| 彼らの予想通り、更衣室から出てきた<ミネルバ>の航法士の姿は、こういった姿の女性を見慣れているはずの店員までもが ため息をつくほどのものであった。 「ほんと、お姫様だねぇ、アルフィン・・」 リッキーが呟く。 クラッシュジャケットよりも深い赤。彼女のために作られたようなドレス。 こういう時に、彼女が一国の王女であったことを彼らは思い出す。 「ありがと。」 微笑んだアルフィンは、自分の姿を店内の大きな鏡に映して、立ち方を変え、後ろ姿もチェックした。 「うーん・・」 少し首をかしげ、悩んだ彼女を皆が黙って見つめている。 そして、ざっと店内を見回し、棚にあった銀色の髪飾りを手に取った。 「これも頂くわ。」 言い放つと同時に、あっという間に艶やかな金色の髪をねじり上げ、その髪飾り一つで留め上げる。 髪型を変えただけで、雰囲気が一転した。 大人びたような。 そして色気も漂う。 これで、それなりの化粧をしようものなら・・・・ 困ったようにジョウは人差し指でこめかみを掻いた。 その姿を見たタロスはわずかに口元を緩ませる。
「・・・」 感心したような初老の店員は、一旦店の奥に姿を消し、再び小さなケースを手に現れた。 「これもお使いください。」 「!!」 碧眼が驚きに見開いた。 開かれた小箱には、光り輝くダイヤのネックレスとイヤリング。 普通買える金額のものではない。それは一目で分かった。 「残念ながら、プレゼントというわけにはいきませんが・・」 「でも――」 「上の店で、宣伝していただく・・ってことでいかがでしょう?」 初老の紳士は楽しそうに片目を閉じた。 きっと、階上のレストランに現れた金髪の美少女は、皆の注目を浴びるだろう。 身にまとうドレスと宝石が、1階の店のものであると知れれば、この店としてもこれほどウマイ話はない。 高級な宝石を無償で貸し出す代わりに、さりげなく店の宣伝を依頼したいというわけだった。 「オッケー。取引成立ね。」 アルフィンも片目を閉じる。
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