FAN FICTION
(現在 書庫3 を表示中)

HOME HELP 新規作成 新着小説 トピック表示 検索 書庫

[ 最新小説及び続き投稿フォームをトピックトップへ ]

■746 / inTopicNo.1)  WONDERFUL LIFE
  
□投稿者/ 藍々 -(2004/06/28(Mon) 16:44:48)
    鐘が鳴っている・・・。
    目を開けると私は静かに赤いじゅうたんの上を歩いていた。
    目の前には薄い布があり、白いフィルターを通したみたいに、
    周りが見える。
    「ああ、そうだ私、結婚するんだ。」
    教会の天井は高く、重厚なパイプオルガンの音が耳を打つほど響き渡っている。
    左側にはお父様がいる。顔を見たいのだけど、ベールが重くて横に向けない。
    ただ、左の手からはお父様の暖かい腕のぬくもりが伝わってくる。
    二人でゆっくり、ゆっくり祭壇の前へ歩いていく。
    「バージンロードって歩きにくいのね」
    何故か、そんなことを想った。ドレスは慣れているはずなのに、今日はやけに足に絡みつく。
    多くの参列者はみえるのだけど、見知った顔を捜すことができない。

    ぼんやりと祭壇が見えてきた。
    背の高い神父様が金の縁取りをした式服で立っている。
    その前に一人、こちらを向いて立っている人がいた。
    グレーの長い燕尾服で背が高い。肩幅もがっしりとしている。
    「顔が見たい」
    いまさらながら、そんなことを考えていた。
    やがて、お父様の腕から私の手ははずされ、新郎の前に歩いていくよう、うながされる。
    私はゆっくりと歩いて、新郎の横に並んだ。
    神父様のやわらかく低い声が聞こえてきた。
    とても、いいお声なのに、私には何を言っているのかまったくわからない。
    「やだ、緊張してるわ」
    こんなこと、式典なんて慣れているのに。緊張するなんて初めてだ。
    やはり、自分の結婚式って特別なのね。そんなことを考えていると
    頭がぼおっとしてきて、神父様の声に身を任せていた。
    隣にいる新郎の緊張が伝わってくる。
    「それでは、誓いのキスを・・・。」
    神父様の声にハッとした。ブーケを持ち直し、新郎の方へ体を向ける。
    私は少しかがんで俯き、ベールを上げてもらった。
    「きれいだよ」
    少し緊張気味の新郎の声が聞こえた。私の頬にさあっと血が上った。
    嬉しくて。早く、あなたの顔が見たい。
    そして、思い切って顔をあげた。
    まぶしくて、顔が見えない。後ろのステンドグラスの光が目に入る。
    ステンドグラスに反射した金髪がきらきらと光っていた。
    「え、金髪?」
    思わず後ろに後ずざる。ぼんやりとしていた頭がはっきりしてきた。
    「違う、違うわ」
    この人じゃない。なんだかわかんないけど、私が結婚したいのはこの人じゃない。
    私はドレスの裾を持ち上げると、今来たバージンロードへ走り出した。
    ドレスが重い。走っても走っても先へ進まない。
    ようやく教会の扉が見えた。
    ドアの隙間から光が見える。
    私は両手でおもいっきりドアを押し開けた。
    そこには、青、黒、緑のスペースジャケットを着た男達が背を向けて、立っている。
    「待って。待って。」
    涙があふれてきた。私を置いていかないで。
    走っても走っても彼らに追いつかない。
    三人の男達が振り返る。
    「アルフィン!」
    はっきりと私の名前を呼ぶのが聞こえてきた・・・。


    「アルフィン!アルフィン!おいっ!」
    アルフィンはぱちりと目を開けた。見慣れた照明。二人の男性が自分を
    見つめている。ジョウとリッキーだ。
    「どうしたんだよ、アルフィン。うなされていたぜ」
    リッキーが心配そうな顔でアルフィンを見ていた。
    「あ、あたし・・・。」
    ジョウの手を借りて体を起こした。ここはミネルバのリビングルームだ。
    真ん中にある大きなスクリーンでは、ムービースターがテラの古い教会で結婚式を挙げたというニュースを流している。ああ、そうだ。
    アラミスから駆け込みの仕事を入れられ、ほぼ三日間不眠不休状態で仕事をしていた。
    ようやく、報告書がまとまり、タロスに宿直を任せた三人は部屋にもどろうとしたが、寝付けない。ジョウが贔屓にしているサッカーチームのニュースが見たいと言ったので、そのまま三人でドンゴが録画したニュースパックを見ていたのだ。
    「アルフィンったら一番に寝たんだぜ。」
    テレビを見てリラックスしたら、途端に睡魔がやってきた。アルフィンは10分もニュースを見ることなく、ソファに崩れ落ちた。
    「オイラ達も、うとうとしていてさ、そうしたらいきなりアルフィンがわめきだすんだもん、びっくりしたよ」
    リッキーがどんぐりまなこをくりくりさせて言った。
    アルフィンの足元にはブランケットがかけられていた。
    そうか・・・。これで足が重かったのね・・・。
    「大丈夫か」
    ジョウがアルフィンの顔を覗き込む。
    アルフィンはまだぼんやりしている。ジョウへの返事もうつろだ。
    「何か悪い夢でもみたのか?」
    「ううん」アルフィンは首を振る。
    「結婚式を挙げていたのよ」
    「結婚式?それ兄貴とかい?」
    リッキーがまぜっかえした。とっさにジョウが赤くなって
    リッキーに拳骨を入れようとしたときだった。
    「ううん、違う人と。」ぽつりとアルフィンが言った。
    えっ?とジョウとリッキーがアルフィンを見た。
    ほんの少し、ジョウの眉間にしわがよった。
    「誰だった・・・」と聞こうとしたときだった。
    アルフィンが両腕でジョウとリッキーの首に抱きついたのだ。
    「もう!みんなあたしを置いていこうとするんだからあ。ああ
    よかった夢で、ほんと現実じゃなくてよかったああ」
    ぎゅううっと音がするくらい、二人に抱きついてわめくと、さっと二人から離れて起き上がった。
    「コーヒーでも入れるわ!ちょっと待っててね」
    と笑顔を返し、キッチンの方へすたすたと歩き始めた。
    そのとき、ドアが開く音がした。タロスだ。
    「きゃあ、タロスう。現実ってすばらしいわねえ」
    とアルフィンはタロスの腕にも抱きついた。
    「な、何だ?」
    「タロス、コーヒーいる?」
    驚くタロスを無視して、アルフィンは聞いた。
    「ああ、いるけど、アルフィン。酔っているのか?」
    「やだ、まだ仕事明けじゃない、さすがのあたしも飲まないわよう」と
    言うとけらけらと笑ってキッチンの方へ姿を消していった。
    呆気にとられてタロスがリビングへ向き直ると、ジョウとリッキーが
    顔を赤くして、座り込んでいる。
    「何かあったのか?おめえら」
    タロスが聞くと、二人とも深呼吸をしてお互いの顔を見た。
    「兄貴、顔赤いぜ」とリッキー
    「お前もな」とジョウ
    「よかったじゃん、アルフィン結婚しなくって」
    「まったく、何考えてんだか・・・」
    そこまで、言ってジョウがくっくと笑い出した。つられてリッキーも笑い出す。
    「結婚?なんだあ?」
    タロスは笑っている二人を不思議そうに見つめていた。
    やべえなあ、仕事のしすぎか?そんなことを考えて。
    ジョウとリッキーの笑い声が響く中、やがてミネルバのリビングは香しいコーヒーの匂いに包まれていった。

引用投稿 削除キー/
■747 / inTopicNo.2)  WONDERFUL LIFE
□投稿者/ 藍々 -(2004/06/28(Mon) 16:49:35)
    あいあいです。
    いやー、もう、恥ずかしいの一言です。
    でも、これだけ書くのにものすごい時間がかかってます。
    つくづく、物書きさん達の偉大さを感じました。
    初めてですので、なにとぞご寛容に読んでくださいませー。
fin.
引用投稿 削除キー/



トピック内ページ移動 / << 0 >>

このトピックに書きこむ

書庫には書き込み不可

Pass/

HOME HELP 新規作成 新着小説 トピック表示 検索 書庫

- Child Tree -