| しばらく無言のままジョウの後を見送っていたアルフィンは、不意に電池が切れたようにその場にしゃがみこんだ。
顔が熱い。 心臓が早鐘のように鳴っている。
なのに思うことと言ったら、
ナンダ、アノオトコノカチホコッタカオハ!
ということだった。
くそぅ。 このあたしが負けるなんて。 あのジョウにしてやられるなんて思いもしなかった。 ジョウに触れられた額が熱くて、そして身体はそれ以上に熱をもってふわふわしている。 よりにもよって仕事の前に。 よりにもよってクリスマスのその日に。 こんなことを仕掛けてくるとは思いもしなかった。
アルフィンは真っ赤に火照った顔を両手で挟み込み、蹲りながら呻き声を洩らした。 「…しゃい」 みてらっしゃい。 絶対にこのお返しをしてやるから。 絶対に負けやしないわよ。 あなたをびっくりさせて、おろおろさせて、そしてとびきり喜ばせてあげる。
アルフィンは両手の指の隙間から、嬉しさで滲んだ碧眼を覗かせて油断すると緩んでしまう頬を噛み締めた。
「負けるもんですか!!」
そして手早くシンクの中の食器を片付けると部屋に戻ってクラッシュジャケットをクローゼットの中から取り出した。
見 て や が れ ! !
−−−−−−かくして今日も銀河系のミューズは戦場に向かう。
HAPPY MERRY CHRISTMAS
「KISSで溶け出す角砂糖」
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