| …キャアアアアアアアアア!!!!!!
ひと仕事を終えた後のまったりとした食事中の出来事。 その甲高い叫び声は、広い<ミネルバ>の中に長く長く響き渡った。
「な、ななななななな、何やってんのよぉジョウったら!!」
「は…?何って。ちょいとソースをこいつの中に…」
「ちょ、ちょっと止めて頂戴!…ソース?!ソースって何?!なんでソースが出てくるのよ、そのまま食べなさいよ!」
「いや、だってカレーにソースをかけるのって美味いだろ」
「馬鹿!そんなことしたら、せっかくのスパイスの香りが吹っ飛んじゃうじゃない!ああ!信じられない、そんなにドボドボドボドボ…!かけるな!何もかけないで!!やめてやめて、どういう舌の感覚してんのよ、もー!!」
「な…!余計なお世話だろ。俺はガキの頃からこうやって食ってんだ。どういう食い方しようが俺の勝手だ!」
「なん…!あたしが今朝どれだけ苦労をしてこれを仕込んだと思ってんのよ!仕事から疲れて帰ってくるあなた達に、せめて手作りの美味しいものを食べさせてあげたいからこその努力でしょーよ!せめて一口くらい、味を見てから味を変えたり加えたりすれば?!ねえ、タロスも何とか言ってよ!タロス………って、キャーーーーーーーー!!!!」
「なんじゃ、今度は!!」
「タロス、何やってんの!!!」
「何って…、スープを飲んでるだけだぜ?」
「なんで野菜スープにビネガーを入れるのよお!」
「いや、味がすっきりするかと思ってな。年をとるとあっさりしたもんが食いたくなっていけえねえや。結構イケルぜ、食うか?」
「食うか!!それにライスを浸すのもヤメロ!!もー嫌!!せっかくのディナーがぁあああ!!」
「うんうん。二人とも酷いよね。アルフィンが頑張って毎日作ってくれてる夕飯をさ。俺らはこのままが一番美味いと思うよ。この様々なスパイス達が奏でる味のハーモニーは、もう絶妙としか言えないね。これが分からないなんて絶対損してるよ二人とも」
「…アンタって子は…。分かってくれるの…」
「あったりまえじゃん。この前出してくれたお茶もすんごく美味かったなー。あんなの初めて飲んだよ。フレーバーティーっていうの?なんだっけあれ。あのバナナだかイチゴみたいな味のやつ」
「……………マスカット…」
「「「……………」」」
無駄なフォローは命取り。
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