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■1499 / inTopicNo.1)  ダイコンのはなし
  
□投稿者/ とむ -(2007/06/05(Tue) 09:58:15)
    「ここにダイコンがいる」


    「うん」


    「彼は今悩んでいる」


    「何を?」


    「自分にはこれといった味がないし、色もないし、つくづくつまらない存在であると」


    「うん」


    「一度カボチャになってみたいと願っている」


    「…カボチャ」


    「そう。カボチャはオレンジ色でキレイだし、甘くて煮物にするとホカホカして実に美味しい」


    「なるほど」


    「モーレツにカボチャになってみたい。…わかる?」


    「分かる」


    「でもね。考えてもみてよ。ダイコンは確かに地味だけどたくさんの料理になれるわけ」


    「…うーーーーん」


    「ダイコンはダシの聞いた煮物にもなれるしサラダにもなれる」


    「…うんうん」


    「切り干し大根なんかにもなれるし、これって美味しいだけじゃなくて栄養価も満点」


    「うんうん」


    「彼は地味なようでいて実はメインにもサブにもなれる優秀な食材であった」


    「うんうんうん」


    「そして、実はカボチャもダイコンを羨ましがっていた」


    「なんで?」


    「カボチャは、自分は煮物になることしか思いつかなかった。そして、密かにダイコンを羨んでいたの。ダイコンの奴はいいなあ。切り干し大根にもなれて。俺もにんじんやこんにゃくと一緒に煮られてみたかった、とか思っていたのよ」


    「…はー…」


    「つまりはそういうこと」


    「なるほど」


    「納得した?」


    「うん。なんだかとっても元気が出たよ。サンキュー、アルフィン」


    「どういたしまして」
引用投稿 削除キー/
■1500 / inTopicNo.2)  Re[1]: ダイコンのはなし
□投稿者/ とむ -(2007/06/05(Tue) 09:59:57)
    ブリッジから当直の作業を終えてリビングに入ってきたタロスは、リビングのソファで寛ぎながらコーヒーを飲んでいたジョウに声をかけた。


    「一体、なんの話です?」


    ジョウは、フットボールマガジンに視線を置きながら答える。
    「…失恋したんだと」


    「…はい?」


    「リッキーが、ここしばらく片想いをしていたコが、ちょっとこっちの仕事が立て込んじまった間に、顔だけが取り柄みたいなイカレ野郎に掻っ攫われちまったらしい」


    「…はあ」


    「それで、どうせ俺らなんて仕事だけが取り得のつまんない男だよ・・ってイジケてたらアルフィンがああいう話を」


    「………。
    最初から聞いてなけりゃ、とても失恋話を慰めているとは思えませんな」


    「そー。つくづく女の思考回路って、」


    わかんねえな



    ジョウとタロスはいそいそとテラのジャパニーズ風野菜煮込みを大皿に盛り付けているアルフィンを眺め、半分は感嘆の、半分は理解不能の溜息を洩らしたのだった。










                                                                                          「ダイコンのはなし」
fin.
引用投稿 削除キー/



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