことがなかった。
    その小瓶は、なんだか魔法でもかけられているようにキラキラしていて、見ているだけでもドキドキしてきた。
    「早速使ってみてもいいかしら?」
    「もちろんどうぞ。」シルフィスは、にっこりとそう言った。

    「ただいまー」ホテルに帰ってきたアルフィンは、ご機嫌だった。
    「お帰り、アルフィン。遅かったじゃないか。いつもは2、3時間で帰ってくるのにさ。
    あれ?なんかいい匂いがするなあ。どうしたんだよ?」
    変なところでカンの鋭いリッキーがそう言った。
    「うるさいわね!ねえ、ジョウはどこ?」
    「兄貴なら、あっちの部屋にいるよ。」
    リッキーの言葉か終わるか終わらないうちに、アルフィンはジョウを求めて走っていった。
    「どうしたんだい?アルフィン?」
    「さあな、女心は難しいんだよ。お前にはまだわからんだろ。」
    「あんだと!!そういうタロスだって、女とつきあったことなんてないくせにっ!」
    「うるせー!マセガキ!」
    リビングでは、またこの二人のケンカが勃発していた・・・

    「ジョウ!ねえジョウ!」シャワーを浴びようかと思っていたジョウの元に、アルフィンが飛びこんできた。
    「帰ってたのか、アルフィン。今日は遅かったじゃないか?」
    「うん、なんか私、いつもと違わない??ねえねえ?」
    アルフィンは、ジョウの前でクルっと一回転してみた。
    「髪の手入れをしに行ったんだろ?いつもよりサラサラになったって言いたいんだろ?」
    なんだ、いつものことじゃないか、とジョウはそう言う。
    「違うわよ!お肌の調子とか、その他私のそばでクンクンしてみて!」
    そういうと、アルフィンはジョウのそばに急接近した。
    「クンクン?」ジョウはそう言いながら、アルフィンの匂いをかいでみた。
    「うっ!なんだ!?なんか臭いぞっ!」
    ジョウはそう言うと鼻をつまんで、顔をしかめた。
    さっと風のように通り過ぎたリビングのタロスとリッキーにはわからなかったかも知れないが、こんなにも近くにいるジョウにはわかった。
    たぶんこれは、香水の匂いだ。それも、かなりつけすぎてる。
    女性特有のこの香水の匂いに、ジョウは頭がクラクラしてきた。
    「何よっ!臭いだなんてひどいわ!せっかく初めての香水をつけたのに。エステしてお肌だってツルツルになったのにっ!」
    アルフィンは、何だか怒るより、悲しくなってきた。
    一日かけて、女を磨いてきたと言うのに、この言われようは一体何なのか。
    やっぱり自分には、女の魅力がないのだろうか・・・・
    そう思うと、なんだか涙がでてきた。
    そんなふうに下にうつむき、涙ぐんだアルフィンの額に、暖かいものが触れた。
    ジョウは軽くアルフィンの額にキスをすると、そっと彼女をそっと抱きしめた。
    「エステなんてしなくったって、香水なんてつけなくったって、アルフィンはアルフィンさ。そのままが一番好きだよ。」
    ジョウは顔を真赤にして、そっぽを向きながらそう言った。
    「ホント?でも、私がきれいなほうが、ジョウだって嬉しいでしょ?」
    ジョウの行動に嬉しさを感じながらも、アルフィンは照れ隠しに憎まれ口を叩いた。
    「そりゃ、綺麗に越したことはないけど、そのままのアルフィンがいいよ。」
    (そっか、私は私でいればいいんだわ。)アルフィンは、少し吹っ切れたような気持ちがした。
    なにより、こうして自分をジョウが抱きしめてくれているのが嬉しかった。
    そしてアルフィンは、ジョウの背中に手を回し、ギュっと抱きつきながらこう思った。
    (大人になるのは、ちょっとずつ、時間をかけながらでいいわ。)




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■141 / inTopicNo.2)  Re[1]: Lady!
□投稿者/ りこ -(2002/06/27(Thu) 23:15:33)
    今日美容院に行って来たんです。
    アルフィンも美容院に行ったりするよなあ、女の子だモンな、と思い、帰ってきて一気に書き上げました(笑
    なので、変な箇所があったらごめんなさいm(_ _)m
fin.
引用投稿 削除キー/



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