| 白一色の殺風景な病室で、何本ものコードにつながれて アルフィンはベットに横たわっていた。 顔色は青白く、今にも何処かに消えてしまいそうな雰囲気を漂わせていた 「今夜が峠になります。覚悟だけはしておいてください。」 医者は無情にも、そう告げて部屋を出て行った。
今回の仕事は、ある要人の護衛で、そう難しいものではないはずだった 仕事の依頼を受けた時はそう思っていた、しかしそれは壊滅したはずの 殺人結社<クリムソン・ナイツ>の罠だった 契約期間が終了し気を抜いたスキをつくように、《それ》は現れた。 テュポーンだった。 <クリムソン・ナイツ>の残党は死亡したウーラの細胞から 2体の人面魔獣(テュポーン)を作り出していた。 一瞬の出来事だった、いきなり現れたテュポーンが要人とその関係者 すべてをズタズタに引き裂いていた。 ジョウの身体が反射的に動き、レイガンを撃つ 短い悲鳴があがるが、致命傷では無かった、移動した テュポーンがリッキーを襲う 右手に持っていたレイガンが叩き落され、妬けるような激痛が走った リッキーは傷の痛みに耐えながら横に飛び次の攻撃を避けた それと同時にタロスが左腕のマシンガンを連射した 血飛沫が飛び絶命する瞬間、テュポーンが人間に変化した。 それは、ウーラだった。いや、ウーラと同じ顔をしていた。 「ウーラ・・・・・」 一瞬、驚きにジョウの動きが止まった、そのスキをもう1体の テュポーンは見逃さなかった。 ジョウに向かってテュポーンが飛び掛る、ジョウの身体が 引き裂かれる瞬間、何かに突き飛ばされた。アルフィンだった。 テュポーンの爪がアルフィンの背中を引き裂く、噴出した血が アルフィンの身体を真っ赤に染めた。 その事実にジョウの怒りが爆発した、頭の中が真っ白になり何も 考えられなかった、雄叫びをあげレイガンを撃ちながら本能のみで突進して行った。 左手、右肩に激痛が走る、それでもジョウの動きがひるむ事は無かった。 テュポーンが再びジョウを引き裂こうとした時、リッキーがクラッシュパック から取り出した無反動ライフルでテュポーンを撃ち抜く、 ジョウが体当たりしながら腹にレイガンを撃ちこんだ、ごふっ、と血を吐いた テュポーンにタロスのマシンガンが炸裂し、テュポーンは絶命した。 「アルフィン!!!」 ジョウがアルフィンを抱き上げる かなりの出血の為、アルフィンの意識は朦朧としていたが それでもジョウの姿を確認すると弱々しいながらも二コリと微笑んだ 「ジョウ・・・・無事・・・だった・・のね・・・・・良かっ・・・・・た・・」 「アルフィン、もういいから しゃべるな。すぐに病院に連れて行くから頑張るんだ」 「ジョウ・・・・・・」 アルフィンが右手を差し出す。 「アルフィン!アルフィン!!」
アルフィンは、その場ですぐ応急処置がほどこされ、エアカーで病院に収容された だが、出血が多すぎた為ショック状態になり、面会謝絶の状態のまま 3日間が過ぎた。 その間、ジョウはアルフィンの病室の前から離れる事ができなかった。 離れた瞬間にアルフィンが何処かに消えてしまうかもしれないという恐怖が ジョウを何処にも行けなくしていた。 4日目の朝、医者に言われた言葉がジョウに恐怖を実感させる、 今まで、どんな事があろうと、こんな恐怖を感じた事は無かった。 [アルフィンが死ぬ]その言葉にジョウは取り乱し、動揺した。 恐怖がジョウの心臓をわしづかみにする。 そこにいるジョウは今まで誰も見たことの無い姿だった。 「覚悟だと・・・・一体なんの覚悟をしろと言うんだ!! アルフィンを失う覚悟をしろと言うのか!!!」 ジョウは荒れた 「ジョウ!落ち着きなせい。ジョウ!!」 タロスがジョウを押さえつける。 「俺達はクラッシャーだ、もちろんアルフィンも、だとしたら これはクラッシャーの宿命だ」 タロスが諭すように言った。 「冗談じゃない!!何が宿命だ!だったらあの場所で寝てるのは 本来俺だったはずだ、アルフィンじゃない」 ジョウが叫ぶ 「俺を庇ったばっかりに・・・・アルフィンが・・・」 「兄貴!しっかりしてくれよ、まだアルフィンは生きてるんだぜ! 死ぬと決まったわけじゃない!兄貴がそんなことで、どうするんだよ!!」 「そうですぜ、ジョウ。信じましょうアルフィンを、きっと大丈夫。 もちなおしますよ」 「・・・・・・アルフィン・・・」
静かな時間だった、アルフィンの容態は何の変化もなく、いぜん危ない状態が 続いていた。 ジョウ・タロス・リッキーの三人は病室の前のソファに座っていた。 どれくらいの時間がたったのだろうか、ジョウは何かの気配を感じて目を覚ました。 [目を覚ます]そう、いつのまにか三人は眠っていた。 「寝てたのか・・・?俺は・・・」 おかしい、そう感じた。いくら疲れていたとしても三人同時に眠るだろうか・・・・ アルフィンがこんな状態なのに・・・・ また、気配を感じた。今度は、はっきりとアルフィンの病室の中からだった ゆっくりとドアを開けて中に入る。 瞬間、ジョウの目は大きく見開かれた。 ウーラが立っていた。
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