| …不思議だ。 あくまで今まで生きてきた中での統計でしかないのだが、大抵自分のタイプじゃない男に限って、下手にメールアドレスなどを交換しようものなら、やたらめったらにコンタクトを取ろうとしてくる。それは<ナイトクイーン>の通信用回線であったり(大体が、この時点であたしの相手としてはアウトだが)携帯メールであったりもして、そのマメさ加減にはほとほと頭が下がる。想像するに、こういう男はどこに行くにも携帯をしっかりと持参をし、仕事の合間にチラリ、レストランでもチラリ、トイレに入ってもチラリとやっていることだろう。
「そんな必要ないわよ。無用な心配などしなくても、あなたにあるとすれば仕事の取引先からの業務連絡、利用している通販サイトの広告メールで、あたしからメールを送るなど有り得ない。1着信1メール、ワン切りさえしないので、きれいさっぱり忘れていただいてもう結構」
度重なるお誘いに辟易し、何度こういう台詞を口走ろうとしたことか。 あたしにも多少の非があることは自覚済み(一応)。つい、休暇に入ると緊張の糸が切れるというか、羽を伸ばすというか、やたらと気が大きくなって流行のクラブなどに行ってしまう。そして、久しぶりの陸で出会う男を「いい男」と錯覚してしまうからいけないんだ。普段なら気にも留めないタイプなのに、きっと疲れた脳が勘違いをするんだわ。「休暇」という言葉がもたらす開放感とは、本当に恐るべきものだ。とにかく、こういう面倒なことが起こる度に「いけないいけない」と自戒をするのだが、あたしもまだまだ修行が足りない。
が。
もともとは自分が撒いた種だしな、とうっかり同情心を起こしてメールを返信したるすると、途端に「どうしたの」メール攻撃がやってくる。
男からのメールに返事を返さないと 『どうした?なにか嫌なことでもあったのか?』
それでも返さないと 『どうしたんだ。今日はもう寝てしまったのか』
それでも返さないと 『どうしたんだ。どうして返事をくれないんだ。なにか俺に嫌なところがあるなら遠慮せずに言ってくれ』
それでも返さないと 『一体どうしたんだ。なにか事故にでも巻き込まれたんじゃないかと心配で眠れない。頼む、いつでもいいから連絡をくれ』
メールの到着時刻。今から5分前の午前3時24分。 (−−−−−−−−3時??????)
バッカじゃない。普通だったら寝ていると思うのが当たり前の時間だろうに。とちくるって自分の気持ちだけで精一杯。相手の都合などお構いなしだ。 まったくどうかしている。だからこういう男は、女にも電波にも嫌われるのだ。
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