| その向こうに見えたのは。 やった! 救いの主が現れた。 オイラの視線に気づいたのか、二人も振り返った。 「ジョウ!」 ぱあっとアルフィンの表情が輝く。それを兄貴はまぶしそうに見やった。 兄貴がここに遅れてきたのは、もちろん仕事のせいだった。最初アルフィンはむくれてたけど、ここのホテルのプールは高級感漂う感じで、 プールサイドのテーブルに出てくる食事や飲み物は申し分なかったから、機嫌が直った。 (よし。) ささやかな仕返しを思いつく。オイラは水にもぐった。プールの底を泳ぐ。 そして、水の中に入ったままの足の下にたどり着いた。 たぶん、兄貴とタロスは気づいたと思う。きっと、二人で目配せしたはずだ。 「意外と早かったのね。」 アルフィンはプールから出ようとした。 でも、その足を、オイラは水の中に思いっきり引き込んだ。 「きゃん!!」 派手な水音があがった。
今度は金色の頭が水面に現れた。 「もおぉっ!」 びっしょりになって乱れた金髪を直して、恨めしそうにオイラを見て、プールサイドの二人にも視線を移した。 「まだまだですなぁ・・アルフィンも。」 タロスは大きく肩をすくめてみせた。サングラスをしたままだけど、その瞳は笑ってるのが分かる。 オイラたちを見ていたプールサイドからの嫉妬の混じった視線は、兄貴が現れたことで少し変わってきたようだった。 それくらい感じることができる。 金髪の少女にいつ声をかけようかと思っていた輩は、そのタイミングを失ったんだと思う。 まぁ・・・仕方ないよなぁ・・・ ボディーガードらしき巨漢の男と、さらに兄貴みたいなのがいたらさぁ。普通は近づかないよ。 いや、近づけないだろう。うん。 「楽しんでるところ悪いが、クライアントと会うぞ。支度しろ。」 兄貴が言った。 すでに仕事モードの顔 「りょーかい。」 3人の声が重なった。 それぞれの異なる色の瞳が光る。
数時間後、オイラたちは宇宙に帰った。 次の仕事もちょっとやっかいなんだ。 でも、きっと大丈夫。 スクリーンに映るいくつもの星を見ながら、ただそう思った。
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