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■553 / inTopicNo.1)  LOVIN‘・・・・・YOU
  
□投稿者/ 剣流星 -(2003/11/07(Fri) 21:57:09)
    この駄文は、“ワームウッドの幻獣”を読まれてから読まれる事をお奨めします。
    少々ネタバレ的要素が含んでおりますので。

    もう完読された方、もしくは、ネタバレOK(っても、なにがなんだか分らない気がすりゅ<^^;)って方だけ、先にお進み下さい。

    −剣 流星−
引用投稿 削除キー/
■554 / inTopicNo.2)  Re[1]: LOVIN‘・・・・・YOU
□投稿者/ 剣流星 -(2003/11/07(Fri) 21:57:12)
    「なによっ!うっさいわねっ!ジョウは絶対に渡さないんだからっ!!!」
    アルフィンの怒りは収まらない。なにせ、自分の経歴にケチを付けられ、クラッシャー半人前と言われ、あまつさえ、そんなチンケなチームを棄てて、自分とチームを組めだ事の、ムチャクチャを言われたからだ。(半人前と言うのは本当の事なのだが、ルーには言われたくない。)
    3時間に渡る口論。いい加減にしてくれと言わんばかりに
    「タロスっ!回線、切っちまえっ!!!」
    痺れを切らしたジョウが叫ぶ。
    『あ〜ら、逃げるのね?』
    フフッンと、ルーに鼻で笑われたアルフィンは更にヒートアップする。
    「あんですってぇ〜!?」
    ・・・火に油だ。勘弁してくれ〜。
    <ミネルバ>の3人のクラッシャーは思った。しかしこれは、<ナイトクイーン>の2人のクラッシャーも思っている事であろう。
    そこでジョウは腹を決めた。
    キャンキャン言い合いをしているアルフィンの背後に行き、アルフィンの耳元に何か囁いたのである。
    「・・・・・・・・」
    ピタっと、アルフィンのマシンガン毒舌が止む。
    いくら罵っても、アルフィンが反撃してこない。スクリーンの向こうのルーも、相手をしてもらえなければ(?)間が持たない。なんなのよっ!どうしたのよっ!?と問いかけても、固まっているアルフィンには糠に釘。
    ジョウは、その状況を見て叫ぶ。
    「タロスッ!今だっ!回線、切っちまえっ!」
    「へ、へいっ!」
    何が起こったのかはさっぱりだが、とにかくこの罵り合いに終止符が打てる。
    考えるより先に、タロスの手は通信回線をOFFにしていた。
    「ひゃぁ〜っ。助かった・・・。」
    リッキーがほっとしたようにボソリ呟いた。
    暫く、沈黙の時間が過ぎ。(実際には1〜2分)
    痺れを切らしたリッキーが。
    「でも、兄貴。何のまじない唱えたんだい?」
    どんな魔法の言葉を唱えたのか。不思議で堪らない。
    「お〜。あっしも知りたいですな。」
    興味深々でタロスとリッキーが聞く。なにせ、3時間も続いていた罵りあいをたかだか5分と掛からず収めてしまったのだから。
    「な、なんでも無いっ!」
    心なしか、顔が赤いジョウ。
    「えぇ〜!?ンなの無いよーっ!“アルフィン封じ”に、教えといてくれよ〜っ!」
    何時もであれば、ここでアルフィンの鉄拳が飛んでくるハズなのだが、一向に気配がない。
    「・・・教えられっかよ。」
    ボソリと呟くジョウ。
    「きゃはははは。私ニハ聞コエマシタ〜♪」
    言わなきゃ良いのに、正直者のドンゴは黙っていられない。(笑)
    「え?ドンゴっ!教えてくれよ〜♪」
    すりすりとドンゴに近付くリッキー。
    「ドンゴ。俺にも教えてくれ。」
    タロスまでがドンゴに近寄る。2人の顔はニヤついている。
    「あ゛―っ!ドンゴッ!チームリーダー命令っ!今の俺の言ったこと全部消去っ!俺以外に内容の掲示拒否っ!!!」
    やばいと思ったジョウの苦肉の策。
    ドンゴにとって、チームリーダーであるジョウの命令は絶対である。他の3人の命令よりも、それは最優先される。
    「了解。消去シマス。以後、内容ノめもりーガ残ッテイタ場合、じょうニノミ開示シマス。」
    即座に反応するドンゴ。
    「あ゛―っ!ずっりーや。職権乱用だぜ、兄貴っ!」
    よっぽど知られたくない内容なのか、ここまでジョウがするのは珍しい。
    タロスは内容がなんなのか、少し見当が付いた。
    「まー、しょうがねぇやな。諦めな、リッキー。」
    「え゛〜!?ンなの、アリかよぉ〜。タロス、諦めが早いっ!」
    心底残念そうに、未練タラタラに食い下がるリッキー。
    「お前は知らなくて良いんだよっ!」
    「あんだよ、分ったのかよ、タロスっ!?おいらにも教えろよっ!」
    「いんにゃ。分んねぇ。」
    リッキーと何時も通りの言い合いを始めたタロスは、ジョウに目配せをする。
    “ジョウ、アルフィン連れてブリッジ出なせぇ。”
    ジョウも気付いたのか、
    “すまない、タロス。”
    と、これも目配せでタロスに伝え、固まったままのアルフィンを連れてブリッジを出た。

    ***********************************

    ジョウは最初、リビングにでも行こうかと思っていたが、そこでは直にリッキーに見つかってしまう。
    そこで、アルフィンの部屋へ行くことにした。アルフィンを部屋に押し込んだら、自分の部屋に戻れば良い。
    アルフィンの部屋に着き、入る。アルフィンをベットに座らせ、自分は出ようとした瞬間。
    「ねぇ、本当?」
    頬を赤らめ、固まっていたアルフィンが、おずおずと口を開く。
    「“ルーの事なんかほっとけ。俺はアルフィンだけだ。”って。信じて良いの?」
    更に真っ赤になるアルフィン。つられてジョウも赤くなる。
    「そ、それはっ!」
    しどろもどろ。あの時は、何とかしなくちゃヤバイ。そういう思いが先にたち、本音がポロっと出てしまった。通常、とてもではないが口に出来ない本音が。
    「やっぱり、あの喧嘩を止めるためのウソ?」
    その言葉の後、アルフィンは激昂するかと思った。しかし。
    「・・・私、ジョウの足手まといになってるよね。その火傷だって・・・。やっぱ、ルーと比べたら半人前だね。」
    泣きそうに笑うアルフィン。なんのかんのと言いつつも、自分の不甲斐無さに自己嫌悪しているのであろう。
    そんなアルフィンをジョウは、堪らなく愛しいと感じた。
    「確かに、まだまだだ。」
    ジョウは正直に言う。
    「やっぱり・・・ね。」
    うな垂れるアルフィン。
    「でも、それはしょうがない。アルフィンはクラッシャーに成り立てと言ってもおかしくない。経験も、ルーに比べればかなりの差だ。それにルーは、俺と同じ生粋のクラッシャーだ。比べるほうがおかしい。」
    「・・・」
    何も言わないアルフィン。小刻みに肩が震えている。涙が落ちそうになるのを歯を食いしばって耐えているのだ。悔しい。堪らなく悔しい。確かにルーとのクラッシャー暦の差ある。それの差は、大きい。それは分っている。でも、負けたくない。1人前のクラッシャーとして、認められたい。アルフィンの胸の内は、その思いで一杯だ。ジョウは、そのアルフィンの思いを知ってか知らずか。
    「でもな。1年経つか経たないかでここまで来てるのは、正直凄いと俺は思ってる。俺も鍛えた甲斐があるってもんだし。」
    ジョウは、アルフィンに向き直る。
    「・・・」
    アルフィンは何も言わない。いや、言えない。
    「正直、ピザンから追って来られた時、すぐ根を上げて帰ると思ってた。お姫様のお遊びなんぞに俺は付き合うつもりもなく、とっとと追い返すつもりだった。でも、そうじゃなかった。」
    ジョウは屈み込み、両手をアルフィンの肩に置いた。
    「俺と居たいが為に全てを棄ててクラッシャーになり、慣れない仕事に必至について来て、任務をこなそうとする。そんな中でも、何時も俺だけの事を考えてくれてる。ちょっと困る事もあるがな。・・・後悔してないか?疲れないか?」
    ジョウの言葉に、はっと表を上げるアルフィン。
    「そんな・・・そんな事無いっ!」
    断言するアルフィン。堪えていた涙が、堰を切り、溢れる。
    「俺は、何時もアルフィンを泣かせてる。」
    ジョウは、そっとアルフィンの涙を拭う。
    「私、幸せよ?。」
    ジョウの手に頬擦りするアルフィン。
    「何時も危険な目に合わせてる。」
    アルフィンの頬を両手で包み込む。
    「自分から望んだ事よ。」
    ジョウの手に、アルフィンは自分の手を置く。
    「こんな俺でも良いのか?」
    真っ直ぐアルフィンの碧眼を見るジョウ。
    「ジョウじゃないと、嫌。」
    アルフィンも、そんなジョウのアンバーの瞳を見返す。
    「俺もアルフィンじゃないと、嫌だ。」
    クスリと二人揃って笑う。こんなにお互いが素直になったのは初めてだ。
    「あぁ。アルフィンは笑った方が良い。」
    たまに、ほんのたまにしか見せない、アルフィンだけに見せるジョウの笑顔。
    この時のジョウは、堪らなく優しい。
    「ジョウ。」
    涙が止まらないアルフィン。
    「泣くなよ。」
    そう言って、ジョウはアルフィンを抱き寄せる。
    「ジョウ、ジョウ。」
    アルフィンは、ジョウの名を呼びながら泣きじゃくる。
    ジョウは、そんなアルフィンの背中を優しく擦ったり、今回のミッションで少し痛んだ金髪を撫でる。愛しいという想いが溢れる。
    「アルフィンは誰にも渡さない。アルフィンは俺んだ。」
    自然に言葉が出る。
    ジョウの言葉に、ハッとするアルフィン。今まで一度として言ってくれなかった言葉。
    「・・・嫌か?」
    少し不安そうに聞くジョウ。
    「嫌じゃないっ!嫌なわけないっ!ジョウ、大好きっ!!!」
    アルフィンはそう言って、ジョウの胸に顔を埋める。
    「知ってる。」
    ジョウはクスリと笑うと、アルフィンの頬に両手を添え、上に向かせる。
    親指で涙を拭う。
    キラキラと涙を湛えた碧眼の瞳が、ジョウを見上げる。
    “最初からこの瞳に、想いに捕らわれていた。”
    ジョウは、今まで誤魔化していた自分の気持ちを認めた。
    「アルフィン。好きだ。」
    不思議なくらい、気持ちが言葉となって出てくる。
    「私も。」
    アルフィンの瞳からは、止めどなく涙が零れ落ちている。
    「知ってる。」
    2人はクスリと笑い、見詰め合う。
    そして、アルフィンの唇に吸い込まれるように、自身の唇を重ね、想った。

    ずっと・・・。ずっと捕らわれていたい。そして、捕らえていたい。

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