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■24 / inTopicNo.1)  夜をぶっとばせ!
  
□投稿者/ う〜ろん -(2002/02/14(Thu) 23:36:50)
    ☆この話は「Sweet Child Of Mine」の続きであります☆


          ☆☆☆     ☆☆☆    ☆☆☆    ☆☆☆


    『今夜のライブのあと、「ハードロック・カフェ」にシルヴァヘッドのメンバーがお忍びで現れて、セッションをするらしい』
    ライブ会場で、隣のロングヘアの兄ちゃんが小声で話していたのを、おいらは聞き逃さなかった。こんなチャンスはめったに無い! これは行くっきゃない! ハードロック・カフェはここからすぐ近くだし、どうせ今夜は朝までオールで遊びまくる予定だ。早速おいらは、ライブの後で待ち合わせの約束をしていたジョウに電話した。
    「そうゆう訳で、このままハードロック・カフェに行ってくる。兄貴達はこれからどうする?」
    「そうだな…。後で俺達も行くかも」
    「あんだよ〜 気きかせてんだからさ、アルフィンと二人でどっかへ行ったら? 朝までたぁ〜っぷり時間はあるぜ! 兄貴!」
    「はぁ? ほっとけっ!!」
    速攻で返事が返ってきた。くくくっ。照れることないじゃん、兄貴♪ 
    一応、明日の朝、サイラスの宇宙港で待ち合わせの約束をして、おいらは電話を切った。


    ドアノブがギターの形の扉を開けると、カフェの中は噂を聞きつけた人でいっぱいだった。みんな耳が早いや。でっかい音でハードロックがガンガンかかってる店内は、かなり広い。壁や天井にはビンテージのギターやベースが飾られていて、ちょっとしたライブができるスペースや、VIP専用?のブースもある。
    もう腹ぺこだったから、ハンバーガー(こいつが無茶苦茶デカイ!)とコーラを注文して、店の中央にあるステージの前に陣取った。まわりのみんなも、さっきのライブを見てきた連中ばっかりだ。感想を言い合ったり、プレイされた曲を歌ったりしてるうちに、みんなどんどん盛り上がってきた。こんな小さなステージでライブをやるなんてめったにないだろうし、今夜カフェにいるファンは超ラッキーだよな! しっかし、ほんとにメンバーが現れるのかなぁ… なんか信じられないや。
    期待でざわめくなか、後ろから誰かがおいらの肩をポンと叩いた。
    「おい、リッキー」
    「あれ? 兄貴かぁ。こっちに来ちゃったんだ?」
    振り向くとジョウだった。アルフィンも、もちろん一緒だ。なーんだ、結局、二人してカフェにやってきたのかぁ。
    「なんだ。来て悪いか」
    「せっかく気を利かせ・・・」
    「大きなお世話!」  
    全部言わないうちに、ぴしゃりと止められた。ま、お世話なのはわかってますけどね。 
    「リッキーだけにいい思いさせとくの、もったいないもん! あたしだってお忍びライブ見たかったんだから!」
    アルフィンは上機嫌だ。
    ふ〜ん。さっきまでのビミョーな空気のふたりじゃなくなってる。ま、ライブの後って気分が高揚して、不思議と素直になれちゃうもんだからな。
    「リッキー、美味しそうなの食べてるじゃない。あたし、もうお腹ペコペコよぉ!」
    おいらが食べてるでっかいハンバーガーが、アルフィンはうらやましそうだ。
    「おいらはココでメンバーが出てくるのを待ってるから、兄貴達は食事してきたら?」
    「なんか食べようよ、ジョウ」
    「そうしよう」
    ジョウとアルフィンは店内のテーブル席へ移動した。



    「わっ!すっごい量! あたし、こんなに食べられないかも…」
    俺達が注文したハンバーガーのセットが運ばれてきたのを見て、アルフィンがびっくりしている。彼女はきゃしゃな体に似合わず結構食べるんだが、男の俺でも腹いっぱいになる位の、ボリュームがあるセットだ。たっぷりと野菜やチーズが挟んである特大ハンバーガーと、ボウルいっぱいのサラダ、山盛りのフライドポテト、Lサイズのコーラ。いくら腹ぺこだっていっても、これを全部平らげるのはたぶん無理だろうな。
    「食べきれなかったら、俺が食ってやるよ」
    「うん」
    言うが早いか、ハンバーガーをパクつきはじめた。
    「美味しい!」
    にっこりと顔をほころばせる。相変わらずいい食べっぷりだ。
    俺もハンバーガーを口に運びながら、昨日のフランキーの事を思い出していた。
    あの時、リッキーがアルフィンのことを俺の彼女なんて紹介したから、フランキーが面白がって「あのこと」を喋ったのかと思ったが、どうやら違うようだ。よかった。もしも「あのこと」がウチの連中にバレたら、この先ずっとネタにされて、からかわれることは目に見えているからな。ネタが広がってヘンな噂になったら、もっとたまらん。それだけは勘弁してくれって感じだ。なにしろあのフランキーがからんでいる・・・。
    しかしなぁ…。あのことは言わなかったにしろ、えらいことを吹き込んでくれたぜ。いやえらくはないか。―――むむむ。どうせ冗談だし、別にいいか…とも思ったが、考えてみると、そのうちアルフィンに突っ込まれて「あのこと」が、芋づる式にバレてしまうような気がする。ちょっとまずいか…。ま、俺に後ろ暗い所はないから、かまわないって言えばそうなんだがな。
    ・・・・・・さっきは咄嗟に、なにも言わせないようにしちゃったけど。
    だいたいフランキーは、人をからかって、その反応をみて喜ぶようなところがある。つくづく悪趣味だぜ。
    サラダをつつきながらぼんやりと考えていると、アルフィンが大声で俺を呼んだ。
    「ジョウ! ねぇ、ジョウってば!」
    「・・・・・ん?・・・あぁ」
    ハードロック・カフェの店内は大音量でロックがかかっている。テーブルを挟んで向かい合わせに座っている俺達でさえ、かなり大きな声で話さないと、聞こえないくらいだ。
    アルフィンは碧色の目を大きく見開いて、さらに続けた。
    「あれ、見てよ!」
    俺はアルフィンが見つめる方向に振り返った。
    「あれは…! フランキー!?」 
    驚いた。ステージ前に陣取っているリッキーに、フランキーが何事か話し掛けている。なんでフランキーがここに…?サイラスにいるんだ? 昨日、ドルロイで偶然会ったばかりだってのに!
    「あ、こっちに手を振ってるわ」
    リッキーが俺達の席のほうへ指差すと、フランキーはこっちに向かって大きく手を振った。あちゃー。なんで席を教えるんだ! 黙っとけよ! ったく…リッキーの奴、気がきかねえな。
    間もなくヤツは妙に優雅な足取りで、店内の人なみをかき分けて俺達の席へ近づいてきた。
    「ハァイ!ダーリン♪ アルフィン! また会えたわね! びっくりだわ♪」
    誰がダーリンだよ…。フランキーは、俺じゃなくてアルフィンの隣の席にするりと腰をおろした。う。イヤな予感が…。
    「やっぱり、あたし達って縁があるのねぇ。そう思わない?アルフィン」
    「え、ええ」
    フランキーは、女より女っぽい仕草で煙草に火をつけた。その様子をアルフィンは目をパチクリさせて見ている。こんな強烈なオカマと親しく話すのは、多分はじめてだろう。無理もないぜ。
    昨日会ったときはピンクのクラッシュジャケット姿だったが、今日は体にぴったりとフィットした派手なシャツに、皮のパンツにバイカー・ブーツ、でかいシルバーのクロスが胸に輝いている。クラッシュジャケット姿に比べたらシックな感じだが、なんだか「その手の方」という空気が漂うファッションだ。なんとなく判っちまうんだよな。
    「あたしもさっきのライブを観てきたのよ〜 すっごい良かったわね! 最後のアンコールの曲なんて、もうっもうっ最高だったわっ! 胸がいっぱいになって感動しちゃった♪」
    勝手にテーブルの上のポテトをつまみながら、朗々とおかまいなしに喋りつづける。ライブ会場で会わなくてすんだのは、せめてもの救いだったが…。もう頼むから早くどっかへ行ってくれ。
    「ねぇ、アルフィン。昨日も言ったけどさ、うふ。」
    フランキーはいたずらっぽい目をして、俺を見ながらアルフィンに言った。
    「ジョウってキスが上手じゃない?」
    げ…げほっ… こ、このおっさん、何を言い出すんだぁっ?! 俺は飲んでいたコーラを半分吹きだしそうになったが、なんとか耐えた。アルフィンはなにも答えられず、頬を染めてグラスを持ったまま固まってしまった。
    「おいっ!フランキー!!」
    「いいじゃない照れなくても。上手いはずよぉ」
    「やめろって!」
    思わず声をあげる俺を無視して、フランキーはニヤニヤしながらさらに続けた。
    「あたしがファーストキスを奪った相手は、キスが上手くなるってジンクスがあんのよ」
    ア、アホっ! よりによって、張本人がアルフィンに言わんでもいいだろうがっ!
    「ええっ? それって…??」
    大きな瞳をさらに丸くして、アルフィンが小さく叫んだ。待て!誤解だ!
    「そ。あたしが奪っちゃったの。ジョウの最初のキスは」
    フランキーは俺の飲みかけのコーラを横取りして、一気に飲み干した。舌なめずりをして、ニヤっと笑う。俺の背中で悪寒が全力疾走した。―――――ぞぞぞぞ。
    「・・・・・最初って・・・ジョウ・・・まさか・・・」
    アルフィンが俺に向き直って言った。碧色の瞳は、一瞬で不安と疑惑の色に変化した。
    「アルフィン!違うって! 俺は絶対、そうゆう趣味じゃない!」 
    「そ、そうよね… 違うわよね?」
    当たり前だ! 冗談じゃない、俺は完全にノーマルだ!
    「おいっ! フランキー! 何とか言ったらどうなんだ!」
    俺とアルフィンの様子を面白そうに眺めやがって…。人をおちょくって何が面白いんだ!
    「…くくくっ。はいはい。ちゃんとホントのこと言うわよ。そんなに怒らなくたっていいじゃないの」
    フランキーはクスクス笑いながら、ふわ〜っと煙を吐いた。手にした煙草のフィルターについた赤い口紅の跡を、俺とアルフィンはじっと見つめてしまった。
    「大昔のことよ。6年か7年…そんくらい前。ジョウのチームと一緒に仕事したことがあったのよ。その時、あたし大失恋したばっかりでね、かなりブルー入ってたの。仕事が終って打ち上げしたんだけど、やけ酒してかなり酔っぱらっちゃって。そばに座ってたジョウにからんで、無理やりキスしちゃったのよ〜」
    ――――うぅ。思い出したくもない。俺の「消し去りたい記憶ベスト3」に入れてもいい。
    「ジンクスってのはね、あたしがそのあとコーチするから上手くなるってコトなんだけど、ジョウはあの時だけだから、安心なさいな♪」
    からからとフランキーが笑った。げっ…コーチなんかされてたまるかよ! 俺は訳もわからずフランキーにからまれたんだぞ。
    「あたり前だ! あの時だけに決まってんだろっ!」
    俺の剣幕にアルフィンも納得したようだ。「うんうん」と頷いた。しかしフランキーは追い討ちを止めない。
    「でもさ、ジョウってすごいシャイでしょ? 違う? あたしが最初に奪っちゃったせいなのかなって、ちょっと気にしてたのよね〜」
    アルフィンがよこ目で俺を見た。そりゃ俺は、その手の話はどっちかつーと苦手だが、んなこと関係ねぇだろ!
    「ま、それも要らぬおせっかいのようね。アルフィンみたいな「可愛〜い彼女」がいるんだし」
    フランキーが艶っぽくウインクを投げると、アルフィンは赤くなってうつむいてしまった。
    ・・・・あぁ!そのとうりだぜ! このおせっかいめ!
    「おっさん! もういいかげんにしてくれっ」
    「失礼ねっ! おっさんってなによ! あたしはオカマよ! お姉さんって呼びな!」
    お姉さんは、すぅっと目を細めて啖呵を切った。へっ。
    「だけど、ホントはおっさんじゃねえか」
    「ぁんですってぇっ!!」
    反射的に椅子から腰を浮かせ、眉をきりきりと逆立てて、フランキーは俺をにらみ返した。いつもやり込められているからな。今日は言わせてもらうぜ。
    「だいたいな、あんたはしょっちゅう俺のチームをひっかき回して、そのうえタロスまで追いかけまわす!! いいかげんにしてくれってんだ!」
    「タロスを追っかけるのは、あたしの勝手だわ! 愛は止められないのよっ」 
    ぷいとそっぽを向いて、嫌味っぽく足を組み直した。オカマってのは、どうしてこう、芝居がかってるんだ? 
    「あぁ!タロスに会いたいわぁ。昨日はちょっとしか会えなかったし〜」
    昨日、タロスは宇宙港でフランキーに襲われて、かなりグロッキーな様子だった。今ココにタロスがいないのは、まさに不幸中の幸いと言っていい。マジでラッキーだ。
    気がつくと、山盛りだったポテトはいつのまにかフランキーの腹の中に収まってしまい、俺とアルフィンは小さくため息をついた。どうにかしてくれ。
    その時、ステージの方から歓声が上がった。どうやらシルヴァヘッドのメンバーが現れたようだ。ステージの真ん前で待ち構えていたお客から、さかんに声が飛ぶ。俺達の周りでも、席を後にしてステージへ向かう人がいっぱいだ。フランキーもすくっと立ち上がって、俺達に向き直った。
    「あら! メンバーが現れたみたいよ♪ こんなことしてる場合じゃないわ! せっかくなんだから、めいっぱい楽しまなくちゃ!」
    演奏が始まってカフェの中は凄いもりあがりだ。フランキーもリズムにあわせてステップを踏みはじめる。
    「今夜はパーティよぉ! イエィ! サイコーッ!」
    フランキーは派手にくるくるとターンして、奇声を上げながらステージの方へ踊りながら歩いていった。店内じゅうの視線を浴びながら満足げに笑う様子に、俺とアルフィンはなかば呆れて苦笑した。
    今夜のハードロックカフェは、一晩中パーティになりそうだった。

     

    結局、俺達3人は明け方までカフェにいて、そのまま朝イチでサイラスを出るドルロイ行きの定期便に乗った。フランキーも朝まで大騒ぎしてたけど、見つからないようにこっそり店を出た。この先当分はバッタリ会わないように祈るばかりだ。まさに「くされ縁」ってやつだからな。
    それにしても、昨夜は調子こいてかなり飲みすぎた。まだ酒が残ってるみたいだ。なんでこんなに飲んじまったんだ。フランキーのことがムカついてたってのもあるが…。
    シートをリクライニングしたら、隣の席のアルフィンがくすくす笑い出した。
    何故かわからないが、昨夜から時々、俺の顔を見るなり笑い出すんだ。酒が残ってるのか?
    「笑うなっつーの!」
    軽く小突くと、アルフィンはいたずらっぽい目で俺を見た。
    「あのこと、絶対バラすなよ」
    「ふふっ」
    ・・・・あのなぁ。しかめっ面をして俺は釘をさした。
    「バラしたら、もうキスしてやんない」
    「えっ、そんなの、や!」



    ・・・・ふ〜ん。
    「あのこと」って何だろう? 気になるじゃん。
    おいらの真後ろの席のお二人さんは、なかなかいい雰囲気。
    ちょっぴり羨ましいかな。えへへっ。
    それにしても、さすがに眠くなってきた。ふあぁ〜。昨夜は一睡もしてないもんなぁ。ドルロイまで4時間くらいか…。一眠りしよっと。
    こうして、おいら達の波乱に満ちたサイラスの休日は終った。
    じゃ、おやすみなさい。


                       END

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