| 昔、昔あるところに、とてもきれいなお姫様がいました。 名前は、アルフィン姫。 雪のように白い肌と、宝石のように蒼い瞳。 父である国王様に大切にされ、それはそれは、幸せに暮らしていました。
ところが、あるとき、国王様が再婚することになりました。 アルフィン姫に、新しいお母さんが出来るのです。 しかし、新しいお妃様は、見かけはきれいでしたが、実は恐ろしい魔女だったのです。
お妃様は、魔法の鏡に訊きました。 「鏡よ、鏡。この国で一番、きれいなのはだーれ?」 すると、鏡が答えました。 「この国で、一番きれいなのは、お城にいるアルフィン姫」 それを聞いたお妃様は、かんかんに怒りました。 「きー!なんですって!上等じゃない、ミスギャラクシーの件も含めて、白黒つけようじゃない!」 お教えするのが、遅れましたが、お妃様の名前は、ルーと言います。
お妃様は、家来のバードに命じて、アルフィン姫を亡き者にしようとしました。 しかし、姫を不憫に思ったバードは、姫を森に逃がしてやりました。
アルフィン姫は、森を彷徨いました。 歩きつかれて、くたくたになった時、小さな家が見えました。 「今夜は、あのおうちに泊めてもらいましょう」 とんとん。ドアをノックしました。 しかし、返事がありません。 ドアを開け、中に入ると、テーブルの上にご馳走が並んでいます。 お腹のすいていたアルフィン姫は、そのご馳走を全部食べてしまいました。 すると、今度は眠くなりました。隣の部屋に、大きなベッドと小さなベッドがありました。 アルフィン姫は、ベッドに横になり、すやすやと眠りはじめました。
仕事を終えた、この家の住人が帰ってきました。 大男の名はタロス。小さいほうは、リッキーといいました。 家に入ると、二人はびっくりです。 何故って、楽しみにしていたご馳走がなくなっていたからです。
「タロス、ちょっと来て。知らない女の人が、おいらのベッドをつかってるよ」 リッキーとタロスは、眠っているアルフィン姫を見つけました。 「ちょっと、起きておくれよ。そこは、おいらのベッドだよ」 アルフィン姫は、目をさますと、びっくりしました。 「きゃあ、大男と小人がいるわ!」 「え?小人っておいらのこと?」 リッキーが自分を指さしました。 アルフィン姫が頷くと、リッキーは隅っこにいって、大層いじけてしまいました。 アルフィン姫が一生懸命謝ると、やっと許してくれました。
そして、アルフィン姫は、これまでの事情を二人に話しました。 すると二人は、この家で暮らしなさいといいました。 タロスとリッキーは、毎日森の奥で、木を切ります。 その間、アルフィン姫はお掃除をしたり、お料理をしました。 アルフィン姫には、全てがものめずらしく、楽しい日々を送りました。
その頃、お城では、意地悪なお妃のルーが、鏡を相手にまた質問をしました。 「鏡よ、鏡。この国で一番、きれいなのはだーれ?」 すると、鏡が答えました。 「この国で、一番きれいなのは、森にいるアルフィン姫」 「なんですって!あの、小娘がまだ生きているんですって。こんどこそ、息の根をとめてやるわ!」 ルーの目に、めらめらと嫉妬の炎がともりました。
いつものように、タロスとリッキーが森に出かけていきました。 アルフィン姫がお掃除をしていると、一人の老婆がやってきました。 「娘さん、りんごをいかが?」 老婆が、真っ赤なりんごを差し出しました。 「まあ、なんて美味しそうな、りんごでしょう。でも、見ず知らずの方からは、頂くことはできません」 (ちっ!)老婆は、内心舌打ちしました。じつは、この老婆、魔法を使って、ルーが化けていたのです。
「そんなことは、言わずに。ほれ、一口、味見をしてごらんなさい」 重ねて勧められ、アルフィン姫は一口だけ・・と、りんごをかじりました。 すると、どうしたことでしょう。アルフィン姫が倒れてしまいました。 それをみた老婆は、笑いながらお城のほうへ、帰って行きました。
家に帰ってきた、タロスとリッキーは、びっくり仰天です。 「わー、大変だよ、アルフィンが、じゃなくて、アルフィン姫が死んでるよ!」 二人は、アルフィン姫の側で泣きました。 すると、その騒ぎを聞きつけ、男が人がやってきました。 「どうしたんだい?」 やってきたのは、隣国の王子ジョウ様です。 身長180センチ。体重75.5キロ。髪と目は・・・まあ、ご紹介するまでも、ございませんね。
「おいら達のお姫様が、死んじゃったんだよ。そうだ!王子様がキスすれば、目をさますよ」 「ええ!」王子様はびっくりです。 「さあ、ジョウ。さくっと、やっておくんなせえ」 タロスとリッキーが、真摯な眼差しで、王子様をみつめます。
王子様が、美しい姫君に、口づけをしようと顔を近づけました。 ・・・が、出来ません。 何故って?王子様はとっても、照れ屋さんなのです。
「なにしてんだよ、早くキスしちゃってよ!」 リッキーが急かします。 「う・・・いや・・それは・・・」 王子様は顔を真っ赤にさせ、もじもじしています。 タロスがリッキーに、目で合図を送りました。 (リッキー、後ろから押せ) (あいよ。任せといて)
そして、王子様とお姫様は、熱い口づけをかわしました。
ゆっくりと、アルフィン姫が目を開けました。 「まあ、王子様。あなたが、私を助けてくださったのですか?」 王子様が頷きました。 「まあ、王子様。私を、あなたのお国に連れて帰りたいと思ってらっしゃるの?」 またまた、王子様が頷きました。 声もでない王子様に代わって、リードして差し上げる、心やさしい姫でした。
こうして、晴れてアルフィン姫は、王子様のジョウと一緒に、隣国へと向かいました。 もちろん、王子様の愛馬ミネルバに揺られて。
二人の幸せそうな姿を見送っていた、タロスがリッキーに言いました。 「おい、上手く手助けできたじゃねえか」 リッキーは首を振りました。 「おいら、何もやってないんだよ。実は・・・アルフィン姫がジョウのマントを引っ張って、強引にキスに持ち込んだんだよ」 「なんだって!」 「ほんとさ。きっと、死んだふりして、キスされるの待ってたんじゃないのかな?」 去っていく二人を見て、タロスがつぶやきました。 「間違いなく尻に敷かれるな・・・」
なにはともあれ、めでたし、めでたし。
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