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■503 / inTopicNo.1)  expedient the cosmos space auction
  
□投稿者/ 柊里音 -(2003/09/16(Tue) 08:41:59)
    え〜と。なんだか言葉のやり取りが果てしなく少なくなってしまいました。
    で。UP迷ってましたが、一応「黒のドレス」とくっつくように書いていたので、
    自己満足のUP。

    めでたいこともあったのでUP。
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■504 / inTopicNo.2)   expedient the cosmos space auction
□投稿者/ 柊里音 -(2003/09/16(Tue) 08:46:30)
    ブルックリー商会。
    いまやネットで行うのが当たり前と思われているオークション。
    それを、古来よりの方式で執り行っている専門業者である。
    ここ最近、この風変わりなオークション法に人気が高まり、ネットで裁くにはどうかと思われる古美術に絵画、手渡しでないと不安になる高価な貴金属、もしくは有価証券証書。そんなものがこの会社で取り扱う品々であった。
    しかしすべてが一般人お断り。キャッシュと趣のある人間にのみ開催される、魅力的なオークション。


    オークションは、ブルックリー商会の自社豪華宇宙客船内にて行われる為人員も厳選される。
    入場を許された、たとえそれだけでもステータスシンボルとなる。それがこのオークション。
    その入場をしめすもの、時代を感じ出させるが如く紙質を考慮に入れた特別な材質で作られたチケットである。
    紙材というものはこの時代なかなか入手できにくいものとして珍種されている。
    その紙の特性を生かし、また劣性を利点とさせ、あらたなる材質をつくりあげてしまったのが、もともとこのブルックリー商会であった。
    この新材質が会社に莫大な利益をもたらし、創設者長年の夢であるオークションを開催するまでに成り上がった経緯があることも忘れてはならない。

    人間はいつの時代も傲慢なもので、ここの会場に入るためのその特別なチケットを窃取する輩が増え、また物がものだけに警備を必要とすること請け合い。

    そこでクラッシャーの出番となる。

    ジョウチームはこの会社のお贔屓さんで、必ずやオークション開催時はお声が掛かるのである。
    もともとは、彼らが開発した新物質を、テラのジュネーブに本拠地を置くとある商社へ持ち込み、商品として売り出すための第一歩を踏み出す際に、護衛を引き受けた事から付き合いがはじまった
    そのときはジョウは今より血気あふれる少年で、アルフィンはもちろん一国のプリンセスとして国事私事に忙しく、ガンビーノは現役。
    リッキーですらまだいなかった。

    全く新しい物質とはいえ、ガンビーノやタロスにしては郷愁を感じさせるような手触り。
    そして強度はポリエチレンなみに強く、折り曲げても折り目がつかない。形状記憶とでもいえばいいのか。自在に折りたため、そして軽い。
    紙は以外とまとまると重いものだが、これは通常の紙の1/5ほどの重さという画期的なものだ。

    社運をかける一大プロジェクトとして決行されそして成功した物質は、その見本品ならびに製作過程を綴ったマイクロチップとともに珍重された。
    そして更なる成功を導き出す為、この新素材を研究開発したブルドレン博士を保護し、途中企業抗争にも巻き込まれながらもテラまで運びきった事を、前任者のロアウド・ブルックリー氏は高く評価した。
    以後なにかの際の取引で護衛や調査が必要な時、そして彼らの時間が合うときには必ず指名を試みてきた。
    それはなかなか困難で、双方の時間が合うときがなかった事が現実ではあるが。

    そしていまやオークションという、秘密業務の遂行よりやっかいな仕事を引き受けざるを得なくなっているのである。

    この仕事はなんにせよ頭を悩ませる。
    4人分割行動にて商品の搬入から、招待客の警備はもちろん行い、それに主は現在の当主であり開催者でもあるトーマス・ブルックリー氏の護衛という事も
    忘れてはならない。
    そうなると、商品についている保険会社のセキュリティーパイロットとの打ち合わせ。
    こういう場に出席するからにはそれ相応の人物ばかり、よって、かれらのSPとの打ち合わせ、という雑務も発生する。

    ブルックリー氏のSPとの打ち合わせにおいては前もってできるとしても、商品保険会社のセキュリティーパイロットとなるともう泣きたくなってくる。
    搬入日当日でしかできかねるからだ。しかも搬入の多事の合間をぬって行わなければいけない。
    招待客のSPとの打ち合わせ。これも前もってできるようでやはりできないのが現状。
    ブルックリー商会の本部を置く惑星アレクに人々が集まり、社所有の豪華客船ベル・エピキュリアンに搭乗したときから。
    それが、彼らの業務契約となるのである。

    やはり搭乗日当日からしかできないのであった。


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■505 / inTopicNo.3)   expedient the cosmos space auction
□投稿者/ 柊里音 -(2003/09/16(Tue) 08:50:52)
    「だあああ〜〜〜〜っ!!!」
    ミネルバのメインブリッジから奇声が響いている。
    その主は、クラッシャージョウチームのリーダー、ジョウその人である。
    「落ち着いて下せえ。ジョウ・・・。」
    しかし、言葉尻からは叫びだしても仕方あるまいという響きがありありとかもしだされていて。
    「まただよ。やんなっちゃうなあ・・・。」
    「ほ〜んと。いいかげん協力してくれてもいいじゃないのよね。」

    SPとの打ち合わせ。
    あちらはあちらでプライドもある。
    それに加えて、オプション的にとはいえクラッシャーがSP共々2重に守るというのは、招待客本人にとってはありがたいことではあるが、それを生業とするSP本人においては、屈辱ともとられかねない。
    当たり前のようにジョウ達が招待客一人一人をガードするわけではない。

    船を丸ごとガードする。

    端的に言うとそういうことだが、そこに各々ガードするものも犇く、その人間達も指導下にいれコミュニケイトすることが効率もあがる。というものだ。
    しかしそれをクラッシャー風情に・・という人間ももちろんいるのである。
    その考えを改めさせようという気持ちはさらさらないのだが、搭乗して出航して帰航する。その間だけでもお互い気持ちよく仕事を終えられるよう協力し合うことすら拒否する人間が居ると言う事が、毎度毎度ジョウの頭を悩ませるのである。

    しかしこの関門をすぎてしまえば。
    あとは時間の経過が仕事を早めてくれるのだ。
    搭乗し、出航までは神経もすり減らす事が多いとはいえ、宇宙に出てしまえばある意味一種の密閉状態。
    入る事を阻止すれば危険も減る。
    そのためにこの日は一番の気をもむ時間だったのだった。
    この日。ベル・エピキュリアンの出航日。


    「ねえ。うなってるのもいいけど、そろそろベル・エピキュリアン出航の用意始まるわよ?」
    金髪をさらりとなびかせて、後部座席から前で頭を抱えるジョウに声を掛けるアルフィン。
    「やり残してる事なかったっけ?」
    赤毛の少年リッキーはおもむろに立ち上がり、アルフィンが見つめていたクリアボードを覗き込んだ。
    それに答えるように。
    「搬入荷物のチェックは終わったわよね?」
    「終わりやした。」
    「荷物のセキュリティ会社のチェックは?」
    「済んだぜ。」とリッキー。
    「セキュリティパイロットの網膜照合は・・と済んだわね。」
    招待客やマスコミ関係者の網膜照合のチェックは・・とジョウに向かって顔を上げたアルフィンは、不機嫌そうな顔つきのジョウと目が合う。
    「す・み・ま・し・た。」
    苦笑いしながらその答えを受け取ったアルフィンは、ベル・エピキュリアンのホールで招待客と談笑を交わしているであろう、クライアントに報告すべく踵を反す。
    「じゃ。私あっちに行くからね。あと宜しく。」
    軽やかに手を振るアルフィンは、エアを吐きながら閉じてゆく扉の向こうに消えていった。



    ここが船の中かと疑いたくなるほど、金に飽かせて作られたベル・エピキュリアンの内部。
    アールヌーボ調な室内は、同様の家具も備え付けている。
    《快楽主義》と名が示すが如くタイムスリップしたかのような船内は、否が応にも期待を膨らませさせる。
    たかだかオークションを開催し、社の広告塔となるが為だけに作られた豪華客船。

    甲板よりのびるゲートからは、すでに身なりを整えた招待客たちが入場をすませたことを示すためか、早々にタラップが収納される。
    船底の貨物搬入口には目を光らせたガードたちが、侵入するものを阻むべくたちふさがっていた。
    そこに近づくアルフィン。
    「ご苦労様です。ブルックリー氏にご報告したいのですが、バンケットホールですか?」所要のための赴き先を訪ねる。
    「はっ。宜しくお願いします。」
    さっと警備をとくことなく、カラダを斜にアルフィンが通れるほどの隙間を作り、業務的にお荷物はお部屋にはこばせますか?と尋ねた。
    そこで足を止め、斜めに顔を向けると、自分の荷物を指し示すような仕草をして、
    「お願いしていいのかしら?」
    と小首をかしげ、愛くるしい微笑みをうかべる。

    その微笑をみてしまえば、たぶん大まかの男はダメなものでもダメとは到底いえないもので、そこに上目遣いという武器まで持ってこられるジョウにとっては、臆するに値するというものであろう。
    当初この顔をされた暁には、おそらく3回廻っておしりぺんぺんしたいくらいの照れくささと恥かしさと、その場で押し倒したい気持ちの混在というものではなかろうか。
    もちろんこのガードマンも大まかな男の例外ではなく。

    近くに居た社員に頼めばすむような用件であるにもかかわらず、ここでの最後の搭乗が済んだ事を確認するや否や、アルフィンの後ろを控えて歩くそのガードマンがいた。手にはいくつかの袋とクラッシュパックを携えて。

    真っ赤なクラッシュジャケットを着用したまま入船したアルフィンではあったが、バンケットホールに入るには正装をしないといけない。
    とはいえ、あくまでもボディガード兼船内の警備という任務も兼ねているので、動きやすくてあまりスカートの裾などにとらわれないものを選んできた。

    この仕事が予定として組みこまれていたため、休暇の折々にお気に入りのブランドショップはもちろん、これというショップを覗いて購入してきていたのである。
    ここ最近特に、肌が露出することに対してあまり良い顔をしない男がいない隙に購入したものであったため、アルフィンの陶器のような素肌を引き立てさせるデザインとなっていた。
    胸のラインを美しく引き出すため、やや直線的に落としてある。背中にかけては大きくひらき、細いリボンが白い背を這う。かなり悩殺的なデザインではあったが、その上をかぶるオーガンジーがとても優しい印象に変え、裾丈も丁度膝あたりか。
    露になった肩から背中にも実は、光沢のある糸で手刺繍が施された大振りのシルクストールを纏うようになっている。

    部屋に入るとそのドレスに着替え、スカートに隠れるように足にレイガンを忍ばせる。、髪を軽く結い上げ目立たぬよう耳にかけるようにイヤホン、髪に隠れるようにマイクを取り付ける。どちらとも装飾品と紛れて傍目にはよく眼を凝らして見ていないと気がつくものではない。
    マイクとイヤホンは腕にいつも取り付ける通信機代わりに取り付けたものであるので、ミネルバからの指示が受け取れるようになっている。
    また、もともと船内は銃器厳禁である。そのため招待客に張り付いているSP達には携帯は許されていない。
    ブルックリー氏自らが依頼したクラッシャーたちにのみその権限が許されている。とはいえ、最低レベルでの使用とその他の火気は厳禁ではあるのだが。

    軽く化粧を施し、いつもとは趣の違うアールヌーボ調のやや大振りなピアスをつけ、アンクレットをつける。ストールを腕にかけ、黒いヒールに履き替える。
    これで出勤準備は完了した。
    部屋を出ると。
    なんと先ほどのガードが待っているではないか。
    「氏がオーナールームにてお待ちです。」
    そう伝えると、廊下の端に移動した。
    「ありがとうございます。職務にお戻りください。」
    アルフィンが一礼し、そう伝えると踵を反して己の職場にもどっていった。
    ボタンひとつで伝えられそうな内容ながら、わざわざ部屋の前で待っていたガードマンはいわずもがな。
    アルフィンの眼力に魅了されてしまった可哀想な一人の男であった。
    しかし当の本人は・・・。
    「まったく。男ってこれっくらいで。ばっかじゃない?」
    聞こえないほどの小さな声で呟く。
    「今回はジョウが射程距離内に入りそうな女どもがいなくてよかったわ・・。」
    招待客リストを再度確認しつつ、訳ありげに微笑んでいた。


    ベル・エピキュリアンが上空に消え大気圏を超え、宇宙に踊り出る。
    そしてそれを見届けると上空に待機しているミネルバも宇宙へと還る。
    惑星アレクのあるこの太陽系内を周遊しながらの外海にてのオークション。
    これもまた魅力のひとつだ。
    いくら宇宙時代とはいえ、一生その星から出ない人間もいて、そういう生活を考えると星々とのコラボレーションを行いながらの時間旅行とでもいえばいいのか、
    入札をしないまでも、この船にのる、それだけで人気を高めてしまう一因ではあった。




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■506 / inTopicNo.4)   expedient the cosmos space auction
□投稿者/ 柊里音 -(2003/09/16(Tue) 08:54:23)
    ベル・エピキュリアンが上空に消え大気圏を超え、宇宙に踊り出る。
    そしてそれを見届けると上空に待機しているミネルバも宇宙に還り、低速にて運行し始めた頃を見計らい、ミネルバからブルーの艦載機が吐き出される。
    ファイター1。言わずと知れたミネルバの艦載機。
    ジョウの愛機である。
    その中にはクラッシュジャケットのジョウが搭乗している。
    そしておもむろにハッチをあけたベルエピキュリアン内部に静かに入艦する。
    これで、今回ベルエピキュリアンに搭乗する人間がすべて出揃ったわけである。

    その様子をミネルバからの報告で受け取ったバンケットホールにいるアルフィンではあったが、出迎えるわけではなく、ジョウはといえばホールではなく、直通エレベーターでモニタリングルームへ直行した。
    おそらく先ほどアルフィンから色々と報告を受けただろうが、クライアントからの要望はリーダーの方へと通される。
    もしかするとそれにより、今後の行動のプランも練り直さねばならないかもしれない。

    ブルックリー氏はこれまでの情報収集やプランにいたく満足をしたようで、プランの変更は余儀されなかった。
    なによりも氏が甚くお気に入っているのは紅一点アルフィンの存在で、正装で船に一緒に乗船しろと言い出したのは氏からの要望であり、それが今回はじめてかなった今、氏のご機嫌はすこぶる良いようであった。

    アルフィンのほうにしても、誰かと組んでの2対2で宇宙にいる間は、ベルエピキュリアンとミネルバに分かれての行動となっていたわけであるので、それはそれでかまわないのだが、まるで氏の個人秘書もしくは開催関係者のように何かと用事を言いつけられることがいい加減辟易していた。
    予定通り、逐一警備を怪しまれない程度に監視し報告をあげ、ゲストの為のバンケットホール内のホステスを動かし、また何かにつけてブルックリー氏は傍におきたがる。

    どこまでが仕事なのかと文句を言おうものなら、実際船の中はいかにゲストを楽しませるかというのも開催側の悩みの種であり、星域内とはいえ外海に出た上よほどのことがないかぎり大事にはならない、そのためにクラッシャーを雇っているんだし、それに、自分は雇い主なんだから、その悩みを共有してくれてもいいじゃないかという氏の毎度のゴタクを聞き飽きてもいた。

    なので、右から左に聞き流しながらの会話である。

    ジョウもすでに乗り込み、大元のセキュリティルームでモニターを見ているはずだ。
    ジョウにしてもカラダを動かしてなんぼのクラッシャーである。
    モニタリングというこの時間は苦痛というなにものにも変えがたい苦しみのひとつのはず。
    今までこの航海で海賊に眼を付けられた事は数知れずあったのだが、ここ最近はなりを潜めている。

    というのも、名だたるクラッシャージョウチームが体を張って船を警備していることが知れ渡り、なおかつ船の周りにはうるさいくらいのマスコミの船まで張り付き、各惑星・コロニーの近辺には監視カメラも備え付けられている。
    かなり綿密な作業と労力をかけていても、押し入る事は不可能ということを、過去何組かの海賊が身をもって教えてくれたためだといえようか。
    しかしながらその何件かの過去の出来事もあった事を、ジョウたちも忘れているわけではなく、うんざりしつつもこうやって眼を光らせているという結果に結びついているのだ。



    一方ミネルバのタロスとリッキーは相も変わらず小競り合いをやっていた。
    前回の休暇でカジノに行き、その際チップの足りなくなったリッキーがタロスのブラックジャックの勝ち分からスロットにいくらつぎ込んだか、という話題である。

    「この前の前の休暇で俺らタロスに投資したんだぜ!」と足踏みをしつつ文句を述べるリッキー。
    「そりゃ。そん時まるまる返したはずだ。」ふんぞり返ったまま答えるタロス。
    「ぺっぺっ!なあにいってやがんだよ。カジノで投資っていうには倍返しって相場はきまってんだよ!」
    「ほお。そりゃはじめ〜て聞いたな。」
    挑発するかのように耳に小指をつっこんでほじってみる。
    それを見たリッキーは軽いフットワークで飛びかかる寸前、タロスの大きな壁のような手のひらで額を押さえつけられてしまった。
    リッキーもかなり背が伸びたとはいえ、当たり前の如くタロスには到底かなう背丈ではない。
    それをわかっての攻撃と、リッキーはますます腕を振り出し、かなしいかな空を切る。
    その様子を猫がじゃれているがような感でもてあそぶタロス。
    ぐいぐいとリッキーの頭を押し付けていく。
    「お・お・おいら・のせ・がのび・な・・いの・はタロ・・スのせ・いだ・・・」と憎憎しげに足まで振り上げだした。
    せせら笑いながらほれほれと挑発をかけるタロスに天罰がくだった。
    闇雲に力いっぱい振り回していた硬いブーツの爪先がタロスの男性自身にヒット。
    その瞬間股を押さえて飛び上がる大男がいた。

    「マッタクコノフタリ、イツマデタッテモマッタクモッテセイチョウガミラレナイ。キャハハハ」
    と呟く、高性能ロボットのドンゴ。その手には。
    『最新版ヌケルスポット。ちょっとそこのおじょうさん。ぼくといいことしませんか。』という雑誌と
    『まったりねっとりあなたもすきね』
    『イク瞬間の乱れ顔〜人妻と僕〜』
    ビデオが2本握られていた事はいうまでもない。



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■507 / inTopicNo.5)  expedient the cosmos space auction
□投稿者/ 柊里音 -(2003/09/16(Tue) 08:58:38)
    そのころ。
    艦に乗り込み、十数時間に及ぶ業務を全うすべく氏に張り付き、場内の人々に眼を配らせるアルフィン。

    さあアルフィン、こちらにどうぞ。タイはこれがいいかね。このプティ・フール食べてみなさい。このカクテルはいかがかな?うるさいくらいに付きまとってくるのがトーマス・ブルックリー。

    クライアントという手前「うっさいおっさん」と無碍にする訳にもいかず、お愛想笑いをうかべながら、ひとつひとつ問い合わせにも丁寧に応対する。

    この艦のなか身をもって招いたと言えば言葉は悪いが、お愛想を振りまくアルフィンが正体を知るものの前でも艶やかな蝶の化身として映る。
    捕まえようにあの手この手で罠をしかけようにも、どんな網も捕らえようがなく、するりと逃げおせられる手に届かぬ蝶。
    男性人からはある意味嬉しくはない視線を、それに伴い女性群からの嫉妬と羨望のまなざしばかりかと思いきや、その物腰の柔らかさや媚を売らぬ態度には共感を得、あくまでも美しきスタッフの一人という役目上の立場をうまくこなしていた。

    クラッシャージョウチームの噂なぞこの銀河中に響き渡っておりながら、逃げも隠れもしないまでも案外と接触する機会などがないのが常なものだ。
    クラッシャー風情という接し方をする人間も未だいるのは仕方のないこと。
    そのためこの航海にはジョウチームが警備を引き受けているという事実があっても、堂々とクラッシュジャケットで艦内を闊歩するわけにもいかないのであって。
    たくさんのモニターがひしめくモニタリングルームでの仕事を一通り終えたジョウは、いったん引き上げ艦外の警戒周遊のためミネルバに戻る事を、クライアントに伝えるために席を立つ。

    艦内には不審な人物も物体も、今回はありがたいことに潜り込んでいない事がなによりである。

    ジョウが引き上げてしまうと、銃器携帯者はアルフィンだけになる。しかも彼女は今回クラッシュジャケットを着用していない。
    万がひとつにでもの事態になった場合、腕が劣るというものではないが、やはり不安がよぎるものがある。
    その不安が薄れた事を自分の目で確認する。
    大きな不安を現実のものとしないためにも、警戒は解かないほうがよいのだ。
    きっとミネルバでは今頃タロスとリッキーはいつもの小競り合いを繰り返しているだろう。
    出る前にその片鱗が見受けられたいつもの凸凹コンビ。
    仕事中の緊迫感が薄れぬよう、早々にミネルバにて帰航まで気を抜くなと喝のひとつでもいれるか・・。
    そう思いつつ、オーナーズルームに歩を早める。
    プライベートエリアに足を踏み入れたジョウをカメラがキャッチする。
    それを、打ち合わせの為に部屋に引き上げた氏とアルフィンが目にした。

    アルフィンが待ち望んだ人影を眼にする前に、コール音が鳴り響く。
    「アルフィンさんに取材したいと言う方々が後を立たないのですが・・。」
    彼女は表向きオーナースポークスマンとしての肩書きがあるため、その取材は断れないのが事実であるが、いまはチームリーダーとの打ち合わせが控えている。
    それを建前に断ろうとすると、相好を崩したブルックリー氏が行け行けと肘でアルフィンをつつく。
    聡明で美しいアルフィンがオークションを紹介してくれるとなると、それだけで充分コマーシャルになる。
    2代目として先代と比較され続け、実際新技術開発は遅々として進まず、このオークション業とそれに添うずる生業を社業と矛先転換をねらう彼にとって、丁度いい機会なのだ。

    そこまでは業務内容に含まれてはいないだろうと、渋るアルフィンはある事を思いつく。
    ある男に、いつも自分が味わうなんともいえないジェラシーの片鱗を、少し感じさせる事ができるのではないか、と考え付いたのである。

    浅はかだと思われても、何かにつけて苦虫を噛み砕く思いをしているのがいつも自分のような気がする。
    今日は人が自分を見て、どれほど美しいと思わせられるのかは充分に計算したつもりである。
    女はいつでも自分を美しくいたい、みせたいと思っているのは時代は変われど世の常で、しかしそれはみなから思われる為のものではない。
    意中の人間の瞳にだけそれが映ればよいのである。
    今その意中の人間がやってはくるが、あの男は仕事馬鹿・・。もとい何事においても一途で、いまのアルフィンの気持ちなど推し量ってはくれそうにない。
    それよりも、この眼前でカクテルを煽り、スケベオヤジとすでに化しつつあるミスターブルックリーとの打ち合わせに終始することであろう。
    それならば、精一杯惹きつける武器を片手にタイミングを見計らって見せ付けてみよう。
    そのときの男の顔を思い浮かべると・・・。

    ここで2人の思惑は、ずれてはいながらも合致した。

    かくして、ジョウの到着を待たずしてアルフィンはいまやまさに白熱の用を呈するオークション会場へと向かったのである。



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■508 / inTopicNo.6)   expedient the cosmos space auction
□投稿者/ 柊里音 -(2003/09/16(Tue) 09:04:37)
    「おかえりなせえ。ジョウ。」

    ジョウがブリッジに足を踏み入れると。そこには。
    今まさに飛び掛らんとするフットワークのリッキーと、それを受けてたつポーズを慌てて崩すタロス。
    そしてなにやら妖しげな本を片手に右に左に移動し興奮状態を表す有能なるロボットのドンゴ。

    タロスの一声ですべてが終わった事を示す。

    ドンゴは何事もなかったように、手に持っている雑誌と、やや大きめの安上がりの造りでつくられたビデオテープを持っていったんリビングに引き上げるようだ。
    バツの悪そうな顔を見合わせる、巨漢の男と赤毛の少年。
    ため息をついたチームリーダーは何も見なかった事にして、自分の席に腰を埋めた。

    「アルフィンどうだった?」
    身の置き場の悪さを吹っ切るように、赤毛の少年リッキーが尋ねる。
    「ああ。うまくやってるみたいだ。姿は見かけなかったけどな。」
    「オークション行ってなんか競り落としてるんじゃあないの?」
    「さあ。丁度ブルックリーのおっさんと最後に顔合わせたときは“取材が入ってアルフィンに場つなぎしてもらってるから、時間がない”ってぬかしてたが。」
    「アルフィン取材までうけてんの?」兄貴現場見た?と興味津々に聞いてくるリッキー。
    「さあねえ。おっさんの部屋のモニターに会場が映るんだよ。打ち合わせしながらだし、じっくりも見てられねえだろ?」
    「終わってからじっくり見りゃいいじゃん。」
    「終わりと同時に追い出されんだよ。あちらさんのSPさんに」
    「ふ〜ん。信用ないねえ。俺達。」
    「ま。そういうわけじゃないと思うがな。」腑に落ちないという顔をするリッキーに苦笑いで答えるジョウ。
    「でもさ。何で関係ないアルフィンにわざわざ取材なんか受けさせんの?」
    ひとまずはスポークスマンとはいえ、表舞台に引き出すほどの大役をなぜに与えるのか?
    「丁度いい宣伝隊長くらいに思ってるんでしょうねえ」
    そのものずばりのタロスの意見に皆がうなずく。
    「・・・・・飲ませなきゃね・・。」
    そのリッキーの一言に、背中を冷たい一筋が流れ、顔を見合わせる3人がいることはいうまでもない。




    かくして仕事中だという事を忘れなかったアルフィンのおかげもあり、オークションは滞りなく終了した。
    あとは帰路につきながらの、盛大なパーティで締めくくられるだけだ。
    ここでのアルフィンは、最後の最後まで彼女を離さないブルックリー氏の話し相手を見事に勤め上げた。
    彼女の思惑が通じたかどうかは未だわかりかねる事ではあるが、近いうちにそれは見ることができる。
    そういう計算が働いているかぎり、隣のスケベオヤジが腰に手をまわしたまんま離さなかろうが、パートナーから冷たい一瞥をうけながらも、アルフィンにウインクをほおってよこすかぼちゃたちにも微笑んで受け流してやれる。
    いままでは面倒くさいだけのこの仕事ではあったが、今回は思わぬ楽しみが奪取できたと内心舌を出してる小悪魔は、まもなくその任を解かれる。

    ミネルバに乗り込む男たちにとっては、この仕事は毎度体力よりも神経をすり減らすものだった。
    今回自分たちの計算通り物事は運んだのだが、とにかくここに到るまでの交渉をしなければいけない人間が多すぎる。
    こういう商業ベースな仕事は、なんて自分たちに適していないのかという事を今更ながら3人毎度痛感しつつ、どうこういってもうまく乗せてしまうアルフィンにちょっとした尊敬をもってしまうのだった。

    「アルフィンってクラッシャーになってなかったら、こういうのにも見にくるミセスになってたのかなあ。」
    ぼそっとリッキーが訊ねた。
    あのわが愛すべきチームメイトは、男どもを引きつれショッピングの鬼と化する事を思い出すも、はたしてビンテージものを好むか否かは定かではなく。
    以前の麗しきプリンセスという立場では、おいそれとこういう場に出てくるという事はまずは考えられない。
    ということはそれ相応の伴侶を得た後に、と思いつく機転のきくリッキーも、以外と商業ベースな仕事も合うかもしれないななどと気を逸らせるのが精一杯のジョウ。
    「うるさい事いってねえで、そろそろ大気圏はいるんじゃねえのか?」
    ちらりと横目でジョウを見ながら、答えの出しようのない質問を出してきたリッキーと出したくもないジョウに助け舟をだした。

    惑星アレクが眼前にせまり、そろそろ仕事が最後の関門を残し終わりに近づいたことも見て取れた。
    あとは、ベル・エピキュリアンのパイロットがミスなく大気圏突入をすませ着床すればこの任務から開放されるというものだ。
    早々にこのやっかいな仕事は終わらせるに限る。
    そうすれば次の契約遂行までは100時間近くのオフをとる予定にしてある。
    現地近くまで今日のうちに行ってしまえば、気分的には楽。
    ショッピングする場所がない、と憤る女がいなくもないが、そこはそれでほかに楽しみを見つければいいだけだ。

    「さあて。もうひとふんばりだな。」
    チームリーダーの掛け声に、最後の締めくくり、とシートに座りなおしすメンバー。

    今回は依頼主共々宇宙港に着床するため大気圏内に降りるため。
    そしてこのやっかいな一仕事を完了するために、加速度を増すミネルバは、漆黒の闇から惑星アレクに吸い込まれていった。


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■509 / inTopicNo.7)  Re[6]: expedient the cosmos space auction
□投稿者/ 柊里音 -(2003/09/16(Tue) 09:05:14)
    やたらと長くなりました。
    ものすごくつまんない注釈がながくって・・。
    すみません。自己満足です。
fin.
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