| 酒乱のアルフィンが思いっきり飲む、その相手をする。 高揚した気分は急降下した。 目の前のティアレルちゃんが暗闇に去っていくような気がした。 「なあに、みんな黙り込んじゃって。ね、いいでしょうジョウ?」 嬉しそうに微笑むアルフィンとは対照的にジョウは顔が引きつっている。 「・・・それじゃないと・・・ダメか?」 喉の奥からようやく搾り出した声にジョウの受けた恐怖が分かる。 「ア、アルフィン、もし行くならジョウと二人っきりの方がいいですぜ。なにせ二人は恋人同士なんですから」 タロスが保身に走った。この際ジョウを生贄に差し出しても酒乱のアルフィンの相手はしたくない。 私も同感だ。行くなら二人きりで行ってくれ。 目の前に光に照らされてティアレルちゃんが戻って来た。 「お、おいタロス!」 ジョウが慌てふためく。まあ、その気持ちはよく分かる。だが、全ては明日の明るい未来のためだ。 こういう時こそチームリーダーよろしく頼む。 「でもお、せっかくXmasパーティなんだからみんなで行きたいなあ」 アルフィンが悩んで小首を傾げた。悩むな、女は度胸。スパッと決めてくれ。 「そ、そうだよ。みんなでパーッと騒ぎたいよな、アルフィン?」 ジョウも必死だ。往生際の悪い男だ、さっさと諦めるんだ。 「でも、今度いつ兄貴と二人でデート出来るかわからないから今回、二人だけで行っといたほうがいいよ」 リッキーが後ろから嬉しそうに声を掛けた。ナイスタイミング、リッキー。 そうだアルフィン二人っきりだぞ。ラブラブだぞ。 「うーん」 「そうだよ。そうするべきだよ、アルフィン」 アルフィンの両手をそれぞれタロスとリッキーが駆け寄って強く握り締めた。 一つ大きな溜息をついてアルフィンは二人の手から自分の手を引き抜いた。 「いいわ、分かった。あんたたちは休暇中にずっとあたしの買い物付き合ってよね。飲みに行くのはジョウと二人だけで行くから」 「買い物!行く行く喜んで付き合う」はリッキー。 「ああ、何でも持ってやるから安心しろ」とはタロス。 二人は心底嬉しそうに叫んだ。 ジョウは一人、自席で固まっている。ご愁傷様、まあ頑張ってくれたまえ。 「じゃ、ジョウ。そういうことで。ああ、次の休暇が楽しみーっ。さて、まだ四時三十分すぎ?あたしもう少し寝るわ。睡眠不足は美容の大敵だしね」 アルフィンはご機嫌よろしく<ミネルバ>のブリッジを後にした。 暫くジョウは固まっていたが、ハッと我に返ってタロスとリッキーの二人を見た。 「お前ら・・・よくも俺を人身御供にしやがって」 「おいら達だって休暇中ずっと買い物に付き合うんだぜ。兄貴は一日だけじゃん」 いつもなら嫌がるはずの買い物も酒の相手よりは幾分もマシなのだろう。 リッキーは嬉しそうに答えた。 「まあそこは恋人同士で仲良くやってくだせえ」 タロスも上機嫌この上ない。 「覚えてろよ・・・今度はお前達だけでアルフィンの酒につき合わせてやるからな」 ジロッと憤怒の視線で二人を見たが嬉しさにほとんど応えていない。 万事旨くいった。これで晴れてティアレルちゃんが私の物に・・・。
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