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「やめた!この世界の神だろーが、何だろーが関係ない。クラッシャーは神頼みなんて、しないんだ」 ジョウはいきなりソファから立ち上がり、手を広げてかぶりを振った。 「本当ですぜ。無駄なことだ」タロスも巨体を起こした。 生粋のクラッシャーふたりは、ぶつぶつと文句を言いながらリビングを出て行った。 「リッキー、アルフィン。あとは任せる。適当にやってくれ」
「えー!?あ、兄貴ぃ。あらら、行っちゃったよ。どーする、アルフィン?」 「うーん。いいアイデアだと思ったんだけど。でも何だか今までの色々な仕打ちを想い出したら、確かに頭にきちゃったわね」 アルフィンは口元に拳をおき、困ったように首を傾ける。何よりもチームリーダーの同意を得られなかったので、彼女の熱も完全に冷めてきてしまっていた。 「じゃあ、あとはリッキーに任せるわ。適当にまとめて投書しておいてよ」 ソファから立ち上りかけたが、急にリッキーの方へ前屈みになる。 腰に手を当てて、人差し指をつきだした。 「あ、女性ゲストんとこ、外さないでよ!」碧眼を光らせて、念押しした。
アルフィンが長い金髪を翻してリビングから出て行ったあと、リッキーは独り残されて呆然としていた。 「あーもう!何だよ、皆で俺らに押し付けて!」 リッキーは半ベソをかいて髪の毛をぐしゃぐしゃと掻きあげた。
仕方なしにキボードに向き直る。 「えーと。あまり人を殺さずに、宇宙船や機材の破壊も最小限・・・。でも、そーするとストーリー的にあんましインパクトなくなるのかなあ?確かに「壊し屋」っぽくないか・・・」 ぶつぶつと独り言を云いながら、タイピングを続ける。 「おおっと。女性ゲストキャラのこと入れておかないと、アルフィンに殺されちゃうよ」 彼女の鋭い碧眼を想い出し、大袈裟に肩をすくめる。 「年上で綺麗なゲストキャラは・・・控えめに・・・っと。ん?年下なら、いいんだっけ?」 何て言ってたっけ?と一生懸命想い出そうと、頭を抱えてリッキーはしばし、唸った。
と、突然ちがうことが閃いて、身体を起こす。 「そ、そうだ。前のゲストを呼んでくれてもいいよな・・・。えっと、出来ればミミーともう一度再会して、俺らメインのストーリーを一本。そしてミミーと・・・」 柄にもなく、顔を赤らめながらタイピングする。何故か、小柄な身体をいっそう小さく丸めながら。 その時いきなり、リビングのドアが開いた。 「キャハ!りっきー、コソコソナニヤッテル?」
「うわわっ!」リッキーがソファから飛び上がった。心臓が口から跳ね出しそうだ。 「ノ、ノックしてから、は、入ってこいよっ!」 「キャハハ、何ヲソンナニ慌テテル?状況カラミテ、えっちナさいと検索率87ぱーせんと・・・」 「んなことするかよ!!ドンゴじゃあるまいし!」 リッキーは真っ赤になりながら喚いた。 素早くまとめたレポートにロックをかけ、ファイルを閉じる。
「ちょうどいいや。ドンゴ、このファイル、テラのソノラマ気付で送っておいてよ」 リッキーもこの面倒な事柄から、早く足を洗いたかった。 「そのらま?」ドンゴがキャタピラをシャリシャリいわせながら、横に来た。 「うん。たぶんそこに送れば、ミスタ・タカチホにこれが届くと思うんだよねー」 もう、どうでもよさそうに彼は片手をひらひらと振る。 「んじゃ、よろしく!」リッキーも身を翻して、リビングを出て行った。
「キャハ。四人ソロッテ何ノみーてぃんぐカト思ッタラ・・・」 ドンゴはPCに自分の回路を繋いで、レポートの中身を確認していた。 リッキーのかけたロック解除なぞ、ドンゴには容易い。 「コレハ、ワタクシノ要望モ入レテオカネバ」 ドンゴの頭部にあるLEDランプが点滅する。PCのディスプレイに文字がタイピングされてゆく。
<先代トイイ、コノちーむトイイ、ろぼっと使イガ荒スギマス。みねるばデノ留守番ヤ機体修理バカリデス。タマニハワタクシめいんノすとーりーヲ一本。ソウソウ出来レバ、ワタクシノオ宝ノタメノ個人ろっかーヲ希望シマス。>
LEDランプが緑色に変わり、送信作業が終了した。 ドンゴが満足気にPCから回路を外し、リビングから出て行く。
さて、これからのシリーズに変化は見られるのだろうか? それは、神『タカチホ』のみぞ、知る。
<END>
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