| 初めてだった。 記憶に、ある限り――。 抱き締めてくれた。 あたしの力を知っても、優しく頭を撫でてくれた――。
そんな人、いなかったよ。本当に、いなかったんだよ――。 悲しいと思って泣いた事は、たくさんあった。数え切れないほど、たくさん、たくさん――。
でも。 嬉しい時にも泣きたくなるなんて、あなたに会って、あたし、初めて知ったんだよ――。
大好きなあなた。 あったかいお日様の光のような、綺麗に透き通るサラサラの金色の髪。 絵本に出て来るお姫様みたいな、とてもとても綺麗な顔――。 こんな綺麗な女の人って、見たことない。 抱き上げられて逃げる最中、恐いオジさん達に追われているのに、あたしはそんなことを思ったりしたっけ――。
泣かないで、アルフィン。 あたしね、嬉しいの。
両親に嫌われて以来、初めて好きだと思った、たった一人のあなたの為に、役に立てたことが本当に嬉しいの。 生きてて良かったって、生まれて初めて、思えたの――。
綺麗なアルフィン。 優しいアルフィン。 超能力なんか使わなくっても、その心がすぐに判ってしまう、誰よりも真っ直ぐな心を持つアルフィン…。
「ソニア、しっかりしろッ!」 アルフィンの大好きなジョウが、あたしの手を把る。おっきい手だね。おっきな手で包まれると、こんなにいい気持ちになるんだね…。
ホントは言わなくてもいいことなんだけど、何故だか口が勝手に動く。 「ジョウ…。アルフィンをたいせつにするのよ」 とても苦しいのに、笑って言えたことが嬉しくて。 「あたし、あなたたちに会えて、本当に良かった」 心の底から、言葉が湧いて出た――。
アルフィンが、あたしの名前を呼びながら、顔をすり寄せてくる。 ――あったかい。あったかいよ、アルフィン。でもどうか、そんなに泣かないで――。
…眼が、かすむ。あたしの命が、終わりかけてる………。
…言ってあげなくちゃ。 アルフィンが、綺麗な見掛けからは判らない、本当の勇気を持っているアルフィンが、それなのに怯えて聞き出せないでいる、愛する人の本心を――。
「アルフィン…。ジョウはあなたをあ…」 「ソニア――!」
アルフィンとジョウが、あたしの体を抱いている。泣いて、いる――。 あたしは宙に浮いて、ぼんやりとそれを眺めている――。
…ごめんね、アルフィン。 最後まで言えなくて――。
でも。 でもね、アルフィン。 近い将来、あなたはきっと知るはず――。 ――あなたの愛する人の胸の中は、あなたへの想いで一杯だってこと――。 なんだかふわあと、溶けていきそう…。 あの世とか言うところに、行くのかな…。 あの世って、みんなが言ってたみたいに、本当に神様がいるのかな…?
…ねえ。 もし、本当に神様がいるのなら――。
お願い、聞いてくれませんか――?
あのね…。 今度生まれるとしたら、あたし、アルフィン、の………。
fin.
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