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■1486 / inTopicNo.1)  ある昼下がり
  
□投稿者/ 紫音 -(2007/05/20(Sun) 00:41:13)
    オイラたちがここに来たのは、2時間前。
    頭上には見事な青い空とギラギラと照りつく太陽。
    日差しが暑い。
    さっき頼んだアイスが、すぐに溶けてしまうくらいだ。
    「はぁ・・・・」
    思わずため息をついた。
    隣のビーチベッドに寝転んでいたタロスが、サングラス越しにこちらを見た。
    声には出さないけど、なんだ?と言ってるのが分かる。
    「タロスは感じないのかよ・・・・こんな状態でよく平気で寝れるなぁ。」
    スプーンをくわえて辺りを見回した。
    そしたら、オイラと視線を合わさないように、さっと目を逸らす人々がいる。
    まぁ、こういうのはもう慣れっこなんだけどさ。
    そう。いつもだから。
    ・・・うーん・・・慣れたの・・かな・・・?


    「リッキー!おいでよぉー!一緒に遊ぼ!」
    無邪気な声が聞こえた。
    視線を戻したオイラの目には、このホテルのプールの中で大きく手を振るアルフィンが映った。
    チクチク。
    背中に突き刺さるような視線。
    「姫がお呼びだぜ。行って来い。」
    低い声でタロスが言った。
    ずるいな。たぶん、これは計算されてる。自分が蚊帳の外に出るためだ。
    思わず頬を膨らませた。

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■1487 / inTopicNo.2)  Re[1]: ある昼下がり
□投稿者/ 紫音 -(2007/05/20(Sun) 00:43:38)
    しばらく、オイラたちの反応がなかったから、アルフィンのほうが泳いでこっちへやってきた。
    「なによ、せっかくなんだから楽しみましょ!」
    そう言って、目の前のプールサイドの淵に上がって腰を下ろす。
    水に濡れた金髪がキラキラと光った。
    背後とかプールサイドにいるたくさんの人たちの息を呑んだ。それがすっごく分かる。
    で、さらにオイラとタロスに対しての嫉妬の目・・・・だと思う。
    うー。兄貴・・・早く帰ってきてくれないかなぁ。
    マジで思った。
    一方、平然としているアルフィンは、タロスが差し出したドリンクを飲んでいた。
    スラリとした足は、まだ水につかっていて、瞳の色と同じ色のビキニ姿。
    ほんと、いつものことだけど、自分のスタイルを分かった上で、こーいう水着選ぶのかなぁ。
    そこいらのモデルなんかより、よっぽどキレイだと思う。
    まさか、周りの人たちは、クラッシャーだとは思わないよな。
    どこかのご令嬢とかと思ってて、タロスをボディガードと思ってるかも。
    で、オイラは・・・・ うーんと・・・
    考えているところに、アルフィンが手を差し出したから、立ち上がって何も考えずにその手を取った。
    その瞬間。
    ヤバイと思った。
    けど、遅かった。
    碧眼が怪しく光って、アルフィンはオイラの手を握って思い切り引っ張った。
    同時に、タロスがニヤリと笑って足でオイラの背中を蹴る。
    「うわぁぁっ!!」
    オイラの体はプールの中に投げ出され、大きな水しぶきがあがった。


    「ひでぇや。」
    水面に顔を出して文句を言った。水着を着てるからいいけど、羽織ってたシャツが水に濡れて重い。
    プールサイドには笑い声をあげる二人の姿が見えた。
    「隙がありすぎなんだ、てめぇは。」
    してやったりの感じがムカつく。
    けど、反応が遅れた自分がいけないとも思った。素直に悔しい。それでもクラッシャーかと言われてる気がした。
    オイラたちを見ていた人たちがクスクス笑ってる。
    「リッキー、水も滴るいい男よぉ!」
    優雅に手を振るアルフィン。
    そんなの、ちっとも嬉しくないやい!



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■1488 / inTopicNo.3)  Re[2]: ある昼下がり
□投稿者/ 紫音 -(2007/05/20(Sun) 00:46:42)
    その向こうに見えたのは。
    やった!
    救いの主が現れた。
    オイラの視線に気づいたのか、二人も振り返った。
    「ジョウ!」
    ぱあっとアルフィンの表情が輝く。それを兄貴はまぶしそうに見やった。
    兄貴がここに遅れてきたのは、もちろん仕事のせいだった。最初アルフィンはむくれてたけど、ここのホテルのプールは高級感漂う感じで、
    プールサイドのテーブルに出てくる食事や飲み物は申し分なかったから、機嫌が直った。
    (よし。)
    ささやかな仕返しを思いつく。オイラは水にもぐった。プールの底を泳ぐ。
    そして、水の中に入ったままの足の下にたどり着いた。
    たぶん、兄貴とタロスは気づいたと思う。きっと、二人で目配せしたはずだ。
    「意外と早かったのね。」
    アルフィンはプールから出ようとした。
    でも、その足を、オイラは水の中に思いっきり引き込んだ。
    「きゃん!!」
    派手な水音があがった。


    今度は金色の頭が水面に現れた。
    「もおぉっ!」
    びっしょりになって乱れた金髪を直して、恨めしそうにオイラを見て、プールサイドの二人にも視線を移した。
    「まだまだですなぁ・・アルフィンも。」
    タロスは大きく肩をすくめてみせた。サングラスをしたままだけど、その瞳は笑ってるのが分かる。
    オイラたちを見ていたプールサイドからの嫉妬の混じった視線は、兄貴が現れたことで少し変わってきたようだった。
    それくらい感じることができる。
    金髪の少女にいつ声をかけようかと思っていた輩は、そのタイミングを失ったんだと思う。
    まぁ・・・仕方ないよなぁ・・・
    ボディーガードらしき巨漢の男と、さらに兄貴みたいなのがいたらさぁ。普通は近づかないよ。
    いや、近づけないだろう。うん。
    「楽しんでるところ悪いが、クライアントと会うぞ。支度しろ。」
    兄貴が言った。
    すでに仕事モードの顔
    「りょーかい。」
    3人の声が重なった。
    それぞれの異なる色の瞳が光る。


    数時間後、オイラたちは宇宙に帰った。
    次の仕事もちょっとやっかいなんだ。
    でも、きっと大丈夫。
    スクリーンに映るいくつもの星を見ながら、ただそう思った。

fin.
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