| 自室に戻り、サンタ衣装からいつもの赤のクラッシュジャケットに着替えて、アルフィンは慌ててブリッジに戻った。 「ごめん、ドンゴ!!遅くなって!何もなかった?」 「キャハハ、大丈夫デス。現在マデ異常アリマセン。思ッタヨリは早カッタデスネ」 「まあね。全部無事旨くいったわ。ドンゴには今度“ドルロイ”に行った時にオイルプレゼントするからね」 副操縦シートに座りながら、アルフィンは満足そうに笑顔を浮かべた。 「楽シミにシテイマスヨ、あるふぃん♪」 ドンゴが後ろから声を掛けた。 「任しといて!最高のオイルプレゼントするから・・・ってほんとにオイルでいいの?他に欲しいものはないの?」 後ろを振り返り、アルフィンは微笑んでドンゴを見た。 「エッ・・・」 ランプをチカチカさせながら、ドンゴは無言のままアルフィンを見る。 だが、暫くしてポソポソと呟き始めた。 「・・・イインデスカ?ホントに欲シイモノを頂ケルンデスカ?」 一層ランプが点滅して賑々しい。 「叶えられるものならいいけれど・・・。ま、言ってみなさいよ」 アルフィンは気軽に声を掛けた。 「デハ、オ言葉に甘エテ。ぐらびああいどる・てぃあれるチャンの写真集gaガ・・・」 「却下!!」 最近話題のヌードグラビアアイドルの写真集と聞いて、アルフィンは速攻で拒否した。 「デモ今一番欲シイ物ノデス」 ドンゴも取り合えず食い下がる。プレゼントして貰えれば、それにつぎ込むお金が浮いて他の物に廻せるからだ。 「二番でも三番でも構わないから、それだけはイヤよ」 アルフィンの憤怒の表情に、ドンゴはランプを弱々しく点滅させた。 「ダッテ・・・欲シイモノ言エッテ言ッタノあるふぃんジャナイデスカ?」 「言ったけどダメったらダメ。乙女になんてものお願いするのよ」 柳眉が上がって完全におかんむりだ。 ドンゴもこれ以上は得策ではないと諦めて引き下がった。 「分カリマシタ。あるふぃんカラ頂ケルナラ何デモカマイマセン」 「初めからそう言えばいいのよ」 少し本末転倒気味のアルフィンのセリフだったが、ドンゴはそれ以上突っ込まないことにした。 ヒステリーでも起こされたら、直撃は免れない。 まだ当直交代には一時間近くあるのだから。 「アア・・てぃあれるチャン」 それでもやはり諦め切れなくてつい呟いてしまう。 「何時までもしつこい!」 「ハウウウ・・・」 ドンゴの哀しい呟きが深夜のブリッジに小さく木霊した。 それから一時間後、指定の時間に次の当直のリッキーが起きてきた。 「アルフィーン。交代しよーう」 眠いのか伸びをしながら生欠伸をしている。 「寝てたのになんなのよ。その眠そうな顔?」 副操縦シートから出てリッキーと交代したアルフィンは呆れ顔でリッキーを見た。 「眠いんだからしょうがないよお。ま、後は任せといて。お疲れ様アルフィン」 「はいはい、お疲れ様。ドジしないのよ、リッキー」 「分かってらい」 「じゃ、頑張ってね」 リッキーに手を振りながらアルフィンはブリッジを後にした。 自室に戻って、軽くシャワーを浴びベビードールに着替えると早々にブランケットに潜り込んだ。 今日は世間一般、宇宙全域でXmas。 どんな人にも等しくXmasはやって来る。 やっては来るけれど、等しく楽しめるとは限らない。 それでもそれなりに楽しめばいい。 仕事は順調。休暇はもう少し先だけど・・・。 今年だけがXmasじゃないからね。 アルフィンは一人ごちて思い出し笑いをしながら、つかの間の休息を得るべく目を閉じた。
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