| 着ている服を剥ぎ取られたリッキーをモデル(!?)にして、仲居は浴衣の着方を実践し始めた。 「えー、まず、浴衣を着て頂きまして、合わせは左を上にして下さい。右を上にすると、死装束になりますから。」 「死装束?」 3人は仲居に聞き返した。 「はい。日本では、亡くなった方に真っ白な着物を着せてお送りするんです。生きている者とは反対の合わせにして。」 「ふーん。」 そう言っているうちに、 「あとは、帯を腰の所で調節して、結んで出来上がりです。お寒うございましたら、羽織もご用意してありますので、どうぞお使い下さいませ。それでは、私はこれでお暇致します。御用のございます時には、フロントの方へご連絡ください。」 「あ、ありがとうございました。」 3人は礼をいうと、ぺこと会釈を1つして仲居は離れから出て行った。 「あ゛ー、えらい目にあった・・・。」 リッキーはどかっと畳の上に大の字に寝転がった。 「お似合いでしたぜ、着せ替え人形のお坊ちゃん♪」 さっそくタロスがリッキーをからかい始めた。 「あ゛んだとーーーー!タロスじゃでか過ぎて、仲居のおばちゃんが敬遠したんだよ!おいらが、ちょうどよかったから、しかたなしに協力してやったんだい!!」 あぁ、リッキーフォローになってない。 ギャーギャー2人が騒いでる所に 「あのー、失礼します。」 番茶の声がした。 「ご夕食は8時30分からになっておりますので、皆様、温泉で一汗流してこられてはいかがですか?えっと、お食事はお部屋で取って頂きますので、前後にはお部屋の方にいらっしゃって下さい。」 説明が終わると、 「番茶〜、なんでわざわざ車、それもタイヤ付き(おまけにチェーンき!)のめんどくさいツアー組むの?会社命令なのかい?」 いつの間にかタロスとのケンカを辞めたリッキーが番茶に聞いた。怒る気はうせ、呆れたよな言い方で聞く。 「いえ、其の方が、秘境に来た〜って、気になるでしょ?それに、会社命令ではなく、私の提案で始まったツアーなんですよ。でも、こんなに面白そうなツアーなのに、お客様のうけが今ひとつなんですよねー。どうしてでしょうか?」 不思議そうに聞いてくる番茶。 3人はこいつは鈍いんじゃなくて、人並みの感覚を持っていない事にようやく気がついたのであった。 「・・・一週間、持つんだろうか。」 ジョウはガックシと頭を垂れた。 「そう言えば、アルフィンさんがいらっしゃいませんね。どうしたんですか?」 妙にそわそわして、番茶が聞く。 「ああ、アルフィンは浴衣部屋に篭ってて、まだこっちへ来てないんだ。」 ジヨウが番茶にそういうと、 「浴衣を着られた彼女は綺麗でしょうね〜♪」 ・・・うっとり。アルフィンの浴衣姿を想像でもしているのだろう。自己陶酔している番茶であった。 ああ、そうだった。こいつはアルフィンに一目惚れしてたんだった。その姿を見て、3人は思い出した。リッキーとタロスは、怖いもの知らずだ。なんて恐ろしい・・・。と思ったが、ジョウだけはちょっとムッとしていた。 そこへアルフィンが深い紺色の生地に白百合をあしらった浴衣を着て入ってきた。 「ね〜、どう?」 4人は息を呑んだ。それほどその浴衣はアルフィンに似合って、彼女の美しさを引き立たせていた。 「き、綺麗ですぅーーーーー!!」 いの一番に番茶が答えた。 「あら、嬉しい。ありがと、番茶さん。」 嬉しそうにアルフィンが微笑む。 「い、いえ、本当にそう思ったんです。本当に綺麗です。はい、良くお似合いですぅ〜。」 番茶はアルフィンに礼を言われたもんだから、舞い上がってしまっていた。顔は真っ赤になって、興奮している。 「ねぇ、あんたたちは?」 アルフィンは3人に向き直って聞いた。 「え、に、似合ってるよ、いいじゃん。」 「ええ、よく、似合ってますぜ。」 タロスとリッキーは差しさわりのない返事をしておいた。(じゃないと、後でとんでもない目に合うのが怖かったのだ。) 「・・・ジョウは?」 一番褒めてもらいたいジヨウに、アルフィンは上目遣いで尋ねた。 「ああ・・・、いいんじゃないか?」 そっけない返事である。本当は綺麗だ、の一言も添えてやればいいのだろうが、番茶の言葉にちょっとムカついたジョウは、それしか言わなかった。 「うーん、つまんない!!」 一番気にして欲しいジョウがそっけなかったので、アルフィンの機嫌が悪くなった。 「・・・皆様、私は母屋のガイド専用室におりますので、何かあったらお呼びください。」 どよーんとしてきた空気が分かったのか、番茶はそうそうに離れを後にした。
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