| 朝食を済ませた4人は、ロビーで待っている番茶の所へと急いだ。 「おはようございま〜す♪」 なんとも間のぬけた声を出す番茶。 「あ、あぁ、おはよう。」 ジョウは引きつりながら挨拶をする。他の3人はずっこけて倒れている。 「皆さん、なんで倒れてるんですか?」 これまたマヌケなコトを聞く番茶。しょうがない。こいつは自分が原因だなんてこれっぽっちも思っていないのだから。 「い、いいや、んなコトはいいから、早くゲレンデに行こうぜ!!」 ガバッと飛び起きたリッキーが番茶に言う。 「あぁ、そうですね。では、でっぱぁ〜つ♪じゃなくて、出発〜♪」 うけると思ったのだろう。明るくオヤジギャグを飛ばす番茶。 これにはさすがのジョウも、他の3人同様倒れこむのであった。
そんなこんなで、ゲレンデにやって来た5人。 「皆さん、“ゆきだるま”作りましょう。」 突然、番茶が言い出した。 「ユキダルマ?」 4人は頭を傾げる。 「なに、その、“ゆきだるま”って?」 アルフィンが番茶に聞く。 「えっとですね。説明するとまどろっこしいので、ミニ版を私が作りましょう。で、その後、大きいのを作りましょう。」 と、言いながら番茶は小さい雪の塊を2つ作り始めた。 「ちょっと大きさを変えて、小さい塊を頭にするんです。で、大きいのを体にしてですね、」 説明をしながらゆきだるまを作る番茶。 「眼は柊の実でっと、腕は木切れでっと、」 鼻歌まじりにミニゆきだるまを作る番茶。 「へ〜〜、おもしろそ。」 リッキーは興味津々で、番茶の作る“ミニゆきだるま”を見ている。 「あら、意外とかわいいわね。」 ひょいっと、アルフィンもリッキーの後ろから顔を覗かせる。 「・・・こりゃ、スコップがいりますな。借りてきますわ。」 結構乗り気のタロスが、ロッジに向かった。 「皆、子供だね〜。」 苦笑しているジョウであったが、でかい“ゆきだるま”にはどの眼がいいか、腕は何にしようかと辺りをキョロキョロしているのであった。(笑)
タロスがロッジからスコップを借りて帰って来た頃には、すでにジョウとリッキーが雪だまを作り始めていた。 「お〜い、タロス!早く来いよっ!」 リッキーが手を振る。 番茶とアルフィンは“雪うさぎ”を作っている。 「ね〜、見てみて!!可愛く出来たでしょ?」 得意そうなアルフィンの足元には、30cmほどの“雪”で作った“うさぎ”がいた。眼は柊の実、耳は笹の葉をつけていた。 「上手く出来てるじゃないか。」 ほ〜と感心したようにタロスが言う。 「上手いですよっ!!アルフィンさんは、器用でらっしゃるから!!」 鼻息も荒く、自分が褒められたように番茶が言う。 「あら、ありがと♪」 アルフィンがにっこり笑って、番茶に微笑みかけたもんだからさあ、大変。 ぷっしゅ〜〜〜〜。真っ赤になって、失神寸前。 ・・・な〜んて単純なんでしょう。ある意味、ジョウと張り合うものを持ってる番茶。 そこへ。 「タロース、頭の部分、持ち上げてくれよ。重くておいら達には無理だよー。」 リッキーがタロスを呼ぶ。 「お〜、今行く。アルフィンはどうする?」 「私も行くわ。番茶さんはどうする?」 アルフィンに問いかけられ、 「も、もちろん、アルフィンさんの行く所この番茶、どこまでもお供いたしますっ!!」 えらい気の入りようである。 番茶の勢いに引きながらも、 「あ、あら、それは嬉しいわね。」 と、一応礼を言うアルフィン。 「ほれ、行くぞ。あまり待たせると、チビが喧しくなる。」 あ〜あ、と片手を額に置いたままタロスが急かした。 「そうね、いきましょ。」 アルフィンはそう言うと、ジョウの所へ駆け出した。 「ああ、走る姿も美しい<ポッ。」 はうぅ〜とため息をつく番茶。 「・・・好きにしてくれ。」 タロスは頭を抱えたまま、アルフィンの後を追った。
よっと、タロスが掛け声1つ出して、“ゆきだるま”の頭部分を胴体の雪だまの上に載せた。 ふぇ〜〜〜っと、度肝を抜かれた声を出す番茶。 上下合わせた“ゆきだるま”は、ジョウの背丈ほどになっていた。 「タロスは体の大部分をサイボーグ化してるの。」 アルフィンの説明を受けながら、へ〜、と感心?する番茶。 「それより。ねぇ、腕は笹でどう?」 さっき“ゆきうさぎ”を作ったときに採ってきた笹を枝ごと“ゆきだるま”の腕部分に刺してみる。 「あら、いいじゃない?」 ねっ、とジョウの方を向いて同意を求める。 「ああ、いいんじゃないか?」 ジョウも笑いながら応える。 「眼は、この石でどうかな?」 リッキーは自分の拳ほどの石を2つ、何処からか持ってきていた。 「よっと。」 眼の部分に石を食い込ませる。 「お〜、いいじゃん♪」 「スコップ、無駄になりましたな。」 笑いながらタロスが言った。 「じゃ、そのスコップで穴掘って、タロスを雪埋めにするとか。」 きひひひっと、リッキーが笑う。 「その前にお前を埋めてやるっ!!」 リッキーにつかみかかるタロス。 「つっかまんないよ〜〜〜ん♪」 「こらっ!待てっ!!!」 ヒョイヒョイとリッキーは逃げる。ドカドカとタロスがその後を追う。 「あの〜、いいんですか?」 番茶はおろおろして、ジョウとアルフィンを見る。 「ああ、いつもの事だ。ほっとけばじきに戻ってくるさ。」 くすくすと笑っているジョウ。 「ねぇ、ジョウ。ソリしない?こないだ人が乗ってるの見て、面白そうだったの。」 ツンとジョウをつついて、アルフィンが言う。 「ああ、いいぜ。で、ソリってのは?」 うん?とアルフィンの方に頭だけ向けて答えるジョウ。 「へへっ、もう、借りて来てるの。」 2人乗りのソリを後ろから引っ張り出すアルフィン。 「じゃ、番茶さん。私達、滑ってくるわね。」 行きましょ、と、ジョウの腕に自分の腕を絡ませるアルフィン。 ジョウはアルフィンからソリを受け取り、引っ張る。 じゃ、と番茶に片手を上げるジョウ。 その動作があまりにも自然で、声を掛ける事さえ出来ない番茶。 呆然と2人を見送り、1人取り残されるのであった。
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