FAN FICTION
(現在 書庫6 を表示中)

HOME HELP 新規作成 新着小説 トピック表示 検索 書庫

[ 最新小説及び続き投稿フォームをトピックトップへ ]

■1482 / inTopicNo.1)  白か黒か
  
□投稿者/ とむ -(2007/05/17(Thu) 22:05:13)
    まったく、なんて優柔不断な男なの。アルフィンは、足音を大きく響かせながらその歩を進めていた。呼吸は速く、その瞳は充血して今にも泣きそうな状態だ。どうにもこうにも腹立たしくて情けなくてどうしようもない。でも、でもここで立ち止まるわけには行かないのだ。

    きっと恐らく。
    昔と変わらず何事もないままピザンの王宮で暮らしていたなら、絶対に近寄らなかったタイプの男に違いない。もちろん、彼のチームの一員になったことを後悔などはしてないし間違ってなどいなかったと今でも思ってはいるけれど。
    ああ、でも。ほんとになにやってんのかしら、あたしったら。

    もっと即決の人だと思っていた。もっと真面目で硬派で仕事しか眼中になくて、それ以外の雑音なんて気にも留めない人かと思っていたのに。確かに『銀河随一のクラッシャー』ではあるけれど、はっきりいってそれだけだ。あたしもとんだ錯覚をしたものだわ。


    (鈍感な上に、女心ってものをちっとも分からない唐変木なんだから!)


    あたしと視線が合った途端、そのアンバーの瞳は大きく見開かれ、目の前で話をしていた黒髪の彼女への挨拶もそこそこに彼はこちらにすっとんできた。あたしは、そんな彼をわざと無視するかのように、足音をたてて早足のまま歩を進める。誤解なんだと言っていた。誤解だから話を聞けと。でも、あたしは振り返らない。ドカドカと音を立てて歩くあたしの耳には、断じてなにも聞こえない!
    ええ、そうでしょうよ。あの女はあなたの言うとおり、道を聞いてきただけの通りすがりの人でしょう。媚を売るようにあなたを見上げる潤んだ瞳も、あなたに擦り寄っていきそうな腰つきも、みんなみんなあたしの勘違いでしょうよ。なにもわざわざ、そんなに息咳きってあたしに言い訳する必要なんかないのよ。
    思い切り地面を叩き付けるように歩いていたアルフィンは、突然ぴたりとその足を止めた。そのまま無言で足元に視線を落とす。

    (だって、あたしはあなたにとって唯のチームメイトだもの)

    あなたがいつも言ってることよ。『俺達は仲間だ』って。あなたはわたしのチームリーダー、あたしはあなたのチームの航宙士。それだけ。それ以上の関係なんて、ない。あたしには、こんなことで腹をたてる権利だって資格だってないのよ。分かってるわ、そんなこと。

    なのに。
    ゆっくりと長い溜息を吐きながら、あたしは一度後ろを振り返る。
    それならどうして、そんなに必死で追いかけてくるの。焦った顔で息を切らせて。
    そんなことをするから期待するんじゃない。唯のチームメイトだと言うなら放って置けばいいのよ。


    (…バカ)


    いつも宙ぶらりんだ。いつも煮え切らない。いつも肝心なことはうやむやのまま。本当に聞きたいことはそんなことじゃない。


    唇をかみ締めながら、アルフィンは足元に転がっている小石を見つめていた。すると、不意に右肩がポンと温かくなった。アルフィンはいかにも怒っているという素振りでその手を振り払う。彼女の腕は小さく震えていたけれど、それを気づかれないようにアルフィンはその両手をぎゅっと握り締めた。そんな葛藤を知る由もないジョウは、相も変わらず言い訳にもならないことを壊れたプレーヤーのように繰り返す。誤解だ単に道案内をしていただけだとしどろもどろで話し続ける。


    なんだか、思いっきり怒鳴りつけてやりたい気分だった。







                                                                                              「白か黒か」

引用投稿 削除キー/
■1483 / inTopicNo.2)  Re[1]: 白か黒か
□投稿者/ とむ -(2007/05/17(Thu) 22:06:06)
    ミクシィからの出張出前、第三弾。おそまつさまでした。
fin.
引用投稿 削除キー/



トピック内ページ移動 / << 0 >>

このトピックに書きこむ

書庫には書き込み不可

Pass/

HOME HELP 新規作成 新着小説 トピック表示 検索 書庫

- Child Tree -