| ねー。真面目に見て!
純白のウエディングドレスはどういう意味があるのか。 純真無垢なまま、あなたの色に染まります。という古来よりの衣装ながら、数百年たった現在もまかり通っている現状。 それはとても清らかに美しく。どこまでも白く。 それはとても・・・・
とても眼のやり場に困るのもので。
「一緒に何枚か選んでくれるっていってたのに・・・。それに、きちんと着るところは本番までお預けなんだから!え?特別!今日はね。だって、こんなにあったら、どれを本当に着るのかわからないでしょ?」
悪戯そうに上目使いで忍び寄る笑みには降参だ。
そうだな。見慣れない白い衣装のオンパレードは、どれもこれも同じに見えてしまうのは、男という生き物だからだろう。 −アルフィンが気に入ったのなら別になんでも−と心で呟いたが、口に出すことは止めにした。 もしもうっかりそんな事を言おうものならば、怒りの鉄拳をおもむろに繰り出してくることは間違いないと思う。 ここのところの彼女はとても嬉しそうで。 たかだか、白い衣装を着て、指輪を交換し、神の前の誓いとやらをすることが、なぜそんなにイベント性の高いものなのか。 理解ができないのは、それはやはり俺が男だからだろう。
そしてそれも口に出すことは止めにした。
いつもの真紅なクラッシュジャケットとは違い、普段彼女が好むような衣装でもなく、ウエディングドレスというものは、なぜこんなに崇高に見えてしまうのだろう。 男というものは仕方がない生き物で、いつも見慣れているはずの女(ひと)なのに。 なぜ、こんなにも心乱されてしまうのだろう。
その衣装を纏いふと視線をそらすしぐさ、髪を掬い上げ白いうなじを顕わにしたしぐさ、それはとても美しく、彼女を全く別の女性のように見せてしまう。
「ねえ。これも素敵でしょ?」 夢想を破る明るい声を発する彼女に視線を移し、軽くうなずいた。
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