| だーい好き。すきすきずっと一緒にいたい。
そんな言葉を無邪気なフリで繰り返す。ジョウはそんなあたしを少し困った顔で見たかと思うと、それでもためらいながら小さく笑顔を返してくれる。あたしはその度、とびきりの笑顔を顔に貼り付けて明るくジョウを見つめ返す。(・・・まったく、どうしてそういう台詞を平気な顔で言えるんだ?)ジョウは、照れ笑いを隠すようにそっぽを向いて右手を伸ばし、あたしの頭をぽんと叩く。そんなのジョウを好きだからに決まってるでしょ、なんて言いながら、あたしはジョウの腕にもたれかかる。あたしの髪がサラサラと音を立ててジョウの腕に向かって流れていった。
ジョウはあたしの気持ちを知っている。ずっとずっと前から知っている。 でも、決して肝心な気持ちの奥底は話してはくれない。ずっとずっと、肝心なことはあやふやで宙ブラりんのままだ。
本当は本心を聞きたいでもそれが申し訳なさそうな顔から紡ぎだされる「すまない」という言葉だったらきっとあたしはうまく笑えない
(あたしが真剣に「あなたを好き」と言ったら、きっとそんな風に笑ってはくれないでしょ?)
今更、気持ちを別なものに切り替えるなんて出来ない。でも、相手の気持ちを変えることは、もっともっと困難で。いつか、この気持ちが彼に届いたならという、甘い期待を今は心の奥底に大事に閉まっておく。この期待があなたの重圧にならないようにするために。きっと、抑えても抑えてもその度にあなたを好きだという想いは、どんどん大きくなっていくのだけれど。まだ、この想いが重荷だと言うのなら、あたしはきっとリセットボタンを押すだろう。きっと何度でも。
アルフィン?と心配そうにあなたが顔を覗き込むので、あたしもいつもと同じように笑って応えた。おろしたてのサンダルでスキップする。そして、久しぶりの休暇で立ち寄ったこの高原の木々の香りを思いっきり吸い込んだ。ジョウの腕に絡めていた腕を解き、彼の前へ踊るように走り出す。ジョウを振り返ると、そこにはホッとした顔でこちらを眺めている彼がいた。
急に、夏の濃いグリーンの群れが瞳に滲みそうになって、あたしは慌てて背伸びをし木立の隙間から見える遠い夏の空を仰ぎ見た。
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