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■1764 / inTopicNo.1)  溶解体質
  
□投稿者/ とむ -(2009/04/22(Wed) 22:24:04)
    「…あっちい」

    ギラギラと照りつける太陽の下、サングラスをかけ、むっつりした顔のまま手元のレポート用紙を睨みつける。ビーチパラソルの陰でデッキチェアに腰を下ろし、手元にあったクリーム・ソーダに手を伸ばすと、カララと涼しげな音が氷を揺らした。そのやや青みがかった、透明の液体を喉に一口流し込むと、彼は「あめえ」と僅かに眉を顰め呟いた。もともと普段の彼は、ブラックコーヒーしか飲まない。こんな甘ったるい飲み物は胸焼けがして仕方がないのだ。
    もう、飲まない。
    そう決めて手元のレポートに目を戻した時、いきなりむき出しの背中に何かが「ぺたり」と貼りついた。うわあ、と叫び出しそうになるのを堪えて振り向けば、そこにはこの飲み物を注文したきり、さっさとプールに飛び込んでいった黄金の頭がある。
    あーつーいーなどと言いながら、その小さな頭をぐりぐりとジョウの背中に押し付けていた。
    おいこら。やめろ、暑いというのならべたべたひっつくのを止めればいいだろ、と言おうとするが、なにやらその小さく押し付けられる感触がどうにも嬉しくて堪らない。知らず緩んでしまう口元を結ぼうとしても、果たして美味く出来ているかどうか自分でも怪しい限りだ。
    やがて、彼女はデッキチェアにおいてあったクリーム・ソーダを見つけ、「あ、きてたんだ」とそのグラスを手に取った。そして、ほんの一口、炭酸の液体を火照った身体に流し込んだ後、スプーンも何も使わないまま、ソーダ水に乗っかったアイスクリームにその小さな口を近づけた。軽く目を細めながら口を開け、少し出したピンクの舌先を器用に動かしてアイスクリームを絡め取る。その後、満足げにデッキチェアで足を組みなおして背伸びをしたかと思うと、「ふー、美味しかった。ジョウ、あとは全部あげるわ」と言って、プールの中にいるリッキーに「いくわよー!」と声を上げ、くるりと踵を返した後、わき目も振らずに煌めく水面にダイブしていった。

    「………」

    あっけに取られて、その様子を見ていたジョウは、ぽつんとパラソルの下に取り残されたグラスに視線を落とす。
    そこには、たった今彼女がつけた跡が残るアイスクリームの残骸。
    彼女の体温でとろりと溶け出した彼女の口型。
    ごくりと喉が鳴り、体温が一気に上昇した。
    暑い。これは夏の暑さのせいなのか、それとも彼女のつけた口型のせいなのか。どっちにしても、こんなものを食べたら本当に身体が溶けちまうかもしれないと、ありえないことをジョウは真剣に考えた。
引用投稿 削除キー/
■1765 / inTopicNo.2)  Re[1]: 溶解体質
□投稿者/ とむ -(2009/04/22(Wed) 22:27:44)
    気持ちは分かる。かも?






    (2007.5.27UP/2009.4.23改稿)

                                                                                           「溶解体質」

fin.
引用投稿 削除キー/



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