FAN FICTION
(現在 書庫4 を表示中)

HOME HELP 新規作成 新着小説 トピック表示 検索 書庫

[ 最新小説及び続き投稿フォームをトピックトップへ ]

■996 / inTopicNo.1)  彼女の青
  
□投稿者/ ヒロコ -(2006/04/21(Fri) 11:44:47)
    初めて投稿させて頂きます。『3分で読めるSS』です。よろしくお願い致します。

    駄文は当然、好みに合わないこともあるかと思います。その際はどうぞブラウザバックでお戻り下さいませ。

    お目汚し、失礼しました。
引用投稿 削除キー/
■997 / inTopicNo.2)  Re[1]: 彼女の青
□投稿者/ ヒロコ -(2006/04/21(Fri) 11:48:52)
    No996の続きを書く(ヒロコさんの小説)

    『彼女の青』

    彼女の柳眉がきりきりと逆立った。彼女が“敵”と認めたもの━━それは他人の目から見たら、ほとんどは見当違いも甚だしい言いがかりに過ぎなかった━━に対して、八百万の神々を呪い、筆舌に尽くしがたい悪口雑言をぶちまける。ジョウに触れるな。ジョウに話し掛けるな。ジョウと同じ空気を吸うな。それはまるで、大切な宝物を必死で守ろうとする幼女のようだ。非論理的かつ大仰で、悲しくなるくらい捨て身の抵抗。

    そんな時、彼女の青は奇妙なまでに透き通る。普段はきらきらと陽光を反射させ、見る者の視線を捕らえて離さない、好奇心と慈愛に溢れた群青の湖水。だがひとたび、嫉妬という名の炎がチリチリと灯されると、暖かな群青は見る見る間に冷ややかなアイスブルーに変化する。

    男は彼女が無意味で筋の通らない主張を何故繰り返すのか理解に苦しむ。現状を的確に判断し、ベストな選択を行うことが正しくはあっても、それは更に“青”を透き通らせることになるという事実に彼は気付かない。理論的、生産的、建設的という語彙からは対極に位置する彼女の発言と振る舞いの数々。アルフィン、もういい加減にしろ、と一喝しかけたその時。

    男は彼女の青に絡めとられる。どこまでも透き通る、深い深いその青に。一瞬にして自らを包み込む、真摯で一途でひたむきなその青に。刹那、周囲の雑音が一切消えた。存在するのは彼と彼女の青だけ。晴れた日、陽光が差し込む湖水でけだるく泳ぐ自分。光と魚影が重なり合う様をぼんやりと眺め、ああ、この湖は何て美しいんだろうと確かに感じた一瞬は、幻覚か白昼夢か。

    ちょっと聞いてるの、ジョウ。彼は、彼女の一言で現実に引き戻された。

    彼女の青を見つめていた視線を無理矢理剥がし、鈍く光る床面に視線の先を変えながら、小さく小さくため息をつく。諦めと敗北をその吐息に乗せて。彼女の青に一瞬でも浸っていたことを気付かれてはなるまい。再び顔を上げ、そしてこう言うのだ。

    分かったよ、アルフィン。アルフィンの提案でいこう。

    一体俺はどうしちまったんだ。━━これは彼女の青に絡めとられた男の話。
fin.
引用投稿 削除キー/



トピック内ページ移動 / << 0 >>

このトピックに書きこむ

書庫には書き込み不可

Pass/

HOME HELP 新規作成 新着小説 トピック表示 検索 書庫

- Child Tree -