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■1671 / inTopicNo.21)  Re[10]: おクスリ〜J version
  
□投稿者/ とむ -(2008/02/06(Wed) 23:10:41)
    つい今まで回想していたアルフィンの顔が、瞬く間に脳裏に蘇る。知らず硬い声になり、ジョウはリッキーに向き直って顔を上げた。
    「…何のことだ?」
    「ん?」
    リッキーがいつの間にかジョウの背中に手を回し、ベッドに横になるようにジェスチャーしている。
    彼はジョウの問いに目をぱちくりとさせたが
    「まぁ…。まずは横になりなよ。まだ本調子じゃないんだろ」
    と、のほほんとした言いっぷりでベッドを叩きながら親指でここに頭を置けと促した。
    その態度は、一見ついさっきまでと同じおどけた態度の、軽くてどこか浮ついた素振りにも見える。
    いつもと同じ。
    何も変わってない。

    −−−でもどこか。
    こちらを気遣いつつも、どこか当たり障りの無い言葉を探しているような−−−、そんな気もする。



    ジョウは思わずリッキーの手首を掴み、真っ直ぐに彼の顔を捉えると
    「かわいそうってなんだ」
    と問うた。
    「え、」
    「アルフィンがかわいそうって言ったな。お前」
    「…」
    「お前、俺達の喧嘩の原因を知ってるのか」
    「え…?」
    「アルフィンからなにか聞いたのか」
    「いや、べつに。これといってなにも聞いてないけどさ」
    「じゃ、なんだ。何を知ってる。言っとくが俺達の喧嘩なんて、お前が想像しているようなそんな大したハナシじゃないぞ」
    ジョウがそう言ったところで、リッキーが一瞬眉を上げたように見えた。
    が、すぐにそうと分からないように瞳を伏せて、ジョウの体をゆっくりベッドに横たわらせる。
    「大したハナシじゃない…ねぇ」
    小さく呟いたリッキーが、ジョウの身体にブランケットをふわりとかけた。
    そして、リッキーは伸びるようにして2,3歩ふわりとベッド横にあるサイドボードに歩み寄り、ちんまりとそこに鎮座していた透明のガラスの瓶を何気なくひょい、と摘みあげた。リッキーがその手を左右に小さく振ると、じゃらり、と乾いた音が二人の上から落ちてくる。
    「おい」
    ジョウはリッキーをやや斜めに見上げながら、じっとその様子を見つめている。

    −−−お前、ほんとうは何を言いに来たんだ?

    ジョウの視線は、そう告げる。

    「………」
    しばらくジョウを無言で見つめ返したリッキーだったが、はぁ、と俯きながら長い息を吐いて頭を掻いた。そうしたかと思うと、すたすたと部屋の奥に押し付けてあった椅子を取りに歩き出し、改めてベッドの横に持ってきては、おもむろにストン、と腰をかけた。
    やがて、ふぅ、と肩から力を抜くようにしてから椅子の両端に手をついて、
    「…まったく兄貴のその強情さには、ほとほと感心するよね。俺ら」
    と苦笑しながら呟いた。
    まったくしょうがねえなあ、と。


    「………?」
    ジョウの眉間には僅かなシワが寄る。
    その顔は見るからに、きょとん、という擬音がぴったりのそんな顔だ。
    「っていうか、負けず嫌いっていうのかな。まあ、昔から仕事の時はそんな調子だったけどさ。最近はちょいとばかり度が過ぎていた気がして心配してたんだ俺ら達」
    「…なんのことだ」
    「分からない?」
    「さっぱりな」
    きっぱりと答えるジョウに、ウウムどうしたもんか、とリッキーは考え込む。
    「うーーーん。流石と言えば流石なんだけどね」
    リッキーが顔の前でじゃらじゃら言わせているのは、先ほどアルフィンがジョウの顔面に叩きつけたクスリの瓶。
    なんとブルーとピンクのカプセルという、どうにも気色の悪い色合いのカプセルで、コレを飲んだら病気が治るというよりは「もういいから、そのままずーーーっとお休みなさい」と止めをさされそうな代物にも見える。
    が。
    まあ、それはさておき、リッキーはそのガラスの瓶を再びサイドボードにコトリと置くと改めて口を開いた。
    「…だからさ」
    「うん?」
    「最近の兄貴、なんだかすごく無理してたように見えてたんだよね」
    「…俺が?」
    「うん」
    「そうか?」
    「そうだよ」
    「…こんなの普通だろ。何言ってんだお前」
    「ふつー、ねぇ…」
    うーんと唸りながら腕を組むリッキーを尻目に、あまりにも拍子抜けのことを指摘されたジョウは、ぐたりとベッドに脱力する。

    −−−なにを今更。
    呆れて口をあんぐりと口を開けそうになったが、かろうじてそれは封じ込めたジョウであった。


    そもそも、この稼業をやっていて仕事が絶え間なくやってくるのはいつものことだ。
    アラミスからは特Aクラッシャーである以上、好む好まざるを関係なく優先的に仕事の照合が入ってくる。オフだろうがなんだろうが、指名で振られた仕事に関してはよほどのことが無い限り断ることなどしない。アラミスへの面子があるのはもちろんだが、なによりこの仕事に賭けている自身のプライドが先に出る。クラッシャーにとって身体のコンディションを常に整えておくのは常識、よしんば多少体調が悪かろうとも請け負った仕事に向けて体調を上げていくのは、この仕事をするものの義務でさえあるとジョウは思っていた。
    この仕事で食っていこうと誓って以来。
    そういう状況になること自体が誇らしいことだと、ジョウは密かに思ってもいる。
    体調がどうのこうのといっている暇も無いほど仕事が舞い込んでくるこの状況−−−。
    9歳でチームリーダーになってからというもの、ずっと「クラッシャーダンの息子のチーム」「サポート役が優秀だからもっているチーム」とか言われるたび、心の中でぎりぎりと自分を苦しめてきたもの。そんな声を必死な思いで蹴散らしてやっと手に入れたこの場所を、ジョウは決して手放す気などなかったのであった。

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■1671 / inTopicNo.22)  Re[10]: おクスリ〜J version
□投稿者/ とむ -(2008/02/06(Wed) 23:10:41)
    つい今まで回想していたアルフィンの顔が、瞬く間に脳裏に蘇る。知らず硬い声になり、ジョウはリッキーに向き直って顔を上げた。
    「…何のことだ?」
    「ん?」
    リッキーがいつの間にかジョウの背中に手を回し、ベッドに横になるようにジェスチャーしている。
    彼はジョウの問いに目をぱちくりとさせたが
    「まぁ…。まずは横になりなよ。まだ本調子じゃないんだろ」
    と、のほほんとした言いっぷりでベッドを叩きながら親指でここに頭を置けと促した。
    その態度は、一見ついさっきまでと同じおどけた態度の、軽くてどこか浮ついた素振りにも見える。
    いつもと同じ。
    何も変わってない。

    −−−でもどこか。
    こちらを気遣いつつも、どこか当たり障りの無い言葉を探しているような−−−、そんな気もする。



    ジョウは思わずリッキーの手首を掴み、真っ直ぐに彼の顔を捉えると
    「かわいそうってなんだ」
    と問うた。
    「え、」
    「アルフィンがかわいそうって言ったな。お前」
    「…」
    「お前、俺達の喧嘩の原因を知ってるのか」
    「え…?」
    「アルフィンからなにか聞いたのか」
    「いや、べつに。これといってなにも聞いてないけどさ」
    「じゃ、なんだ。何を知ってる。言っとくが俺達の喧嘩なんて、お前が想像しているようなそんな大したハナシじゃないぞ」
    ジョウがそう言ったところで、リッキーが一瞬眉を上げたように見えた。
    が、すぐにそうと分からないように瞳を伏せて、ジョウの体をゆっくりベッドに横たわらせる。
    「大したハナシじゃない…ねぇ」
    小さく呟いたリッキーが、ジョウの身体にブランケットをふわりとかけた。
    そして、リッキーは伸びるようにして2,3歩ふわりとベッド横にあるサイドボードに歩み寄り、ちんまりとそこに鎮座していた透明のガラスの瓶を何気なくひょい、と摘みあげた。リッキーがその手を左右に小さく振ると、じゃらり、と乾いた音が二人の上から落ちてくる。
    「おい」
    ジョウはリッキーをやや斜めに見上げながら、じっとその様子を見つめている。

    −−−お前、ほんとうは何を言いに来たんだ?

    ジョウの視線は、そう告げる。

    「………」
    しばらくジョウを無言で見つめ返したリッキーだったが、はぁ、と俯きながら長い息を吐いて頭を掻いた。そうしたかと思うと、すたすたと部屋の奥に押し付けてあった椅子を取りに歩き出し、改めてベッドの横に持ってきては、おもむろにストン、と腰をかけた。
    やがて、ふぅ、と肩から力を抜くようにしてから椅子の両端に手をついて、
    「…まったく兄貴のその強情さには、ほとほと感心するよね。俺ら」
    と苦笑しながら呟いた。
    まったくしょうがねえなあ、と。


    「………?」
    ジョウの眉間には僅かなシワが寄る。
    その顔は見るからに、きょとん、という擬音がぴったりのそんな顔だ。
    「っていうか、負けず嫌いっていうのかな。まあ、昔から仕事の時はそんな調子だったけどさ。最近はちょいとばかり度が過ぎていた気がして心配してたんだ俺ら達」
    「…なんのことだ」
    「分からない?」
    「さっぱりな」
    きっぱりと答えるジョウに、ウウムどうしたもんか、とリッキーは考え込む。
    「うーーーん。流石と言えば流石なんだけどね」
    リッキーが顔の前でじゃらじゃら言わせているのは、先ほどアルフィンがジョウの顔面に叩きつけたクスリの瓶。
    なんとブルーとピンクのカプセルという、どうにも気色の悪い色合いのカプセルで、コレを飲んだら病気が治るというよりは「もういいから、そのままずーーーっとお休みなさい」と止めをさされそうな代物にも見える。
    が。
    まあ、それはさておき、リッキーはそのガラスの瓶を再びサイドボードにコトリと置くと改めて口を開いた。
    「…だからさ」
    「うん?」
    「最近の兄貴、なんだかすごく無理してたように見えてたんだよね」
    「…俺が?」
    「うん」
    「そうか?」
    「そうだよ」
    「…こんなの普通だろ。何言ってんだお前」
    「ふつー、ねぇ…」
    うーんと唸りながら腕を組むリッキーを尻目に、あまりにも拍子抜けのことを指摘されたジョウは、ぐたりとベッドに脱力する。

    −−−なにを今更。
    呆れて口をあんぐりと口を開けそうになったが、かろうじてそれは封じ込めたジョウであった。


    そもそも、この稼業をやっていて仕事が絶え間なくやってくるのはいつものことだ。
    アラミスからは特Aクラッシャーである以上、好む好まざるを関係なく優先的に仕事の照合が入ってくる。オフだろうがなんだろうが、指名で振られた仕事に関してはよほどのことが無い限り断ることなどしない。アラミスへの面子があるのはもちろんだが、なによりこの仕事に賭けている自身のプライドが先に出る。クラッシャーにとって身体のコンディションを常に整えておくのは常識、よしんば多少体調が悪かろうとも請け負った仕事に向けて体調を上げていくのは、この仕事をするものの義務でさえあるとジョウは思っていた。
    この仕事で食っていこうと誓って以来。
    そういう状況になること自体が誇らしいことだと、ジョウは密かに思ってもいる。
    体調がどうのこうのといっている暇も無いほど仕事が舞い込んでくるこの状況−−−。
    9歳でチームリーダーになってからというもの、ずっと「クラッシャーダンの息子のチーム」「サポート役が優秀だからもっているチーム」とか言われるたび、心の中でぎりぎりと自分を苦しめてきたもの。そんな声を必死な思いで蹴散らしてやっと手に入れたこの場所を、ジョウは決して手放す気などなかったのであった。

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■1674 / inTopicNo.23)  Re[11]: おクスリ〜J version
□投稿者/ とむ -(2008/02/08(Fri) 21:37:05)
    「…リッキー、お前な」
    今更こんなことを言わせんな、とばかりにジョウは深い溜息をついた。
    「そんなことを言う為にわざわざ戻ってきたのか?何度も言っているが、こんな風邪は元々大したことはないんだよ。今までだって俺が多少無理することなんてザラにあっただろ」
    「多少…」
    「たかが風邪で2ヶ月も前から請けていた仕事をパアに出来るか?テロリストに狙われてるかもしれないクライアントのおっさんに『悪いが体調が悪いので、また出直してくれ』なんてどうして言える?そんな馬鹿げたことをやるくらいなら俺は死んだ方がマシだ」
    「…えらく極端だなぁ」
    あまりに暢気そうな言葉を返すリッキーにジョウが噛み付いた。
    「…あのなあ!」
    思わず上体を起こしてベッドを拳で叩く。
    「お前、何年俺と一緒に仕事をやってんだよ。分かるだろそれくらい」
    「………」
    「たかが風邪くらいで何をぐだぐだ言ってやがる。お前もアルフィンもどうかしてるぞ。クラッシャーってのはそういう仕事だ。クライアントの要求が第一優先。自分の命だって盾にして当たらなきゃならない時ってのもある。今までだってそうだっただろうが。もし、お前にそんな覚悟がないってんなら、俺の船に乗る資格はない。本心からそんな甘っちょろいことでオタついてるなら、即刻船から降りろってんだ。まったくふざけているにも程がある」
    言いたいことを勢いのまままくしたてたジョウは、勢い付きすぎて肺の中にあった空気を一気に吐き出してしまい、結果、げほげほとみっともなく咳き込む羽目になった。堪らず肩肘をベッドについて、身体を支えぜぇぜぇと息をする。しばらくベッドに屈んだまま呼吸を整えた後、ジョウは枕を腰の下に引っ張りこみながら、ゆっくりとそれに寄りかかり深い息を吐いた。

    …ああ、もう。
    なんなんだ一体。
    ジョウは片手で頭を掻きながら、聞こえよがしに長い長い溜息ともぼやきともつかない言葉を呟いた。


    リッキーはそんなジョウを無言で見つめている。
    「………」
    なんとも気まずい雰囲気だ。

    自分を気遣ってきてくれているリッキーに、つい苛立ち紛れに無遠慮な言葉を投げてしまった。それがなんとなくジョウを居た堪れなくする。
    さすがに言い過ぎたとも思うが、ここで何と言っていいのかも分からず黙り込むしかない。
    なにか言葉をかけようとするが、適当な言葉は頭の中で空転するのみで、さっぱり口が開かない。
    逡巡しながらリッキーを見れば、ジョウの言葉にてっきり拗ねるか不貞腐れるかしていると思っていたのに、そのどちらでもなく冷静に無表情にこちらを見ていた。

    −−−まるで、ジョウの答えを予想していたような。
    あらかじめジョウが何と答えるのか承知していたような、そんな素振り。
    まるで「傍観」という言葉がぴったりのその様子に、ジョウは思わず後ずさった。

    「…なんだよ」
    つい小さな声でお伺いを立てるような口振りになる。
    「なんだ。その顔」
    「…その顔ってなにさ」
    「その、人を馬鹿にしたような間抜け顔」
    「ひでぇな」
    「いつもへらへらしてるくせに、たまに何考えてるんだか読めない顔するんだよなお前」
    「こーいう顔なんだよもともと!それをいうならお互い様だろ。兄貴だってそーとーだ」
    今までしゃべったもろもろのことを一切気にしていないような言いっぷりで、リッキーは言葉を返してくる。
    「俺がいつ」
    「いっつもだよ。いっつも」
    「いつもぉ?」
    「そーじゃん。苦しいのに苦しいって言わない。痛いのに痛いって言わない。辛いのに全然へーきだぜって顔してさ。傍から見たらその不自然さが余計にバレバレだってことにも気づかない」
    あっという間に形勢が逆転していることにジョウは気づき、チっと舌打ちをして横を向いた。
    「いっつもそうだ。兄貴は水臭い。昔はともかく最近はほんとにそうだよ。何を考えてるかは知らないけどさ、どーしてそこまでカッコつけたがるんだか俺らにはさっぱり分かんないね」
    両腕を組み半ばふんぞり返るように話すリッキーに、ジョウはイラつきながら睨み返した。
    「…だから、お前は何を言ってんだよ。俺が何を隠してるって?」
    「隠してるじゃん。俺らにもアルフィンにもさ」
    「何を」
    「ソレ!」
    リッキーがいきなり、ジョウのブランケットに包まった身体を指差した。
    「ソレだよソレ」
    「ああ?何のことだよ、もお」
    「ホントにわかんないの?」
    「さっさと言え。めんどくせえ」
    吐き捨てるように言ったジョウに、リッキーは鼻を鳴らしながら言い放った。
    「そこまで言うなら聞きますけれども。兄貴のその熱は、ほんとうに風邪の為の熱なんですか」
    「…なに?」
    「昨日、仕事が終わった途端に倒れこんだ兄貴のその熱は、ほ・ん・と・うに、一昨日風邪をひいたから出たものなのかい」
    人差し指をジョウに翳しながら話すリッキーに、ジョウは思わずたじろいだ。
    そんなジョウの様子には全く頓着しないで、リッキーは畳み掛けるように言葉をかけてくる。
    「その腰の辺りにあるのはナンなのさ?包帯じゃないの?さっき兄貴を支えた時にあったけど」
    あ、と声を上げてジョウが腰を触る。
    「それって、なにさ。昨日グレーブから届いたクスリと関係あり?」
    「グレーブ?」
    「そう、受け取ったのはアルフィンだからね。その中にご丁寧に”今回からクスリが替わりましたのでしっかり飲むように”って手紙も入ってたよ」
    「手紙?」
    「はい、じゃあこれらのことについて、俺らにも分かるように易しく説明してください」
    スラスラと流れるような口調で話し、すっかり言い終わったところでリッキーは「はいどーぞ」とジョウに向かって答えるようにジェスチャーした。心持ち肩を竦めて答えを待つその姿は、もはや答えを促しているというより「脅迫」である。
    「…グレーブ?」
    呟くようにそう繰り返してから、ジョウははたと眉を跳ね上げた。
    いきなり、サイドボードにあったガラスの小瓶を掴み取り、そのラベルに記載されている記事に目を向ける。
    『消炎鎮痛剤:神経痛・打撲痛・外傷痛・悪寒、発熱時の解熱に有効。痛みが激しい時のみ服用のこと』
    さらに、その記事の後には「惑星グレーブ パスツール記念財団医科大学付属病院」の文字。

    「………あ!」

    −−−−−−驚愕はいきなり天から降ってきた。

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■1674 / inTopicNo.24)  Re[11]: おクスリ〜J version
□投稿者/ とむ -(2008/02/08(Fri) 21:37:05)
    「…リッキー、お前な」
    今更こんなことを言わせんな、とばかりにジョウは深い溜息をついた。
    「そんなことを言う為にわざわざ戻ってきたのか?何度も言っているが、こんな風邪は元々大したことはないんだよ。今までだって俺が多少無理することなんてザラにあっただろ」
    「多少…」
    「たかが風邪で2ヶ月も前から請けていた仕事をパアに出来るか?テロリストに狙われてるかもしれないクライアントのおっさんに『悪いが体調が悪いので、また出直してくれ』なんてどうして言える?そんな馬鹿げたことをやるくらいなら俺は死んだ方がマシだ」
    「…えらく極端だなぁ」
    あまりに暢気そうな言葉を返すリッキーにジョウが噛み付いた。
    「…あのなあ!」
    思わず上体を起こしてベッドを拳で叩く。
    「お前、何年俺と一緒に仕事をやってんだよ。分かるだろそれくらい」
    「………」
    「たかが風邪くらいで何をぐだぐだ言ってやがる。お前もアルフィンもどうかしてるぞ。クラッシャーってのはそういう仕事だ。クライアントの要求が第一優先。自分の命だって盾にして当たらなきゃならない時ってのもある。今までだってそうだっただろうが。もし、お前にそんな覚悟がないってんなら、俺の船に乗る資格はない。本心からそんな甘っちょろいことでオタついてるなら、即刻船から降りろってんだ。まったくふざけているにも程がある」
    言いたいことを勢いのまままくしたてたジョウは、勢い付きすぎて肺の中にあった空気を一気に吐き出してしまい、結果、げほげほとみっともなく咳き込む羽目になった。堪らず肩肘をベッドについて、身体を支えぜぇぜぇと息をする。しばらくベッドに屈んだまま呼吸を整えた後、ジョウは枕を腰の下に引っ張りこみながら、ゆっくりとそれに寄りかかり深い息を吐いた。

    …ああ、もう。
    なんなんだ一体。
    ジョウは片手で頭を掻きながら、聞こえよがしに長い長い溜息ともぼやきともつかない言葉を呟いた。


    リッキーはそんなジョウを無言で見つめている。
    「………」
    なんとも気まずい雰囲気だ。

    自分を気遣ってきてくれているリッキーに、つい苛立ち紛れに無遠慮な言葉を投げてしまった。それがなんとなくジョウを居た堪れなくする。
    さすがに言い過ぎたとも思うが、ここで何と言っていいのかも分からず黙り込むしかない。
    なにか言葉をかけようとするが、適当な言葉は頭の中で空転するのみで、さっぱり口が開かない。
    逡巡しながらリッキーを見れば、ジョウの言葉にてっきり拗ねるか不貞腐れるかしていると思っていたのに、そのどちらでもなく冷静に無表情にこちらを見ていた。

    −−−まるで、ジョウの答えを予想していたような。
    あらかじめジョウが何と答えるのか承知していたような、そんな素振り。
    まるで「傍観」という言葉がぴったりのその様子に、ジョウは思わず後ずさった。

    「…なんだよ」
    つい小さな声でお伺いを立てるような口振りになる。
    「なんだ。その顔」
    「…その顔ってなにさ」
    「その、人を馬鹿にしたような間抜け顔」
    「ひでぇな」
    「いつもへらへらしてるくせに、たまに何考えてるんだか読めない顔するんだよなお前」
    「こーいう顔なんだよもともと!それをいうならお互い様だろ。兄貴だってそーとーだ」
    今までしゃべったもろもろのことを一切気にしていないような言いっぷりで、リッキーは言葉を返してくる。
    「俺がいつ」
    「いっつもだよ。いっつも」
    「いつもぉ?」
    「そーじゃん。苦しいのに苦しいって言わない。痛いのに痛いって言わない。辛いのに全然へーきだぜって顔してさ。傍から見たらその不自然さが余計にバレバレだってことにも気づかない」
    あっという間に形勢が逆転していることにジョウは気づき、チっと舌打ちをして横を向いた。
    「いっつもそうだ。兄貴は水臭い。昔はともかく最近はほんとにそうだよ。何を考えてるかは知らないけどさ、どーしてそこまでカッコつけたがるんだか俺らにはさっぱり分かんないね」
    両腕を組み半ばふんぞり返るように話すリッキーに、ジョウはイラつきながら睨み返した。
    「…だから、お前は何を言ってんだよ。俺が何を隠してるって?」
    「隠してるじゃん。俺らにもアルフィンにもさ」
    「何を」
    「ソレ!」
    リッキーがいきなり、ジョウのブランケットに包まった身体を指差した。
    「ソレだよソレ」
    「ああ?何のことだよ、もお」
    「ホントにわかんないの?」
    「さっさと言え。めんどくせえ」
    吐き捨てるように言ったジョウに、リッキーは鼻を鳴らしながら言い放った。
    「そこまで言うなら聞きますけれども。兄貴のその熱は、ほんとうに風邪の為の熱なんですか」
    「…なに?」
    「昨日、仕事が終わった途端に倒れこんだ兄貴のその熱は、ほ・ん・と・うに、一昨日風邪をひいたから出たものなのかい」
    人差し指をジョウに翳しながら話すリッキーに、ジョウは思わずたじろいだ。
    そんなジョウの様子には全く頓着しないで、リッキーは畳み掛けるように言葉をかけてくる。
    「その腰の辺りにあるのはナンなのさ?包帯じゃないの?さっき兄貴を支えた時にあったけど」
    あ、と声を上げてジョウが腰を触る。
    「それって、なにさ。昨日グレーブから届いたクスリと関係あり?」
    「グレーブ?」
    「そう、受け取ったのはアルフィンだからね。その中にご丁寧に”今回からクスリが替わりましたのでしっかり飲むように”って手紙も入ってたよ」
    「手紙?」
    「はい、じゃあこれらのことについて、俺らにも分かるように易しく説明してください」
    スラスラと流れるような口調で話し、すっかり言い終わったところでリッキーは「はいどーぞ」とジョウに向かって答えるようにジェスチャーした。心持ち肩を竦めて答えを待つその姿は、もはや答えを促しているというより「脅迫」である。
    「…グレーブ?」
    呟くようにそう繰り返してから、ジョウははたと眉を跳ね上げた。
    いきなり、サイドボードにあったガラスの小瓶を掴み取り、そのラベルに記載されている記事に目を向ける。
    『消炎鎮痛剤:神経痛・打撲痛・外傷痛・悪寒、発熱時の解熱に有効。痛みが激しい時のみ服用のこと』
    さらに、その記事の後には「惑星グレーブ パスツール記念財団医科大学付属病院」の文字。

    「………あ!」

    −−−−−−驚愕はいきなり天から降ってきた。

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■1690 / inTopicNo.25)  Re[12]: おクスリ〜J version
□投稿者/ とむ -(2008/06/23(Mon) 11:47:06)
    そもそもこんな怪我。
    チームに内緒にするもしないも、どっちでもいい話しだったんだ実際。



    クラッシャージョウは、<ミネルバ>のキッチンでコーヒーを片手にしゃがみ込みながら、軽く溜息をついた。
    先程メディカル・ルームをのそりと這い出してきて、なにか適当につまめるもんはないもんかとフリーザーを開けて中身を確認してみれば、目に留まるのは「イカの燻製」(←タロスの酒のツマミ)とか「スプーンを突っ込んだままのカレーの残り」(←明らかにリッキーの食いかけ)とか卵数個とかが沈黙しながらそこに存在するのみ。もうそれだけでも十分に哀愁を漂わせる光景であるのだが、とどめはキレイさっぱり片付けられたフリーザーに、昨日までは確かになかったはずのビニールが粛々とした面持ちで吊り下げられていたことで、それを見た瞬間ジョウはその口をあんぐりと開けた。

    …なんだこりゃ。

    嫌な予感がして視線を横に動かすと、シートの隅っこに綺麗に整った文字で『電力節約!冷気モレ防止シートは開けたら速やかに閉めろ』との注意書き。さらには『自分のものには名前を書くこと。賞味期限を過ぎたものは即刻破棄』との文言が並ぶ。まずは目が点になり、次に「げ…」と小さく叫びそうになるのをなんとか飲み込んで、ジョウはマジックで書かれた文字をまじまじと見つめた。

    なんだあ?!
    −−−おおい!
    この前、燃料補給で立ち寄った宇宙港で買ったはずの、俺の食べかけの「高級」ビーフジャーキーはどこいった!

    無駄とは知りつつ、ビニールシートの向こうを今一度、目を皿のようにして見回すが、『ほんの一日、賞味期限を過ぎた』だけのジャーキーは、どうやらリビングの隅にあるダストシュートまでの短いながらも永遠の旅へと強制的に出されたことを知る。その時に一緒に購入していたはずの燻製チーズも同じ運命を辿ったようで、今はすっかりも抜けの空になってしまった冷蔵室の有様に、ジョウはチーズのパッケージを一度も開封しなかったことを返す返すも後悔した。

    「…っかー…。まだ充分、余裕で食えたはずなのに余計なことを」

    一度も口に運ばれることも無く宇宙のチリとなったモノ達よ。
    食ってやることができず申し訳ない。

    ジョウは小さく唸りながら右手でフリーザーの扉をバタリと閉め、思い出したような小さな咳をした後、たは、と肩を落とした。




    もともと、体力にだけは自信があった方なんだが。
    肩を落としてその場に座り込んだジョウは、ぼんやり天井を仰ぎながらそう思う。
    天井のところどころにうっすらと浮き上がる染みが、毎日疲れた身体を押して野郎3人分の料理をしているアルフィンを連想させ、なんか切ない。
    ジョウは傍らにおいていたコーヒーを飲み干した後、パジャマのポケットに忍ばせていた錠剤の瓶をじゃらりと鳴らしては、うめき声ともボヤキともつかない声を漏らした。


    多分、アルフィンは怒ってる。

    十中八九、相当に、かなり本格的に怒ってるはずだ。

    今更ながら彼女のここ数ヶ月の言動を思い返せば、確信を持っていたとはいかないまでも、なにか怪しいと思っていたことは間違いなく、己の鈍感さ加減をつくづく恨めしく思う。

    「…そういや、なにかっつーと『大丈夫なの?』って言われたっけなあ」

    今更、思い当たってしまうところがさすが俺。
    ジョウはしゃがんだままの格好で膝に肘をつき、もう何度呟いたかわからない「ああ…」という台詞を言いながらその頭を抱えた。


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■1690 / inTopicNo.26)  Re[12]: おクスリ〜J version
□投稿者/ とむ -(2008/06/23(Mon) 11:47:06)
    そもそもこんな怪我。
    チームに内緒にするもしないも、どっちでもいい話しだったんだ実際。



    クラッシャージョウは、<ミネルバ>のキッチンでコーヒーを片手にしゃがみ込みながら、軽く溜息をついた。
    先程メディカル・ルームをのそりと這い出してきて、なにか適当につまめるもんはないもんかとフリーザーを開けて中身を確認してみれば、目に留まるのは「イカの燻製」(←タロスの酒のツマミ)とか「スプーンを突っ込んだままのカレーの残り」(←明らかにリッキーの食いかけ)とか卵数個とかが沈黙しながらそこに存在するのみ。もうそれだけでも十分に哀愁を漂わせる光景であるのだが、とどめはキレイさっぱり片付けられたフリーザーに、昨日までは確かになかったはずのビニールが粛々とした面持ちで吊り下げられていたことで、それを見た瞬間ジョウはその口をあんぐりと開けた。

    …なんだこりゃ。

    嫌な予感がして視線を横に動かすと、シートの隅っこに綺麗に整った文字で『電力節約!冷気モレ防止シートは開けたら速やかに閉めろ』との注意書き。さらには『自分のものには名前を書くこと。賞味期限を過ぎたものは即刻破棄』との文言が並ぶ。まずは目が点になり、次に「げ…」と小さく叫びそうになるのをなんとか飲み込んで、ジョウはマジックで書かれた文字をまじまじと見つめた。

    なんだあ?!
    −−−おおい!
    この前、燃料補給で立ち寄った宇宙港で買ったはずの、俺の食べかけの「高級」ビーフジャーキーはどこいった!

    無駄とは知りつつ、ビニールシートの向こうを今一度、目を皿のようにして見回すが、『ほんの一日、賞味期限を過ぎた』だけのジャーキーは、どうやらリビングの隅にあるダストシュートまでの短いながらも永遠の旅へと強制的に出されたことを知る。その時に一緒に購入していたはずの燻製チーズも同じ運命を辿ったようで、今はすっかりも抜けの空になってしまった冷蔵室の有様に、ジョウはチーズのパッケージを一度も開封しなかったことを返す返すも後悔した。

    「…っかー…。まだ充分、余裕で食えたはずなのに余計なことを」

    一度も口に運ばれることも無く宇宙のチリとなったモノ達よ。
    食ってやることができず申し訳ない。

    ジョウは小さく唸りながら右手でフリーザーの扉をバタリと閉め、思い出したような小さな咳をした後、たは、と肩を落とした。




    もともと、体力にだけは自信があった方なんだが。
    肩を落としてその場に座り込んだジョウは、ぼんやり天井を仰ぎながらそう思う。
    天井のところどころにうっすらと浮き上がる染みが、毎日疲れた身体を押して野郎3人分の料理をしているアルフィンを連想させ、なんか切ない。
    ジョウは傍らにおいていたコーヒーを飲み干した後、パジャマのポケットに忍ばせていた錠剤の瓶をじゃらりと鳴らしては、うめき声ともボヤキともつかない声を漏らした。


    多分、アルフィンは怒ってる。

    十中八九、相当に、かなり本格的に怒ってるはずだ。

    今更ながら彼女のここ数ヶ月の言動を思い返せば、確信を持っていたとはいかないまでも、なにか怪しいと思っていたことは間違いなく、己の鈍感さ加減をつくづく恨めしく思う。

    「…そういや、なにかっつーと『大丈夫なの?』って言われたっけなあ」

    今更、思い当たってしまうところがさすが俺。
    ジョウはしゃがんだままの格好で膝に肘をつき、もう何度呟いたかわからない「ああ…」という台詞を言いながらその頭を抱えた。


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■1731 / inTopicNo.27)  Re[13]: おクスリ〜J version
□投稿者/ とむ -(2008/10/05(Sun) 15:44:51)
    話の発端は3ヶ月前に負ってしまった右脇腹の負傷だ。
    老朽化した宇宙ステーションを撤去する仕事を請け負った際、ステーションの足場に仕掛けていたダイナマイトの爆風が予想以上に大きくなり、爆風に煽られて吹き飛ばされたビルの残骸がジョウの上に落下してきた。正確に言えばジョウの上ではなくアルフィンの上だったのだが、たまたま近くにいたジョウが、咄嗟に駆け出してアルフィンを押し倒すように覆い被さり彼女の小さな身体を庇った。そして、彼女の頭を抱え込むようにして飛ばされた先、即座に体制を立て直し走り出そうとしたものの一足遅く、上空高く飛ばされていたコンクリート片が、見事にジョウの腰の少し上を直撃したのだ。丁度、走り出そうと膝に重心をかけていた時だったので、背後への注意がおろそかになっていたのは否めない。思い切り、熱く強い衝撃を受け、ジョウは堪らず膝から地面に崩れ落ちた。口から低い呻き声を上げて上体を持ち上げようとする。しかし、あまりの激痛に両腕には力が入らず、身体を支えようとしても腕が震える。顔からは大量の脂汗が吹き出して、激痛からくる地を這うような声をなんとか飲み込むのが精一杯だった。


    それでも。

    ーーー、大丈夫だ。心配するな。
    ジョウは自分の腕の中で、雷に打たれたように固まるアルフィンの頭を抱えるように撫でる。脱力しそうになる身体を気力で立て直し、焼け付く痛みに耐えながら、自分を気遣うアルフィンをなんとかなだめてやりたくて、ジョウがつい口走ってしまった台詞は毒にも薬にもならないような、あまりにもバレバレなウソだった。


    アルフィンが繰るファイター1で<ミネルバ>に帰艦したジョウは、泣きはらした瞳のアルフィンをなんとか言いくるめて、メディカル・ルームへタロスと二人消えていった。

    大丈夫だ。
    心配ない。
    たいしたことはないし、今からちゃんとドンゴに調べさせるから、しばらくここで待ってろ。

    そう告げたところで大人しく待っていられるはずがないと思いながら、ジョウはアルフィンを無理やり部屋から締め出して、そこで初めてベッドに崩れるように倒れこんだ。右胸の辺りが締め付けられるように痛い。息を吸おうとすると、胸の骨がバラバラに崩れそうで、知らず身体を抱えるように丸くなった。
    息も絶え絶えのまま、タロスに上半身を支えてもらいドンゴの診断を待つと、結果は『右肋軟骨の複雑骨折。全治3週間』。
    次から次へと仕事が舞い込んできているジョウをうんざりさせるには十分過ぎるほどの、いただけない結果であった。



    −−−仕事はキャンセルしない(キャンセルする気もない)。
    アルフィンに要らぬ気遣いをさせたくもない。
    真っ先に、そんな思いがジョウの胸の中に浮かんでは消える。
    アルフィンの泣き顔を見ながら仕事をするなんざご免だ。苦しい息をしながら、ジョウはドンゴにグレーブから取りおきしてあったコルセットを巻きつけるように指示を出す。これは、包帯のような形状だが水に浸して身体に巻きつけると、まるで石膏で包んだかのように硬くなる代物だ。とりあえず骨を固定しておけば、なんとかなる。


    それに。
    考えすぎだとは思うが、アルフィンを庇って怪我をしたことはアラミスに知られたくはなかった。まさかこんなことで、アルフィンとの付き合いがアラミスに知られるとは思わないが、自分の担当をほっぽらかして彼女を庇い負傷をしたなど、極めて私的な、明らかに私情を優先した行動だと思われやしないか。クラッシャーの世界は厳しい。ガンビーノが目の前で銃弾に倒れた時も、崩れ行くガンビーノに駆け寄ろうとしてタロスに制されて涙を呑んだことを思い出す。クラッシャーは仕事の完遂こそが第一優先だ。運悪く仕事の最中に命を落とすことになっても、それは割り切らねばならないことで、それがクラッシャーの掟であり誇りでもある。それはなによりジョウが理解していなければならないはずのことだ。
    仕事に穴は絶対に空けない。だが、あれほど「素人をチームに入れるな」とアルフィンをチームに入れる際に揉めた評議会が、ホレ見たことか、という目で見るのではないか。アルフィンを仲間に加えたことが−−−アルフィンと付き合いを始める決断をしたことが−−−仕事に影響していると思われることだけは、なんとしても我慢ならなかった。アルフィンの為にも仲間の為にも。


    だから。
    ジョウは隠すことにしたのだ。アルフィンにもリッキーにも。
    仕事をしていれば怪我のことなど忘れてしまう。仕事に掛ける情熱と仕事をしている時の充実感と高揚感。それらが怪我の痛みなどどこかに吹き飛ばしてしまう。
    実際、自分自身は仕事内に怪我のことなど忘れてしまったし、たまに痛みを感じたとしても薬でやり過ごすことは苦とも思わなかった。むしろ、そんなことは男4人で仕事をしていた時には日常茶飯事で、お互い暗黙の了解で済ませることが出来る程度のことと思っていた。

    ただひとつ彼に計算違いがあったとすれば、彼のもっとも身近にいた彼女だけはそうは思ってはいなかったということだった。



    ********


    「…まぁ、しかし。なんと言いますか、  」
    冷蔵庫にかろうじて残っていたレタスとハムを適当に引きちぎったサラダ(言ったモン勝ちだ)を試しに租借しながらタロスは口を開いた。
    先ほど機関室からひきあげてふらりとキッチンに立ち寄ったものの、そこに蹲るようにしていたジョウと鉢合わせをした。いつもであれば、人に弱みを見せることを極力嫌う彼が、力なく床に蹲るとはいったい何事かと思いきや、当のリーダーが脱力しながら指差す先を見て、タロスはなるほどと納得する。
    綺麗さっぱり片付けられたフリーザー。
    綺麗好きというよりはむしろ、どこか意地になったような磨き上げ方のフリーザーには申し訳程度の食料が鎮座するのみで、「どうだまいったかこんちくしょー」というアルフィンの残留思念が見え、タロスは無言のまま恭しくその扉をゆっくりと閉じた。

    …相変わらず、なんて分りやすい。
    半ば呆然としながら呟くタロスに、「なあ」と返すジョウの視線もまた、目の前の光景をすっ飛ばし遥か彼方を見つめた。

    ともあれ、しばらく閑散としたフリーザーを苦笑交じりに見つめていたタロスだったが、「何か作りますかい」と野菜室のレタスをよっこらせと取り出した。そのまま大きな手の中で、それを転がす。そんな彼を眺めながら、何を作るって?とジョウはハムを手に取り問うたが、互いの手のものを見つめた後、そのままなんとなく二人で仲良くキッチンに並び、無言のまま一枚一枚丁寧にレタスを剥き始めたのであった。
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■1731 / inTopicNo.28)  Re[13]: おクスリ〜J version
□投稿者/ とむ -(2008/10/05(Sun) 15:44:51)
    話の発端は3ヶ月前に負ってしまった右脇腹の負傷だ。
    老朽化した宇宙ステーションを撤去する仕事を請け負った際、ステーションの足場に仕掛けていたダイナマイトの爆風が予想以上に大きくなり、爆風に煽られて吹き飛ばされたビルの残骸がジョウの上に落下してきた。正確に言えばジョウの上ではなくアルフィンの上だったのだが、たまたま近くにいたジョウが、咄嗟に駆け出してアルフィンを押し倒すように覆い被さり彼女の小さな身体を庇った。そして、彼女の頭を抱え込むようにして飛ばされた先、即座に体制を立て直し走り出そうとしたものの一足遅く、上空高く飛ばされていたコンクリート片が、見事にジョウの腰の少し上を直撃したのだ。丁度、走り出そうと膝に重心をかけていた時だったので、背後への注意がおろそかになっていたのは否めない。思い切り、熱く強い衝撃を受け、ジョウは堪らず膝から地面に崩れ落ちた。口から低い呻き声を上げて上体を持ち上げようとする。しかし、あまりの激痛に両腕には力が入らず、身体を支えようとしても腕が震える。顔からは大量の脂汗が吹き出して、激痛からくる地を這うような声をなんとか飲み込むのが精一杯だった。


    それでも。

    ーーー、大丈夫だ。心配するな。
    ジョウは自分の腕の中で、雷に打たれたように固まるアルフィンの頭を抱えるように撫でる。脱力しそうになる身体を気力で立て直し、焼け付く痛みに耐えながら、自分を気遣うアルフィンをなんとかなだめてやりたくて、ジョウがつい口走ってしまった台詞は毒にも薬にもならないような、あまりにもバレバレなウソだった。


    アルフィンが繰るファイター1で<ミネルバ>に帰艦したジョウは、泣きはらした瞳のアルフィンをなんとか言いくるめて、メディカル・ルームへタロスと二人消えていった。

    大丈夫だ。
    心配ない。
    たいしたことはないし、今からちゃんとドンゴに調べさせるから、しばらくここで待ってろ。

    そう告げたところで大人しく待っていられるはずがないと思いながら、ジョウはアルフィンを無理やり部屋から締め出して、そこで初めてベッドに崩れるように倒れこんだ。右胸の辺りが締め付けられるように痛い。息を吸おうとすると、胸の骨がバラバラに崩れそうで、知らず身体を抱えるように丸くなった。
    息も絶え絶えのまま、タロスに上半身を支えてもらいドンゴの診断を待つと、結果は『右肋軟骨の複雑骨折。全治3週間』。
    次から次へと仕事が舞い込んできているジョウをうんざりさせるには十分過ぎるほどの、いただけない結果であった。



    −−−仕事はキャンセルしない(キャンセルする気もない)。
    アルフィンに要らぬ気遣いをさせたくもない。
    真っ先に、そんな思いがジョウの胸の中に浮かんでは消える。
    アルフィンの泣き顔を見ながら仕事をするなんざご免だ。苦しい息をしながら、ジョウはドンゴにグレーブから取りおきしてあったコルセットを巻きつけるように指示を出す。これは、包帯のような形状だが水に浸して身体に巻きつけると、まるで石膏で包んだかのように硬くなる代物だ。とりあえず骨を固定しておけば、なんとかなる。


    それに。
    考えすぎだとは思うが、アルフィンを庇って怪我をしたことはアラミスに知られたくはなかった。まさかこんなことで、アルフィンとの付き合いがアラミスに知られるとは思わないが、自分の担当をほっぽらかして彼女を庇い負傷をしたなど、極めて私的な、明らかに私情を優先した行動だと思われやしないか。クラッシャーの世界は厳しい。ガンビーノが目の前で銃弾に倒れた時も、崩れ行くガンビーノに駆け寄ろうとしてタロスに制されて涙を呑んだことを思い出す。クラッシャーは仕事の完遂こそが第一優先だ。運悪く仕事の最中に命を落とすことになっても、それは割り切らねばならないことで、それがクラッシャーの掟であり誇りでもある。それはなによりジョウが理解していなければならないはずのことだ。
    仕事に穴は絶対に空けない。だが、あれほど「素人をチームに入れるな」とアルフィンをチームに入れる際に揉めた評議会が、ホレ見たことか、という目で見るのではないか。アルフィンを仲間に加えたことが−−−アルフィンと付き合いを始める決断をしたことが−−−仕事に影響していると思われることだけは、なんとしても我慢ならなかった。アルフィンの為にも仲間の為にも。


    だから。
    ジョウは隠すことにしたのだ。アルフィンにもリッキーにも。
    仕事をしていれば怪我のことなど忘れてしまう。仕事に掛ける情熱と仕事をしている時の充実感と高揚感。それらが怪我の痛みなどどこかに吹き飛ばしてしまう。
    実際、自分自身は仕事内に怪我のことなど忘れてしまったし、たまに痛みを感じたとしても薬でやり過ごすことは苦とも思わなかった。むしろ、そんなことは男4人で仕事をしていた時には日常茶飯事で、お互い暗黙の了解で済ませることが出来る程度のことと思っていた。

    ただひとつ彼に計算違いがあったとすれば、彼のもっとも身近にいた彼女だけはそうは思ってはいなかったということだった。



    ********


    「…まぁ、しかし。なんと言いますか、  」
    冷蔵庫にかろうじて残っていたレタスとハムを適当に引きちぎったサラダ(言ったモン勝ちだ)を試しに租借しながらタロスは口を開いた。
    先ほど機関室からひきあげてふらりとキッチンに立ち寄ったものの、そこに蹲るようにしていたジョウと鉢合わせをした。いつもであれば、人に弱みを見せることを極力嫌う彼が、力なく床に蹲るとはいったい何事かと思いきや、当のリーダーが脱力しながら指差す先を見て、タロスはなるほどと納得する。
    綺麗さっぱり片付けられたフリーザー。
    綺麗好きというよりはむしろ、どこか意地になったような磨き上げ方のフリーザーには申し訳程度の食料が鎮座するのみで、「どうだまいったかこんちくしょー」というアルフィンの残留思念が見え、タロスは無言のまま恭しくその扉をゆっくりと閉じた。

    …相変わらず、なんて分りやすい。
    半ば呆然としながら呟くタロスに、「なあ」と返すジョウの視線もまた、目の前の光景をすっ飛ばし遥か彼方を見つめた。

    ともあれ、しばらく閑散としたフリーザーを苦笑交じりに見つめていたタロスだったが、「何か作りますかい」と野菜室のレタスをよっこらせと取り出した。そのまま大きな手の中で、それを転がす。そんな彼を眺めながら、何を作るって?とジョウはハムを手に取り問うたが、互いの手のものを見つめた後、そのままなんとなく二人で仲良くキッチンに並び、無言のまま一枚一枚丁寧にレタスを剥き始めたのであった。
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■1736 / inTopicNo.29)  Re[14]: おクスリ〜J version
□投稿者/ とむ -(2008/10/11(Sat) 12:16:05)
    「…で、今回の喧嘩はあの時の怪我が原因ですかい?」
    ダイニングテーブルで向かい合うように座り、サラダをそれぞれの皿に取り分けていた時、唐突にタロスは口を開いた。さっきから二人で黙々とひたすらにレタスの葉剥き作業を続けながら何も問いただされもせず、不自然なまでの沈黙が薄気味悪いような気がしていたジョウは、かえって安堵したような気分になり知らず両肩から力を抜いた。敢えて自分から事の顛末を暴露しようとは思わないが、この妙な空気に囲まれたままというのもゾッとしない。
    「…まぁな」
    小さく溜息を付くような声を出し、黄緑色の葉っぱがてんこ盛りになった皿にドレッシングをドボドボとかける。
    「さっき当直の交代でブリッジに入ってきたんですが、逆立ってましたねえ髪が。目なんかもう、ギラギラで、確かああいう怪物がテラの神話の中に出てきたなあと思いましたよ。なんつったかな、えーと、ギリシャ神話の神様だったと思うんですが」
    「…メデューサ」
    「、そうです。それ」
    タロスはずっと喉に刺さっていた小骨が取れたような、晴れ晴れとした笑みをこちらに向けたが、ジョウは半ばうんざりした顔でタロスを見つめ返す。忌々しげな表情にタロスは軽く肩を竦めて「こりゃ失礼…」と言ったが、相変わらずその顔には、どこか嬉しそうな様子が漂っていた。
    「…お前、面白がってるな?」
    ジョウはほとほと疲労しきった目でタロスを見、椅子に深く座りなおして熱で疲れた体を椅子に預けた。

    もう、何日も前から胸の痛みは感じない。
    パジャマの上から右胸を触っては、グレーブの医者共め、今頃薬なんぞ送ってきても無用の長物だったぜと、つくづくジョウはうんざりする。踏んだり蹴ったりとはこの事だ。過剰なまでに気を遣ってきたここ数ヶ月間が、僅かな気の緩みで出した熱のせいで水の泡。
    とどめに薬を受け取ったのがアルフィンだったなんて、間抜けすぎて空笑いしかでてこない。


    一方、ジョウの向かいに陣取ったタロスは、そんなジョウの様子を僅かな笑みでやり過ごし、クラッシュジャケットのポケットをガサゴソと探り始めた。やがて銀色のシガレットケースを探し当てると、そこから煙草を一本抜き取って火を点け、それをゆっくり咥えた口から紫煙をくゆらす。静かに天井に立ち上っていく煙を目で追い、大きな身体を椅子に押し付けるようにしてから、その大きな両腕を頭に回した。
    日頃、命を天秤にかけるような仕事をしている時の彼から、こんな姿はまったく想像ができない。
    その視線は穏やかで優しい。
    そして纏っている空気は、とても大らかでのんびりとした温かいものだった。
    こんな時間は久し振りだ。そう言って、ゆったりと体を伸ばして呟くタロスをジョウは黙って見ていた。



    そんな風に、ゆるゆるした時間を二人でどれくらいかやり過ごした後。
    「しかし、あれですな」
    ようやく、煙に紛らせてタロスがゆっくり口を開いた。
    「正直、あたしはいい傾向だと思ってるんです」
    「なにが」
    「最近のアンタの様子ですな」
    なにやら訳知り顔でタロスは言う。
    「…なんのことだ」
    「昔のように一人で物事を抱え込むことが少なくなった」
    静かに煙を吐き、ジョウを労わるような視線で見る。
    ーーーですよね?
    ジョウはそんなタロスの様子に一瞬口が詰まったようになり、やがて微かに頬を赤らめたが、それを誤魔化すように肩を竦めて「”抱えられなくなった”の間違いだろ」と早口で言った。
    「あんな桁外れのハリケーンに襲われたら、どんな強い要塞だってひとたまりもないぜ」
    と、暗にアルフィンを指して呟く。タロスも口の端に笑みを乗せ、
    「あの馬力はガレオン並みですからなあ」
    と本気とも冗談とも取れないことを言った。
    思わず二人で顔を見合わせ、ゆるゆるとせりあがってきたくすぐったいものを抱えるように腹を抱えて笑ったが、ジョウはそういえばこんな風に二人で笑ったのはどれくらいぶりだろうかと考えた。



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■1736 / inTopicNo.30)  Re[14]: おクスリ〜J version
□投稿者/ とむ -(2008/10/11(Sat) 12:16:05)
    「…で、今回の喧嘩はあの時の怪我が原因ですかい?」
    ダイニングテーブルで向かい合うように座り、サラダをそれぞれの皿に取り分けていた時、唐突にタロスは口を開いた。さっきから二人で黙々とひたすらにレタスの葉剥き作業を続けながら何も問いただされもせず、不自然なまでの沈黙が薄気味悪いような気がしていたジョウは、かえって安堵したような気分になり知らず両肩から力を抜いた。敢えて自分から事の顛末を暴露しようとは思わないが、この妙な空気に囲まれたままというのもゾッとしない。
    「…まぁな」
    小さく溜息を付くような声を出し、黄緑色の葉っぱがてんこ盛りになった皿にドレッシングをドボドボとかける。
    「さっき当直の交代でブリッジに入ってきたんですが、逆立ってましたねえ髪が。目なんかもう、ギラギラで、確かああいう怪物がテラの神話の中に出てきたなあと思いましたよ。なんつったかな、えーと、ギリシャ神話の神様だったと思うんですが」
    「…メデューサ」
    「、そうです。それ」
    タロスはずっと喉に刺さっていた小骨が取れたような、晴れ晴れとした笑みをこちらに向けたが、ジョウは半ばうんざりした顔でタロスを見つめ返す。忌々しげな表情にタロスは軽く肩を竦めて「こりゃ失礼…」と言ったが、相変わらずその顔には、どこか嬉しそうな様子が漂っていた。
    「…お前、面白がってるな?」
    ジョウはほとほと疲労しきった目でタロスを見、椅子に深く座りなおして熱で疲れた体を椅子に預けた。

    もう、何日も前から胸の痛みは感じない。
    パジャマの上から右胸を触っては、グレーブの医者共め、今頃薬なんぞ送ってきても無用の長物だったぜと、つくづくジョウはうんざりする。踏んだり蹴ったりとはこの事だ。過剰なまでに気を遣ってきたここ数ヶ月間が、僅かな気の緩みで出した熱のせいで水の泡。
    とどめに薬を受け取ったのがアルフィンだったなんて、間抜けすぎて空笑いしかでてこない。


    一方、ジョウの向かいに陣取ったタロスは、そんなジョウの様子を僅かな笑みでやり過ごし、クラッシュジャケットのポケットをガサゴソと探り始めた。やがて銀色のシガレットケースを探し当てると、そこから煙草を一本抜き取って火を点け、それをゆっくり咥えた口から紫煙をくゆらす。静かに天井に立ち上っていく煙を目で追い、大きな身体を椅子に押し付けるようにしてから、その大きな両腕を頭に回した。
    日頃、命を天秤にかけるような仕事をしている時の彼から、こんな姿はまったく想像ができない。
    その視線は穏やかで優しい。
    そして纏っている空気は、とても大らかでのんびりとした温かいものだった。
    こんな時間は久し振りだ。そう言って、ゆったりと体を伸ばして呟くタロスをジョウは黙って見ていた。



    そんな風に、ゆるゆるした時間を二人でどれくらいかやり過ごした後。
    「しかし、あれですな」
    ようやく、煙に紛らせてタロスがゆっくり口を開いた。
    「正直、あたしはいい傾向だと思ってるんです」
    「なにが」
    「最近のアンタの様子ですな」
    なにやら訳知り顔でタロスは言う。
    「…なんのことだ」
    「昔のように一人で物事を抱え込むことが少なくなった」
    静かに煙を吐き、ジョウを労わるような視線で見る。
    ーーーですよね?
    ジョウはそんなタロスの様子に一瞬口が詰まったようになり、やがて微かに頬を赤らめたが、それを誤魔化すように肩を竦めて「”抱えられなくなった”の間違いだろ」と早口で言った。
    「あんな桁外れのハリケーンに襲われたら、どんな強い要塞だってひとたまりもないぜ」
    と、暗にアルフィンを指して呟く。タロスも口の端に笑みを乗せ、
    「あの馬力はガレオン並みですからなあ」
    と本気とも冗談とも取れないことを言った。
    思わず二人で顔を見合わせ、ゆるゆるとせりあがってきたくすぐったいものを抱えるように腹を抱えて笑ったが、ジョウはそういえばこんな風に二人で笑ったのはどれくらいぶりだろうかと考えた。


    ************

    ひとしきり腹を抱え笑って、新しく注いだコーヒーで一息を付いたジョウは、ふと何かに気づいたような目でタロスを見遣った。
    そしてタロスにその何かを口走ろうとして、その口を噤ぐ。

    ほんの僅か。
    少しだけジョウは躊躇するように地面に視線を落とし、今失われた言葉を探すように己の足元を見つめた。
    胸の奥になにかが引っかかっている。
    チクリチクリと鈍い痛みを出す発信源は、ここだここだここにいる、とその存在をしきりにジョウに主張してきた。

    これは何だ。
    ジョウはタロスをジッと見つめながら、記憶の奥底を探っていった。







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