| 「・・・ジョウ?ジョウってば」 「美味いな、これ・・・」
ジョウはフォークを口に運んだ。 嘘ではない。 オードブルですら、このクオリティ。 さすがに豪華客船のディナーだけのことはある。 ついでに、ワインも流し込む。 キンキンに冷えた白だ。 しかも上質。 だが、ゆっくりと味わう気はしなかった。 心の奥底のもやもやを消すかのごとく、ジョウは一気に3杯、流し込んだ。
一方。 アルフィンはアルフィンで、思うところがあった。 ジョウのこの態度の真意・・・それによっては、彼女の積年の思いが報われるかもしれないのだ。食い下がらねば、女が廃る。何としてでもジョウの気持ちを確かめたい、そんな娘らしい欲望がむくむくと頭をもたげた。
先ほどのルークの忠告もどこへやら、グラスを掴むと、やおらあおる。 白い喉がごくり、と鳴る。 ジョウほどではないにしろ、その場には相応しからぬ飲み方ではない。 だが生まれ育ちの良さは、そんな仕草すら優雅に見せてしまう。
それがまた、ジョウには気に入らなかった。
アルフィンの白い肌がほんわりと桜色に染まった。 景気付けの一杯に勇気を得て、彼女は口を開いた。
「ジョウ・・・ねぇ、ルークと私のことなんだけど・・・もし気にしているのだったら」 「関係ない」 「え?」 「アルフィンが誰のことを好きだろうが、誰とつきあおうが、俺には一切関係ないから」
ジョウはキッパリと言い切った。 アルフィンの顔色がみるみる変わる。 淡く火照った肌の温度も、急激に下がる。
「関係ないって・・・・・・ちょっと・・・」 「あ、まったくないわけじゃないか。チームだし。チームリーダーとしては、チーム員の私生活には関与しすぎてはいけないが、無視するわけにも・・・」 「・・・なによ、それ」
アルフィンの声が、ぐっと低くなった。 普段のジョウであれば、彼女をここまで怒らせることは無い。
だが、自分でも良くわからない焦燥感と、急激なアルコールの摂取。 豪華客船というクラッシャーの自分には似つかわしくない場所とその雰囲気。 様々な要因があわさり、ぐるぐると彼の思考回路を掻き乱す。
「あのルークって男、俺からみてもいい奴そうだぜ?容姿端麗、おまけに国王候補になるほどの才覚の持ち主なんだろ?それにアルフィンに接する態度も良識ある大人って気がする。アルフィンもあの男を随分と慕っているようだし・・・そうだな、結構お似合いとも言えるのか・・・」 「ジョウ!」
アルフィンは立ち上がった。 唇がふるふると震えていた。
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