| 「……う」
不意に、ジョウが呻いた。 その声に、アルフィンは我に返る。
そういえば。 データベースにはこのドリンクの副作用についての注意書きがあった。 飲んだ数時間後に気分が悪くなったり、激しい頭痛が生じる等の症状が出る場合がある、場合によっては、呼吸困難を起こすことも有り得る、と。 持続性はないが、その分ショックが強烈、と。
一刻前までのジョウの態度…彼の通常の、強すぎるほどの自制心と精神力をもってしても抗えない…のを見れば、あのドリンクの効果は予想を遥かに超えたレベルなのであろう。となれば、当然副作用の危険性もその分考えなければならないわけで…。
「どうしたの?どこか苦しい?」 「いや…大したことはない…でもちょっと…気持ち…悪く…なってきた…かな…」 「え?」
ジョウは、眉根を寄せた。 そして突然アルフィンにくるりと背を向けると、身体を丸めた。
「……っく」 「ジョウ、ジョウ、大丈夫?」 「う???」
ジョウは苦しそうな声をだすと、身体をぴくぴくと痙攣させた。 アルフィンの顔色が変わる。 幾ら何でも、これはちょっと影響が大きすぎるのではないだろうか。
「ジョウっ!しっかりしてっ!」
小さく悲鳴を上げ、アルフィンはジョウの背中に縋りつく。 ジョウは2,3度大きく喘いだかと思うと、びくん、と身体を大きく揺らした。
「……ジョウ?」
アルフィンは、ジョウの様子を確かめようと、身体を起こした。 その弾みで、ハンモックが大きくしなる。
「きゃっ」
バランスを崩した。 ジョウの顔を覗こうとしていたアルフィンの上半身は、彼の上に着地した。
視線が、はた、と合う。
「…えっ、アルフィンっ??」
ジョウの声が上ずった。 いつもの彼の声だ。おそらく副作用が止まったのであろう。 だが、アルフィンはほっとするわけにはいかなかった。
副作用が消えたということは、ドリンクの効果も消えたということ。
今この状態でジョウが普通の状態に戻れば、彼はきっと誤解するに違いない。 ”俺はアルフィンに襲われそうになった”、と。
アルフィンの背中に、嫌な汗が流れた。
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