| 本日の天気予報→曇り。降水確率30%。最高気温9℃、最低気温3℃。 北よりの風風速5メートル。
−−−−という訳で。
曇りだ。
見渡す限りグレイの雲に覆われた空、そして鉛色の海。 どこまで眺めていても自分の周りにはグレイッシュな景色のみ。
なんでも、今日は今年一番の冷え込みになるそうで、当然のようにこの海岸には俺達以外人っ子ひとり見当たらない。ふと見上げれば、グレイの雲で蓋をされた空には、一羽のカモメが点のように飛んでいて哀愁を誘うことこの上ない。
「ドライブに行こうよ!」
いつもながら唐突なアルフィンの提案で(このクソ寒いのに)オープンのエアカー(!)をレンタルし(なぜか)海沿いのハイウェイを約1時間ドライブした。 自分としては短くはあるものの久しぶりの休暇だし、ここにはアルフィンが好きそうなショッピングモールもないし、好きなだけダラけて惰眠を貪れると思っていたのに、いつも通りというかいつも以上にハイテンションなアルフィンに無理やり叩き起こされあれよあれよと言っている間にこうなった。
(いつもながら・・) 「俺は今日は寝ていたい」の一言が言えない自分が死ぬほど情けない。
波打ち際ではアルフィンが、白いダウンのジャケットにウサギの毛でできた耳当てをして、その小さな鼻の頭をほんのり赤くしながら波と戯れつつ歓声を上げている。
(今年一番の寒さになるって太鼓判を押されている日によくやるよ)
俺はレザージャケットのポケットから、先ほど買った缶コーヒーを取り出してプルトップを外す。そして冷えた両手をコーヒー缶で温めながら一口、温かい琥珀色の液体を口に含んだ。
「ジョーウ!ねえ、こっちに来て遊ぼうよ」 アルフィンが波と追いかけっこをしながら声をかけてきた。 「勘弁しろよ。5日だけの休暇だぞ。こんなクソ寒い中、海で遊んで風邪なんかひいたら最悪だ」 「大丈夫だってば。AAAのクラッシャーがそんなやわなことでどーする!」 「いーや俺は辞退する。ご免蒙る。断じて不参加」
アルフィンは一瞬その可愛らしい口をへの字に曲げ
「・・・はー・・・。親父くさいったらありゃしないわねー、まったく」
とか何とかブチブチ言いながら、諦めたようにゆっくりとこちらに向かって歩き出す。 しばらく波打ち際で走り回っていたせいか、その頬はうっすらピンク色に染まり甘いにおいを放っている花のように可憐だ。
「ほら」 目の前に到着したアルフィンに、ジャケットのポケットに入っていたもう一つの缶コーヒーを渡す。 「ありがと」 と、言いながらアルフィンはそれを受け取った。
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