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Re[10]: Dreams come true
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□投稿者/ 舞妓 -(2006/06/17(Sat) 23:45:18)
| ■No1163に投稿(舞妓さんの小説)
ジミーの体調を鑑みて、ダンの計らいでグラントとジミーはそのままホテルのメディカルルームに泊まる事になった。 「お前達は、<ミネルバ>に戻れ」 先ほどまでのダンはどこへ行ったのやら、あっという間に「評議長」がお戻りになった。 もちろんそうするつもりだ。 親父と同じホテルに泊まるなんて冗談じゃない。 「じゃあ、あたし、先に失礼しまーす…」 アルフィンは逃げるように、先に出て行ってしまった。 「まだ何か用か」 コーヒーカップを睨むように座り続けているジョウに向かって、ダンが言う。 「教えてくれ」 「何だ」 「昔、<アトラス>の模型を貰った。アレは、どこで手に入る」 「ドルロイだ。あれは、職人が趣味で作っていたのを貰ったものだ」 「そうか、分かった。」 ジョウは立ち上がった。 「邪魔したな」 「いや」 それだけで、滅多に会うことのない親子は別れた。さよならも、またな、も無く。
ジョウが部屋を出て行って、急に一人になった静寂の中で、ダンは深くため息をついた。 キャロル・アサカワ。 黒い長い髪、黒い瞳。 ダンが心から愛した女性に、よく似ていた。 ジミー。 母譲りの、黒い髪と黒い瞳。 幼い頃、会いたくても叶わなかった、愛して止まぬ息子にどこか似ていた。
その息子は、いつしか大人になった。 ジョウの面影を重ね、父としてできなかったことの罪滅ぼしのように気にかけたジミーは、病と闘っている。
どうか、生きてくれ。 ダンは、心から願った。 キャロル、君の息子を、どうか。
「ジョウ…」 ベッドにひっくり返っていると、アルフィンがやってきた。 「もう寝ろよ」 「うん。ここで寝ようと思って」 「そうか…なに?!」 ジョウは驚愕してガバっと身を起こした。 「だって、興奮して眠れないのよ」 こうふんして…って俺はどうしたらいい?? アルフィンはさっさとベッドに入ってジョウの横に滑り込んできた。 「感動したわ」 ジョウの動揺にはまったく気付かず、アルフィンは話し出した。 「ジミー、頑張ってくれるかしら」 「…どうかな」 「素敵ね…家族って」 「ああ」 「それにねえ、ジョウ」 意味ありげに笑ってアルフィンがジョウを見る。 「ジョウって、ちゃんと愛されてたのね」 「…」 ジョウは何も言えなかった。 ジョウ自身も、そう思ったからだ。 アルフィンが、ジョウの手を握ってきた。 「おやすみ、ジョウ」 目を閉じたまま微笑むと、すやすやと眠ってしまった。 「…おいおい」
(ジョウって、ちゃんと愛されてたのね) そう、人を愛することができるのは、愛されたからだ、と。 最も愛する者の安らかな寝顔を見て、ジョウは心が満たされていくのを感じていた。 そして、グラントとジミーの事を、想った。 今グラントはどんな想いでジミーの寝顔を見ていることか。 そして、祈った。何かに。
彼らにまた、こんな夜がどうか、訪れるように。
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