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■1031 / inTopicNo.1)  ONE HOUR
  
□投稿者/ りんご -(2006/05/02(Tue) 11:45:42)
    (せっかくの休暇だってのに・・・この様か)
    ジョウはベッドに横たわり、むなしく天井を見上げた。
    染み一つ無い、真っ白な色は、よけい気が滅入る。
    ジョウのチームは、仕事でこの星に来ていた。
    運んできた荷物を、無事依頼人に渡し、次の仕事までに空いた五日間を、この地で過ごすことにしていた。

    この星は、建国30年という節目を迎え、星全体がお祭りムードに染まっている。
    ジョウ達も、それに一枚かもうとしたのだが、ケチがついた。
    風邪をひいたのだ。ジョウが。しかも、ひどい風邪だ。
    40度以上の高熱に、激しい咳を伴う。症状が重い場合は幻覚をみるという、たちの悪いやつだ。
    しかも、この風邪には、特効薬がない。ひたすら体を休ませ、菌が出て行くのを待つしかない。
    ジョウは、この星の総合病院に入院していた。

    ウィルスとの戦いは、三日目に突入したが、まだ回復の兆しは見えない。
    それどころか、激しい咳のため、夜もろくに眠れないし、熱で食欲もさっぱりわかない。
    強力なウィルスは、ジョウの体を散々痛めまくっていた。
    (そういえば、薬がでてたな)
    ジョウは上半身を起こし、ベッド脇のテーブルに用意されていた、薬を飲んだ。
    咳で眠れないジョウの為に、担当医が、軽い睡眠導入剤を処方してくれていた。

    ゴホ、ゴホ。咳が止まらない。
    (今ごろ、皆は、中央公園で花火見物でもしてるかな・・・)
    今夜は、大統領府そばの中央公園で、大掛かりな花火大会が行われる予定だ。
    ジョウは、ぼんやりと夕方のことを思い出した。
    アルフィンは、ジョウ一人を置いて行くのは忍びない。病院に残ると言ってくれた。
    気持ちは嬉しかったが、風邪を移したくない。それに、面会時間は9時までだ。それ以降、病院に留まることは出来ない。
    ならば、自分の側にいず、花火を楽しんできてくれ。そう言って、皆を送り出した。

    花火を打ち上げる場所が、病院の近くのようで、先ほどから、ドーンという大きな音が、断続的にしている。
    枕もとのスイッチを入れる。窓にかかっている、カーテンがサーット開いた。
    ジョウは、のろのろと起き上がると、窓に近づき外を見た。
    ジョウの病室の前は、背の高い木々が視界をさえぎるように立っている。その合間から、華やかな光が、少しだけ見えた。
    (ここからじゃ、無理か)
    あきらめて、ベッドに戻った。
    そのときピカッと、眩しい光が部屋に充満した。
    ジョウは、腕で目を覆った。
    (でかいのが、あがったのか?)と、訝ったとき、突然声が聞こえてきた。

    「いててて。おい、どけよ、マーティ。僕に乗っかってるぞ!」
    小さな、男の子の声だ。
    「悪い、悪い。すぐ、どくよケイン」
    ジョウは、声がした方向に顔を向けた。
    すると、そこには、小さな男の子が二人立っていた。
    「なんだお前達、一体ここで何をしてるんだ?」
    ジョウは、唖然となった。ついさっきまで、一人だった病室に、子供がいる。
    入院患者だろうか?いや、違う。少年達は患者用の、パジャマを着ていない。あれはどうみても、クラッシュジャケットだ。
    そういえば、この風邪の症状の一つに、幻覚を見ることがあると、ドクターが言っていた。
    ついに、くるとこまできたのだろうか・・・

    ゴホ、ゴホン。ジョウは、ベッドに横たわった。
    「大丈夫?」二人が、ベッドのそばにやってきた。
    「まだ、苦しいの?」
    二人して、ジョウの顔を覗き込む。
    ジョウは、気がついた。二人は、まったくおんなじ顔をしている。
    金色の髪はくせが強いのか、くしゃくしゃとなっている。そして、目はサファイアを思わせる青だ。
    誰かに、似てるな・・と思った。

    「熱はあるの?」
    小さな手が、ジョウの額に触れる。ひんやりして、気持ちがいい。
    (幻覚は初めて見るが、意外とリアルなんだな)
    「うわ!凄い熱だよ」
    「えっ!ほんと、僕も見てあげる」
    今度は、もう一人の手が額に乗った。
    「わー、スッゲー!玉子焼きができそうだね。パパ」
    少年達は、なにやら興奮している。
    (ん?パパって、言ったか?)
    ジョウは、その言葉の意味を吟味していた。
    パパとは、父親のことをさす言葉だが、ジョウには子供はいない。いるわけがない、結婚すらしていないのだから。
    「いま、パパって言ったみたいだが、どういう意味だ?」
    二人は、にっこりして言った。
    「パパだから、パパっていったんだよ。僕らは、あなたの子供だよ。クラッシャージョウ」
    いたずらっぽい光がともった瞳で、ジョウをじっとみた。

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■1032 / inTopicNo.2)  Re[1]: ONE HOUR
□投稿者/ りんご -(2006/05/02(Tue) 11:48:22)
    高熱で思考能力が、普段の半分もない。だが、おもしろい冗談だ、とジョウは思った。
    「子供って言われても、俺は結婚もしてないし。まだ、その予定もないぞ」
    「あったりまえさ!ね、ケイン」
    「ね、マーティ」
    二人は、さも可笑しそうにお互いの目をみやる。
    「だって、僕たち未来から来たんだよ。タイムトリップして来たんだ」ボーイソプラノで、はもった。
    「タイムトッリプだって?」
    この時代、時間旅行の技術は、まだ確立されていない。
    ふと、強い興味がわいた。暫く、この幻覚に付き合うのも悪くない。ジョウは半身を起こした。

    「お前たちの時代には、時間旅行が可能なのか?」
    「お前じゃないよ、ケインだよ」
    「僕は、マーティ。ちゃんと覚えてよ、パパ」
    そう言われても、二人ともおんなじ顔をしていて、見分けがつかない。
    「ああ、すまない。あんまり似ていて、見分けがつかないんだ。双子なのか?」
    「そうだよ!」またもや、見事なユニゾン。
    「僕らが住んでる時代も、まだタイムトリップは出来ないんだよ」
    「じゃあ、なぜ、ケインとマーティは出来るんだ?」
    「それはね。ジェニーのおかげさ」
    「パパも知ってるでしょ。ケリーんとこの、ジェニーだよ」
    知ってるとも!ついこの間、一緒に仕事をしたばかりだ。

    「ジェニーはね、ママと大の仲良しなんだよ。今度のお休みに、ジェニーの家に招待されたんだ。ジェニーが大きなケーキを焼いてくれんだって。楽しみだな」
    「ねえねえ、パパは白いクリームのとチョコと、どっちがいい?」
    「僕は、チョコがいいな」マーティと思しき少年が言った。
    「えー、やっぱりクリームだよ」
    二人は、むきになって言い争いを始めた。
    「ケーキの件はいいから、それでどうして、ジェニーがそんなものを持ってるんだ」
    ジョウは先を即した。
    「ああ、そうだね。えっとね、ジェニーは結婚して、いまドルロイに住んでるんだよ。相手は眼鏡をかけてて、優しい人なんだよ。僕らが遊びにいくと、いつもチョコバーをくれるんだ」
    「ほー」
    「ジェニーのだんなさんは、ドルロイでも優秀な技師なんだって」
    「二人で、空間転移なんとかって、装置を作ってるときに、偶然出来ちゃったって、言ってた」
    「ママにこっそり、話してるのを聞いたんだ」
    「だからね、僕たち、そのマシーンをつかったんだ」
    「パパにお願いがあったからさ」
    「お願い?どんな」ジョウが訊いた。

    二人は、ちょっともじもじしてから言った。
    「怒らないで、聞いてくれる?」
    「ああ」
    「絶対だよ!」
    「約束する」ジョウが言った。
    二人は互いの顔を見て、にっこりした。

    「パパは、明日の夜、ドルロイに着くんだよ。僕達は、一足先にジェニーのうちに着いたんだ」
    「パパはね、明日から長いお休みをとることになってて、僕たちを遊園地に連れて行ってくれことになってるの」
    「でもね・・・僕たちパパとの約束守れなかったから、遊園地は取りやめよって、ママが言ったの」
    二人とも、悲しいそうな顔になった。
    「約束?どんな?」
    「あのね、僕たちキンダーガデンに入ったんだよ」
    二人は、誇らしげに胸を張った。

    「友達もいっぱいできたし、“香夏先生”は、とってもきれいなんだよ」
    「そう言えば、保育参観にきたパパが“香夏先生”をじっと見てたって、ママが怒ってたけど、パパも先生のことが好きなの?」
    ジョウは、噴出した。
    見たこともない先生のことが、好きかときかれても答えようが無い。
    「で、約束っていうのは何だ?」
    「あー、約束ね・・・」
    二人がお互いの顔を見つめあう。話すべきどうするか、迷っているようだ。

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■1033 / inTopicNo.3)  Re[2]: ONE HOUR
□投稿者/ りんご -(2006/05/02(Tue) 12:06:44)
    「僕達ね、先生達のお部屋でいたずらしちゃったの」
    「いたずら?どんな?」
    「あのね、先週の金曜日は園長先生のお誕生日だったから、驚かそうとおもって・・・」
    「それでね、園長先生のお部屋に、裏の池でとってきた蛙を入れたんだ」
    「園長先生が、蛙にびっくりして、怒られたのか?」
    そう言って、ジョウは二人の顔を覗きこんだ。

    「ううん。蛙の口に、ボムボムバブルを仕掛けといたんだよ」
    「ボムボムバブル?何だそれ?」
    「ジェニーに教えてもらった、爆弾だよ」
    「爆弾?」
    ジョウの目が丸くなった。
    「そう、爆弾。でも、威力はたいしたこと無いんだよ」
    「ボムボムバブルは、シャボン玉なんだ。ただ、ちょっと、割れるときに、バッチン!ってすっごく大きな音がでるんだ」
    「でも、ちょっと量が多かったみたい。先生の部屋で、一遍に割れたら、蛙も吹っ飛んだんだ。木っ端微塵にね」
    「で、そのはじけた蛙が先生の顔にくっついたんだ」
    「園長先生ったら、目をまわして、ひっくり返っちゃって」
    二人は、思い出したように、くすくす笑いだした。この二人、相当ないたずらっ子のようだ。

    「それでどうなったんだ?」呆れた声でジョウが訊いた。
    「・・・それで、ママが呼び出されて、怒られたんだよ」
    二人の顔が、みるみる悲しい顔になった。
    「いたずらしないで、みんなと仲良くする約束を守らないって、ママはカンカンなんだ」
    「僕達、ほんのちょっと、先生を驚かそうと思っただけなの。ねえ、パパ。お願いだから、遊園地に行くの止めるっていわないでよ」
    二人が、ジョウの腕を、ぎゅっと握った。

    「そう、言われてもな・・・」
    ジョウは首を捻った。この二人とそんな約束はしていない。だからといって、素直に遊園地に行くぞって言うのも、釈然としない。
    「・・・じゃあ、未来のことを教えてくれ」ジョウが言った。
    「え、未来のことを?」
    二人が顔を見合わせる。
    「お前達からすると、俺は過去の人間だろう。その俺に、未来の約束だの遊園地だの言われても正直腑に落ちん。だから、未来の情報と引き換えに、
    遊園地の件は考慮してやるよ」
    二人は飛び上がった。
    「わー、ありがとう、パパ」
    「なんでも、聞いてよ」

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■1034 / inTopicNo.4)  Re[3]: ONE HOUR
□投稿者/ りんご -(2006/05/02(Tue) 12:08:26)
    喜ぶ二人の様子をみて、ジョウは、後ろめたい思いに駆られた。
    ジョウは、考慮すると言っただけで、行くとは言っていない。しかし、まあ、幻覚相手だから、よしとしよう・・・
    「そうだな・・・まず、タロスはどうしてる?クラッシャーを続けてるのか?」
    「タロスおじさん?おじさんは、クラッシャー養成所の校長先生だよ」
    「タロスが先生?」
    「うん。生徒を連れて脱走ばかりしてるって、ママが教えてくれた」
    「ほー。じゃあ、リッキーは?」
    「リッキーの兄貴?」
    これには、ジョウが苦笑いした。リッキーの兄貴だって?あの、リッキーが・・・
    「リッキーの兄貴は、まだパパの船に乗ってるよ」
    「そうだよ。あのね、昔、壮絶な三角関係になって、女の人が怖くなったんだって。タロスおじさんが、こっそり教えてくれたよ」
    「壮絶って、すっごいってことなんだよ。知ってるパパ?」
    「・・・ああ」
    壮絶な三角関係・・・ミミーとカアラだろうか?
    「おしまい?パパ」
    「あっ・・・いや。その・・・なんだ」ジョウは一番聞きたかった事を口にした。
    「・・・お前達のママは誰なんだ?」
    「ママぁ?」二人が、すっとんきょう声を出した。
    そして、ジョウをみた。ジョウはそんなことは、大して興味はないぞって顔をしてる。
    二人は素早く視線を交わし、そして大きな声で言った。
    「ルーだよ!僕たちのママは、クラッシャールーだよ!」

    ガーン!ハンマーで殴られたような衝撃が、ジョウを襲った。
    ルーだって・・・俺が、あのエギルんとこの、ルーと結婚?
    ジョウはめまいがして、起きていられなくなった。
    再び、横になった。
    「どうしたのパパ?気持ち悪いの?」
    「そうだ・・・気分が悪くなった・・・もう、お前達帰れ」
    ジョウは目を瞑り、もうたくさんだとばかりに、手で二人を追い払う振りをした。
    「まだ、だめだよ。パパ」
    「そう、もうちょっとしたら、迎えが来ると思うんだ」
    「迎え?」
    目を開け、二人の顔を見た。
    「うん。タイムマシーンは一度使うと、次に動かすまで一時間かかるんだって」
    「だから、もう少ししないと、僕達帰れないよ」
    二人がニコニコしながら言った。ジョウはげっそりした。

    「そうそう、お姉ちゃんのこと話してなかったね」
    「姉さんって、他に兄弟がいるのか?」
    「うん、いるよ。お姉ちゃん僕らと違って、黒い髪の毛なんだよ。お姉ちゃんは、おばあちゃん似なんだって、バードおじさんが言ってたよ」
    「うん、言ってた」
    「そういえば、お姉ちゃんこの間デートしたんだよ。クラスの子と。そのとき、誰かに尾行されたって、騒いじゃってさ」
    「尾行された?誰に?」
    「さあ?でも、パパが休暇で家にいたときだったから、パパじゃないかって、すっごく怒ってた」
    「でもー、それ、おじいさんじゃないかって、バードおじさんは言ってたよ。お姉ちゃんは、おじいさんの秘蔵っ子だからって。ほんとは誰なのかな?」
    「やっぱりパパなの?」
    「知らん」むすっとして、ジョウが言った。
    堅く目を閉じて、横を向いた。

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■1035 / inTopicNo.5)  Re[4]: ONE HOUR
□投稿者/ りんご -(2006/05/02(Tue) 12:10:00)
    ジョウの不機嫌さに気がついて、二人は口を閉じた。
    病室がシーンとなった。
    窓の外から、ドーン、ドーンという花火の音が聞える。
    目を閉じていたら、急に眠気が襲ってきた。

    二人が、そっとジョウの手を握った。
    小さくて、やわらかい手だ。
    ジョウが目を開けると、二人の目には、いまにも溢れそうな大粒の涙が、浮かんでいる。
    「どうしたお前達?」
    「うわーん」大声で、泣き出した。
    ジョウはびっくりした。
    さっきまで、ニコニコしていた二人が、今は大泣きしている。
    「なんだ、どうした?お腹でも痛くなったのか?」
    二人は、ジョウの質問に首を振った。そして、何がそんなに、悲しいのか更に大声で泣き出した。
    ジョウは、途方にくれた。子供の扱いには慣れていない。どうしたらいいのかわからないのだ。
    そっと、抱きしめた。慰めの言葉は知らないが、少しでも二人の気持ちが楽になったらと思ってのことだ。
    二人は、ぎゅうっとしがみついてきた。
    両脇に抱えるような形になった。
    二人が、小さく呟いた。
    「ママ・・・」
    そうか、この二人は、母親が恋しかったのかと、合点がいった。
    自分の腕の中の小さな生き物に、ジョウは何だか暖かい気持ちになった。

    二人からは、お日様の匂いがする。
    ジョウは堅く、二人を抱きしめ、三人してベッドに寝転んだ。
    しばらくじっとしていると、再びジョウは、うとうとし始めた。
    どうやら、本格的に薬が効いてきたらしい。
    窓の外から、一段と激しい、花火の音が響いてきた。
    ラストに向けて、佳境に入ったようだ。


    「心配かけて、駄目じゃないの!!」
    「ごめんなさい・・・」
    「もうしないから・・・」

    声が聞えてきた。双子のケインとマーティの他に、もう一人。
    俺は、重たい瞼を無理やりこじ開けた。
    部屋の中に不思議な光が充満している。
    そして、光の中央に、双子達と女がいた。
    双子を大切そうに抱きかかえた、女の後ろ姿が目に入った。
    光がまとわりつき、輪郭がはっきりしない。
    ふっと、女が振り返って、俺を見た。目が合った。
    「!」
    女は、一瞬微笑むと、パッと光と共に消え去った。
    まるで、かき消すように。

    俺は、ふーと息を吐いた。
    そして、目を閉じた。
    なんだか、とても幸せな気持ちになった。
    彼女で良かった・・・
    俺は、静かに眠りについた。

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■1036 / inTopicNo.6)  Re[5]: ONE HOUR
□投稿者/ りんご -(2006/05/02(Tue) 12:14:58)
    翌朝、俺の熱は下がり、すっかり気分も良くなった。
    朝食の最中、リッキーが部屋に飛び込んできた。
    「おはよう、兄貴」
    「どうした、リッキーあわてて」
    興奮気味のリッキーに、俺は声を掛けた。そして、リッキーの顔の異変に気がついた。
    「どうしたんだ、それ」
    目は真っ赤に充血して、鼻の穴にはティッシュが突っ込まれている。
    「実は、これを食べすぎちゃって・・・」
    リッキーは俺に、お菓子の箱を差し出した。
    ラベルからすると、どうやらチョコレートのようだ。
    「これさ、この星の建国記念チョコなんだ。すっごく並んで、やっとゲットしたんだ!!」
    興奮気味に、リッキーが言った。
    「チョコの数は、ぴったり30個。色んな味のチョコが入ってるんだけど、一つだけ『当り』があるんだって!」
    その箱を覗き込んで、俺はびっくりした。
    「これ、一個がすごくでかいぞ。まさか、一人で食べたのか?」
    「うん」嬉しそうに、リッキーが頷いた。
    俺は、呆れた。一個のサイズは、どう見ても、俺の親指よりでかい。
    しかも、箱には2個しか残っていない。
    「それで、このチョコを見せたくて、朝っぱらからやって来たのか?」
    「ちがうよー」リッキーが口を尖らせた。
    「兄貴、風邪のせいで、お祭り行けなかっただろう?少しでも、雰囲気を楽しんでもらいたくってさ」
    そう言って、リッキーが俺にチョコの箱を差し出した。
    俺は、一瞬固まった。しかし、赤い目をしたリッキーが、らんらんと見ている。

    「・・じゃあ、一つもらうか」
    俺は、手を伸ばしかけた。
    チョコは、黄色と赤い色の2個。
    黄色は、綺麗なクリームイエローだ。
    しかし、赤い色は、御伽噺の魔法使いが、お姫様を毒殺しようとした毒りんごのように、まがまがしい色をしている。

    当然、俺は黄色に手を伸ばした。
    しかし、その時、はっと思い出した。
    昨日の夢・・・そう、未来からやってきたという、不思議な双子達だ。
    「いい、パパ。どっちの色がいいって聞かれたら、赤っていうんだよ」
    そう、教えられていたのだ。
    思わず、二人の姿を思い出し、口元が緩んだ。
    あの二人に免じて、こっちにするか。リッキーは、黄色を掴んだ。
    「兄貴勝負だ!」
    同じタイミングで、口に入れた。
    その味は、思いもかけず上品な味だった。
    俺は、わりといけるぞ・・・と、リッキーに伝えようと、口を開きかけた。

    しかし、リッキーが顔を赤黒くさせている。
    「どうした、リッキー!」
    「・・・か・・か・・か・・・かっらーーーーーい!!!!」
    リッキーが口から火を吹いた。
    そして、水を求め、病室を飛び出した。
    その姿に、思わず笑いがこぼれた。
    そして、俺は明るい光が差し込んでくる窓に視線を向けた。
    ひょっとしたら・・・もっと先の未来で、あの二人に会えるんじゃないか・・・
    俺は、そんな気がした。
    廊下では、リッキーの叫び声が響いていた。


    <END>

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■1037 / inTopicNo.7)  Re[6]: ONE HOUR
□投稿者/ りんご -(2006/05/02(Tue) 12:20:15)
    <あとがき>

    お読み頂き、ありがとうございます。
    このお話は、風邪をひいて、熱にうかされるジョウがみた夢です。
    ですから、タイムマシーンってどういう形なの?等と、するどい突っ込みは、決してなさらないでください(汗)

    そして、夢の中に、不思議な双子が現れ、未来を語ります。
    そう、ジョウの家族のことです。
    娘は、黒髪の美少女?で、ダンの秘蔵っこのようです。といっても、べたべた愛情をそそぐわけではなく、
    彼女が困っていたら、アドバイスをしてあげる・・・そんな感じでしょうか?
    そして、愛する孫娘の、初デート!気になって、思わず跡をつけてしまう・・・
    そんなことが、あったら楽しいかと(笑)

    そして、タロスやリッキー。
    きっと、彼らには、こんな未来が待っているのではないかと、書いてみました。
    お話に出てこなかった、アルフィン。さて、彼女はどうしたのでしょうか?
    皆様のご想像に、お任せしますね。

    そして、最後に、香夏さん。ご了承も得ず、作品に登場していただきました。
    すみません(ぺこり)
    ご協力ありがとうございました。

                                                             りんご


fin.
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