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■1310 / inTopicNo.1)  Colorful
  
□投稿者/ とむ -(2007/01/11(Thu) 23:04:06)
    (1)

    朝、部屋で目を覚ますといつもそこは白い世界だった。

    それらはあたしが生まれてから16年間もの長い間、当たり前にそこにあった。部屋の家具−−−−−ベッドやドレッサーやソファやテーブルは、全て白に統一されたピザン最高級の装飾が施された調度品。天蓋付きのベッドには天井から吊るされた真っ白なレースが幾重にも美しく襞を作り、ベッド横のテラスに通じる扉は晴れてさえいればいつも大きく外側に開け放たれていた。花の刺繍の入ったアイボリー色のカーテンは、いつも波のように風に揺れて眩しい白く薄い膜を作っていた。

    国の催事に出席する時は、必ず白かピンクのドレスを着せられた。美しい刺繍がされたシルクのそれはあたしの肌に良くなじみ心地よかった。

    毎日毎日顔を合わせるのは身の回りの世話係とお父様が選んだ家庭教師達。たまにスクールに通うことはあったけれども、あたしが王女だからって周りはいつも気を遣っていた。あたしが本当に話したいことは話せなかったし、誰もあたしに本当のことは話してくれなかった。あたしにかけられる言葉は「とても美しい」とか「見事な金髪ですね」とかどうでもいい上っ面の褒め言葉ばかり。あたし自身について発せられた言葉なんて一つもない。そんな字面だけの言葉に心が動くはずもなく、あたしの心はいつも平坦だった。


    タイクツ    ツマラナイ     サビシイ   ・・・・


    でも、仕方ないと思ってた。
    これが普通だと思ってた。
    コレがあたし。ピザン王女のあたし。この単調な日々があたしの当たり前であたしの全て。いくら孤独でも窮屈な日々に苛苛してても、誰も本当のあたしを見てくれてはいないとしても、この毎日があたしの世界。このどこまでも白く霞のかかった道を、あたしはずっと一人で歩いていくのだとそう思ってた。



    −−−−−−−−そう。

    ずっとそう思っていたの。

    あの日。
    ガラモスがクーデターを起こしたあの日。
    それまで真っ白だった世界が、突然無理やり真っ黒に蹂躙されていったあの日。
    もうお終いだと心の底から絶望するしかなかった悪夢のようなあの日。
    たった一人でエマージェンシー・カプセルでピザンを逃げ出すしかなかったあの日までは。

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■1311 / inTopicNo.2)  Re[1]: Colorful
□投稿者/ とむ -(2007/01/11(Thu) 23:36:39)
    (2)

    澄み切った秋空の下、マルシェに軒を連ねる露店街からはひっきりなしに客を呼び込む声があちらこちらで飛び交っている。赤やオレンジ、鮮やかなグリーン。見渡せばこの街特産のフルーツや生鮮品のビビットな色が眼に眩しい。どこか遠くの方から微かに軽快なポップスが風に乗って流れてくるが、このマルシェの賑わいに掻き消されて、それはところどころしか聞き取れない。
    「−−−−−−−で、あとは何を買うって?」
    ジョウは両手一杯に半日がかりで買い漁った食糧を抱えつつ、顔だけ振り返ってやっとのことでアルフィンを見た。
    「えーーとね、コーヒー豆を3袋とトマトの缶詰、あとフルーツをいくつか」
    買出しをする食材を書き連ねたメモとにらめっこをしながらアルフィンは答える。
    「はあ?まだそんなにあるのか?どうやっても俺はもうこれ以上持てないぜ」
    思い切り眉根を寄せながらジョウはぼやく。もうかれこれ半日以上、この人でごった返すマルシェを歩き回っている。いくら体力には自信のあるクラッシャーとはいえども、そろそろ真剣にご免被りたい気分になってきた。
    が。
    「食べたいメニューにパスタ料理をリクエストしたのは誰だっけ?ブルーマウンテンがなくなりそうって言ってたのは?」
    「・・・・・・・・・俺」
    「よろしい。じゃ、次行くわよ」
    ビシ!とジョウを指差して、その愛らしい顔に不敵な笑みを浮かべたかと思うと、アルフィンは再び人でごった返す露店街に踵を返した。鮮やかな赤いクラッシュジャケットは滑るように人込みの中をすり抜けていきあっという間に見えなくなった。ジョウは露店街に消えていくアルフィンの姿を見送りながら両手に抱えた荷物を今一度持ち直す。
    「コーヒーとトマトの缶詰とフルーツね・・。はいはい・・。持ちゃーいいんだろ」
    そして諦めたように目的の店を探すべくその後に続いた。



    クラッシャージョウのチームは、昨夜物資補充と短いオフを過ごすためにこのリゾート惑星に降り立った。陸に降りるのは実に2ヶ月ぶりだ。加えて、このような雑踏を歩くのは恐らくそれ以上に久しぶりであろう。なにせこの約2ヶ月間は小惑星の爆破、プルトニウム輸送、老朽化した宇宙ステーションの撤去という宇宙空間での仕事が切れることなく入ってきた。これらは緻密で綿密な計画、そして極限の集中力を要する仕事ばかりだ。ほんの些細なミスにより命が危険に晒される作業も多く、体力だけでなく気力までもすり減らす毎日だった。
    となると、メンバー全員の楽しみは一仕事を終えた後の食事に集中する。キツイ仕事を終えた後の安らぎ。明日の仕事への活力。そしてメンバーと交わすたわいのない会話。このひと時が一日中神経を張り詰め、疲れた体に鞭打って仕事をやり遂げた自分へのご褒美だ。
    だが、流石に2ヶ月もの長い期間、物資の補充が全くなかった<ミネルバ>の食糧庫は困窮を極めていた。食べたい盛りの男衆3人の腹を満たすにはあまりにも貧しすぎる食材の数々。最後の1週間などは、アルフィンでさえ何を作っていたのか分からない。とにかく食糧庫に残っていた食材を片っ端から鍋に入れ適当にそれらしい名前を付けてリビングテーブルに並べた。
    普段なら「なんじゃこれは?」と疑問符が付きそうなメニューが続いたとしてもこの状況では止むを得ない。味付けの好みや好き嫌いがバラバラの男3人からクレームが挙がらなかったのは、最も体力的に消耗しているはずのアルフィンが、どんなに疲労していようとも家事全般を黙々とこなしていた為に尽きる。多少奇天烈な料理を出されたとしてもそれに文句を言うようでは男が廃るというものだ。
    かくして。
    貴重な5日間のオフの初日。ジョウとアルフィンは食糧補充班に、タロスとリッキーは日常品と薬品類の補充班に分かれ、この尋常ではない人込みの中で半日以上も時間を費やすことになったのであった。

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■1318 / inTopicNo.3)  Re[2]: Colorful
□投稿者/ とむ -(2007/01/15(Mon) 10:03:09)
    それにしてもだ。
    足元の無造作に置かれた買い物袋の山を遠い目で見つめながらジョウは呟く。
    「・・・よく、こんだけ買ったよな・・・」
    半日をかけて、この決して広くはない露店街を這いまわりながら買い漁った大小様々な大きさの買い物袋。たった今、その中の一つから転がり落ちた黄緑色のまだ若いマンゴーを袋に詰め直しつつ、ジョウは心持ちアルフィンを睨みながら大げさな溜息をつく。さっきから何度詰め直してもこの忌々しいマンゴーがこれでもかこれでもかという様に袋の中から飛び出してくる。そして、そのたびにジョウはうんざりしながらも根気強くそれを拾い上げ袋に詰め直すのであるが、なにせ袋の中自体が適当に食材を突っ込んであるため不安定極まりなく、しばらくすると「もう限界です。気力がなくなりました」とばかりに地面に落ちてくる。正直なところさっさと観念して袋の中身を全部入れ替えた方が確実なのも分かっているのだが、一通りの買出しが終了しせっかくコーヒーショップのテラスで寛いでいる今そんな面倒なこともしたくない。意地でも入れ直したりするか、と決意しつつジョウはテーブルにあるキリマンジャロに右手をかけた。
    すると
    「・・・それにしても、」
    ジョウの向かい側の席に腰を下ろし、アイスコーヒーを飲んでいたアルフィンが不意に口を開いた。彼女はジョウと合っていた視線を外し、その両手を思い切り頭上に伸ばしながら空を見上げる。頭上に広がるのは目に染みるほどの青空。
    「ホントに気持ちよすぎるくらいの快晴よね!ジョウ」
    「堂々と目を逸らすな」
    コーヒーを飲みながらジョウはすかさず突っ込みを入れる。
    「もうなんなんだよ。この量は。羽目を外すにも程がある。ここに一体いくつの袋があると思ってんだ」
    「4つ」
    アルフィンは臆することもなくストローでグラスの中の氷を弄びながら答えた。
    「見せかけはな。でも知ってるか?この4つの中にはさらに小さな袋がいくつも入ってるんだよ。両腕がちぎれるんじゃないかと思うくらいにな」
    「流石、特Aクラッシャー」
    アルフィンはおどけながら両手を叩いてジョウに拍手を送る。
    「いい加減にしてくれ。この休暇で俺を殺す気か。だいたいちゃんとコレ、予算内で納まってるんだろうな」
    アルフィンは、ジョウの台詞を聞くや否やその整った唇に勝利の笑みを浮かべた。それを見た途端ジョウは心の中で舌打ちをする。この先の道中、アルフィンが更に調子になることはコレで決定だ。
    「ふふふふ。そ・れ・が、ちゃーんと納まってるのよ。こんだけ買ったのによ?それもこれもあたしの交渉術のなせる業よ。やっぱりあたしって天才ね」
    そう言いながらアルフィンはコロコロと声を上げて笑う。
    腰掛けているスツールに上半身を預けながら
    「よく言うぜ。交渉というより脅しだろ・・」
    フゥ、と溜息をつきながらジョウは言った。


    ・・・・まったく。
    どうして女って奴は買い物となるとここまで見境がなくなるんだ、とジョウは思う。
    いや、アルフィン以外の女とはあまり接したことがないのだから、女全般がそうであるとは限らないのだろうが少なくとも男である自分はここまで買い物というものに情熱を持てない気がする。もし自分が買い物をするとしたら、あくまで「買いたい物」を目指して一直線に歩き、目的のものを購入したらさっさと<ミネルバ>に戻って一眠りでもしたいと思う。の、だが、アルフィンを見ているとその行動はあまりにも自分とは違いすぎて理解しがたいというか、もはや既に理解不能。
    今日もこのマルシェに足を踏み入れるや否や、彼女が最初に立ち寄ったのは本日の買出しの予定にはなかった鮮魚を扱う店だった。
    −−−−−−−−ちょっと待て。最初に行くって言ってたのはここじゃなくて、あっちの野菜を扱う露店だろ−−−−−−−−などとは言う間もなく、アルフィンは迷うことなく派手派手しい魚が並んでいる店まで歩いていき、あれよあれよという間に店の主人と激しく交渉を始めていた。あっけにとられてジョウがその様子を見ていると、どうやら値切り交渉に勝利したらしくこちらに向かってVサインを送っている彼女の姿。一方、ジョウはと言えば昨日見せられた「買い物リスト」なるものに今アルフィンが持ち帰ってきた食材が書いてあったかどうか記憶をひっくり返す。
    「・・・いや、ないだろ」
    思わず言葉に出てしまう。
    「ん?」
    アルフィンがジョウを見上げながら戦利品である新鮮な魚介類を差し出した。
    「これって買う予定だったか?」
    差し出された袋を受け取りながら、ジョウはアルフィンに聞いてみる。
    「ううん、でも今日だけのセールだっていうし安かったから」
    ・・・・・
    当然でしょ?といわんばかりの返答にジョウは黙ってアルフィンを見た。

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■1319 / inTopicNo.4)  Re[3]: Colorful
□投稿者/ とむ -(2007/01/20(Sat) 23:04:29)
    それからというもの、アルフィンはまるで水を得た魚のように、この100mほどの一本道に軒を連ねる店々全てに顔を出し、「あれも安い」「コレもお買い得」と嬉々としながら食材を買い捲くった。挙句の果てにはフレッシュジュースやらホットドッグやら当初の目的とはまるでかけ離れた店にも顔を突っ込み始め「ジョウ、これ美味しそうだから食べてみない?」などと言い出す始末。ジョウはその度に店の主人に適当な言い訳をしてアルフィンを店の前から引き剥がしメインストリートまで引き戻す羽目になった。

    「・・・あのな、念の為の確認なんだが」
    ジョウは、どっぷりと疲労感を覚えながらアルフィンに尋ねる。
    「何の為にここに来たかは覚えてるよな?」
    「ぅん?」
    そこにはたった今手に入れたと思われるソフトクリームを頬張り自分を見上げるアルフィンの姿。その瞳には全くと言って良いほど邪気がない。実に美味そうにそれを頬張る彼女に
    「・・・・。いや。いい。・・・まず、そいつを食っちまえ」
    一気に脱力感を覚えつつジョウは口の中で小さく溜息をついたのであった。




    「・・・そんなこんなで今に至る」
    「誰に向かって話をしてるのよ」
    アルフィンが怪訝そうにジョウを見た。
    「いや、なんでもない」
    アルフィンはジョウの目の前のスツールに浅く腰をひっかけ美味しそうにアイスコーヒーを飲んでいる。ジョウは店のボーイが運んできたピスタチオ・ナッツを掌で弄びながら目の前のアルフィンを眺めていた。
    ・・・・やれやれ。
    実に4時間半にわたる長い買い物だった。思わず遠い目になってしまっているのを感じる程。この人でごった返すストリートの中、よくぞここまで大量の食材を運べたものである。しかも買う予定のなかった食材まで購入し当初の予算内で治まっているなど奇跡に近い。
    まあ、それはアルフィンの言うところの「天才的な交渉術」の賜物であろう。実に巧妙な手口、いや鮮やかな交渉だった。あの手この手とはきっとこういうことを言うのだ。在る時はゴリ押し、在る時は褒め殺し、そして在る時は泣き落としと、よもやこの少女が1年前まではピザン王宮で何不自由なく育ってきた王女様だとは誰も気づくまい。
    始めの店で大量の魚介類をせしめてからというもの、アルフィンの瞳はキラキラと輝き自信さえみなぎらせるようになった。ジョウが立ち寄る店々の主人に思わず同情しないではいられないほどに。
    この負けん気の強さ。誰に怒られても誰に傷つけられてもいつの間にか立ち直ってしまう彼女の生来の生命力。今朝まで自分に力ではとても引き上げられない所に沈み込んでしまったと思っていた彼女の心は、いつの間にかみずみずしい生気を蘇らせいつもと同じ表情でジョウの前にあった。
    ・・・・まったく、適わねえな
    ジョウは自分でもそうと知らずにその唇に笑みを浮かべた。


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■1320 / inTopicNo.5)  Re[4]: Colorful
□投稿者/ とむ -(2007/01/20(Sat) 23:34:24)
    実は、今朝までアルフィンは相当落ち込んでいた。そう。<ミネルバ>の空気全体を暗い暗黒面に引きずり込んでいくブラックホールのごとく、チームの誰とも必要な時以外は口を利かず、自ら話しかけてこようともしなかった。リッキーがそんな様子の彼女を気遣ってあれこれとギャグを飛ばしてくるのだが、当の本人はそれにまったく反応しようとはしなかった。今朝方、二手に分かれて買出しに出発するまで<ミネルバ>のブリッジ内には異様に白けた雰囲気が重く漂い居心地の悪いことこの上なかった。

    この暗黒スパイラルの原因は、最後の仕事の際に起きた事故だ。
    2日前の宇宙ステーション解体の仕事が終了後、仕事に使用した不発弾の撤去作業をしていた時、そのうちの一発が突然爆発したのである。その際、その爆発から一番近くにいたアルフィンをリッキーが庇い、その降り注ぐ瓦礫によって彼は右肩に傷を負った。アルフィンはもちろん気を緩めていたわけではないしリッキーが不注意なわけでもない。言ってみれば極めて不幸な事故。偶然が重なって起きた、避けようのない事故だったのだ。
    実際、リッキーは意識もしっかりしており自分で動くこともできたので心配するほどのことはなさそうだとジョウは踏んでいたのだが、思いのほか出血が多かったために彼はドンゴの指示で急遽<ミネルバ>のメディカルルームに強制連行される羽目になった。ドンゴに止血の処理をされ、更には体中にたくさんのケーブルを繋がれ、彼は文句タレタレで言われるがまま精密検査を受けた。幸い多少の出血はあったものの傷は浅く、それ以外には打撲くらいしか目立ったダメージは見当たらない。遅くとも2週間ほどで完治するだろうとドンゴも太鼓判を押した。
    両手を胸の前で組み、心配そうに自分を見つめるアルフィンに、リッキーは「大丈夫だよ。こんなのたいしたことないって。そんな気にすんなよ」と明るく声をかけたが果たして彼女の耳に届いていたかは定かではない。

    そう、アルフィンは自分が傷を負う時よりも他人が傷つくのを見るほうがダメージを受けやすい。口では「バッカねー。まったく不注意きわまりないんだから」などと軽口を叩いてはいるものの、心の中では汗がたらたらというのが本当のところであろう。もともとの性格が勝気で負けず嫌いときている彼女は、他人に自分の弱みを見せることを良しとしない。元王女という生い立ちも関係しているかもしれないが、大事なものを守るためには貝のように身を固くして自分の気持ちさえ隠すことがある。まして、彼女は自分がチームに加わることによりジョウのチームの足を引っ張ることはしたくないと、ジョウにでさえ「仕事」に関しては弱音を吐くことはなかった。それは、彼女の仕事に対する誇りと自分で自分の道を切り開くという決意の顕れ以外の何者でもないこともジョウは十分分かっていた。

    しかし、だからといって何か彼女が失敗を犯すたびに知らん振りを決め込むということも出来るわけがなく。以前は、「次に間違えなきゃいい」とか「そんなに気にしなくてもアルフィンはよくやった」とか声をかけていた。
    が。
    もともと口下手で想いを伝えることが不得手な男である。
    上手く気持ちを軽くすることが果たして出来ているのか不安なところであった。また、そんな慰めを口にしたところで本当にアルフィンは救われるだろうか?もしかしたら、俺がやっていることは傷口に塩を塗っているようなものじゃあないのか?などと考えてしまい堂々巡りに陥ってしまう。
    だから。
    ジョウはいつからか慰めを言葉に乗せることを諦めた。
    その代わり、ただひたすらアルフィンに付き合う。ショッピングだろうがドライブだろうがなんでもいい。彼女が自分で自分の気持ちに整理をつけるまで彼女の傍らでひたすらじっと待つことにした。それが効果をなすこともあるし、全く効かない時もある。
    だが、きっとそれはそれで無駄なことではないはずだ、とジョウは思う。





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■1322 / inTopicNo.6)  Re[5]: Colorful
□投稿者/ とむ -(2007/01/23(Tue) 23:23:27)
    流石に今日はほとほと疲れてしまい、「忍耐」という言葉を呪いの言葉のように頭の中で何度もリバースしてはここに至ったが、どうやら骨折り損ということではなさそうだ。心の中でホッと一息つきながら、ジョウはアルフィンを見た。

    「ねえ?」
    アイスコーヒーをキレイに飲み干したアルフィンが満面の笑みで話しかける。
    「なに」
    ジョウはコーヒーを飲みながらそれに答える。
    「今日はほんとにいい買い物をしたと思わない?」
    チラ、とアルフィンを横目で見ながら
    「全くだ。・・・見ていてほんとに気の毒だった」
    とジョウは答える。その瞳には少しいたずらな輝きが宿る。
    「ちょっと。誰の話よ」
    憮然とするアルフィンを尻目に、ジョウは薄い笑いを唇に浮かべながら
    「いや別に」
    と、両手を頭の後ろで組み澄み切った秋の空を見上げた。

    澄み切った青が目に眩しい。
    一途で勝気で負けず嫌い。弱って泣いたりすることもあるが、決して泣くことを恐れない。そして、その碧い瞳にはいつも澄み切った彼女の強い意思がある。
    ・・・たいしたもんだぜ
    高い秋空に浮かび上がった白いバルーンを目で追いながら、ジョウはのんびりと人に沸くマルシェの喧騒に耳を傾けた。



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