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■732 / inTopicNo.1)  Virginity
  
□投稿者/ 柊里音 -(2004/06/10(Thu) 09:08:27)
    ねー。真面目に見て!

    純白のウエディングドレスはどういう意味があるのか。
    純真無垢なまま、あなたの色に染まります。という古来よりの衣装ながら、数百年たった現在もまかり通っている現状。
    それはとても清らかに美しく。どこまでも白く。
    それはとても・・・・

    とても眼のやり場に困るのもので。

    「一緒に何枚か選んでくれるっていってたのに・・・。それに、きちんと着るところは本番までお預けなんだから!え?特別!今日はね。だって、こんなにあったら、どれを本当に着るのかわからないでしょ?」

    悪戯そうに上目使いで忍び寄る笑みには降参だ。

    そうだな。見慣れない白い衣装のオンパレードは、どれもこれも同じに見えてしまうのは、男という生き物だからだろう。
    −アルフィンが気に入ったのなら別になんでも−と心で呟いたが、口に出すことは止めにした。
    もしもうっかりそんな事を言おうものならば、怒りの鉄拳をおもむろに繰り出してくることは間違いないと思う。
    ここのところの彼女はとても嬉しそうで。
    たかだか、白い衣装を着て、指輪を交換し、神の前の誓いとやらをすることが、なぜそんなにイベント性の高いものなのか。
    理解ができないのは、それはやはり俺が男だからだろう。

    そしてそれも口に出すことは止めにした。

    いつもの真紅なクラッシュジャケットとは違い、普段彼女が好むような衣装でもなく、ウエディングドレスというものは、なぜこんなに崇高に見えてしまうのだろう。
    男というものは仕方がない生き物で、いつも見慣れているはずの女(ひと)なのに。
    なぜ、こんなにも心乱されてしまうのだろう。

    その衣装を纏いふと視線をそらすしぐさ、髪を掬い上げ白いうなじを顕わにしたしぐさ、それはとても美しく、彼女を全く別の女性のように見せてしまう。


    「ねえ。これも素敵でしょ?」
    夢想を破る明るい声を発する彼女に視線を移し、軽くうなずいた。

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■733 / inTopicNo.2)  Virginity
□投稿者/ 柊里音 -(2004/06/10(Thu) 09:14:49)
    こじんまりとしながらも趣きのあるホテルのロビーで、ある華やかな一行がまもなく顔をそろえる。
    それぞれが用意を整え、時間を合わせ、ロビーで落ち合うためだ。
    昨日チェックインをした際に着用していたものとは違い、薄いクリーム色を基調とした晴れやかな衣装と、黒い燕尾服を着て、やや高揚する気分を抑えられない一行だ。


    先にロビーに到着したようで、現地の新聞を片手に時間つぶしをしている赤毛の少年と、スポーツを中心とした紙面を睨み付けている黒い燕尾服をきた大男をみつけた少女は、軽いステップを踏むような足取りで近寄った。
    「早いじゃない?」
    その声に反応して顔を上げた少年の頬がさっと赤らむのを見逃すタロスではなかった。
    その顔を見られたくないのか、持っていた新聞を顔の前にわざともって行くそぶりをする純情少年リッキーに、可憐な少女ミミーはとても寛容で、なにかいいたげなタロスを一睨みすると、大理石のテーブルに腰を下ろし少年と同じ眼の高さになった。

    「ねえ。アルフィンはどんな衣装にしたか知ってるの?」
    やはり話題はそちらだろう、といわんばかりに、新聞を眼の高さにやっているリッキーにむかって確認しておきたかった事を尋ねる。
    予想と違う話題を振られ、ほっとしたのか、ばさばさと音をたて新聞を脇にやった。
    「さあ?俺らなんかいっつも荷物持ちばっかだったからさ。ショップの中になんて入れてもらえないんだぜ。部屋の中に吊ってたって進入禁止だし。そのてんミミーはもう見たんだろ?」
    「そりゃそうよ。じゃなきゃ、このドレス作れないんだもん」
    「あっしにも見せてもらえないんですぜ。第一ジョウでさえ、決定してからは部屋には入れてもらえても衣装は見せてもらえないからわからないって言ってましたからね」
    「ふふ。じゃ、しらないほうがいいわ。とっても素敵なんだから!」
    「・・・・・ミミーより?」
    「リッキー!もう!あんたも言うようになったじゃない!!」

    ばしばしとリッキーの頭を叩くミミーも普段身につけている衣装とは異なり、オーガンジーレースをあしらったクリーム色のブライドメイドの衣装。真っ赤に染め上げた短い髪よりもやや薄い色のエクステンションはきれいにセットされ、サイドにはサーモンオレンジを主体とした小ぶりなガーベラなどをあしらった生花を髪飾りとしてつけていた。
    それに映えるためか、ドレスの方も所々にある手刺繍の花模様はサーモンオレンジ色で縫い付けられそして、花模様よりもやや濃い色の同色のシルクのウエストリボンは、少し腰よりも高い位置にあり、シルエットは中世ヨーロッパのドレスを少しばかり華やかにしたようなかんじだ。

    弾かれているリッキーもベストマンとして、クラッシュジャケットではなく、ミミーのドレスとほぼ同色で、やはり髪に映えるオレンジ色を上手く使われたタキシードなどを着ているのである。
    そしてタロスはというと、花嫁の父として列席するための衣装である。

    が、今回はアルフィンの手をとって歩くという大儀を免れ、衣装にそぐわないややほっとした面持ちをしているように見える。
    ミミーの手にはもちろんヘアアクセサリーと同じガーベラよりもやや大ぶりなものを用いたラウンドブーケ。リッキーの胸元にも同じ色のガーベラをあしらったブートニア。
    各々の胸中に去来するものは記すまでもなく、あと数時間後には執り行われる荘厳なお式への期待と不安。
    そして、若い2人には何れどこかで・・・・とする期待。

    すべては予定通りに進むべくはずであったけれど・・・・。


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■734 / inTopicNo.3)  Virginity
□投稿者/ 柊里音 -(2004/06/10(Thu) 14:12:44)
    高台のチャペルには今日の日の主役の2人は早々に到着し、急きょ飛び込んだ仕事のせいでのびのびになっていた神父との最後の打ち合わせもすませ、互いに控え室で其々の衣装に着替えて時間を待つ、はずであった。

    花嫁衣裳をきているところは最後まで見ないで欲しいの。そういう彼女の意思を尊重したい、と思ったからこそ。
    しかし今は、そんな事を言っている場合ではなく、早々に着替えをすませたジョウは花嫁の控え室に鎮座していた。

    この部屋の主も、カーテンの向こうで支度を調えている。ヴェールをつける、という最後の仕上げだけはせずに。
    当然とばかりに早々と身支度を勧める係りの女性たちに連れられて、カーテンの中に消えたアルフィンを待つこと数十分。
    「さあ。花嫁さんのご用意がおわりましたよ。またお式の前にはきっちりとお直しを致しますからね。不具合がありましたら、そのときにおっしゃってください」
    「ヘアー担当のものはまた後ほどうかがいます。最後のお化粧もその際にいたしますので」
    一緒に中に入っていた3人ほどの女性たちは口々に自分の言いたい事をいい、では、とドアの向こうに消える。
    それまでに、ドレスに慣れておけ、ということなのか、慣例的に早く到着した招待客の希望があれば控え室に招待して記念撮影をとっておけ、ということなのか、いつもお式を行う花嫁は随分と早くにご用意をされていたらしい。
    今回は、アルフィンの体調もあるから、こちらからお願いをしたものならば、「それは当然です」との返事をもらい、こちら側としては言葉をなくしてしまったものだ。

    とうのアルフィンはぎりぎりまで見せないと意地を張っていたのだが、どうやらひとりぼっちで待たされる心細さには負けてしまったようで、用意を終えたらこっちにこいと伝言を残していた。

    「大丈夫か?」
    カーテンの内側にある2人掛けほどの長椅子に脚を投げ出すようにして座っている。
    「うん・・・ちょっとまだ痛いけど・・・平気」
    ジョウの座る場所を作ろうと、少し身体をずらそうとするアルフィンの動きを手で遮る。
    強がりを言っているとすぐにわかるほど、右足は腫れ上がっておりその上に巻かれた包帯も見るも痛々しい。
    花嫁となるアルフィンはちょっとした不注意で仕事中みごとに足を捻挫し大きな裂傷を負っていたのだから。




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■735 / inTopicNo.4)  Virginity
□投稿者/ 柊里音 -(2004/06/11(Fri) 05:28:59)
    近頃ではめずらしく、新航空路をひらくためのわりと軽いといってもよい仕事が突然舞い込んだ。
    後日にある一大イベントを考慮して、なるべくならお断りしたいものだったのだが。
    クライアントからの仕事を請け負うのが商売だと、主役の一人から言われようものならいた仕方がない。
    他者は彼女の事を思って躊躇していたと思われるが、培われた生業へのプライドは生来のものと合わされて増大したらしい。
    しかしながら、細かな惑星を粉砕し、航路を整えるための空間を維持してゆく。その課程の中、偶然にもひとつの惑星からは、原始生物を認めた為、自然保護プログラムにのっとり居することの可能な惑星へと移行させるというおまけのついた仕事。

    今までの事を考えれば、何事もなく終了することは暗黙の了解のように思えた。
    2人1チームとなり生物たちを誘導する為にその惑星へと降り立つ。
    ファイターを使い誘導し、ガレオンを使い追いたて、その土場のみでしかいきることのできない生物を保護するため大きく土を掘り、クライアント経由で世界自然保護団体より用意された保護観察船へと積み込む。

    アルフィンはその仕事の最中、怪我をおってしまった。
    その時ペアを組んでいたタロスの機転でそれ以上の負傷を追うことは免れたものの、タロスはアルフィンをかばったせいで背中から巨木の一撃を受けてしまった。

    全身の殆どをサイボーグ化したタロスであったからこそほぼ無傷であったものの、これがジョウだったらとアルフィンは青ざめたものだ。
    己が失態を恥じ、怪我をしていないまでもタロスを気遣いそれまでのやや浮かれた気持ちを失くすこととなった。
    そのタロスはといえば、託されて共に仕事をしていた近日の花嫁に怪我をさせてしまい、恐縮する事この上ない。

    それ以外は緻密な計算から仕事自体は成功を収め、クライアントからは感謝され保護団体からはアラミスへ「現状把握未確認生態生物の確保」というおまけをつけた事を称える文面がわざわざ入電されたほどだ。
    それでもしかし、しばらくはものぐるしい雰囲気がミネルバにはたちこめていた。
    なぜなら、クラッシュジャケットの上からだったことがまだ恩恵ともいえるくらい、その上からも素肌を傷つけ白い素肌には裂傷が残っていたアルフィンは、タロスに抱えられてミネルバに戻ったのだ。
    傷のせいで歩けないのかと思っていたのが酷い捻挫をしていたこともわかり、数日のうちに迎える挙式の当日バージンロードを歩くことすら儘ならない事を知る。

    「ごめんなさい」
    と泣き出したアルフィンを責めることはできない。
    仕事の上での失態はあるにせよ、パートナーの機転でなんとか重大な出来事は回避され事なきを得た。
    それだけではない、泣き出した背景を思い描くと、誰も彼女を責めることなどできないのは明らかだったから。
    どんよりとしたミネルバのブリッジに、その時、けたたましくウェディングベルがなった。

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■736 / inTopicNo.5)  Virginity
□投稿者/ 柊里音 -(2004/06/11(Fri) 05:34:05)
    「いきなり鳴るんだもん。びっくりしたわよーーー」
    先ほどのいたずらは、ミミーからのサプライズ。
    「まさか、そんなことになってるとは思わなくて。ごめんね」
    簡単に応急処置をしたあと、ミネルバにもどり傷の手当てをした右足を無造作に放りだす格好で自室のベッドの上に座り、ドンゴに淹れてきてもらった紅茶を勧めるアルフィンにミミーが頭を下げた。
    「いやだ。やめて。失態を見せちゃって、こっちこそ」
    「どう?痛む?」
    巻かれた包帯は痛々しく、腫れを少しでも減らすためにその上からも保冷シートを巻かれている投げ出された右足を見遣りながら尋ねる。

    へへへ。と笑うものの、脱力した感は否めない。
    「痛み止めも飲んだし、化膿止めも飲んだし。タロスがすぐに消毒もしてくれて、足を使わないでいいように抱えてもくれたし」
    ぽつぽつと話しながらも、あるまじき失態を恥じるかのようにだんだんと声が小さくなってしまう。
    「今回はタロスと組んでいたけど、あたし、よくジョウと組んでるでしょ?今回も、最初はそのつもりだったの。まあ、編成的にこうなったけど。これがジョウだったら、って思うと・・・そっちのほうがおそろしかったわ」
    ぶるっと身震いをしながら、その現場を思い出したのか再び暗色の瞳をミミーに向けた。
    先ほどブリッジで聞いてきた状況は、タロスであったから無事だったものの・・・という事は素人のミミーにもわかるようなものだった。
    「あたし、ちょっと・・ううん、かなり浮かれてた。だから神様が罰くだしたのよ。目をさましなさいって」
    「どうして?」
    「仕事の事も、お式の事も。みんな上手くいくからってきっと軽く考えすぎてた。タロスにも申し訳ない事しちゃった。お父様の変わりに・・・ってあたしからお願いしておいて、結局ダメにしちゃったんだもん」
    「・・・・・・・・・」
    「なんだか自分が情けなくって。あたしが失敗して迷惑かけちゃったのに。そんなあたしにみんなが気を使ってくれてて。もうどうしていいかわかんないし。わーんってなっちゃって・・・・」
    ほんと、みっともなかったわ。
    ぺこり、アタマを下げる。

    「ま。どっちにしても、アルフィンがその怪我だけですんでよかったじゃない」
    「みんなだって、アルフィンの事を考えてなんていっていいかわかんなかっただけでしょ?もうわかってるって」
    まるで、年齢も立場も逆になってしまったように、ミミーは肩をぽんぽんと叩きながらなぐさめた。
    暗くなりがちな部屋の中を少しでも浮上させるべく、できるだけの明るい声で。

    「ほら。花嫁がそんな顔してたらマリッジブルーみたいよ。・・・まあ、あなたたちだったらそんなこと絶対ないんだけどさ」
    悪戯そうにウインクを投げてよこし、そのついで、とばかりに、部屋につられていた純白のドレスに眼をやる。

    ほおっとため息を一つ吐いた後、思い出したように自分のもってきた荷物をずるずるとちかづけた。
    「ほら。これがあたしで、こっちがリッキー」
    ドレスカバーに包まれた衣服を大切そうに抱え出し、アルフィンの座るベッドの空きスペースに並べて置く。
    クリアなカバーからは開封せずとも2枚の衣装がよく見える。
    デザインは確認していたものの、おいそれと互いのドレス姿を覗きにお伺いできる距離でもなかったので、アルフィンにしたら興味深々だ。
    すこし、気分も浮上してきたようで、ミミーはそのままドレスの話題に振り替えた。
    「アルフィンのは、ちょっとあたしも気に入ってるんだ。ぜったいこれってアルフィンのためにデザインされたみたいにしかみえないもん」
    そのドレスは古式ゆかしいデザインで、近頃はやりのものとは違っていた。
    上質のシルクををふんだんにつかい、複雑な手刺繍の縫い取りがしてあるもので、大げさなデザインではなかったが、すっきりとしていて体のシルエットを殊更美しくみせた。
    中世ヨーロッパの花嫁衣裳を独自のアレンジでやや現代風にデザインされためったにない一点もの。
    「試着してるとこ、みれてよかったわ。」

    以前アルフィンが試着しているのを衛星通信で見たのだ。
    ブライドメイドをするからには、花嫁の衣装とかけ離れたものをつくるわけにもいかず、確認の意味も含めて何点か試着しているところを見せてもらったのだ。
    その数あるドレスの中でも、アルフィンが選んだドレスに諸手を挙げ、惚れ込んだミミーはもちろん同じブランドの同じオートクチュリエを選んだ。
    同じ人間に頼めば、お互いのドレスでアレンジを作ってもらいやすいとも常々思ってはいたのだが、そのクチュリエの繰り広げるデザインの数々に魅了され即決してしまったことは2人ともいなめない。
    また仮縫いをすぎ、手渡されるまでの時間も特別に早めてもらうという荒業もやってもらった。

    しかしながら、ミミーとは遠く離れた星どうしだったため、お互い着用している姿を実際の眼でみたのは、その確認の際の一回だけでしかなかった。
    出来上がる工程や、マネキンの着た姿は互いにメールなどでやり取りはしていたのだが、それぞれ何かと忙しく互いの姿をお互いにじっくりと見る事ができなかった。
    「このドレス、立ち姿が美しかったんだけど・・・」
    とても残念そうに、ため息をつきながら、ドレスを見遣るアルフィンはまた足の痛みを思い出す。
    がっくりと肩を落とす彼女に掛ける言葉が見つからないミミーも、アルフィンはどんなかっこでも似合うとしかいえず、疲れたので休む、という彼女の言葉にしたがって、部屋を後にした。


    外にでると、明日の花婿となるジョウが腕組みをし壁にもたれて立っていた。
    「花嫁さんのご機嫌伺い?」
    おどけて尋ねるミミーに、ふっとやさしく表情を崩し、「ありがとな」と小さく礼をいった。
    「とんでもない。アルフィンの様子気になったし。でも。びっくりし。そんなやさしい表情ができるなんて思わなかったわ。あ。アルフィンが絡むと素直になるの?」
    きっと他人は見たこともないくらいのふとした優しい表情にびっくりしてしまって、つい口からでた彼女の言葉に、ぐっと返事のつまったジョウはくるりと向きを変え部屋に入るでもなく、そのままブリッジに向かおうとする。
    そのジョウの背中に大声で再度確認をした。
    「え?アルフィンのこと見にきたんじゃないの?」
    またあとでくるよ。と言う声が通路にすがすがしく反響する。

    −アルフィンが心配で出てきたのよね。きっと。あたしに気を使っちゃって入ってこなかったくせに。・・・・・照れちゃってるし。−
    自分が長居をしすぎてジョウの訪問をさまたげたのか、とも思ったが、ジョウにやきもちを焼かれるほど長居はしていなかったつもりだしと思いなおす。
    こっそりとアルフィンを慰めにきたつもりが、自分がいて黙って帰るに帰れなくて待っていたのか。
    勝手にそのような解釈をして、ついくすりと笑みがもれてしまう。
    なかなかどうして、夫婦というか家族というか、長年同じ屋根の下で暮らす2人はいまだに人前で鷹揚に振舞うことができないのは、ひとえにジョウの半端ではない照れ症からだ、ということを再度確認してしまったミミーなのであった。

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■737 / inTopicNo.6)  Virginity
□投稿者/ 柊里音 -(2004/06/11(Fri) 05:38:14)
    「ねえ、でも、大丈夫なの?」
    「・・・・さあ?ま、あの2人の事だから。それもありなんじゃない?」
    「ま、ね。ここまで用意して無駄にはできないもんね」
    「そりゃそうさ」
    ふふふ、と花がほころぶ微笑を浮かべるミミーを見つめるリッキーはこの上なく幸せそうで、眩しげに目を細めていた。
    いつの間にか隣に立つ傷だらけのヤサオトコから鋭い一撃の肘鉄をくらう。
    「ほらほら、そろそろ王妃さまもくるんじゃねえのか?」
    「あ。ほんとだ」
    「王様やクラッシャーダンには会えないのね」
    と、ミミーはとても残念そうに肩を落とす。
    「ま、あたしが残念がるより、アルフィンの方が残念よね。それにタロスだって、残念じゃない?せっかく花嫁の父の気分を味わえる予定だったのに」
    最後の台詞でくすくすと笑い出したミミーに答えるかのようにぽりぽりと頭を掻き、勘弁してくだせえよ、ほっとしたんですぜ、ある意味。と任命した当事者が聞いたら怒り出しそうな台詞で答えた。
    じゃ、ちょっとだけ花嫁の父の気分をあじわってもらいましょう、と言葉の音が消えぬ内に大きな腕にミミーの細く白い腕がからまった。
    端からみたら、ちょっと異様なカップルができあがり、いきなりのジェスチャーにタロスは顔がゆだり、リッキーは不機嫌顔となる。
    「おやっさんも本当はくる予定だったんですよ」
    照れてばかりもいられなく、慌ててダンの肩を持つタロスには、不満気味なリッキーが答える。
    「兄貴はほっとしてるんじゃないの?議長がこなくって」
    軽口を叩くリッキーを軽くはたいて、なおも弁護を続けた。
    「ちょうど、テラで会議が続いてましてね。つい先だって終わった仕事ででも、出席を要する会議ってもんが発生したんですわ。それもジュネーブでする事が急きょ決まっちまいましてね。それが必須出席だといってこなければ、こちらに列席する予定だったんです」
    「ふーん。じゃ、王様は?やっぱりだめだったの?」
    「アルフィンは最後まで王様にはかけあってたみたいなんだけどね」
    「王様のほうは、やはり国政のことがあって、予定ってもんはだいぶ前から組み込まれているもんですし、まあ王妃さまがなんとかご出席されるだけでも・・」
    「一人娘のことなのに・・・。お姫さまって、本当に規則ばった生き物だったってことか。やっぱり、今のアルフィンからは想像できないわ。そんな毎日決まりきった行事のなかで生きてたなんて」

    とある事件以来、懇意にしているミミーは普段の彼女をよくみている。
    その彼女からは、以前スケジュール通りに日々生活していた事をきいていなかったわけではなかったが、どうにもこうにも結びつかないのだ。

    じゃ、そろそろ、というタロスの声に後押しされて、3人で迎えるために歩を早めた。

    そういえば・・・。とミミーは、一人ふてくされ気味に歩くリッキーを振り返り、先ほどからずっとひっかかってる心配事を口に出した。
    「王妃さまにはアルフィンの事いってあるの?」
    「いや。かえって心配させるだけだから、って・・・」
    「そう・・・・。ま、中止にするわけじゃないし、メモリアルはちょっと変わったことがあったほうが心に残るもんね・・・。あ、あたし、王族って始めて会うわ!なんか自分もセレブな気分になっちゃう!どうしよう。なんていってご挨拶するのかしら」
    「・・・でも。アルフィンも一応王族だぜ」

    出迎えに行くために乗り込もうとしたエアカーの手前でミミーが、はっと気がついたように足をとめた。
    「・・・・・忘れてたわよ。あたし・・・そう・・よね、今自分でもそんなこと言ってたわよ。支離滅裂じゃない・・・あたし」
    その顔が、あまりにも真面目くさっていて、心底びっくりしたという目元と、なんといっていいかわからない口元がアンバランスで、タロスは笑いを噴出ししてしまった。
    「そりゃそうだ。あっしたちも、そんなことがなきゃ忘れてます」
    「なんたって、あれがお姫さまなんだもんなー」
    「そのアルフィンに最初にときめいたのって、リッキーなんでしょ?」
    「げっっ。なななんだよっ」
    「だって、あんた昔っから女にはからっきしだったもん」
    「・・・・・・・・」
    「ほお、昔っからだったんだあ」
    いつのまにか、この2人はタッグをくんでしまっい絶妙なタイミングで、リッキーいじめに入っていた。
    かつての悪行をそこそこしっているミミーには弱みを握られているのは当たり前。
    そして、今現在のチームメイトで良い意味の喧嘩相手であり遊び仲間であるタロスからみてすれば、普段のリッキーの、以外にも真面目でウブな性格は言わずもがな。
    ただリッキーは度胸がなかったのよね。なんて意中の彼女からトドメをさされてしまったものならば、がっくり肩を落とすしかないではないか。
    「ミミーは・・・・、手の早い男のほうがよかったのかい?」
    ぼっ。と赤く染まった頬は、その答えを伝えているのだけれど、まだ少しオンナゴコロを理解しえていないリッキーはどう受け取ったのか、う〜〜っと唸ったままエアカーに乗り込んだ。
    その後姿を見送る2人は。
    「ま、がんばんな」
    「・・・・・ありがとう」
    果たしてその言葉が、先に後部座席に乗り込んだ純真なオクテの赤毛の彼に届いたものなのだろうか。
    そそくさと、運転席と助手席に別れ何事もなかったかのように、エアカーを発進させるのだった。





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■738 / inTopicNo.7)  Virginity
□投稿者/ 柊里音 -(2004/06/11(Fri) 05:39:56)
    乗り込む前のちょっとした勘違いで剥れていたリッキーも、和やかで楽しげなミミーの新しい家族と学生生活の話題に終始無視を決め込むわけにはいかなかった。
    ククルを出てからこっち、健やかな青空の元でありがたいことにも両親にも負けず劣らずの愛情を一杯にうけ、のびやかに育つミミーは、リッキーの知っている頃の彼女とは違っていた。
    相変わらずのド派手な衣装でミネルバに乗り込んではきたものの、話す内容も、仕草も。
    女性らしい片鱗が見えるようになってきた。
    子供だ、子供だと思っていた彼女は、いつのまにか、眩しい輝きをもつようになった。
    そんなミミーは本当に魅力的だ。

    「ぼーっとしてんじゃねえよ」
    運転席から鋭い突っ込みを入れられてリッキーははっと我に帰る。
    「ねえ、あんたどうしちゃったの?」
    気がつくと、リッキーが見とれていたはずの助手席にすわるミミーの横顔は斜め45度というのか、ほぼこちらを向けており、運転手のタロスはバックミラー越しにこちらをにやにやと見ていた。
    「うっせい!すけべいおやじっ」
    照れ隠しに踏ん反り返ってはみたものの、ミミーと視線を合わせたときにばばばっと染まってしまった頬の赤らみは隠すことができなかった。
    ミミーがふふふっ。と鼻先で笑う。
    でもそれは決して馬鹿にするようなものではなく、なぜだかとてもリッキーには嬉しく思う微笑みだった。

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■739 / inTopicNo.8)  Virginity
□投稿者/ 柊里音 -(2004/06/12(Sat) 19:51:30)
    −では、あなた、行って参りますわね−
    −クラッシャージョウにも、申し訳なく思っていると・・・−
    −ええ、存じてますわ。陛下がどんなに残念に思われているか−
    −もう・・。そんな年か、あの子も・・・−
    −早いものですわよね。私たちも、年をとりましたわ−
    −いやいや。エリアナはいつまでも美しいよ−
    −ま。あなた、そんなことをおっしゃられてもお連れ出来かねますわよ−
    −はははっ。いやいや、君にはいつまでも敵わないな。お世辞どころか、本音一ついわせてはもらえないのだから−

    機内でエリアナは飛び立つまえのハルマン3世との会話を思い出し、やわらかな微笑をうかべた。
    まもなく空港に近づくとの放送が聞こえ、国から持参した仕事を一時中断した為、ふと、我に返り今朝方の夫婦の会話を思い出してしまった為だ。
    そして、今から考えると遥か昔のことのように思える、掌中の玉のように慈しんで育てた愛娘が飛び立っていってしまった後の日々も。
    どこの世界に、子供を、ましてや一粒種の、人並み以上の聡明な娘を手放して、喜ぶ親がいるだろうか。
    −どちらかというと、私よりも彼の方が落ち込んでいたわね−
    確かに自分が嫁いだ時も、母親より父親のほうがそうであったように。
    −まったく世の中の父親は、娘の事を永遠の恋人にしておきたいものなのね−
    アルフィンから、結婚式に来て欲しい、とおねだりをされたときの彼の顔ったら、なかった。
    ひさびさに里帰りをした、と思ったら、いきなりの結婚宣言に私たちも面食らってしまった。
    もう、遥か昔に手放して、飛び立つことを許した娘なのだから。
    愛する人を自分で見つけ、自分の手で運命を切り開くために飛び立って行った娘なのだから。
    そして、その事を鎖し留め置かなかった私達なのだから。

    彼の元で、華開いて、馨しいばかりの美しさと、私達の庇護の元では得られなかったしなやかな力強さを身につけたあの娘を。

    言葉はしらずのうちに声をともない、彼女の胸の内を吐露する。
    「あなた、いつまでもあの子を愛していてもかまわないんですのよ」

    彼を連れ、頬を染め、式に出てくれと久々の甘えた声を聞いたとき。
    ジョウの元にいきたい、と口元を引き締め、強い眼線で自分の意思を通したとき。
    学友たちとお忍びで旅行にいったときのことを、興奮しながら夜通し話しこんだとき。
    初めてできたボーイフレンドに、プリンセスだからと振られてしまったと夜を越えて悲しんでいたとき。
    オトモダチトアソビタイダケナノニと涙を瞳一杯にためてわがままをいったとき。
    高い熱をだした夜、彼と2人、乳母にまかせておくこともできず、ずっと傍らで手を握っていたとき。
    幼い頃、初めて城外に連れてでたときの、興奮した表情。
    初めて、ぱぱままと口にだしてくれたときのたどたどしさ。
    初めて、私の乳を吸ったときの感動。
    初めて、この世界に、顔を出したときの力強い泣き声。
    そして、あの子の存在を、確認できたあの瞬間。

    すべてが愛しい。すべてが美しい彩。全てが・・・私の歴史。
    「すべては、あなたと私がめぐり合ったからだわ。ねえあなた」
    零れ落ちる涙を拭おうともしないエリアナに、思いを馳せる事を同じくする侍女たちも同様にしとど流れ落ちる涙を抑える事もない。

    全ての歴史は2人がいたからこそ。そう、新しい歴史を紡ぎゆかんとする我が娘。
    だれが、それを阻止できようか。
    すべては、おそらく、彼女が生れ落ちた瞬間から背負った宿命に導かれてやってきたこの日。
    強い晄を持つやわらかな瞳のエリアナは、くいと顔をあげた。
    そのときの彼女の表情は、これまでにみたこともないほど、晴れ晴れしく輝いていた。


    銀翼の機体は静かに着陸態勢に入る。

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■740 / inTopicNo.9)  Virginity
□投稿者/ 柊里音 -(2004/06/12(Sat) 19:59:05)
    お手伝いをしていた女性たちが扉を出て行き、ジョウが近づいて来た時、白い衣装に身を包んだアルフィンはジョウが隣に座る場所をつくろうと、腕に力をいれ身体をずらそうとしていた。
    それをジョウは動きを手でさえぎり、くいっと細い腰に手を廻し軽々と抱き上げる。アルフィンの座っていたところの程近い場所に腰を降ろしつつ、自分のひざの上に座らせた。
    細心の注意をはらい、脚を曲げることがないか、どこかに当たらないか、周りを気にしながら、腰に廻した腕に力を籠める。
    バージンロードを歩くことを楽しみにしていたアルフィンだったけれど、この足では仕方がない。
    でも、その場所はあるきたい。
    ではどうするか?

    それは、考えるまでもなく、ジョウがアルフィンを抱き上げて歩き進むこととなったのだ。

    「ごめんね」
    「ん?」
    髪を軽く上げているから、うなじの長い後れ毛がきらきらと眩く繊細な輝きを放つ。
    肩越しに聞こえる声が、鈴の音を転がしたように、と耳に優しく響く。
    こんなにも細かったのかと改めて思いなおす程の小柄な肩に、唇を寄せる。

    己の首に巻きつくアルフィンの腕は、とてもやさしく。とても・・・。
    ふわりと鼻に掛かる馨りは、いつもよりも華やかで、それでいて懐かしい。
    彼女から香る馨りも、しぐさもなんであれ愛しいものだ。

    仕事中、アルフィンはどちらかと言えば慎重派で、たまに一緒にくむリッキーからも、もうちょっと大胆な行動に出て欲しい、と苦言をもらうこともある。
    細心の注意を払いながら仕事をする、ということは、危険と隣り合わせのこの稼業ではとても大事ではあるが、確かにリッキーの言うように時と場合によっては大胆に行動をしたほうがよいときもある。
    今回は、どちらかと言えば、慎重派なアルフィンで正解だったのではあるが、少しばかり気持ちも違う方向に向いていたようだ。
    「仕事中だったのに・・・。つまんないこと考えちゃったからドジっちゃった」
    とても申し訳なさそうに語る口調は、本当に心細げで。
    確かにあのあと、ばたばたしていたせいで、アルフィンとまともに話していなかった。
    それを彼女は怒っているかもしれない、と受け止めていたらしいことが口ぶりで伺える。

    「過ぎた事を話しても仕方がないさ。ま、足を怪我したくらいなんだから」
    慰めと、とれるのかどうかわからない台詞で、彼女の気持ちが少しでも楽になるのなら。
    「せっかくの日なんだぜ。もうちょっと、いい顔で笑えよ」
    しがみついていた腕をやんわりと外して、正面から覗いた彼女はすこし不安げな面持ちながらも、にっこりと華のような微笑を浮かべる。
    きっちりと化粧を施し、髪を結い上げているのに、いつもよりもあどけなく、幼さの残る少女のようも見える。

    そんな、目の前の彼女は間違いなく自分を今までも、これからも、愛しつづけてくれるであろう最初で最後の女で、そして何よりも大切に思う、家族の一人。
    今日、こうして神と、家族の前で、また違った人生の選択を認めてもらうことを決めたただ一人のひと。
    初めて会った頃は、気高さを持ち合わせていながらも、まだまだ本当にあどけなさの残る少女だった。
    しかし、強い意思を瞳に映し、しなやかな肢体からは考えつかないほどのエナジーを出す。
    大きな決断をして、自分の所にやってきたとき、とても信じられなかった。

    彼女の意思の強さが。
    そして、自分の気持ちが。

    同じ立場であったならば、果たして自分は彼女と同じ事をするだろうか。
    今までの自分を捨てて全くの違う人生を手に入れようとするだろうか。

    昨日も、その前も、思いつけば考えていた事がフラッシュバックする。
    あの頃のアルフィンを思わせる今日の彼女だからか。


    「・・・・・アルフィンは」
    「ん?」
    「後悔はしないのか?」
    「・・・・・・・・・」
    一度聴いて見たかった台詞をとうとう口にだしてしまった。

    自分の元へきて、後悔はしていないのだろうか。
    こうして、新しく踏み出す未来に不安はないのだろうか。

    「どうしたの?変なジョウ?」
    面白げな影を瞳に映す。
    「なんでいきなりそんな事言いだしたの?まるでマリッジブルーみたい」
    こつんと額をくっつけて、やさしい声色で話す。小さい子供をあやすかのように。
    「あたしがここにいる事は、決まっていた事よ。きっと。産まれる前からね」
    「ジョウとめぐり合って、一緒に生きて・・・。宿命ってあるんだな、って思うわ」
    いつもするように、指でクセのある髪を梳きながら言葉を選んでいるように、静かに話す。
    「運命って、変えられるけれど、宿命はもう変えられないの。あたしがピザンで産まれたのは運命。だけど、ジョウと会ったのは宿命だとおもわない?」
    おもしろい定義だなと小さく答え、耳に心地よく響く鈴の音の転がるかのような声を聞き入っていた。
    「後悔、なんて考えた事ないわ。あたしは、自分で自分に素直に行動しているだけよ。それとも、ジョウは後悔してる?」
    指先がぴたりととまった。
    くっついていた額が離れる。
    「あたしと会った事、後悔してる?」
    強い意思を齎す碧の瞳に射抜かれたかのように言葉を失う。
    じっと、見つめ返すジョウの瞳の奥はとても深くて、とても静かな色を湛える。
    その答えは、桜色にほのかに色づいた唇への誓いのキスだった。





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■741 / inTopicNo.10)  Virginity
□投稿者/ 柊里音 -(2004/06/12(Sat) 20:00:12)
    静かに奏でられるパイプオルガンの音
    歌われる賛美歌

    おおきな扉が開き、みなの待ち望んだシルエットが浮かび上がる


    神父が待つ赤い絨毯の先を目指し
    一足ごとに
    思いの丈を篭めて踏み出すバージンロード


    新婦を抱き上げた新郎が
    一足ごとに
    思いの丈を篭める

    今までの思い出を噛み締めるように
    そしてこれからの未来を
    思い描くように


    そして、また歴史は引き継がれてゆく





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■742 / inTopicNo.11)  Virginity  あとがき
□投稿者/ 柊里音 -(2004/06/12(Sat) 20:05:58)
    はーい!皆様お疲れさまでした!
    周りの方々を書こう、と思ったら、ちょっとなんというか、くどくどしくなってしまった・・。ま、いいや、あげちゃえ!とあげちゃいました。

    おつきあいくださいまして、ありがとうございます。

    じつは、パーツパーツでばらばらに書きなぐっていたので、前後つながっていないかもしれません・・。どうぞご容赦を(笑)

    さあ、お題目(祭り)にも参加できるかっ?
    まだこっちが続いていたりする私。
    とろいってのよね。ごめんなさい。

    最後までありがとうございました。
fin.
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