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■1281 / inTopicNo.1)  おめでとう×2
  
□投稿者/ 舞妓 -(2006/11/11(Sat) 13:18:04)
    苦しい。

    重い。

    「…う…」

    寝返りを打てない苦しさに、ジョウは目を覚ました。
    腹部が、重い。

    「起きた?ジョウ」
    アルフィンの弾んだ声が聞こえた。明るい笑顔が覗き込む。さらりと金髪が揺れる。
    「…俺はどうしたんだ。…腹が重い…」
    ぼんやりと目の覚めきらないまま言葉を発する。
    「そうよ、おめでとう、ジョウ!」
    「おめでとう…?」
    状況がよく分からない。
    「ほら!見て!」
    アルフィンが満面の笑みでジョウの目の前に差し出したのは、15センチほどの白いスティックだ。丸い小さな窓がふたつ。そのどちらにも、赤いラインが浮かんでいる。
    「これは、何だ…?」
    「何って、妊娠検査薬に決まってるじゃない!」
    「にんし…」
    「ジョウ、倒れちゃったのよ。メディカルカプセルに入れたら、ジョウは妊娠してるって!採尿して検査してみたら、ホントに陽性だったのよ!もう、あたし、嬉しくて!」

    にんしん。

    何だって?

    しかも俺が?!

引用投稿 削除キー/
■1282 / inTopicNo.2)  Re[1]: おめでとう×2
□投稿者/ 舞妓 -(2006/11/11(Sat) 13:19:13)
    頭が真っ白になった。
    やにわに起き上がり、腹部を触ってみる。そこは確かに小さく膨らんでいた。

    「これから、つわりが何ヶ月か続くのよね。無理しないでね、仕事はあたしたち3人でちゃんとするわ。初期は流産しやすいから、安定期に入るまで辛いときはなるべく横になってて。それから、アラミスに問い合わせて調べたんだけど、一応産休と育休はあるらしいわ。もっとも、今まで取得した人は誰もいないそうだけど。大丈夫よ、ジョウが第一号になればいいのよ!これからの人も、取得しやすくなるわ!」
    アルフィンは本当に嬉しそうだった。
    「ジョウは初めての妊娠だから、お腹が目立ってくるのは6〜7ヶ月からかしら…」
    そう言ってにこにこと笑い、ジョウの小さく膨らんだ腹部を触っている。

    お腹が大きくなる。
    どうするんだ。何を着るんだ。
    このクラッシュジャケットは着られない。
    とすると。

    マタニティクラッシュジャケット。

    「―――――」

    アホか俺は!!!!

    何かの間違いであって欲しかった。
    目覚めたら、妊娠なんて夢だった、そうあって欲しいと、心から願った。
    子供を育てられるわけがない。こんな自分が。こんな稼業でこんな生活をしている俺が。

    ジョウは頭を抱えて叫んだ。
    「だから、何で俺が妊娠してるんだ!?
    仕事はどうするんだ!でかい腹抱えてライフル撃つのか?!
    子供はどこで育てるんだ!戦闘中のミネルバの中でおむつ替えてミルク飲ませるのか?!
    学校はどうするんだ、俺の仕事はどうな…」

    ジョウは言葉を飲んだ。
    アルフィンが、青い目に涙をいっぱいためて、ジョウを見ている。

    「…アルフィン…」
    「ジョウは」
    アルフィンは、必死に涙をこらえて、言った。
    「ジョウは、嬉しくないの?お腹の赤ちゃん、嬉しくないの?
    …あたしの子なのに、欲しくないの?」
    「い、いや、そういうわけじゃ…」
    ジョウはうろたえた。
    「…ただ…びっくりして…結婚もしてないし…仕事への支障とか…この先のこととか…」
    目の前でアルフィンはぽろぽろと涙をこぼし続けている。
    「ただ色々…不安なだけだ…」
    ジョウはアルフィンの髪を撫でた。
    愛しい人。その子供が、嬉しくないわけがない。

    「大丈夫さ、何とかなる。この先のことなんか、これから何とでも変えていける。俺たちが、変わればいい。変えていけばいい。子供のために。」

    「…ジョウ!!」
    アルフィンが感極まったように、ジョウに抱きついてわあわあと泣き出した。
    ジョウはそのアルフィンの頭を撫でる。
    その時。
    「う…!!」
    猛烈な吐き気が襲ってきた。
    これがつわりというやつか。女性は大変なんだな…
    「ジョウ!待ってて、今洗面器…」
    「うううううう…」
    「ジョウ!!」

引用投稿 削除キー/
■1283 / inTopicNo.3)  Re[2]: おめでとう×2
□投稿者/ 舞妓 -(2006/11/11(Sat) 13:20:52)
    「うう…」
    徐々に、意識が戻る。

    吐き気と、腹部の重み。

    「つわりが…」
    呟いて、はっとした。
    視界に入るのは、ホテルの寝室だ。
    ミネルバのメディカルルームではない。

    身を起こすと。
    ジョウの腹部に折り重なるようにして、アルフィンが眠っていた。
    重いはずだ。苦しいはずだ。
    「どんな寝相だよ…」
    どっこらしょと、アルフィンを自分の上から下ろす。
    ふと目に入った床には、酒瓶と衣類が散乱していた。

    そうか、夢だ。

    二日酔いで頭痛と吐き気の残る頭が、思い出した。
    昨日は自分の誕生日で、散々皆で飲み交わした後、ほとんど正体もなくなってアルフィンと部屋に戻り、そこでまた飲んで、それから…以下略。

    夢だった。
    ほっとすると同時に、少しだけ残念な気もした。

    ちょっと待て。

    略された部分だ。
    恐ろしく「ヨカッタ」感があるだけで、ほとんど記憶は無い。
    特に、最後の記憶が無い。

    …ちょっと待て…。



    3週間後、例の「白いスティック」が置かれたテーブルを挟んでジョウとアルフィンが向かい合うのも、
    その時ジョウが一切の動揺を見せずに男らしくアルフィンにプロポーズするのも、
    翌年8月初旬、男の子が生まれるのも、
    また後の話。


                     おわり^^

fin.
引用投稿 削除キー/



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