| 早速ご投稿くださいました名も無きゲーマー@Izumo様、 そしてこちらにおいでの皆様。 管理人をやっております『なつ』でございます。 ご来訪頂きまして有難うございます。 文章書きもサイト運営もまだまだ至りませんが、 今後も機会がありましたらおいでくださいませ。 お待ちしております♪
で、前に書いた砂吐き(爆)駄文のパラレルをその後書きました。 言い訳じみてますが…枯れ木も山の賑わいとゆーことで(ごまかすなよ)。 なんでもアリかと思ったけど、実はこういう書き方ってむずかしいのね(^◇^;) ------------------------------------------------------ いつものようにリビングルームの灯りを消してジョウはドアを閉めた。彼の目にがたがたと震える、先に自室へ行ったはずのアルフィンが映った。彼女が指しているのは赤いクラッシュジャケットを着た若い女性と青いクラッシュジャケット姿の青年。 あれは…。 彼も自分の目を疑った。アルフィンが悲鳴に近い甲高い声で喚く。 「あ、あたし!あたしがいる!ジョウっ、どうなってるのよ!」 「俺が知るか」 ジョウは吐き捨てるように言う。 まばたきもせず、ジョウの視線もふたりから動いていない。 アルフィンはジョウの腕を掴んで引っ張った。 「ねえ、ここミネルバよね?ジョウの船でしょ?ねえ、ジョウ!」 「落ち着け、アルフィン!」 「落ち着けって言われても落ち着けるわけないじゃない!」 「だからってどうにも出来ないだろう!」 アルフィンにつられてジョウの声のボリュームも上がる。 「どうにもって…!…どうしよう。ジョウ、なんとかして!」 「なんとかできるかよ。…しばらく見てようぜ」 「何でそう落ち着いてられんのよ!」 「アルフィン・・・俺たちのこの状態、どう思う?」 「どう・・・」 どこかぼんやりと薄いジョウの姿。足を動かさなくてもなぜか移動できる自分。そして通路の反対側にいる、輪郭のはっきりしたもう一人の自分たち。 努めて冷静に振舞おうとしているがジョウの眼にも困惑と動揺が見える。 アルフィンは黙り込んだ。
“向こう”のジョウが言う。 「アルフィン、寝ないのか?」 「ええ、もう寝るわ」 “向こう”のアルフィンが応える。 “こっち”のジョウとアルフィンは近づくに近づけず、息を詰めて“向こう”のふたりを見ていた。眠りにつく前の、彼らのいつもの行動。 でも。 「あたし…」 「どうかしたのか」 「あ、ううん、なんでもないわ」 なんでもなくは無い。 “あれ”は、あたし? あんな顔、あたし絶対しないわよ。 それにジョウだって。 「…おいで、アルフィン」 「え?」 「ちょっと飲もうぜ」 “向こう”のふたりのやり取りに“こっち”のアルフィンがきょとんとし、“こっち”のジョウの瞳を見つめる。 「…ちょっとジョウ」 「は?」 「ずるいじゃない。お酒、部屋に隠してるの!?あたしが飲み尽くすだなんて失礼なこと言わないでよ!!」 「ちょっと待てよ、おい!アルフィン!」 アルフィンがジョウに掴みかかる。ジョウはその手を避けようとするが、さすがに重力の影響がない上に足場も無い“こっち”では思うように動けない。それでも物心がついた頃には宇宙で暮らしていたジョウはもみ合ううちにコツを掴んだ。 「やめろって!」 手を伸ばし、暴れるアルフィンの手首を掴む。 「痛いわよ!離して!」 「落ち着けよ。俺は言ってないだろう」 「う…ええっ!?」 ジョウの背後。一瞬口篭もった後、目を見開いて真っ赤になったアルフィンにいやな予感がしてジョウは自分の背後に視線をやる。
ジョウの部屋のベッドに腰を下ろしたアルフィンの肩にジョウが腕を回していた。 「!」“こっち”のジョウも息を呑み、真っ赤になっている。 「どうだ、眠れるか」 「眠れると思ってんの」 ちょっと待てよ。なんだ、あれは?俺か?いや、俺はここにいて…。 至近距離の“こっち”のアルフィンを見る。彼女もジョウを見た。思わず掌を広げ掴んだ手首を離した。目を合わせていられない。お互いにあらぬ方向を見る。 ちょっと待て。なにする気だ、“俺”は。 何がしたいんだ?どうして欲しいんだ? ちょっとなんなのよ、“あたし”。 何がしたいの?何をして欲しいの? “こっち”のジョウとアルフィンが揃って真っ赤な顔で“向こう”を見つめている。 「帰るわ、部屋に。」 やがて“向こう”のアルフィンが勢いをつけ、立ち上がった。 「もう、眠れるから」 「ああ」 “こっち”でジョウは胸をなでおろす。 アルフィンも小さく息を吐く。やだ。“こっち”のジョウの顔、見られないじゃない。もう、“アルフィン”たら。 「おやすみなさい。ありがと、ジョウ」 “向こう”のアルフィンの言葉を合図に“向こう”のジョウがしたことに、“こっち”のジョウが叫び声を上げた。 「うわっ!!」 「やだ、ジョウ!なにしてんのよ!いやらしい!」 …“向こう”で。ジョウはアルフィンを抱きしめていた。 “こっち”のアルフィンが甲高い声で騒ぎ、ジョウも喚き返す。 「やったのは俺じゃないだろっ!!」 …少しはあの“アルフィン”を見習ってくれ。頼むから。 それよりそっちの“俺”、早く“アルフィン”を離せ!
「おやすみ、アルフィン」 ようやく。 ジョウはアルフィンを離した。 照れ隠しか“ここ”で“こっち”のジョウに殴りかかったアルフィンも、今はおとなしくことの成り行きを見守っている。ただ頬が相変わらず赤い。 それは“こっち”のジョウも同じだが。 “アルフィン”が“ジョウ”の部屋を出て自室へ戻ってゆく。 彼女はベッドにもぐり込み灯りを消した。 「寝たみたいね…」 「ああ」 「どうしよう」 「どうにもならんだろ」 「…冷たいわね。同じ“ジョウ”でしょ?見習ってよ」 「あれが“俺”なもんかよ」 「!」 「あれが“アルフィン”か?」 「違う!と、思う。けど…」 頭を何度も振るアルフィンに、ジョウは“こっち”で初めて笑顔を見せ、腕組みをして目を閉じた。 「とりあえず、寝ておこうぜ」 「ジョウ?」呼びかけられ、片目だけ開ける。 「寝て起きたら状況が変わってるかもしれない。得体の知れない猛獣の口の中なんてこともありえるがな…まあ、今よりマシだろ」 「いやよ、口の中なんて!ちょっとジョウ!ジョウったらあ!!」 両の目を閉じてしまったジョウを揺さぶった。 しかし、もう寝ると決めたのか彼は目を開けようとしない。 「よく寝られるわね…」 はあ。アルフィンは思わずため息をついた。 全く、なんて神経してるのよ。あたしの理解を超える逞しさ。 でも確かに、ヒステリーを起こしたってあのふたりもあたしたちもどうにかなるものでもない。……何より、あたしはひとりじゃない。 仕方ない、あたしも寝よう。 ジョウから離れてしまわないように腕をとってアルフィンも目を閉じた。
《兄貴、アルフィン、朝だぜー!まだ寝てるんじゃないよなあ!?》 枕もとから響いてくるリッキーの声にジョウは瞼を開いた。 『リッキーか…』 まばたきを数回。 室内をゆっくりと見回す。 見慣れた天井。 見慣れた壁。 そして、デスクの上に少し減ったワインのボトルと乾いた赤ワインが底に残るグラス。 跳ね起きた。 夕べのあれは現実にあったことか? 俺とは思えないほど言いたいことは言い、したいことをしているような“俺”。 そして、言いたいことを飲み込んでいるようで、その実“俺”の口を割ってしまっていそうな“アルフィン”。 …だったら、これから顔を見るはずのアルフィンはどっちの“アルフィン”だろう?どっちの“俺”を見たんだろう? …俺らしくもない。 あんなことが現実にあるはずも無い。 扉の外に出たら聞こえてくるだろう、アルフィンの聞きなれた声が“現実”。
「おはよう、ジョウ!」 アルフィンはいつもの笑顔でそう言った後、わずかに表情を曇らせた。 ジョウの顔より頭ひとつ下から上目遣いで彼の瞳を覗き込む。 「あの…笑わないで聞いてくれる?……昨日の夜のことなんだけど」
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