| 今年のジョウの誕生日は珍しく休暇中だった。 必ず誰かの誕生日にはお祝い事を計画するのだが、忙しい彼らにとって 休暇中に祝えるのは本当にラッキーだった。コテージ風のホテルに滞在し 備え付けのキッチンでアルフィンは忙しそうに料理に励んでいた。ジョウは 「せっかくの休暇中に忙しい思いをする事もないさ」と言って料理はホテル 側に頼むよう提案したのだが「ジョウの誕生日にそんな事出来るわけないじ ゃない。」と言って動き回っていたのだった。 (休暇中の誕生日だからこそ、君とゆっくりしていたいのに)などとジョウが 考えているとは想像していないアルフィンだった。
夕方の早い時間からジョウの誕生パーティーがリビングを会場に催された。 アルフィンの手料理が振舞われ、いつもより少し良いお酒がテーブルに並ぶ。 「アルフィン。これすっげぇ美味いよ。」先ほどからリッキーの手が止まらず 動いている。 「また腕上げやしたな。」タロスも満足げに言葉を呟く。 「忙しい思いさせて悪かったなぁ。アルフィン」早目の時間からアルコールが 入っていつもより機嫌のよさを隠さずにいるジョウ。 「そんなに大変じゃないわよ・・。ジョウや皆に喜んで貰えたらそれで良いのよ。」アルフィンにしてみればこれだけ美味しそうに、且つ楽しそうにこの時 間を過ごしている彼らを見ていると本当に自分自身も幸福感に満たされていく のが実感できるのだ。
「そうだ、そろそろケーキ出しても良い?」メインの料理を食べ終え少し落ち着いたところでアルフィンが声をかけた。 「やったぁ〜〜!おいら待ってたんだぁ。」 「けっ・・いくつになってもお子様だな。」 「いいじゃんかよ。アルフィンの作るケーキ楽しみなんだもん。」 「じゃぁ・今持ってくるわね。」誕生日用のケーキがテーブルに運ばれる。 シンプルなイチゴのデコレーションケーキ。余計なゴテゴテした飾りのない 代わりに素材にはこだわったのだ。材料の粉やバター、飾り用のイチゴ。市街へ 買い物に行ったときお供のリッキーが泣き言を言うくらい店を巡り、買い求めて 来たのだ。 「はいどうぞ。」主役であるジョウへ一番に切り分けてから他のメンバーへも 手渡す。 「美味そうだな、アルフィン。」口元を綻ばせジョウがアルフィンに視線を投げ る。ふわふわに焼きあがったスポンジに真っ白な生クリーム。白の中に彩りを添 える真っ赤なイチゴ。見ているだけで幸せな気分になってくる。 「甘さは控えめだからジョウとタロスも平気だと思うわよ。ねぇ・・食べて見て。」自信作なのであろう、満面の笑みでアルフィンが言う。
今年はゆっくりした時間も過ごそうと誕生パーティーも早めに始めたので、寝る までにはかなりの時間がある。気分の良くなったタロスとリッキーはホテルのメインタワー内にあるカジノへ出かけていった。出掛けに「帰りは朝になると思いやす」とジョウだけにタロスが声をかけていった。 (・・ったく。気を利かせたつもりかよ。)照れもあるがそれ以上にアルフィンと 過ごせる嬉しさのほうが勝るジョウ。酒とおつまみ程度の物だけをテーブルに残し アルフィンは一旦片付け作業に入っていた。 「片付けは後で俺も手伝うからこっちでゆっくりしないか?」 「うん。これだけ洗い終わればおしまいだからぁ。ちょっと待ってねぇ。」 「そか・・わかった。」返事をしながらのどの渇きを覚えたジョウは備え付けの 冷蔵庫へ向かいミネラルウォーターの瓶を取り出した。 (お・・あれは・・。)偶然に見つけたあるものを手にジョウの中である悪戯が 頭によぎった。 (今日は俺の誕生日だし。これ位の事は許されるよな。せっかくのタロス達のご好意にも応えないとまずいし。)仕事中には見せないような笑みを浮かべた。
「ジョウお待たせ〜。一人で退屈だったぁ?」 「いや、そうでもない。お疲れ様。」ジョウが隣に座ったアルフィンをねぎらう様に肩を抱いた。 「料理もケーキも俺好みで凄く美味かった。」 「本当?良かったぁ・・。」心から嬉しそうに微笑む。自然にジョウへもたれかかる。お酒の勢いもあってか素直に二人で居られるこの時間を楽しむように・・。 「プレゼントもありがとうな。丁度買い換えようかと思ってたんだ。」今年ジョウへのプレゼントに選んだものは普段から使えるようにとトレーニングウエアーだった。ジョウの気に入っているスポーツブランドの物。最近それが傷んできていたのをアルフィンは見逃さなかったのだ。 「色々迷ったんだけど、しまって置く物より使ってもらえるもののほうがあたしも 嬉しいし。・・・あ・・それじゃあたしの自己満足みたいよねぇ。ごめん〜」 「そんな事さ。俺のこと見ていてくれたから気がついたんだろう?嬉しいぜ。」少し伏目がちになったアルフィンの額にジョウが口付けた。 「・・・っ。ジョウったら・・。」 「俺誕生日だし。今夜は我が儘させてもらおうと思ったんだ。」アルフィンの長い髪をかき上げわざと耳元で囁く。 「なっ・・。」 「俺だけの特製ケーキ食べさせてくれな。」言葉と共にアルフィンをそのまま ソファーへ倒し、瞼、頬、鼻、唇・・。キスを落としていく。そのまま目を閉じて 行為を受け入れているアルフィン。 「良いわよジョウ。特別なプレゼントね。」しかし・・。 「冷たい!」一瞬アルフィンの身体が強張った。鎖骨の辺りに冷たいものが落とされたからだ。 「えっ??何してんのジョウ?・・・・ん・・や。」 「言ったろ?俺だけの特製ケーキだって。ケーキにはつき物だろう?これ。」ジョウはアルフィンの身体につけた生クリームを舐め取っていく。 「さっき冷蔵庫で見つけた。」何故か嬉しそうに絞り袋に残っていたクリームを アルフィンに落としていく。 「やだぁ・・・。」部屋着だったためアルフィンの格好は胸元のゆったりと開いた タンクトップだったからジョウは思うが侭に開いている所に唇を這わせていく。 白い肌に赤い色を残しながら・・。
「アルフィン。本当にケーキみたいだな。」二人の夜は始まったばかり・・。
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