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■753 / inTopicNo.1)  Re[26]: 雪降る温泉宿♪
  
□投稿者/ 剣流星 -(2004/09/18(Sat) 14:23:37)
    「ジ、ジョウ、もう良いから。」
    モジモジしながらアルフィンがジョウの胸元から声を上げる。
    そう。アルフィンはまだ、ジョウに前抱きにされたままだ。
    「更衣室までだ。このままで我慢しろ。」
    表情が伺えない、無感情な声がかえってくる。
    「え!?更衣室の中まで来るの?」
    困惑するアルフィン。
    「・・・ドコから覗いてるか分かりゃしねぇからな。」
    不機嫌をあらわにしたジョウの声。
    その後に“アルフィンの身体は誰にも見せねぇ。”と、小さく呟いたのはナイショである。(爆)もちろん、アルフィンには聞こえていない。
    「心配すんな。脱衣篭とタオルでバリゲート作ったら後ろ向いてるから。」
    “ん〜。そういう問題じゃないんだけど。。。”
    深い溜息を1つ吐くアルフィン。
    そうこうしている内に、女子更衣室に到着。アルフィンを下ろしたジョウは、自分のバスタオル(下はタオルで隠してます<笑)と、脱衣篭とを組み合わせ、ギリギリ1人入れる“簡易更衣室”を作った。
    「ほら、早く着替えろ。」
    そうアルフィンに促し、自分は後ろを向く。全神経をそこらじゅうに張り巡らせ、人の気配を伺っている。照れいる暇なぞない。(笑)
    「う、うん。。。」
    モゾモゾとジョウの作ってくれた“簡易更衣室”に、着替えと共に潜り込み、素早く着替える。
    「着替えたわよ。」
    と、ジョウに声を掛けると、
    「じゃぁ、タロスとリッキーのトコへ行っておけ。俺も着替えてすぐに行く。」
    後ろを向いたまま言うと、内側の出入り口から出て行った。
    もちろん、気が抜けた瞬間にアルフィンの肢体の柔らかさを思い出し、全身真っ赤になったのは言うまでも無い。(若さだよ、若さ。<核爆)

    タロスとリッキーの所へアルフィンが行くと。
    「あれ?兄貴は?」
    温泉につかったままのリッキーが聞いてきた。着替えが無いので、出るに出れないのだ。
    「ん。今、着替えてる。」
    はぁ。と1つ溜息を付く。
    「・・・腑が悪かったですな。」
    タロスが気の毒そうに言う。
    「まったく、その通りだぜ。」
    何時の間にか、ジョウが近付いてきながら答える。
    「あ、兄貴っ!」
    「まぁ、無事皆と会えたんですから、良し。。。って訳にも行きませんか。」
    憮然としているジョウ。溜息を付きまくるアルフィン。ずぶ濡れのリッキー。服がズタボロになっているタロス。
    まともな状態のメンバーは1人も居ない。(番茶は無視されている<笑)
    「おい。宿はここから遠いのか?」
    ジョウが聞く。
    「ん゛〜。もう早く戻りましょうよ。」
    うんざりしてアルフィンが続く。
    「いや、近いですぜ?目と鼻の先です。」
    思い出したようにタロスが答える。
    「おいらも戻って着替えたいよ。」
    ぶぇっくしょんっ!と盛大なクシャミを1つかますリッキー。
    「じゃ、戻りましょうぜ。おい、リッキー。お前はとっとと上がって、ダッシュで部屋へ戻れ。」
    「あーってるよっ!言われなくてもそうさせて貰うぜ。風邪引きたくねーもん。」
    「お前、“バカは風邪引かない。”ってコトワザ知らねぇのか?」
    「んっだとぉ〜っ!?」
    湯船から飛び上がり、タロスを睨むリッキー。
    調子が戻ったと単にコレである。
    「タロス!いい加減にしろっ!リッキーっ!本当に風邪引きたくなかったら、早く部屋へ戻れっ!」
    ジョウの雷が2人に落ちる。
    「「は、はいっ!」」
    2人同時に返事をし、リッキーは濡れたままダッシュして行く。
    「タロス。早く戻ろう。」
    はぁ。今度はジョウが盛大な溜息を付いた。
    「あ、あのぉ〜。もしかしなくても、私、忘れられています?」
    タロスの足元から、情けなーい声がする。
    「あ。忘れてた。」
    タロスは、番茶を踏みつけていた足をどける。先ほど踏みつける力を緩めたのだ。
    「や〜。声も出せないし、動こうとしても身動き出来なくて参りましたよ。」
    ・・・当たり前だ。動けないように踏みつけてたんだよ。
    ボソっ。と、タロスが呟く。
    「は?何か言われましたか?・・・ぶっ、ぶえっくしょんっ!!!」
    ザブンっ!
    番茶は起き上がったが早いか、盛大なクシャミをかまし、ブルルっ!と震えたが早いか、湯船に飛び込んだ。
    そういえばコイツ、湯船を掻き分けてやって来たんだよな。(爆)
    「あ〜♪良い湯加減ですなぁ〜♪」
    ・・・こういう状況下で、このセリフ。やはしズレている。(苦笑)
    「気持ち良いですよ〜♪皆さんもどうですかぁ〜?って、あれ???」
    番茶が落ち着いている間に、ジョウ達は既に姿をくらませていた。
    当たり前だ。これ以上コイツとなんぞ居たくねぇ。(大笑)
    「もぉ〜。折角の良いお湯なのに。勿体無いなぁ〜。」
    ・・・服のまま浸かって言うセリフか?しかも、お客ほたってて良いのか?
    「あ。風邪引いて、この先のお相手できなくなる方がマズイでしょ?このまましっかり温まってから、ホテルに帰りますよ♪」
    番茶。誰に向かって喋ってんだ???
引用投稿 削除キー/
■580 / inTopicNo.2)  Re[25]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2003/12/21(Sun) 14:09:51)
    「あ〜あ。タロスは鈍足だよな〜。これじゃ、兄貴達に追いつくのに日が暮れちまわー。」
    雪兎のように、ピョンピョン飛び跳ねているリッキー。
    もちろん、タロスの遙前方で。である。
    「こんっの、クソちびぃーっ!」
    ・・・この追いかけっこは既に2時間続いている。吹雪のほうは幾分落ち着いたとはいえ、風と雪はまだ強い。
    「へへ〜ん♪追いつけるモンなら、追いついてみやがれってんだぁ〜♪」
    調子に乗ったリッキーは、更にタロスとの距離を開ける。(一応、相手が確認出来る距離だが。)
    「くっそぉ〜っ!待てっ!!!このどぐされチビっ!!!!!」
    そんなタロスの罵声も馬に念仏。どんどん距離を開けられる。
    ブツブツ言いつつも、先へは進まなければならない。
    「んっとに、今回の休暇は、踏んだりけったりだ・・・。」
    グチを言わねば、やってられない。タロスは、恨み言を羅列しながらリッキーの後を追う。
    「うぎゃーっ!」
    そこへリッキーの悲鳴が聞こえた。流石に徒事ではない叫び声に、タロスは瞬時に反応する。
    今までのノロノロペースは何処えやら。リッキーの声のした方へとすっ飛んで行く。
    そこで見た光景は・・・。
    「タ、タロスーッ!助けて〜!!!」
    泣きながら逃げ回るリッキーの姿。そのリッキーを追っているのは。
    「く、熊だぁ〜よぉっー!!!(涙)」
    やばい。小柄なリッキーがそのパンチを食らったら、あの世行きなのは間違いない。
    ぐぉぉぉぉぉぉーっ!との雄叫びとともに、タロスは熊とリッキーの間に割り込んだ。

    ***********************************

    「や〜ん♪気持ち良い〜♪♪♪」
    ジョウより一足先に湯に浸かって絶叫(?)を上げているアルフィン。
    「ん〜。やっぱ、寒いトキには温泉よねん♪」
    フフフゥ〜ン♪と、鼻歌が出る程ご機嫌なアルフィン。
    湯煙を見つけたとき、期待せずに状況確認に行ったアルフィンは、意外に綺麗な小屋と、結構広く、岩を組んで造ったと思われる直径10mはあろうかと思われる露天風呂。(周辺を歩いて確認したらしい。)しかもその造りは、自然に溶け込み違和感がまったくない。
    全てを見渡せるのではなく、湯船の所々に大きな岩が配置してある。
    アルフィンは、泳いで(おい・・・。)一番端の方まで来ていた。もちろん、湯煙と吹雪の為、脱衣所は見えない。
    一方ジョウは、やっと湯船に浸かった所だった。
    「ふぅーっ。一息付くな。」
    ずずずずず。一気に鼻先まで湯に浸かる。
    「しかし、向こう側も見えないとは・・・。」
    そう。どんな露天風呂かジョウは知らなかった。そして今も。
    「幾分落ち着いたが、こりゃ今夜は此処に泊まりかな。」
    ジョウの目の前の光景。それは、湯煙と雪が混ざり合い、渦巻いている光景だった。
    「泊まりとなると。薪は1晩分くらいはなんとかなるか。明日は朝一番で・・・。」
    ブツブツと、明日のプランを練るジョウ。その前方から、バシャバシャと水音がする。ジョウは、
    「?」
    となるが、そんな水音を出しながら近付いて来るのは1人しか居ない。
    「あ、あわわわわ。」
    慌てて、姿を隠そうとするものの、適当な岩陰は無い。水音からして、脱衣所に逃げ込む時間も無い。
    しかたないので、水音のする方とは身体を逆向きする。
    ・・・正面を向いていたら、死が待っている。(笑)
    程なく、水音の主が現れ、
    「ん〜♪温まった〜♪少し、脱衣所で涼も・・・・・?」
    ピタッ。水音が止む。ジョウは、冷や汗をかきつつ、相手の反応を待つ。
    「え?え???えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっ!?」
    バシャーッ!そのまま、3メートル程一気に後退した気配。
    「な、な、なんでジョウが居るのーっ!?」
    アルフィンは絶叫した。それにジョウは。
    「・・・俺も知りたいよ。」
    半泣き状態で答える。
    「ここは女湯よっ!?どーしてジョウが居るのよっ!?」
    キーキー金切り声を上げるアルフィン。
    「俺は、男湯に入った。間違いない。そこが男子脱衣所だ。」
    ジョウは、アルフィンに背中を向けたまま、男子脱衣所を指差す。
    「本当?」
    半信半疑なアルフィン。
    「バカっ!んな事で俺がウソ付くかっ!」
    やけくそなジョウ。
    『・・・・・・・・・・・・・。』
    無言の2人。
    「もしかして、ここ。混浴ってコト?」
    思い当たるコトをアルフィンが言う。そういえば、手ごろな看板を叩き壊し、それで入り口の鍵を壊した。もしかして、その看板・・・。
    アルフィンは、サーっと血の気が引く音を聞いた。
    「・・・どうも、そうらしい。」
    「いやーんっ!!!!」
    アルフィンは、絶叫しながら、もと来た所を凄まじい勢いで逆走して行った。
    「うぅ〜。」
    どうしたもんかと、ジョウは思った。こりゃ、とっとと上がった方が良さそうだ。そう思い、ザバっ!と身を起したところに。
    ザバーンっ!
    何か重い物体が湯に落ちた音がした。しかも、アルフィンが逃げて行った方向。
    「きゃーっ!!!」
    直にアルフィンの悲鳴が聞こえた。
    「アルフィンっ!」
    ジョウは、自分が裸だという事も忘れ、アルフィンの声がした方へダッシュする。
    雪と湯煙の向こう側に、座り込んでいるアルフィンの金髪と白い肢体が見えた。
    「アルフィンっ!」
    姿を確認し、叫ぶ。
    「ジョウっ!」
    アルフィンも、ジョウの声に反応する。ジョウの胸に飛び込む。もちろん、2人共自分達が裸だという事は忘却の彼方である。
    「ってててて。」
    人間の声がする。しかも、もの凄―く聞きなれた、忘れようも無い声が。
    『リッキーっ!?』
    「へ?」
    ぽかーん。と、間抜け面を晒すリッキー。
    タロスに引っつかまれ、投げ飛ばされたら湯に落ちた。んでもって、目の前には、裸で抱き合うジョウとアルフィンが。リッキーの思考回路は停止する。
    “グガーっ!”
    “こーんのぉーっ!?どぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!”
    ガツっ!ドゴっ!ガキッ!
    何かの大型獣と、これまた聞きなれたタロスの雄叫びと、何かを殴る音が聞こえたかと思ったら。
    ドバシャーンっ!!!!!
    空から、黒い大きな物体が落ちてきた。
    「きゃーっ!!!」
    アルフィンは絶叫し、ジョウにより一層しがみ付く。
    「な、なんなんだっ!?」
    アルフィンを庇いながら、物体が落ちてきた方を凝視する。
    「あ。兄貴。アルフィン。」
    こんな状況だというのに、とぼけたリッキーの声。
    「な、なんなんだーっ!?」
    ジョウが叫ぶ。その叫びを聞き。
    「ジョウ?ジョウですかいっ!?アルフィンは?チビはそこに居ますか?無事ですかぃ?」
    生垣の向こうから、タロスの声が聞こえる。
    「あ、あぁ。タロスもこっちへ来いよ。状況を聞かせて・・・。」
    とにかく、状況整理をしないと。ジョウはそう思った。そこへ。
    「がぁーっ!?兄貴とアルフィン、裸っ!裸で抱き合ってるーっ!!!」
    と、やっと状況を理解したリッキーが叫ぶと同時に。
    「なっ、なんですとぉーっ!?」
    ・・・・・・・これまた、番茶の絶叫が。しかも、バシャバシャともの凄い勢いで湯を掻き分け、此方にやってくる。(こいつ、何時の間に来たんだ!?)
    「やーんっ!来ないでぇーっ!」
    アルフィンは、ジョウの腕の中から出るに出られない。恥ずかしさを通り越し、せめて、ジョウ以外の人目に付くまいと、身体をちぢ混ませている。ジョウから離れたい。身体を隠したい。でも、離れたら大変なことになる。ドツボである。(苦笑)
    「兄貴っ!これっ!!!」
    リッキーが、アルフィンが持ってきたのであろうバスタオルをジョウに投げる。(こういう時には機転の利くリッキー。)
    ジョウは素早くバスタオルを受け取り、アルフィンの身体に巻きつける。それと同時に。
    「アルフィンさーんっ!!!」
    デリカシーの欠片も。思慮・配慮もなーんにも無く、番茶が突進してきた。
    「きゃーっ!!!!!来ないでぇーっ!見ないでーっ!!!<大泣」
    アルフィンの願いと叫びも報われず。3人の周りには人垣が出来てしまった。
    不幸中の幸いは、温泉の水色が濃い乳白色であったコト。ジョウが巻きつけたバスタオルのお陰で上半身が、座り込んで抱き合っている2人の下半身は湯のおかげでまったく見えない。
    わらわらと集まって来たギャラリーは、リッキーとタロス以外、番茶率いる地元村人捜索隊の人々。
    「や〜。無事だったか?」
    「あんりまぁ〜。寒いから、温泉で暖を取っていただか?」
    「いんや〜。若いモンはえぇねぇ〜♪」
    「兄ぃちゃん、役得だねぇ〜♪」
    「姉ぇちゃん、肌が綺麗になったべ?ここのお湯は、美肌の湯として有名だかんな♪」
    「まぁ、無事にみっかったんだから、良かったべぇ〜?」
    『んだ♪んだ♪』(村人合唱)
    好き勝手に、言いたい事を言い捲くる地元村人捜索隊一同。(爆)
    ジョウ達はあっけに取られて、何も言えない。いや、言う事が出来ない。
    すると。
    「おーい。こっちに熊公がくたばってんぞぉ!?」
    遠くから、別村人が叫ぶ。
    「ちゃんとくたばってんのか?」
    「あぁ。白目剥いて、完全にくたばっとる。」
    「持って帰るべ。熊鍋にするだよ。」
    「思わん所で収穫があったのぉ〜。“棚から牡丹餅”か?」
    がっはっはっはっは。大笑いしながら、熊が倒れている方へ向かう人々。
    ・・・・・能天気な村人達である。どうしてそこで熊がくたばっているのかはまったく気にしていない。(いいのか、おい・・・。)
    「んじゃ、皆の衆。帰るべさ。」
    『あ〜、帰るべ。帰るべ。』
    『良かった、良かった。早よ〜見つかって、良かっただなぁ〜。』
    バシャバシャ。地元捜索隊の人々は言いたいコトを言い捲くり、とっとと熊を担いで帰っていった。(帰って良いのか!?)
    後に残されたのは、番茶のみ。
    「アルフィンさーん。良かった〜。無事だったんですねぇ〜!(滝涙)」
    どさくさに紛れて、アルフィンに抱きつこうとした番茶にパンチを食らわせ、バスタオルをアルフィンにきちんと撒き直したジョウは。
    「おい。こいつ(番茶)がこっちへ来ないように見張っとけ。用意が出来たら呼ぶ。それまで、絶対に来るな。」
    地の底から湧き出てきたような低―い声で、タロスとリッキーに言い渡す。
    『へ、へい。<あ、あいよっ。>』
    直立不動で答える2人。ちゃんと番茶は踏みつけてある。(おい?)
    バスタオルに包まれたアルフィンを前抱きにしたまま、ジョウは更衣室に向かった。
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■539 / inTopicNo.3)  Re[24]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2003/10/19(Sun) 15:00:56)
    「ねぇ。まだ着かないの?」
    あれから更に1時間経った頃。
    「・・・ん〜。ヤな予感がしたから、少し遠回りしてる。」
    「え゛〜!?また予感?いい加減にしてよっ!もう日も暮れちゃったじゃない。寒いし、お腹減ったし・・・。」
    ぶんむくれ状態のアルフィンだったが、既に周りは薄暗く、雪も勢いを増しつつある状態。心なしか、声も小さい。
    「それもそうだな。少し、休憩するか。そこでちょっと待ってろ。」
    流石にヤバイかと、雪と風が吹きつけない木陰にアルフィンを座らせる。
    今まではおどけてアルフィンを相手にしなかったジョウだが、流石に3時間以上もアルフィンを引っ張りまわしている事に少々罪悪感を感じていた。
    「うん。」
    かなり疲れている様に見えるアルフィン。
    “こりゃ、マヂなんとかせにゃ・・・。”
    後での噴火を恐れたのもあるが、これじゃ、折角の休暇が台無しである。休息しに来たのに、疲れてちゃ意味がない。
    ジョウはあまり風の来ないような場所を見つけ、そこに雪を運び始めた。
    「ねぇ、なにしてるの?」
    暫くして、ジョウが何をしだしたのか理解出来ないアルフィンが聞く。
    「あぁ。“かまくら”ってのを創ってる。ま、雪の簡易シェルターってトコかな?」
    「ふ〜ん。」
    さも珍しく、不思議なモノを見るような視線を、ジョウと“かまくら”の出来かけ(笑)に向けるアルフィン。
    「アルフィン、すまないが、近場で枯れ枝集めて来てくれないか?だけど、俺の見渡せる範囲内でだ。」
    「分ったわ。でも、枯れ枝あるかしら?」
    少し気分が楽になったアルフィンがチョコを銜えながら腰を上げる。ジョウにも一欠けら銜えさせる。
    「ま、無かったらしょうがない。俺を湯たんぽ代わりにしな。」
    あっと言う間にチョコを食べ、クスクス笑いながら作業を続けるジョウ。
    「もうっ!知らないっ!!!」
    少し頬を赤くしたアルフィンは、踵を返して枯れ枝を探しを始めた。
    ギリギリジョウが見えるところまで来たアルフィンの目に、湯煙が見えた。
    「源泉でもあるのかしら?」
    ジョウの視界から外れてしまうが、確認に行く事にしたアルフィン。
    雪を掻き分け、木立を抜けた(無理やり)先に広がっていた光景は・・・。
    「ジョォーッ!」
    アルフィンの叫びに驚いたジョウは、何があったのかと作業を中断して声のした方向にすっ飛んでいく。
    「何処だ!?アルフィンっ!!!」
    姿を確認出来ないジョウは、アルフィンを求めて叫ぶ。
    「此処!此処!!!」
    両手をブンブン振り回して、木立の中から出てくるアルフィン。
    「どした!?何があったんだ!」
    直にアルフィンを自分の背後に庇い、前方を見据えるジョウ。
    「違う、違うっ!温泉っ!温泉があるのっ!!!」
    「は?温泉?」
    「この先に、温泉があるのっ!看板もあって、“冬季閉鎖”って書いてあったの。多分、ここまでシールドを張る予算がなかったのね。」
    ・・・ミもフタも無い言い方である。
    後日、予算の為ではなく、環境問題の為にシールドを張れなかった事が判明するのだが、今はそんな事はどうでも良い。(笑)
    「まぁ、さっきの所よりは暖を取れる。こっちへ移動だな。」
    「ね、ついでだから、入っちゃわない?」
    さっきとは打って変わった機嫌の良さ。
    「上がった後、どーすんだよ。タオルなんぞ持っちゃいねーぜ?」
    何を言ってるんだとばかりにジョウが言う。
    「ふふー♪それがね、脱衣所がちゃんとあってね。もちろん、バスタオルも少しあったわ。休憩室の中には“囲炉裏”っての?があるのよ。インテリアかなと思ったんだけど、ちゃんと使えるみたい。薪も少しだけど、ストックがあったわ。」
    「・・・ちょっと聞くんだけどな。」
    やーな予感がしたジョウは、恐る恐るアルフィンに質問をする。
    「なーにー?」
    「ロック、掛かってなかったのか?」
    「ロック?掛かってたわよ?」
    「普通、ロック掛かってたら開かないよな?」
    「そんなの、当たり前じゃない。」
    「なんで中の様子、そんなに詳しいんだ?」
    「だって。見て来たんだもん。」
    「・・・ロック、閉まってたんだよな?」
    「開けたわよ。」
    「解除キー無いのに?」
    「この状況じゃない。許してくれるわよ。」
    さも“しょうがないじゃない。”と言うアルフィンに目眩を覚えるジョウ。
    こんな事なら、ヤな予感がしてもゲレンデに戻るんだったと思っても後の祭り。
    (果たして、番茶とこの状況と比べると、どっちもどっちなのだが・・・。)
    そうこうしているうちに、脱衣所兼休憩所の入り口に来て見ると。
    ジョウは絶句した。壊してると言っても、必要最低限部分だけだと思っていた。思っていたが・・・。
    ロック機能が付いてるべき場所は、見事に粉砕(!?)されていた。
    “あちゃ〜。・・・どうやったらこんなになるんだよ・・・。”
    頭を抱えるジョウ。
    幸い寒さを緩和する為、内側にもう1つ扉が付いていた。こっちにロックキーが付いていなかったのが、不幸中の幸いだ。
    まぁ、これで寒さを凌げるとジョウは思ったのだが、そんな事はまーったく気にもしていないアルフィン。(そりゃそーだ。気にしてたら、扉に穴が開くほどロック機能を粉砕しないってば。<汗)
    “どうやって壊したかは聞くまい・・・。”
    溜息を付いているジョウに、“早く入りましょうよ。”と声を掛け、自分はさっさと入っていく。
    「んも〜。すっかり身体が冷えちゃったじゃないっ!せっかく温泉見つけたんだし。温まらなくっちゃ♪」
    室内に入るなり、入浴準備をするアルフィン。
    「それに、“閉鎖”ってしてあるから、貸切よぉ〜♪」
    不機嫌だったのは何時のコト?ってな具合に、アルフィンはルンルン♪気分で、さっさと支度をし、女風呂の暖簾を潜り抜けて行った。
    「・・・どーすんだよ、コレ。」
    そんなアルフィンの後姿を見ながら溜息を付くも、ドアが元に戻るコトはない。
    「しゃーねーか。あとで弁償だな。それより、火を熾しとくか。」
    一応、表のドアを閉め、内側のドアも閉める。囲炉裏に火を熾し薪をくべる。火に勢いが付いたのを確認し。
    「じゃ、俺もひとっ風呂浴びようかな。」
    クキクキと両肩をほぐしながら、ジョウはアルフィンの置いていったタオルを持ち、男風呂の暖簾を潜り抜けた。
引用投稿 削除キー/
■368 / inTopicNo.4)  Re[23]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/12/13(Fri) 20:06:50)
    「ねぇ、ちゃんとゲレンデの方に戻ってるの?」
    2時間程歩いた頃。アルフィンが心持不安そうに聞く。
    行きは滑ってきたから、帰りに時間が掛かるのはしかたないと思っていた。が、いくらなんでも時間が掛かりすぎる。
    「うーん、なんかヤな予感がしたから、ゲレンデ方面はよしてこのまま林を抜ける。」
    そう。ジョウのヤな予感ってのは当たっていた。そのままゲレンデ方向に戻っていたら、番茶の“良かったですぅ〜!<号泣>”攻撃に半日程耐えねばならなかっただろう(爆)
    「えぇ〜!?予感ってなによっ!?ちゃんと戻れるんでしょうね!?」
    半ば呆れてアルフィンはジョウを睨む。
    「大丈夫さ、うん。たぶんな。」
    あさっての方向を見ながら答えるジョウ。
    「たぶんって、ちょっとぉ〜。」
    半泣きのアルフィン。
    「なんとかなるだろう。ま、いざとなったら野宿さ。」
    すでに、日は傾きはじめていた。冬の日暮れは早い。
    「野宿って、なんの装備も持ってきてないのよ!?食料だって・・・」
    と、アルフィンがスキーウェアのポケットから出したモノ。
    チョコ1枚、ビスケット1袋(クラッシュパック装備品<何故に!?>)、ポテチ(小)キャラメル1箱、キャンディー1箱。
    「・・・そんだけありゃ、2〜3日大丈夫だな。」
    溜息をつきながらジョウが取り出したのは。500mlのミネラルウォーター1本とライター。
    「ジョウはそれだけ?」
    「普通、これ持ってるだけでも凄いと思うがな。アルフィンが凄すぎるんだよ。」
    「だって、皆で食べようと思ったんだもん。それに、野宿って。凍えちゃうわよ。」
    「雪を凌げる場所が1ヶ所くらいあんだろ。」
    「もー、気楽でいいわね・・・<溜息>」
    「いざとなったら、くっついて寝ればいいさ。<ニヤリ>」
    「///ジョウのえっちぃぃぃぃぃーっ!!」
    ドコッ!!
    アルフィンの“必殺J殺し”炸裂(核爆)クリーンヒットッ!!←映画参照(大笑)
    「ぐふっ。」
    とある場所(笑)を押さえて屈み込むジョウ。
    「・・・もう、ジョウが悪いんですからねっ!///」
    「・・・」←言葉にならないが、なにか言いたかったらしいジョウ(爆)
    「もう、本当どうすんのよーっ!!」
    空しくアルフィンの叫びだけが林に木霊した。


    さて、こちらはタロスとリッキー。
    「なぁ、番茶撒いたのはいいけど。兄貴達何処まで行ったのかな?」
    「さぁ〜て、ソリの跡はここまでだからな。」
    タロスは足元の雪溜まりを見た。そこからは、2人の足跡が林の奥へと続いていた。
    「?兄貴達、なんでゲレンデに戻ろうとしなかったのかな?」
    腕組をしながら頭を傾げるリッキー。
    「・・・悪寒がしたんだろ。」
    「なんで?」
    「アホ。ゲレンデに戻ったら、番茶が居るだろが。」
    「あ、あぁ〜。(納得)」
    ヤレヤレと、タロスは頭を振って。
    「ほれ、行くぞ。」
    ほーほー言ってるリッキーを残して、足跡の続いてる林の奥に向かった。
    「あ〜、待ってくれよーっ!」
    リッキーは雪ウサギの如くタロスの後を追った。
    「しっかし、何処まで行ったのかな?」
    「ジョウ達が林に突っ込んで、既に1時間は経ってる。雲行きも怪しいし日暮れも近い。早めに探さないと装備ナシで野宿だぜ。」
    「げっ!嫌だよ。仕事でも無いのに野宿なんて。おまけに装備ナシたぁ。(汗)」
    なんとも情けない顔をするリッキー。
    「ボケなすびっ!だから早く探すんだよ!ま、本当は俺達ゃ部屋で待っててもいいんだが、番茶に付き合うよりゃまだマシだろが。」
    「・・・うん。すげーマシ。」
    その場面を想像したのか、げんなりしたリッキーが答える。
    「納得したなら急ぐぞ。このまま下りゃぁ、3時間程でホテルに着くはずだ。ジョウもそれが分ってて行った筈だ。・・・迷わなけりゃな。」
    「じゃ、雪が降り出す前に見つけなきゃ。足跡が消えちまう。」
    「ほー、珍しく分ってんぢゃねーか。ならグズグズせずにとっとと行くぞ!」
    ドカドカ雪を掻き分けながら進むタロス。
    「タロスこそ遅れんなよっ!」
    ピョコピョコ跳ねながら、あっ!と言う間にタロスを追い越すリッキー。流石に身軽なリッキーの方に分がある。
    どうにも悔しいタロスは。
    「うっせー、このクサレトンカチッ!」
    と、悪態を付きながら、ラッセル車の如くリッキーに突進して行く。
    「へっへ〜ん。追いつけるモンなら、追いついてみやがれってんだっ!」
    「こっの、クソガキがぁ〜っ!!(怒)」
    ・・・既に。ジョウ達の捜索ってのは頭の隅にもない2人。しかし、幸いにも進んでいる方向はジョウ達の進んで行った方向であった。(笑)


    さてさて、その頃番茶は。
    「うーん、大丈夫でしょうか?どうなんでしょうか?」
    タロスとリッキーが林に入って行って1時間。
    2人を見送った場所で行ったり来たりしていたのであろう。番茶の両サイドだけ雪が無い。(爆)
    「これはやはり、ホテルの人に頼んで捜索してもらうしかないっ!!」
    ぐっ!と拳を握り締め、ぐぐぐぅ〜っ!と空を睨み付ける番茶。(おいおい)
    そして、5分程そのホーズを維持。(笑)
    人々は、番茶をおもいっきし!避けながらゲレンデに向かう。←当たり前だ(^^;
    「ままぁ〜、あのおぢちゃん面白いね〜♪」
    年端も行かぬ子が、番茶を指差す。
    「これ、指ささないのっ!さ、早くソリで遊びましょうね。(焦)」
    母親らしき女性が、ハラハラしながら子供に注意する。
    「なんで?面白いおぢゃん見ちゃだめなの?」
    「・・・人をジロジロ見てはいけません。失礼でしょ?」
    「失礼?ぢゃ、あのおぢちゃんは“失礼なおぢちゃん”なんだね!」
    悪びれもせず、“本当のコト”を言う子供。(核爆)
    「こ、これっ!さ、行くわよっ!!」
    焦った母親は、子供を半ば引きずってその場を後にする。
    好き放題言われていた番茶は。
    「さあっ!急いでホテルに戻るぞっ!!」
    ・・・母子の会話はまったく聞こえていなかったらしい。(笑)
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■243 / inTopicNo.5)  Re[22]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/10/19(Sat) 16:57:07)
    あたふたしている番茶から、事の顛末を30分かけて聞き出したリッキー。
    「しかしな、もっと簡単に説明できんのか。」
    頭を抱えてタロスが言う。
    そう言いたくもなる。
    なんせ、ゲレンデ脇の林に、ジョウとアルフィンが突っ込んでいった(!?)これだけを説明するのに30分だ。
    いかに、番茶がパニックになっていたからと言って、ここまでくると普通じゃない。
    「あぁ、すいません、すいません(泣)」
    うるうるしながら番茶が言う。
    「・・・あー、もういいから、その林に案内してくれ。」
    げんなりしながら、タロスが番茶を急かす。
    「こ、こっちですっ!」
    はっとして、猛ダッシュで現場に向かう番茶。
    「・・・おい。おいら達は無視なのかよ・・・。」
    ガックリと肩を落とすリッキー。
    「ま、なんにせよ、ジョウとアルフィンが林の中に突っ込んでったのは確からしい。大丈夫だとは思うが念のために探しに行こう。」
    ポンとリッキーの肩を叩き、林の方へタロスは歩き始めた。


    さて。その頃ジョウとアルフィンは。
    「あ〜ん、もー信じられないっ!!」
    ぶつぶつ文句を言いながら、体の雪を払うアルフィン。
    林に突っ込んだ後、木に体当たりこそしなかったが、雪溜まりに突っ込んで止まった為、2人共雪まみれになっていた。
    隣接して立っていた木を避けながらこれたのは、ひとえにジョウの反射神経があってこそだったのだが。
    「も〜、ジョウが林になんか突っ込むからこんな目に会ったっのよっ!!どーすんのよっ!!」
    アルフィンはおかんむりである。もちろん、自分の事は棚の遥か上に上げている。
    「んっな事言ったって・・・。」
    こーゆー場合、逆らわないのが生き残る(!?)術なのだが、つい、一言漏れ出てしまった。
    「あ〜んですってぇ〜〜〜〜〜っ!!」
    鬼の形相のアルフィン(うわっ、むっちゃ怖っ!<笑)
    「ま、とりあえず、ここを抜けなきゃな。」
    さすがに修羅場(!?)を山程切り抜けているジョウは、話題をそっちへ持っていった。
    文句を言い続けているアルフィンに
    「行くのか?行かないのか?」
    と、少し凄んで見せる。
    「・・・んっもう。行くわよっ!」
    プイッとそっぽを向きながらでも、アルフィンの右手はジョウの腕に絡まっている。
    “あー、言ってるコトと、行動が別モンだぜ。ま、いつものコトだけど。”
    苦笑しながら、ジョウは空いてる手でソリを引きずりながら前に歩き出した。


    「あ゛〜〜〜〜っ!!、どうしましょ、どうしましょーーーーーっ!!(滝泣)」
    番茶はずーっと喚いていた。
    「だーーーーーーっ!!!五月蝿いっ!!気が散るっ!黙ってろっ!!」
    その度にリッキーは怒鳴っていた。(ご苦労さん<^^;)
    「ここから林に突っ込んでいったんだな?」
    そんな2人を完全無視してタロスが要点だけを聞く。
    「あぁ、こ、ここです。間違いありません。」
    ソリの跡が少しだけ残っていたのだが、他にもソリを使って遊んでいる客はいるので、念のために番茶に確認したタロス。
    「じゃあ、ここからは俺達だけでいいから、あんたはホテルに帰ってな。」
    そう言うとタロスとリッキーは林の中へ分け入っていった。
    「そ、そんなー、私も行きますぅ〜!」
    「来んなっ!!テメーが来たら、超ド級の足手まといになるんだよっ!!」
    すかさずリッキーがトドメを刺す。
    「あう〜(涙)」
    番茶はその場所に突っ伏して何か言っていたが、タロスとリッキーは構わないコトにした。
    そりゃそうだ。構ってた日にゃ〜、何時までたってもジョウ達を見つけ出せない。それどころか、一生会えないかもしれない(大袈裟でないかも<^^;)
    「なぁ、タロス。どう探す?」
    「そりゃ、この跡を辿っていけば良いだけのコトさ。」
    タロスは足元にある僅かに残ったソリの跡を指差す。
    「楽勝っ!」
    ガッツポーズを決めながら、野うさぎのように駆けていくリッキー。
    「おいおい、オメェーまで遭難するなよ。」
    「早くココを離れないと、番茶が追っかけてくるぜ!?」
    「そりゃコトだ。さっさと行こう。」
    笑いながらタロスはリッキーの後を追った。
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■149 / inTopicNo.6)  Re[21]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/07/17(Wed) 20:20:22)
    「ねぇ、どっちが前に乗る?」
    アルフィンがジョウに聞く。
    「俺。」
    “アルフィン前にしたら、何処突っ込むか分らん(焦)”
    言えないので、心の中で付け加えるジョウ。
    「そう。分ったわ。」
    “じゃ、おもいっきりしがみ付いちゃお♪”
    言ったらジョウは照れまくるので、心の中で付け加えるアルフィン。
    ・・・似たり寄ったりの2人(笑)
    2人を乗せたリフトはゲレンデの頂上に着いた。
    「よっと」
    ジョウがソリにまたがる。
    「んっしょ」
    その後ろにアルフィンが抱きつく。
    「しっかり捕まってろよっ!」
    「んっ!!」
    「それっ!」
    ズザザザッ。
    勢いよく滑り出していくソリ。
    「きゃぁ〜♪」
    悲鳴!?を上げ、更にジョウにしがみ付くアルフィン(楽しそうであるが。)
    「うぅわっ!!」
    バランスが崩れそうになるのを、なんとかもち直すジョウ。
    “む、胸があたるっ!!・・・や、やわらかい・・・・。”
    焦りと、嬉しい(!?)のとがごちゃまぜになり、ジョウの思考は吹っ飛んだ。

    ゲレンデの下で2人の様子を指を咥えて見ていた番茶。
    様子がどうもおかしい。
    「あ゛〜〜〜〜〜、そのまま行ったら危ないですぅ〜〜〜!!!」
    鳥が首絞められたような声で番茶が叫ぶ。
    ・・・叫んだだけ。2人のソリは、そのまま林の奥へと消えていった。
    「あぁ、行ってしまった・・・って、まずいぢゃん!!タ、タロスさんを呼びに行かなくっちゃ!」
    番茶はそう叫ぶと(叫んでばっか・・・)タロス達の所へ駆け出していった。
    ・・・駆け出したはいいが。
    「あ〜〜〜、タロスさん達、何処行ったんだろう!?」
    そう。タロスはリッキーを追いかけて行ったのである。“何処”へ追いかけて行ったかは番茶は知らない。
    「うわぁ〜〜〜〜〜(絶叫)」
    おろおろおろおろおろおろおろおろおろおろおろ。(滝汗あーんど滝涙)
    ひたすらにどんくさい番茶であった。

    そのころ。
    「う〜〜〜、やーっとタロスを巻いたぜ。さて、兄貴達んトコへでも戻るか。」
    後ろを振り返りつつ逃げていたリッキーはタロスの姿が無いのを確認してゲレンデへ足を向けた。もちろん、今来たコースとは別コースを選ぶ。
    「鈍足タロスを巻くのは簡単〜♪ドテトデ走れば足絡まるしぃ〜♪」
    即興でとんでもない歌(!?)を歌うリッキー。
    ご機嫌に足を運ぶ。
    ゲレンデに差し掛かった頃。
    「・・・リッキぃ〜〜〜〜。」
    地の底から響いてくるような不気味(笑)な声。
    「げっ!!タ、タロスっ!!!」
    びくっと後ろに飛びのき、逃げ出そうとするが、すでにタロスに首根っこを押さえられていた。
    「こいつぅ〜〜〜〜、どうしてくれようか。」
    ニヤリ。不気味にタロスが笑う。
    「ひ、ひぇ〜〜〜〜〜〜!!」
    なんとも情けない声を上げるリッキー。
    リッキー、絶体絶命!か?(!?)
    そこへ。番茶のなんとも情けない絶叫が2人の耳に届いた。

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■90 / inTopicNo.7)  Re[20]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/05/31(Fri) 20:59:20)
    朝食を済ませた4人は、ロビーで待っている番茶の所へと急いだ。
    「おはようございま〜す♪」
    なんとも間のぬけた声を出す番茶。
    「あ、あぁ、おはよう。」
    ジョウは引きつりながら挨拶をする。他の3人はずっこけて倒れている。
    「皆さん、なんで倒れてるんですか?」
    これまたマヌケなコトを聞く番茶。しょうがない。こいつは自分が原因だなんてこれっぽっちも思っていないのだから。
    「い、いいや、んなコトはいいから、早くゲレンデに行こうぜ!!」
    ガバッと飛び起きたリッキーが番茶に言う。
    「あぁ、そうですね。では、でっぱぁ〜つ♪じゃなくて、出発〜♪」
    うけると思ったのだろう。明るくオヤジギャグを飛ばす番茶。
    これにはさすがのジョウも、他の3人同様倒れこむのであった。

    そんなこんなで、ゲレンデにやって来た5人。
    「皆さん、“ゆきだるま”作りましょう。」
    突然、番茶が言い出した。
    「ユキダルマ?」
    4人は頭を傾げる。
    「なに、その、“ゆきだるま”って?」
    アルフィンが番茶に聞く。
    「えっとですね。説明するとまどろっこしいので、ミニ版を私が作りましょう。で、その後、大きいのを作りましょう。」
    と、言いながら番茶は小さい雪の塊を2つ作り始めた。
    「ちょっと大きさを変えて、小さい塊を頭にするんです。で、大きいのを体にしてですね、」
    説明をしながらゆきだるまを作る番茶。
    「眼は柊の実でっと、腕は木切れでっと、」
    鼻歌まじりにミニゆきだるまを作る番茶。
    「へ〜〜、おもしろそ。」
    リッキーは興味津々で、番茶の作る“ミニゆきだるま”を見ている。
    「あら、意外とかわいいわね。」
    ひょいっと、アルフィンもリッキーの後ろから顔を覗かせる。
    「・・・こりゃ、スコップがいりますな。借りてきますわ。」
    結構乗り気のタロスが、ロッジに向かった。
    「皆、子供だね〜。」
    苦笑しているジョウであったが、でかい“ゆきだるま”にはどの眼がいいか、腕は何にしようかと辺りをキョロキョロしているのであった。(笑)

    タロスがロッジからスコップを借りて帰って来た頃には、すでにジョウとリッキーが雪だまを作り始めていた。
    「お〜い、タロス!早く来いよっ!」
    リッキーが手を振る。
    番茶とアルフィンは“雪うさぎ”を作っている。
    「ね〜、見てみて!!可愛く出来たでしょ?」
    得意そうなアルフィンの足元には、30cmほどの“雪”で作った“うさぎ”がいた。眼は柊の実、耳は笹の葉をつけていた。
    「上手く出来てるじゃないか。」
    ほ〜と感心したようにタロスが言う。
    「上手いですよっ!!アルフィンさんは、器用でらっしゃるから!!」
    鼻息も荒く、自分が褒められたように番茶が言う。
    「あら、ありがと♪」
    アルフィンがにっこり笑って、番茶に微笑みかけたもんだからさあ、大変。
    ぷっしゅ〜〜〜〜。真っ赤になって、失神寸前。
    ・・・な〜んて単純なんでしょう。ある意味、ジョウと張り合うものを持ってる番茶。
    そこへ。
    「タロース、頭の部分、持ち上げてくれよ。重くておいら達には無理だよー。」
    リッキーがタロスを呼ぶ。
    「お〜、今行く。アルフィンはどうする?」
    「私も行くわ。番茶さんはどうする?」
    アルフィンに問いかけられ、
    「も、もちろん、アルフィンさんの行く所この番茶、どこまでもお供いたしますっ!!」
    えらい気の入りようである。
    番茶の勢いに引きながらも、
    「あ、あら、それは嬉しいわね。」
    と、一応礼を言うアルフィン。
    「ほれ、行くぞ。あまり待たせると、チビが喧しくなる。」
    あ〜あ、と片手を額に置いたままタロスが急かした。
    「そうね、いきましょ。」
    アルフィンはそう言うと、ジョウの所へ駆け出した。
    「ああ、走る姿も美しい<ポッ。」
    はうぅ〜とため息をつく番茶。
    「・・・好きにしてくれ。」
    タロスは頭を抱えたまま、アルフィンの後を追った。

    よっと、タロスが掛け声1つ出して、“ゆきだるま”の頭部分を胴体の雪だまの上に載せた。
    ふぇ〜〜〜っと、度肝を抜かれた声を出す番茶。
    上下合わせた“ゆきだるま”は、ジョウの背丈ほどになっていた。
    「タロスは体の大部分をサイボーグ化してるの。」
    アルフィンの説明を受けながら、へ〜、と感心?する番茶。
    「それより。ねぇ、腕は笹でどう?」
    さっき“ゆきうさぎ”を作ったときに採ってきた笹を枝ごと“ゆきだるま”の腕部分に刺してみる。
    「あら、いいじゃない?」
    ねっ、とジョウの方を向いて同意を求める。
    「ああ、いいんじゃないか?」
    ジョウも笑いながら応える。
    「眼は、この石でどうかな?」
    リッキーは自分の拳ほどの石を2つ、何処からか持ってきていた。
    「よっと。」
    眼の部分に石を食い込ませる。
    「お〜、いいじゃん♪」
    「スコップ、無駄になりましたな。」
    笑いながらタロスが言った。
    「じゃ、そのスコップで穴掘って、タロスを雪埋めにするとか。」
    きひひひっと、リッキーが笑う。
    「その前にお前を埋めてやるっ!!」
    リッキーにつかみかかるタロス。
    「つっかまんないよ〜〜〜ん♪」
    「こらっ!待てっ!!!」
    ヒョイヒョイとリッキーは逃げる。ドカドカとタロスがその後を追う。
    「あの〜、いいんですか?」
    番茶はおろおろして、ジョウとアルフィンを見る。
    「ああ、いつもの事だ。ほっとけばじきに戻ってくるさ。」
    くすくすと笑っているジョウ。
    「ねぇ、ジョウ。ソリしない?こないだ人が乗ってるの見て、面白そうだったの。」
    ツンとジョウをつついて、アルフィンが言う。
    「ああ、いいぜ。で、ソリってのは?」
    うん?とアルフィンの方に頭だけ向けて答えるジョウ。
    「へへっ、もう、借りて来てるの。」
    2人乗りのソリを後ろから引っ張り出すアルフィン。
    「じゃ、番茶さん。私達、滑ってくるわね。」
    行きましょ、と、ジョウの腕に自分の腕を絡ませるアルフィン。
    ジョウはアルフィンからソリを受け取り、引っ張る。
    じゃ、と番茶に片手を上げるジョウ。
    その動作があまりにも自然で、声を掛ける事さえ出来ない番茶。
    呆然と2人を見送り、1人取り残されるのであった。
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■86 / inTopicNo.8)  Re[19]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/05/20(Mon) 22:28:30)
    ジョウが露天風呂に逃げた後。
    「兄貴のあの顔!めったに拝めないぜ。ぎゃはははは!!」
    大笑いのリッキー。
    「ばーか。お前もあんな顔ができるようになるまで何十年かかるか。いや、一生出来ないだろーなぁー。」
    こ馬鹿にした風にリッキーを見るタロス。
    「へん!おいらは未来明るい少年だからなー。どっかの枯れたジジイと違って、チャンスは山のように転がってるんだぜ。」
    へん!と胸を張るリッキー。タロスの嫌味がまったく通じてない。
    「あんだと〜〜〜!?」
    「なんだよー、やるかぁ〜〜〜!?」
    今にも取っ組み合いを始めそうになった時に、アルフィンが2階から降りてきた。
    「あんた達、朝っぱらから元気いいわねぇ〜。」
    呆れたように2人を見る。
    「ところで、ジョウは?」
    部屋の中をキョロキョロと見渡す。
    「兄貴は風呂!」
    へん!とソッポを向くリッキー。
    「はん!テメーの朝飯のオーダーはしてやんねー。」
    とフロントに朝食のオーダーを取ろうとするタロス。
    「もー、タロスも大人げないわねー。」
    やれやれという風に呟くアルフィン。
    「そーだよ、歳だけがっばがっば取ってるだけなんだよなー。」
    ここぞとばかりにチャチャを入れるリッキー。
    「こーんの、クソガキ!言わせておけばぁ〜!!」
    リッキーの胸ぐらをつかむタロス。
    「っもー、やめなさぁーーーーーい!!!」
    堪らなくなったアルフィンが叫ぶ。
    「んっもー、五月蝿いったらありゃしない!!ほら、さっさと朝食オーダーしてよっ!」
    プンプンになったアルフィン。
    「・・・朝っぱらから五月蝿かったのは、アルフィンの方じゃないか。」
    ぼやくリッキー。
    「そうそう。」
    頷くタロス。
    「・・・・・あんですってぇ〜〜〜〜!?」
    ぴくぴくと引きつるアルフィン。
    「あ、あああっしは朝食のオーダーしにフロントに行ってきますわ。じゃ、リッキー、後は頼むぞ。」
    まずいと思ったタロスは、そそくさと出て行く。
    「タ、タロス!ずっけー、電話でオーダー出来るじゃんかよー、おーい!!」
    付いて行こうとするリッキーを、むんずとつかむアルフィン。
    「あんたはここで待ってなさい!!」
    「ぎゃぁ〜〜〜〜〜〜!!!」
    この後、リッキーはアルフィンにボコにされたとさっ♪

    しばらくして、
    「おい、すっげー悲鳴が聞こえたけど・・・。」
    ジョウが風呂から上がってきてリッキーを見た。
    「・・・リッキー、どうしたんだ!?」
    眼をまん丸にするジョウ。
    それもそのはず、顔が痣だらけになっているのだから。
    「兄貴ィ〜〜〜〜(大泣)」
    ジョウにすがるリッキー。
    恐ろしそうに、ジョウの後ろに隠れて、アルフィンを見る。
    「あによぉ〜。」
    ギロリ。とリッキーを睨み付ける。
    「・・・はぁ〜〜〜〜。」
    ため息を付くジョウ。この状況を見ると、だいたいの事は想像が付く。
    「おい、タロスは?」
    とにかく、この雰囲気をなんとかしなくてはいけない。
    「タロスなら、朝食頼みにフロントまで行ったわよっ!」
    ぷっと膨れっ面のアルフィンが言う。
    「“逃げたな・・・。”」
    うぅ、と顔面を掌で覆うジョウ。
    「兄貴ぃ〜。」
    なんとも情けない声を出すリッキー。
    「うぅ・・・。」
    唸り声しか上げないジョウ。
    「もう、なんなのよっ!!」
    いらいらしっぱなしのアルフィン。
    「・・・帰りました〜。」
    そこへ、おそるおそる戻ってきたタロス。
    歓迎したのは、ジョウとリッキー。
    「タロス!遅かったじゃねーか!」
    開口一番、文句を言うリッキー。
    「で、飯は何時頃来るんだ?」
    少しホッとした口調になるジョウ。
    「あ、ああ、すぐ、来るそうでさぁ。」
    ちらりとアルフィンの様子を伺うタロス。
    「・・・着替えてくる。」
    ムッとしながら、アルフィンは2階へとっとと上がっていった。
    「・・・誰が機嫌をとるんだ?」
    ポソッとジョウが呟く。
    リッキーとタロスはバツが悪そうな顔をしながら、ジョウを見る。
    「はぁ、やっぱ、俺か・・・。」
    ガックシ項垂れるジョウ。
    「ごめん、兄貴。」
    「すいません、ジョウ。」
    申し訳なさそうに2人が謝る。
    そこへ、
    「失礼しても宜しいでしょうか?」
    インターホン越しに仲居の声がした。
    「あ、はいはい、どうぞ。」
    リッキーが応対に出る。
    「お食事を持って参りました。」
    仲居はそう言うと、部屋の中に入り、朝食の支度をし始めた。
    「じゃ、俺はアルフィン呼んで来るよ。」
    「たのみます。」
    タロスが小さくなって言う。
    返事をする代わりに、ジョウはひらひらと手を振りながら2階へ上がって行った。

    「おい、アルフィン、入るぞ。」
    一声かけて、ジョウは部屋の中へ入った。
    アルフィンは、着替えてベットに寝転がっていた。
    「飯、来たぞ。」
    「ん。分ってる。」
    まだ少し、ご機嫌斜めのアルフィン。
    「機嫌、直せよ。」
    ジョウは腕組をし、ベット脇からアルフィンを見下ろした。
    「ふん、直ってるわよっ!」
    “直ってない・・・。”
    やれやれといった表情で、アルフィンの腕をつかむ。
    「ほれ、起きろよ。」
    ぐっと力を入れ、アルフィンを引き寄せる。
    「もー、1人で起きられるわよっ!」
    変にアルフィンが力を入れたものだから、ジョウはバランスを崩してベットのアルフィンの上に倒れこむ。
    「きゃん!」
    「あ、す、すまん。」
    すぐに身を起こして、ジョウが謝る。
    「あ、う、ううん、大丈夫。」
    バツが悪そうに、アルフィンが答える。
    「さ、飯食って、遊びに行こうぜ。」
    微笑みながらアルフィンを立ち上がらせて、ジョウが言う。
    「んっ!」
    ジョウの笑顔につられて、アルフィンも笑顔になる。
    「ね、ジョウ。」
    小首を傾げてジョウを上目遣いで見る。
    「ん?なんだ?」
    アルフィンの顔を覗き込むように見る。
    少し、頬を染まっている。
    「・・・やっぱ、なんでもない。」
    ぽそりと呟く。
    「ん〜、」
    少し考えるジョウ。
    「ね、もういいの。下、行きましょ?食事、来てるんでしょ?」
    少し焦ったようにアルフィンはドアのほうへ歩いていく。
    そのアルフィンの腕をつかんで、自分の方に引き寄せるジョウ。
    「あ・・・」
    アルフィンがなにか言おうとした瞬間、アルフィンの唇にジョウの唇が軽く触れた。
    「モーニングサービス。」
    にやっと笑ってアルフィンにウインクするジョウ。
    「じゃ、明日は私からしてあげる。」
    負けずに答えるアルフィン。でも、顔は真っ赤である。
    「という事は、今日も一緒に寝るのか?」
    意地悪げに聞くジョウ。
    「うぅぅぅぅ。」
    唸るアルフィン。
    このまま会話を続けると、また機嫌が悪くなりそうだと思ったジョウは、
    「ほれ、飯、冷めちまうぞ。」
    そう言うと、アルフィンを引っ張って部屋を出た。
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■80 / inTopicNo.9)  Re[18]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/05/05(Sun) 16:30:01)
    その後。
    ジョウとアルフィンはゲレンデで3人と合流し、スキーを楽しんだ。
    一際色めいて楽しんだのは番茶だったが。(来ないと思ってたアルフィンが来た為。)
    結局、明け方まで滑りまくってヘトヘトになり、離れに戻ったのは朝の8時だった。
    「朝食はどうされますか?」
    電話で仲居に聞かれ、いらないと断りを入れると、4人はそれぞれベットルームに散らばり(といっても、ベットルームは3つ。)爆睡した。


    「う〜ん、今、何時・・・。」
    アルフィンが時計を見ようとすると、
    「・・・朝の7時。」
    ジョウが答える。
    「んっ、そう、まだ寝てられるね。」
    そう言うと、もぞもぞブランケットを被り直す。
    “ん〜、まだ寝てられる♪嬉しいな♪”
    そう思いながら丸まるアルフィン。
    ・・・・・・ん?????朝の7時?ってコトはまるまる1日寝てたってコト?・・・よく寝たわね〜。って!!!
    ガバッ!!飛び起きるアルフィン。横にはジョウが寝ている。
    「あ、あ、あ、あ、あぁぁぁっっっっーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
    ・・・絶叫。
    流石にぶったまげてジョウが起きる。そして、状況を理解した。
    「うっ、うわ!!ア、アルフィン、落ち着け、俺は何もしてない!!」
    慌てるジョウ。言い訳も忘れない。
    「昨日スキーから帰ってすぐ寝たじゃないか!えっと、そ、そう、電話受けてる間にアルフィン、居間で寝ちまって、俺がここまで運んで来たんだよ!」
    必死に説明する。シドロモドロだが。
    「じゃ、なんで、一緒に寝てたのよ〜〜〜!!」
    今にも枕を投げつけそうなアルフィン。
    「えっと、アルフィン運んで寝かせて、寝顔見てたら・・・、そっから記憶が無い・・・。」
    「な〜んで、私の寝顔なんかみてたのよっ!?」
    叫び倒すアルフィン。
    「えっ、あ、可愛かったもんだから、つい・・・」
    アルフィンの勢いにつられたジョウ。言ってしまった後でうわっ!!っと口を押さえた。
    「・・・えっ・・・。」
    怒るに怒れなくなったアルフィン。顔が見る間に赤くなる。
    それを見たジョウは、
    「あ、タ、タ、タロス達、起こしてこなきゃなっ!!」
    そう言うと、慌ててベットから飛び起き、階下のタロス達の所へ駆け下りていった。
    「可愛い?私の寝顔が?」
    アルフィンは自分の両頬に手を当てて、顔の火照りを感じていた。


    「・・・っ、参った。」
    ジョウは頭を抱えながら居間に下りた。
    「あーにーきぃー。」
    「ジョオーっ。」
    にまにましてジョウを見るリッキーとタロス。
    「・・・、起きてたのか。」
    芋虫を噛み潰したような表情のジョウ。
    「起きてたもなにも、あんな絶叫聞いて起きないヤツはいませんぜ。」
    「そうそう。」
    嫌味を言われる。
    「・・・、俺、ひとっ風呂浴びてくる。朝飯、頼んどいてくれ。」
    ここに居るとなにを言われるか分ったモンじゃないと判断したジョウは、そそくさと露天風呂へと逃げていった。

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■77 / inTopicNo.10)  Re[17]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/05/01(Wed) 22:41:42)
    「うーん、食べた、食べた♪美味しかった。ごちそうさま。」
    アルフィンはひとごこちつき、よいしょと立ち上がった。
    「んー、ジョウはまだお風呂よねー。さて、何しようかしら。」
    一寝入りしたものだから、眼が覚めてしまった。
    「なにか面白い番組、ないかしら?」
    何気にチャンネルをポチポチ弄る。
    「何も無いわねー、チャンネル数は多いけど。」
    文句を言いながらそれでもチャンネルを弄る。
    何回ボタンを押しただろうか?
    「あぁ〜ん♪いゃ〜あん♪だぁめぇ〜ん♪」
    悩ましげな女の声、絡み合う男女。
    ボタ・・・。
    あまりの驚きで、アルフィンはリモコンを落とした。
    「い、いやぁーーーー!!なにこれぇ!!!」
    絶叫。
    そう。アルフィンは“温泉宿”特有(!?)のチャンネルを合わせてしまったのだ。・・・そう。AV(アダ○トビ○オ)である。
    「おい、なに騒いでるんだ?」
    タイミング悪く、ジョウが風呂から上がってくる。
    ぱくぱくぱく。声がでない。空気を求める金魚のように口を動かすだけのアルフィン。顔は真っ赤である。
    不振に思ったジョウは部屋をぐるっと一回り見る。もちろん、TV画面も眼に入る。
    「がっ!!」
    一言唸って固まるジョウ。こちらも見る間に真っ赤になる。
    「チ、チ、チ、チャンネル廻してたら、こ、こ、こ、こんなん出ちゃったよ〜、どうしよー。」
    アルフィンは半泣き状態である。
    「バ、バカ、は、早くチャンネル変えろ!」
    焦るジョウ。
    「リ、リモコン、リモコン無い〜〜〜!!」
    パニックになってるアルフィン。手の届く所にリモコンが有るのに目に入ってない。
    その間にも、悩ましげな声は部屋中に響く。
    「そこ、そこに有る!!あ゛ー、俺が変える!!」
    ジョウはふらふらしながらリモコンを拾い上げ、やっとの事でチャンネルを変えた。
    「はぁ、はぁ、はぁ、んで、こんな番組出してんだよ、・・・体に悪い。」
    真っ赤になりながらぶつぶつ言うジョウ。
    「ご、ごめん。まさか、こんなチャンネルがあるとは思ってなかったもんだから・・・。」
    こちらも真っ赤になりながら謝るアルフィン。
    「あ、ああ、しょうがねーな。アルフィンも、まさかこんなチャンネルがあるとは思ってなかったんだろうしな。」
    ・・・だが、俺の(!?)体に悪すぎる!!俺は聖人じゃねーんだぞ!!どうしてくれるんだよ!!!
    もんもんとするジョウ。
    「ね、ねえ、ジヨウ。私達もゲレンデに行かない?今からでも、大丈夫でしょ?」
    アルフィンがモジモジしながら言う。
    「そ、そうだな。それがいいかもな。フロントに行けば、ウェアーも、板もレンタルがあるらしいし。じゃ、着替えて行くか!」
    なんとかこの場から離れたい2人。
    「う、うん!じゃ、用意するね!待ってて。すぐだから。」
    アルフィンは隣部屋に行き、襖を閉める。
    はぁ〜。ジヨウは大きな溜息を1つ付く。
    雪にまみれて鎮めよう・・・。じゃないと、まずい。今、2人きりのままだと自分がどうなるか分らない。
    襖の向こうからはアルフィンの着替える衣擦れの音が聞こえる。これさえも今のジョウにとっては、艶かしい音に聞こえる。
    まずい・・・。早くしてくれ、アルフィン。
    焦りまくるジョウ。
    「お、おまたせ。さあ、行こう!」
    間一髪(!?)のところでアルフィンが出てきた。
    「あ、ああ。行こう。」
    まだ顔の赤いアルフィンに引っ張られ、ジョウは離れを後にした。
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■74 / inTopicNo.11)  Re[16]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/04/28(Sun) 19:54:54)
    「なあタロス、兄貴はああ言ったけど、良かったのかな?」
    気の毒気にリッキーが言う。
    「おんや〜、いっちょ前に気ぃ遣ってんのか?お前にしちゃぁ、上出来だね。」
    へへへと笑いながらタロスがちゃかす。
    「そりゃそうだよ。アルフィンはともかく、兄貴はいつも自分を後回しにするじゃないか。たまには兄貴にゆっくりと遊んでもらいたいといつも思ってるんだけど、なかなか上手く言い出せなくってさ。」
    ぶすぅー、とふくれてリッキーが言う。
    「ほぉー、なかなか言うじゃねぇか。感心、感心。」
    本当に感心したようにリッキーの頭をバシッと叩く。
    「ってーな!!あにすんだよ!?」
    いてて、と頭を抑えるリッキー。
    「大丈夫さ。ジョウはちゃんと分ってるよ。それより、アルフィンと2人きりにさせとくのも心遣いだと思わねぇか?」
    ニヤァっと意味ありげな笑いを浮かべるタロス。
    「はぁ〜???」
    首を傾げて考え込むリッキー。
    「ガキは知らなくていいの!」
    バキッ。再びリッキーは、タロスの鉄拳の餌食になった。


    母屋のロビーでは、番茶がソファーでコーヒーを飲みながらタロス達を待っていた。
    「あ〜、食後のコーヒーはおいしいなぁ〜♪」
    本当に幸せそうな顔をして、コーヒーを飲んでいる。まったく悩みがなさそうだ。
    「おーい、番茶!」
    リッキーが声を掛ける。
    「あ、リッキーさん、タロスさん。あれ、ジョウさんとアルフィンさんは?」
    2人しかいないので、キョロキョロジョウとアルフィンを探す番茶。
    「ああ、アルフィンが酒飲んで寝ちまったもんだから、ジョウが残ったんだ。」
    タロスが説明する。
    「え゛、・・・2人きり。ま、まずいんぢゃないですか!?」
    おろおろする番茶。
    “そーいやー、こいつ、アルフィンをまだ諦めてなかったんだ・・・。あれだけ兄貴との仲を忠告してやった上に、<失恋だー>って泣いてたのに、すっかり忘れてやがる。突発性健忘症か!?こいつ・・・。”
    リッキーがこんな事を考えているうちに番茶はさらにエスカレート。
    「も、もう起きられてるかもしれないじゃないですか?は、離れまで迎えにいってましょうよ。」
    “げ、やめろ。酒乱のアルフィンに鉢合わせすんのだけは嫌だ。な、なんとかしてくれー!!!”このリッキー心の叫び!?がタロスに聞こえたかどうか。
    「いや、いい。もう、ジョウに任せてきてるし、寝てるのを起こすのもな。出掛けに寝たばかりだったから、時間的にもまだ寝てるだろうし。起きたら追いかけて来るかもしれんだろ?それに、うちのチビ助が早くゲレンデに行きたがってるだ。すまんが、急いでくれないか?」
    おろおろするリッキーとは逆に、妙に落ち着いてるタロス。<内心はかなり焦っているのだが。>
    それでも、なんとか離れのアルフィンの所へ行きたい番茶。
    「でも〜〜〜」
    と引っ張る。
    タロスの意図を感取り、リッキーがあわてて繋ぐ。
    「そ、そうそう、早く行きたいんだよ。な、番茶、ウェアはドコ?板は?ほらほら、早く行こうぜ?」
    行かれちゃまずいリッキーはなんのかんのと捲し立てて、番茶をロビーの方へ引っ張って行く。
    「やれやれ、仕事で気を使い、オフまで気を遣わんといけんとは。・・・疲れるぜ。やれやれ。」
    はぁ〜っとため息を付きながらタロスもリッキーと番茶の後を追った。
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■71 / inTopicNo.12)  Re[15]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/04/19(Fri) 21:20:58)
    「・・・ん゛〜〜〜〜ん、あれ、私、なんでベットで寝てる訳?」
    むくり。アルフィンはベットから起き上がる。
    「えっと、ジョウとお風呂に入って、お猪口何杯飲んだっけ?あれ?そっから先、・・・覚えてないや。あー、おなか減った。ご飯、まだかな?」
    ぶつぶつ言いながら、ベッドルームから階下に下りる。
    「あ、起きたか?」
    ジョウがアルフィンの方を向いて声を掛ける。
    「あれ、リッキーとタロスは?」
    アルフィンは部屋の中をキョロキョロ見渡す。
    「あいつらはゲレンデに行ったぜ。」
    ジョウはTVのボリュームを下げた。
    「え〜〜〜〜!2人で遊びに行っちゃったの〜〜〜〜!?」
    「だってアルフィン、寝ちまってたじゃないか。それより、腹減っただろ。飯、取ってあるから食っちまえよ。」
    「あ〜ん、ご飯まで食べちゃってるし〜〜。」
    ぶ〜〜〜っとふくれっつらをしているアルフィン。
    流石にまずいと思ったのか
    「だから、俺が残ってるだろ?あの2人には、俺が行っていいって言ったんだ。」
    「ん〜〜〜ま、しょうがないわね。寝てた私も悪いんだし。」
    「そーそ。さ、早く飯、食っちまえよ。」
    「そーする。あー、お腹へった!」
    アルフィンはそう言うと、机の上に置いてあった夕食をパクつき始めた。
    「あ〜、おいし。温かかったら、もっと美味しかっただろうな。起こしてくれればよかったのに。」
    そう言うと、ジッとジョウを見る。
    「起こしたさ。でも、起きなかったし。そのまま、ベットまで運んでやったんだぜ?」
    「え、運ばれたのに、起きなかったの?」
    ビックリした様に聞き返すアルフィン。
    「ああ、よく寝てたな。」
    ジョウはクスリと笑う。
    「も〜〜〜、何かしなかったでしょうね!?」
    ジロリとジョウを見るアルフィン。
    「手、出してほしかったか?」
    ニヤリと笑って、アルフィンを見るジョウ。
    「うっ。」
    二の句が次げないアルフィン。
    「ほれ、ブツブツ言ってないで、さっさと食えよ。食事が済んだら、タロス達の後、追ってみるか?」
    「ん〜、食べてから考える。」
    「そうだな、って、あーあ、終わっちまってるよ、相撲。」
    ジョウはアルフィンと話だしたものだから、TVを観てなかった。
    「相撲?」
    「ああ、日本の格闘技だと。裸の男と男が戦ってたな。レスリングみたいなもんかな?体格はかなり違ったけど。」
    「あー、私、サッカーとか、バスケの方がいいわ。」
    ジョウの説明を聞いただけで、アルフィンは私はいいって顔をした。
    「俺、も一回風呂に入ってくるわ。ゆっくり食ってろよ。」
    ジョウはそう言うと、座椅子から立ち上がった。
    「え〜、私、1人にするの〜?」
    いかにも寂しそうに言うアルフィン。
    「ここの内風呂だから、文句言うな。なんなら、一緒に入るか?水着無しで。」
    「え゛?」
    アルフィンは真っ赤になる。さっきから、ジョウのペースで引っかき回されてる。
    「冗談!じゃな。」
    ジョウはわははと笑って、内風呂へ行ってしまった。
    「もー、バカ。」
    アルフィンは真っ赤になったまま、目の前の夕飯を片付け始めた。
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■70 / inTopicNo.13)  Re[14]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/04/14(Sun) 21:14:16)
    仲居達は夕飯の支度をすませると、
    「どうぞ、ごゆっくり。」
    と言って、席をはずした。
    「あ〜、腹減った。もう、ぺっこぺこ!くうぞぉ〜〜♪」
    リッキーは張り切って自分の席に着き、いっただきまぁーすと叫んでガツガツ食べ出した。
    「あー、飢えたガキはやだね〜〜。」
    タロスはそう言いながら、自分も席に着いた。
    「おい、アルフィン、飯がきたぞ。」
    ジョウは自分の腕にしがみ付いているアルフィンに声を掛けたが、反応がない。
    「アルフィン?」
    ジョウはアルフィンの顔を覗き込むと、
    「・・・。寝てる。」
    リッキーとタロスに言った。
    「兄貴、そのまま寝かしといた方がいいって。起きたら、また飲みだすし。その方がやばいよ。」
    「そうですな。“寝た子は起こすな”っていいますからな。」
    2人は、あからさまにホッとした態度を取った。そりゃ、そうであろう。酒乱のアルフィンの餌食になりたいヤツなんて、この世にいない。(あ、番茶がいた<爆>)
    「そうだな。じゃ、寝かせてくるよ。」
    ジョウはそう言って、アルフィンを抱き上げ、2階の寝室へと向かった。
    「タロス、今回はラッキーだったな。アルフィンの餌食にならずに済んで、飯もゆっくり食えて♪」
    「あぁ、そうだな。酒飲んだアルフィンに付き合うのだけはごめんだからな。」
    めずらしく、リッキーに同意する。
    「でも、兄貴は大変だったろうな〜。」
    「ま、飲ませたのはジョウだから、しょうがなかったんじゃないか?」
    わははははと大笑いをした2人だが、すぐバカ笑いをやめた。
    「いまのでアルフィン、起きなかったよな?」
    びびりながらリッキーが言う。
    「大丈夫だろ。起きてたら、ジヨウがなんか言ってる。(叫んでるだろ。)」
    タロスも恐々している。
    「静かに食おう。」
    2人は声を揃えて言った。


    ジョウはアルフィンをベットに横たえて、布団を掛けてやった。
    「・・・、寝てたら可愛いんだけどな〜。」
    クスリと笑って、アルフィンの頬にかかった髪を指先で整える。
    「お休み。」
    ジョウはそう言って、アルフィンの頬にキスをして1階に下りていった。


    「さて、食ったらどうするんだ?」
    食事をしながらジョウは2人に聞いた。
    「いえね、風呂で番茶と会いまして。成り行きでゲレンデに行く事になったんですわ。ジヨウはどうしますか?」
    タロスは風呂場での経緯をジョウに話した。
    「う〜ん、行ってもいいが、アルフィン1人置いてくのもな。」
    「そーだよな〜、起きて誰も居なくってさ、アルフィン置いて遊びに行ってましたって言った日にゃ・・・・3人共殺される事間違いなし・・・だよな。」
    リッキーが蒼くなって言う。
    「じゃ、誰か残るって事ですな。で、誰が残りますか?」
    タロスがリッキーとジョウを見る。
    「う〜ん、俺が残るよ。今日は疲れた(精神的に)から、部屋でのんびりしてるよ。2人で行ってこいよ。」
    「兄貴、いいのかい?」
    「ああ、まだ来たばっかだし、明日にでも滑りに行くさ。」
    「すいませんね、じゃ、行ってきます。おら、いくぞチビスケ!」
    「チビスケだけは余計だい!!このデカブツぢぢい!!!」
    「あんだとぉ〜〜〜!!」
    話がついた所で2人が“いつもの”を始めた。
    「やめろ!アルフィンが起きる!!!」
    いつもなら止めないのだが、ここで大声を出したら“寝た子”を起こしてしまう。それだけは絶対に阻止しなければならない。
    「あ、すんません・・・。」
    はっ!っと2人共縮こまった。普通の声なら問題ないのに
    「じゃ、行ってきます。」
    囁くような小声でジョウに断りを入れて、タロスとリッキーは出て行った。
    「やれやれ、行ったか。」
    う〜んと伸びをして、フロントにコールする。
    「食事が済んだので、下げてくれないか?」
    コール後、すぐに仲居がやって来た。
    「お一人分、お手を付けてらっしゃらないのですが、いかが致しましょうか?」
    気を利かせて、仲居が聞いた。
    「ああ、痛まないものだけみつくろっておいて置いておいてください。」
    「はい、じゃ、他の物はお下げ致しますね。」
    仲居はテキパキと片付けて
    「じゃぁ、失礼します。お休みなさいませ。」
    と挨拶をして、出て行った。
    「さ〜て、ゆっくりするか。」
    ジョウはリクライニングチェアーに腰掛け、TVのスイッチを入れた。画面は日本の“相撲”をやっていた。
    「へ〜、面白い格闘技だな。いままで見た事ないや。」
    今後の参考(!?)になるかもとジョウはチャンネルをそのままにした。
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■69 / inTopicNo.14)  Re[13]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/04/12(Fri) 21:57:34)
    「リッキー、戻るぞ。」
    ざばぁ〜っと湯船からタロスが上がった。
    「も、もう、戻っても大丈夫かな?」
    少々びびり気味のリッキー。
    「あんまりのんびりしてても、番茶が乱入しかねんしな〜・・・」
    「げ、そりゃまぢい。いっちゃん、まぢい!」
    「だろ?それに、じき飯だ。ほっといてもおばちゃんが飯もって離れに来る。」
    「そだな、じゃ、戻ろう!」
    ざばぁ〜っとリッキーも湯船から上がり、脱衣場へダッシュしていった。
    「あーあ、こいつも単純だね〜。」
    やれやれと言った風にタロスも脱衣場に向かった。


    その頃、離れでは。
    「じょぉおおおおーーーー!」
    ・・・・・アルフィンはジョウを呼んでいる。
    着替えを済まし、トレーナーにGパン姿のジョウがアルフィンに答える。
    「なんだよ、着替え、済ましたの・・・・かぁぁぁぁぁ!!!!!!」
    最後の言葉は絶叫に近かった。なぜなら。
    「上手く、着れにぁいぃぃぃぃにょぉぉぉぉよぉぉぉ!」
    アルフィンは下着は辛うじて着けていたが、その上に浴衣を羽織ってるだけ!の状態であった。もちろん帯はしてないわ、片袖はずしてるは、あられもない姿であった。
    ジョウは真っ赤になりつつも、(すでに頭上からは湯気出まくり状態)
    「ほ、ほ、ほ、ほら、ちゃんと着てくれ、こっちの袖に腕通して!」
    なんとかアルフィンにまともに浴衣を着せようと四苦八苦している。
    「いやぁぁぁ〜〜〜〜ん♪ジョウったらぁぁ〜〜〜♪」
    逆にアルフィンは面白がって、くねくね体をしならせる。
    ああ、生殺し。<誰がだ!笑>
    なんとかアルフィンに浴衣を着せ終え、へたへたとその場にへたり込むジョウ。
    「ありがろねぇぇ〜〜♪」
    へたり込んでるジョウに抱きつくアルフィン。酔っ払いに怖いものなし。
    ジョウは反撃する気力も失せ、されるがままになっている。
    そこへ。
    「ただいまぁ〜〜!」
    リッキーとタロスが戻ってきた。このとき、ジョウは2人が神(!?)に見えた。
    「兄貴〜、ヴぁ!お、お邪魔でした!!」
    ジヨウに抱きついてるアルフィンを見て、リッキーは逃げるように部屋から出ようとしたが、タロスが邪魔で外へ出れない。
    「リッキー、早く部屋へ入れよ。ジョウ、戻りました。」
    と、ジヨウの方を見たタロスの顔色が変った。
    「も、もしかしなくても、アルフィン、酒、飲んでますか?」
    恐々、ジヨウに尋ねる。
    「あ、ああ、度数が軽いと思って飲ませたら、とんでもない事になっちまった。」
    いつもなら、リッキーかタロスが生贄(!?)になるのだが、今回は2人共いなかった為に、ジョウがとばっちりをくった。自業自得だが。
    3人がおろおろしていると、
    「失礼しても宜しいですか?」
    入り口に仲居が3人、夕飯を持って来ていた。
    「は、はいはい、どうぞ入って下さい!」
    リッキーが飛び出して、仲居を招きいれた。
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■62 / inTopicNo.15)  Re[12]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/30(Sat) 16:47:45)
    「兄貴、うまくやってるかな〜。」
    本館の大浴場の湯船に浸かりながら、リッキーは呟いた。
    「大丈夫だよ。・・・お前じゃないんだから。」
    タロスはがははと笑って、リッキーを湯船に沈めた。
    「うぶ、ぶくぶく、ぶっはーーー、あにすんだ、このデカブツゴリラ!!!」
    「てめーが、いらん心配なんかするからだ、このチビダコ!!」
    「くぅおのー、言わせておけばぁーーー!!!」
    いつもの通りと言えば、いつもの通りだが、ここは公共の場である。他に人がいたらまずい。だが、幸いにも、この2人以外には入浴客はいないはずであった。・・・が。
    「あ゛ーーー、喧嘩はいけません、いけませんってばぁーーー!!」
    なさけない声がした。ビックリして2人が振り返ると、腰にタオル1つしておたおたしている番茶がいた。
    「だ、だめですよぉー、せっかく楽しく過ごしてもらおうと思っているのに、喧嘩なんかしちゃ、楽しいはずの旅行がだいなしになりますよぉー。」
    微妙に言葉の言い回しが変になっている。動揺しているらしい。
    2人の喧嘩を日頃から見慣れているジョウやアルフィンならまだましも、始めて見る番茶にとっては、いまにも殺し合いを始めそうな勢いに見えたのかもしれない。
    「げ、番茶・・・、お前も入ってたのかい。」
    いつものペースを崩されたリッキーがぐったりして言った。
    タロスはめんどくさがって、湯船から上がり、サウナルームの方へ逃げていった。
    「“タ、タロス、ずっりーーー!”なんで、番茶がここにいるのさ。」
    リッキーはしょうがねーなぁー、といった具合に番茶に話しかけた。
    「いえね、今が空き時間になったんですよ。もうすぐ、お食事の時間でしょ?で、その後、よろしければナイタースキーにご案内しようかと。ま、本館の方にも遊ぶ施設はありますが、今日はゲレンデ状態が大変良いそうなので、いかがですか?」
    「そーだなぁー、おいらは行くよ。後の3人には、メシん時に聞いてみる。スキーウェアと板の用意、一応全員分しといてくれよ。どうせ、泊まってる間に行くんだし。」
    「そうですね。後でフロントの者に届けさせます。で、ジョウさんはいらっしゃらないんですか?」
    番茶は周りをキョロキョロして、ジョウの姿を探していた。
    「ああ、兄貴は部屋風呂使うってさ。アルフィンと離れに残ってる。」
    「え、お2人だけ、残ってらっしゃるんですか?」
    「ああ、そうだけど。」
    驚いている番茶を見て、リッキーは思い出した。そーいやーこいつ、アルフィンに・・・。
    「で、でも、ご家族4人、仲がいいですねぇ〜。」
    「は?おいら達、家族じゃないぜ。ま、家族みたいなもんだけどなぁー。」
    リッキーは頭をポリポリ掻いて言った。
    「へ?ご家族じゃないんですか?」
    更にビックリした番茶は、リッキーに迫った。
    「げ、ば、番茶、迫るな!!」
    リッキーは引いた。
    「あ、すいません。あの、タロスさんがお父さんで、3人様がご兄弟だと・・・。」
    番茶の目はぐるぐると廻っている。驚きあまって、混乱しているらしい。しかし、どうやったらジョウ、アルフィン、リッキーが兄弟に見えるのであろうか?
    「全然、似てねーじゃねーか。それにタロスが親父じゃ、おいらが可哀想すぎるぜ。」
    「あんだとー!」
    そこへ、ひょっこり戻ってきたタロスが、再びリッキーを湯船に沈めた。
    「うぁっ、ぶくぶく、あにすんだ、このクサレダコ!!」
    リッキーが今にもタロスに突っかかって行こうとした時、
    「あ、あの〜、喧嘩はやめて〜・・・」
    あまりにも情けない番茶の声がした。2人は毒気を抜かれて肩をがっくりと落とした。
    「あのな、俺達クラッシャーは、チームを組んだ者が家族になるんだ。本当の家族とはちょいと違うが、絆はそれ以上かもしれん。」
    しゃーないと言わんばかりに、タロスが番茶に説明した。
    「じゃぁ、4人様、全員他人同士で。」
    「そーゆー事。でも、おいら達は他人って思ってないぜ、家族だと思ってる。他のクラッシャーもそうだぜ。」
    「じゃ、皆さんは生粋のクラッシャーで。」
    「いいや、生粋はジョウとタロス。おいらとアルフィンは途中から。」
    「え、あんなに美しく、繊細な方がわざわざ危険な仕事に・・・。」
    げ。美しい。繊細。えっらい誤解だ。ま、百歩譲って美人は否定しないって事で。
    リッキーとタロスは頭を抱えた。酒乱のアルフィンを見ても、こいつなら言いかねない。
    「アルフィンは、兄貴に惚れてクラッシャーになった変り種なの!クラッシャーになる前は、あれでも一国のプリンセスだったから驚きだよなぁ〜。」
    「え、プリンセスでらしたんですか!!ああ、やっぱり、気品があると言うか、上品さがにじみ出てるというか、なにか他の女性と違うと思ってたんですよ!!」
    うっとり。番茶の目はきらきらと輝いている。ジヨウに惚れてってトコだけすっとばして聞いたらしい。
    ・・・・・・。タロスとリッキーは絶句した。ここまで、妄想(!?)がすごいやつは見た事がなかった。そして更に番茶は続けた。
    「ええ、彼女は私の理想の女性なんです。一目彼女を見た瞬間に、こう、ビビビッときたんです!ああ、この人こそ、私の運命の女性だと!!」
    ・・・おいおい・・・。2人の目は点になった。
    「あ、あのさ、運命の女性とかなんとか言ってるけど、おいら、言ったよな、アルフィンは兄貴、ジヨウに惚れて、クラッシャーになったって。」
    「あ゛ぁ゛そうなんですか?!ああ、いきなり失恋でないですか〜〜〜〜(T−T」
    リッキーの言葉を聞いて、番茶はいきなりおいおい泣き始めてしまった。
    ずる。ぶぐふぐぶく。あまりの情けなさに2人は大浴場に沈没してしまった。
    「な、なら、お部屋にお二人だけってのは危ないんじゃ・・・。」
    いきなり番茶がおろおろして言う。
    「どっちかってーと、危ないのは兄貴だな。」
    リッキーが腕を組んで、うんうんとうなずいた。
    「へ?なんでですか!?女性であるアルフィンさんの方が危ないですよ!!」
    なぜか番茶は必死である。このままだと、離れにすっ飛んでいきそうな勢いである。まずい。絶対まずい。そうなったら、リッキーとタロスが殺される。・・・アルフィンに。
    「絶対大丈夫だって。兄貴はそんな男じゃないって。おいら達が保障するって。」
    リッキーが慌てて番茶に言った。するとタロスが、
    「もう少ししたら俺達も離れに帰るから。あんたもこの後の準備をしといてくれ。夕食が終わったらロビーにいるから、声を掛けてくれ。」
    上手い具合に、番茶に番茶本来の仕事の話をした。仕事の話をすれば、少しは冷静さを取り戻すだろうとタロスは思ったのだ。
    「あ、ああ、そうですね。そう、スキーウェアと板の手配もしとかないと・・・。で、では、お先に失礼します。」
    少し!?正気(か?)に戻った番茶は、ふらふらしながら大浴場を後にした。
    「タロス、ありゃ〜大丈夫だと思うかい?」
    はぁ〜っとため息をつきながら、リッキーが言った。
    「いんにゃ、あんな変なのに当たった事がねぇーから、分からん。」
    タロスはリッキーより大きなため息をついた。
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■60 / inTopicNo.16)  Re[11]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/27(Wed) 21:13:20)
    しばらく2人は雪を見ていた。どれくらいたっただろう。
    「ジョぉーお」
    ぎく。声色が変ってる。ジョウは恐る恐る、アルフィンを見た。
    アルフィンの顔は桜色を通り越して真っ赤。目は据わっている!!
    「にゃんだか、ふぁ〜ってすりゅんだけど、でも、気持ちいいにぁ〜♪」
    やばい。酔ってる。が、ここで少しでも機嫌を損ねた日にゃぁ〜、とんでもない事になってしまう。しかし、おかしい。そのなに飲ませてないはず。度数も・・・と空き瓶を拾って見たジョウはほろ酔い気分もぶっとんだ。記載されている度数は“14度”。ビールと同じ、4〜5度だと思って、お猪口4杯も飲ませてしまった。おまけに、ここは風呂である。湯に浸かっていると、血行もよくなる。もちろん、アルコールの回りも良い。っつー事は酔うのも早い。今のアルフィンの状態は必然が重なってできあがったものである。
    「ねぇ〜ぇん♪ジョウ♪」
    焦るジヨウとは逆にアルフィンはご機嫌である。更にジョウにぴたりとくっつく。
    だから、胸があたってる、あたってるんだってばぁーーー!!(激焦)
    「あ、あのね、アルフィン・・・・。」
    焦る茹蛸ジョウ。
    「なぁ〜に?ジョウ♪」
    ご機嫌な酔っ払いアルフィン。
    「あ、上がろう。タロスとリッキーも戻ってくる頃だ。」
    なんとか風呂から上がらなきゃ、まずい。このままじゃ、茹って倒れちまう。・・・俺が。
    「え゛ー、もう上がりゅのぉ〜。」
    ぶーっとふくれるアルフィン。
    「そ。これなら、文句ないだろ。」
    茹蛸ジョウはヤケクソになった。
    「きゃ、いゃ〜ん。」
    ジョウはアルフィンを抱きかかえて(お姫様抱っこね。)風呂から出た。
    アルフィンはジヨウの首筋に腕を廻してしがみつく。
    「こ、こら、あんまりしがみつくな!」
    ジョウの頭からは今にも蒸気が噴出しそうになっている。
    「だって、おちたらやらも〜ん♪」
    アルフィンはそう言うと、更にしがみつく。
    「あ゛ー、好きにしてくれ。」
    ジヨウは諦めた。もうちょっとだ。脱衣場まであと数歩。
    「<やれやれ、やっと着いた。ほっ>ほれ、降ろすぞ。」
    そう言って、アルフィンを降ろそうとしたジョウの頬に
    「はい、お・れ・い♪」
    ちゅ。アルフィンの唇が降ってきた。
    「*****xxxxxx!!!!!!!!!!!!」
    ジョウは言葉にならない悲鳴(!?)をあげた。
    きゃははははは、と笑いながら部屋に入っていくアルフィン。
    ジョウは脱衣場でパニくる茹蛸に成り果てていた。
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■59 / inTopicNo.17)  Re[10]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/23(Sat) 19:37:24)
    「兄貴、アルフィンの機嫌取り、出来たかなー。」
    風呂場の脱衣所で、心配そうにリッキーが呟いた。
    「なーに、怒らせたままなら」
    タロスは、よっとと、着ていた服を脱ぎながら
    「今ここに、ジョウが来ている筈さ。」
    「そ、そうだよな。って、どういう事なんだ!?」
    リッキーは、分かった様な、分からない様な問いをタロスに投げた。
    「仲居のおばちゃんが、離れには“専用風呂”があるって言ってたよな。」
    「へ!?そ、そう言えばって、あ゛ーーーー!!」
    「そう言う事。俺達は“気を利かせて”出てきた訳だ。」
    にゃーっとタロスが笑う。
    「なーんだ、タロスにしては、気が利くじゃねーか。これで、ゆっくりと風呂にも入れるっ!!」
    リッキーは、やっほーと叫んで風呂場へと入っていった。
    「やれやれ、鈍感小僧はやだねー。
    ま、こっちもゆっくりとさせて貰いましょうかね。早めに戻らないようにしないといかんしな。気ぃ使い過ぎってのも疲れるぜ。」
    やーれ、やれと伸びをしながタロスも浴場へと入っていった。

    その頃、離れでは。
    「うわ、すごっ。」
    2人は目を見張った。風呂だから、そんな大したモンじゃないと思っていたからだ。<日本の風呂を甘く見てはいけないのだ。>
    目の前には、竹で編まれた衝立が建て掛けてあり、隙間からは、下に流れる川辺が見える。周りは美しい雪化粧した竹やぶ、木々が見える。
    露天風呂は広かった。8畳ほどの広さがあるだろうか。子供用のプールでもおかしくない。それに、周辺にはシールドが施されているのだろう。ここだけ雪が積もっていない。
    「きゃん、いっちばーん♪」
    アルフィンはザブンと湯船に入っていった。
    「んーー、気持ちいい!」
    すぃーっと湯船に体を浮かべる。
    それを見て、ジョウも湯船に浸かる。
    「ふぅー。」
    ジョウは、息を長めに吐くと、岩場に寄りかかった。
    はしゃぐアルフィンを見ながら、無邪気に喜んでと、ジョウの顔が緩む。
    そんなジョウを見てか、アルフィンがすぅーっとジョウに近づいてきた。
    「ねぇ、こんなもの持ってきちゃった♪」
    にやっと笑ってアルフィンが取り出したモノ。
    ずる、ぶくぶくぶく。それを見たジョウは、湯船に沈んだ。
    「ねー、なんで沈んじゃうのよー。お部屋に置いてあったんだから、いいじゃないの。ちゃんと、コップ(お猪口)みたいなのも付いてたしぃー。ねぇー、ジョウってばぁー。ちょっとしかないんだから、大丈夫よぉー。」
    アルフィンが持ってきたモノ。それは、お盆に載せられた300ml入りの冷酒瓶だった。お猪口は2つ。残りのお猪口は、部屋に置いてきたのだろう。
    や、やばい。酔わせたらやばい。場所も悪い。な、なんとか気をそらせなきゃ・・・。ジョウは必死で考えた。
    「もー、飲もーよー、一人で飲んでも楽しくなーい!!」
    アルフィンの機嫌が悪くなる。まずい。ジョウは名案!?を思いついた。
    「わかったよ、付き合うよ。」
    そう言って、アルフィンからお猪口を受け取った。
    「ん、初めからそう言えばいいの!はい、どうぞ♪」
    アルフィンはニッコリ笑って、ジョウのお猪口に冷酒を注ぐ。
    「俺が注いでやるよ。」
    ジョウはアルフィンから瓶を取ると、もう一つのお猪口に冷酒を注ぐ。
    「ありがと♪じゃ、かんぱーい♪」
    ぐいっと2人は、一気に杯をあけた。
    「お、おっいしー♪癖があるって聞いてたけど、フルーティーで飲みやすいわ。」
    「そうだな。思ったより軽めの酒なんだな。」
    ジョウは内心ホッとした。しかし、念には、念をいれて・・・だ。
    「ね、もうイッパイ♪」
    アルフィンはお猪口に2杯目を継ぎ足していた。
    2杯目をくいっと飲むアルフィンを見て、
    「俺にも、注いでくれよ。」
    2杯目をせかす。
    「はい、はい。」
    アルフィンは上機嫌で、ジョウのお猪口に酒を注ぐ。
    ついでに、3杯目をじぶんのお猪口に注ぐ。ペースが速い。
    「や、やばい・・・。アルフィン、注いでやるから、瓶貸せよ。」
    そう言うと、ジョウはアルフィンから冷酒瓶を取り上げた。
    「ま、嬉しいわ♪」
    アルフィンに4杯目を注ぐと、
    「後は、俺がもらうな。」
    そう言うとジョウは、瓶に残っていた液体を一気飲みした。・・・ジョウの作戦。それは、アルフィンに何杯か飲ませたあと、自分が残りの酒を一気飲みする事だったのだ。
    「あ゛ーーーー、ジョウ、ずっるーーい!!」
    ばか、それ以上飲ませられるか。・・・・・危なすぎて。
    「んもー。ま、しかたないか。後でおばちゃんに持ってきてもらおーっと♪」
    げっ、まずい。それは困る。後でタロスとリッキーに話して、絶対阻止しなければ大惨事、間違いなし!!である。
    「んーーーー、気っもちいいーーーー!」
    すぃーっと体を温泉に浸けて、ぷかぷか浮かんでいる。
    「やれやれ。」
    ほっとしたジョウの目に、小さな白い妖精がふわふわ落ちてくる光景が入った。
    「雪、か。アルフィン、上、見てみろよ。」
    目を閉じて浮かんでいたアルフィンは、ジョウの声で目を開けた。
    「うわっ、綺麗・・・。」
    ほぅと、ため息をつき、ジョウの方へよって来た。そっとジョウの腕に寄りかかり、上を見上げる。酒のせいか、頬がほのかに赤い。
    「ああ、綺麗だな。」
    ジョウはアルフィンの方を見ながら言った。
    雪が綺麗なのか、アルフィンが綺麗なのか・・・。ジヨウは自分が言った言葉に照れまくって真っ赤になった。
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■58 / inTopicNo.18)  Re[9]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/18(Mon) 20:47:41)
    「兄貴〜〜〜、飯まで時間あるからさぁー、温泉行こうぜ〜。」
    リッキーが機嫌良く部屋に入ってきた。
    どうやら、アルフィンをなだめるのに成功したらしい。
    「温泉目当てに来たんだから、めいっぱい入んなきゃね♪」
    すっかり機嫌の直ったアルフィンが言う。
    ・・・よかった、っとジョウとタロスは心底ホッとした。
    「じゃ、すぐ行きましょうぜ。」
    タロスはジョウをチラッと見て、さっきの件、たのみましたぜと言わんばかりに
    「ほれ、リッキー、先に行くぞ。」
    「へ?」
    「じゃ、お先に。」
    待てよ、と声をかける間もなく、ほけているリッキー引っ張ってタロスは出て行ってしまった。
    「あの2人、そんなに温泉入るの、楽しみにしてたっけ?」
    アルフィンはう〜んと考えていたが、
    「ジョウ、私達も行きましょ♪」
    とジョウに声をかけた。
    「ああ、そうだな。」
    「じゃ、支度してくる。待ってて。」
    そう言うと、アルフィンは自分の荷物を持って、隣の部屋へ入っていった。
    「・・・この調子じゃ、言わなくてもいいか、な。」
    やれやれと思って、ジョウはふぅーっと1つため息をついた。
    3〜5分ほど待っただろうか。
    「おーい、まだかぁー?」
    ジョウが声をかけると、襖がすっーっと開いて、アルフィンが頭だけをひょこっと出した。
    「ねぇ、ジョウ。ここ、内風呂それも、部屋用の露天風呂があるんですって?」
    ジョウはいきなりの質問に
    「は?・・・ああ、そういえば、仲居のおばちゃんがそう言ってたな。」
    アルフィンがニコッとわらって、
    「ねぇ、ジョウ、部屋用の露天風呂に入らない?」
    「へ?じゃあ、先に入れよ。俺は後でいい。」
    「もー。1人で入っても楽しくないでしょ?」
    アルフィンは意味ありげにジョウを見る。
    「だって、アルフィンはどっちの風呂に行っても、1人で入らなきゃならないじゃないか。」
    「んもー、鈍感!外風呂はだめだけど、内風呂は大丈夫じゃない。誰もこないんだし。」
    「は?????」
    はぁ〜っとアルフィンはため息をついて、
    「も〜〜、一緒に入ろって事!!」
    「・・・・・あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
    ジョウは5〜6歩分一気に飛びのいた。
    「な、な、な、ななななななななななななななななななな!!!」
    ジョウは真っ赤になって、なにを言ってるんだ!!と言おうとしたのだが、ろれつが廻らない。
    「だーかーらー、この格好で!!」
    襖から全身を出したアルフィンは、ブルーのビキニ(水着だよ。)を着ていた。
    「ねぇ、なに想像してたの?」
    アルフィンは小首をかしげて、悪戯っぽくジョウを見た。
    「バ、バカ!なにも想像してねーよっ!!」
    真っ赤になったまま、ジョウがぶっきらぼうに言った。
    「俺は水着なんか、持ってきてないぜ。だから、1人で入りな。」
    「もう!最後まで聞いてよ。私、3人の水着も持ってきたの。用意、いいでしょ?ね、一緒に入ろうよー♪」
    むぅーっとしていたが、ジョウはタロスの言葉を思い出した。オフ初日である。アルフィンの機嫌を損ねるのはまずい。水着を着るのであるのであれば、と自分を納得させた。
    「わーったよ、入るよ。」
    意を決して、ジョウは答えた。
    「きゃーん♪じゃ、早く着替えて!!わたし、先に行ってる!」
    アルフィンは、ぱぁーっと花が咲いたように笑うと、ジョウに水着を渡し、部屋用の露天風呂のほうへと歩いて行った。
    「・・・まぁ、しゃーねーよな。」
    アルフィンのあの笑顔を見れた事だし、ご機嫌取りも出来る。それに、一緒に風呂に入るのも、嫌ではない。
    (水着も着ているし。)<←着てない方がいいのか!?>
    そんな事を考えながら、ジョウは着替えを済ませた。
    「ジョウ、まぁ〜だぁ〜?」
    アルフィンが露天風呂入り口のドアがら顔を出している。
    「今行く。先、入ってるって言ったじゃないか。」
    「だって、一緒に入りたかったんだもん♪」
    アルフィンは天使の微笑みを浮かべる。
    ジョウはドキッとしたが、それをアルフィンに悟られまいと
    「ほれ、入るぞ。」
    と、早足で露天風呂へと向かった。
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■50 / inTopicNo.19)  Re[8]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/13(Wed) 19:03:32)
    リッキーがアルフィンを部屋から引っ張り出した後、タロスがジョウに向き直って言った。
    「ジョウ、もちっと大人になりませんか?」
    「俺がまだ、ガキだとでも言いたいのか。」
    ムッとしてタロスを睨む。
    「いえね、そう言う意味じゃなくてですね、お世辞でもいいから、もう少し褒めてやれば良かったんじゃないかと。」
    困った様にタロスが言う。
    「番茶の言動にヤキモチ焼いてるようじゃ、ねぇ。」
    ニヤリと笑って、ジョウを見る。
    「や、ヤキモチなんて俺は焼いてないぞ!なんで俺が焼かなきゃならないんだ!?」
    真っ赤になってジョウは反論する。
    「ありゃ、リッキーにも分かったぐらいですぜ?違うんですかい?」
    ニヤニヤ笑いながら、タロスは続ける。
    「仕事ん時はそれでもいいでしょうが、オフん時くらいはもちっとアルフィンをかまってやってもいいんじゃないんですかい?」
    「か、かまってるじゃないか。皆で楽しくやってるじゃないか。」
    茹蛸の様になったジヨウが反論する。
    「いえね、そうじゃなくて、アルフィンは、ジョウに綺麗だって言って欲しかったんですよ。」
    「言ったじゃないか!皆!!俺も、いいんじゃないかって。」
    「だーかーらー、アルフィンは、あっし達は眼中にないんですって。ジョウに綺麗だって、言って欲しかったんですよ。ま、あっし達も、言わなかったら言わなかったで、とんでもない事にはなりますがね。」
    「なんでだよ。」
    タロスは、あぁーあとばかりに頭を抑えながら
    「鈍感ですなぁー。」
    「・・・分かってはいるんだよ。だけどなー。」
    「だけど、なんですかい?」
    タロスは、真っ赤になっているジョウを見ながら、意地悪く聞く。
    「木っ端ずかしくって、んな事、言えるか!」
    「はっはっは、ちげぇねーや!!」
    タロスはこらえ切れずに声を上げて笑った。
    バツが悪そうにしていたジョウも、タロスに吊られて笑った。
    「じき、リッキーがアルフィンと戻ってきますぜ。少しは機嫌も直っているでしょう。たぶん、風呂にでも行こうと言い出すでしょうから、ちゃんと言ってやんなせぇ。」
    「んな事言ってもなぁー。」
    ジョウは、髪の毛をぐしゃっと掻いてほとほと困った様子である。
    「あっし達は先に出て行きますから。オフ初日からアルフィンの機嫌損ねっぱなしにしたら、後々大事ですぜ。・・・それだけは勘弁してくだせぇよ。ジョウの一言に懸ってるんですから。」
    「・・・責任重大って事か。なんだかなぁー。」
    「たのんますぜ。」
    にやーっと笑ってタロスが言う。
    「・・・こいつ、人事だと思って。やれやれ・・・。」
    ジョウはしょーがねぇか、っと諦めの表情を浮かべた。
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■49 / inTopicNo.20)  Re[7]: 雪降る温泉宿♪
□投稿者/ 剣流星 -(2002/03/12(Tue) 20:41:58)
    番茶が部屋をでていった後、ぶーっと膨れているアルフィンに
    「ち、ちょっとこっち来てくんないかな。」
    リッキーは逃げ腰気味ではあるが、声を掛けた。
    「あによ。」
    不機嫌なアルフィンはリッキーをキッと睨みつけた。
    「い、いいから、ちょっと。」
    びびりながらではあるが、リッキーは意を決してアルフィンの腕を掴んで外へと引っ張り出した。
    「あによ!なんの話があるってのよ!!」
    アルフィンは、怒りまくり状態になっていた。
    「ア、アルフィン、落ち着いて、落ち着いて聞いてくれよ。」
    「落ち着けですって!!」
    今にもリッキーを殴り倒しそうな勢いでアルフィンは声を荒げた。
    「あ、兄貴がさ、そっけなかった訳だよー。」
    半分泣きそうなリッキーが震えながら言った。
    「えっ?」
    先ほどまで、怒り狂っていたアルフィンはリッキーの言葉に正気(?)に戻った。
    「あのさ、番茶がアルフィンの浴衣、褒めまくったじゃないか。」
    「ええ、そうね。」
    アルフィンはジヨウしか見てなかったのか、そーいえばっ、て感じで思い出したらしい。
    「初めはさ、4人とも見とれてたんだぜ、アルフィンの浴衣姿に。」
    「あら、だったら、あんなそっけなくしなくても・・・。」
    「あ゛ー、分かってないなー、兄貴はな、ヤキモチ焼いたんだって!」
    「え、ヤキモチ?」
    リッキーの言葉に、アルフィンは驚いた。
    「何故?何故分かるの?」
    ジヨウに限ってそんな事無いような、あって欲しいような、複雑な声色だ。
    「だって、番茶がアルフィンのコト褒めまくってたろ?それ見て兄貴、ムッとしてたもんな。」
    リッキーは必死である。オフ初日からこれでは、後々大変である。それだけは絶対に避けたい。それに、ジヨウがヤキモチを焼いたのは、リッキーが見てもはっきりと分かっていたので、真実(!)をアルフィンに告げたのだ。
    「でも、それが本当なら、・・・嬉しいかも♪」
    アルフィンの機嫌が戻った。よっしゃ!っとリッキーは思った。あとは、この状態が続くようにするだけだ。
    「晩飯まで時間があるみたいだから、皆で温泉入りに行こうよ。あ、飯は部屋に持ってきてくれるんだってさ。」
    「そうね、そうしましょ。」
    「じゃ、タロスと兄貴ん所へ戻ろう。」
    アルフィンとリッキーは連れ立って離れへ戻って行った。
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