| 体を離したら、急に気恥ずかしさがこみ上げてきた。 アルフィンも又俺に背中を向けてしまった。 なぜだか急に一人取り残された気分になった。 そんな風に考えたら、もう、いてもたってもいられなくなった。 手を伸ばし、アルフィンの背中を求めた。 後から抱きすくめる。 アルフィンは驚いて一瞬身を固くさせたが、すぐに力を抜いた。 そして、自分の肩のあたりに回された俺の腕にそっと手を置いた。 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 海から聞こえてくる波音と、ときおり吹きつける波の音だけが俺達を包んでいた。 ただ、それだけだった。 アルフィンの手の暖かさがうれしかった。 「・・・アルフィン。」 俺は一言だけ、彼女の名前を呼んだ。 自分の腕の中の彼女を確認するかのように。 俺に抱きしめられながら、アルフィンははかすかにうなずいたみたいだった。
前髪の乱れもあって、アルフィンの買い物はキャンセルになった。 「やっぱり、エアカーにすればよかったかしら・・・」 自分の前髪をつまみながら、恨みがましく呟いた。 「俺はどっちでもいいぜ。でも、今回の言い出しっぺはアルフィンだからな。」 「・・・いじわる」 俺はアハハと声に出して笑った。 アルフィンも俺につられて笑った。 ひとしきり笑いあったあと、アルフィンは俺の目を覗きこむようにして言った。 「今度は、カチューシャかヘアバンド用意しとくわ」 「・・・そうだな。」 たまには二人でバイクもいい。 魔法じみた感覚を思いだしながら、俺は空を振り仰いだ。 どこまでも続く青い空が俺達に上に広がっていた。
〈END〉
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