| 夕食の支度を終えたアルフィンは、リビングにひょこっと顔を出した。そこではタロ スとリッキーがテレビを見ながら寛いでいた。 「あれ、ジョウは?」アルフィンは小首を傾げて二人をみた。 「夕飯の支度が出来たんだけど。まだ、レポート書いてんの?」 「いや、気分転換するって言って散歩に行ったよ。そういや、ちょっと遅いなー」 リッキーが伸びをしながら答えた。 アルフィンは口を尖らせ窓に歩み寄る。せっかく時間をかけて腕を揮った料理の味が 落ちてしまう。しかし、ジョウ抜きで先に食べる気にはなれなかった。彼女はカーテ ンを手で少しずらすと外を何気なく見た。が、途端に驚きの声をあげる。 「やだ、土砂降りよ。」アルフィンは振り返って叫んだ。 「んも〜。ジョウってば何処行っちゃったのかしら!」 「さすがウェザーコントロールしてない星だな。突然降りやがる」 タロスがのそりと立ち上がるとアルフィンの横に来た。彼も外を覗き見る。なるほど 大雨だ。おまけに風も強い。昼過ぎまでは晴天だったとゆうのに。昨夜に到着した惑 星ヤーヌスは開発が進んでおらず、滞在するには些か不便な所であった。 「感心してる場合じゃないでしょ!」アルフィンは柳眉をキリッと上げタロスを睨む。 「なんで貴重な休暇の三日間もこんなトコにいなきゃなんないのよ!これじゃ、迂闊 に外へ出らんないじゃない!」 「まぁ、まぁ。ココでクライアントと落ち合うのが、一番無駄が無くて良かったんだ から」タロスはなだめる口調になった。 「ジョウは独りで良いって言ったんだがな。ここんとこ無理してるから、ちっとは俺 達も気にしてやらんと。いくらジョウでも身体を壊すぜ」 そう言われると、アルフィンも黙るしかない。彼女とて気付いているのだ。だからこ そ、ホテルではなくキッチン付きのコテージでの宿泊を主張した。自分に出来る精一 杯のこと。栄養のある料理で彼を労わりたかった---密かに愛情をたっぷり込めて。 アルフィンが不満を口にしたのは、それが肩透かしを食ったためだった。なにせ、幾 晩もかけてメニューを考え、今日は昼過ぎからキッチンに篭っていたのだから。 そこでアルフィンはふと気付き眉をひそめる。怒気が収まると、キッチンで料理して た身体に室内の空気がヤケに冷たい。彼女は腕を抱えて呆れた声を出す。 「ねぇ、あんた達。いいかげんにクーラー切ったら?」 「へ?」リッキーは目を丸くしてあたりを見回した。 「クーラーなんてかけてないぜ」 「そーなの?リッキー、あんたは寒くない?」 「う〜ん。俺ら達、ずっといっからなー。言われてみれば、なんか冷えてきたなぁ」 「呑気ねぇ」 アルフィンは肩を竦める。そして、コーヒーでも入れようとキッチンに向かった。と、 その足が止まる。彼女は振り返り、タロスとリッキーを交互に見た。 「ね、これじゃ、外かなり寒くない?ジョウ、ほんと何処に行ったのかしら?どう考 えてもずぶ濡れで帰ってくるわね・・・」 そこへ。 ピンポン・・ピンポン! 忙しなく、チャイムが響く。 アルフィンの頭からコーヒーなど消し飛ぶ。ドアに駆け寄った。 「ジョウ?」 ドアを開けると、倒れこむようにジョウが中に入ってきた。予想通り、ずぶ濡れだ。 「・・・・」 ジョウは閉じたドアに、精根尽き果てた様子でもたれかかる。俯き加減で呼吸を整え ていた。アルフィンはそんな彼を見つめたまま立ち尽くしていた。 すると。ジョウがゆっくりと面を上げてアルフィンを見た。 「-----タオル、くれ」 「え、ええ?」アルフィンは我に返る。 「も〜、何してたのよぉ!いい?タオル持ってくるから、そこにいるのよ!」 叫ぶように言うと、アルフィンは返答も待たずにバスルームに走って行った。 「・・・」 タロスとリッキーは顔を見合わせる。そして、同時にジョウに目を向けた。 「-----兄貴、何してたんだよ」 リッキーが呆れ顔で言う。それに対し、ジョウは方をすくめて見せた。 「ちょっと、な」 「ちょっとじゃ、ないですぜ」タロスは心配顔だ。 「ここの気候じゃ、体調崩しますぜ、無茶すると。どうしたんです?」 「少し、遠出したら雨に降られただけだよ」 ジョウは濡れた髪をかきあげた。ついでにびしょ濡れのシャツも脱ぐ。 「-----まいったぜ」 「大丈夫ですか?かなり疲れた様子見えますぜ。この雨ン中、走ってきたんですかい?」 「うっ。いや、それもそうなんだが・・・」 ジョウの返答は歯切れが悪い。タロスが心配げに何か言いかけたが――――― 「ジョウ!」 アルフィンの声に三人はビクッとする。彼女が駆け寄ってくると、リッキーとタロス は反射的に後ろに下がって道を開ける。もちろん、アルフィンは二人には目もくれな い。腕には数枚のバスタオルを抱えていた。 「ほら、コレ」 「ぶっ」
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