| 「うん。いい感じじゃない!」 アルフィンはニッコリ微笑んだ。 そのキラキラした碧眼には、正装した3人の姿が映っている。ベーシックなブラックフォーマルスーツを身にまとったチームメイト。 微妙に困惑した感じの3人はお互いに目を合わせた。
街の中心部にある超高級ホテルに入ったスーツのオーダーメード店。 ちょっと付き合いなさい、と姫に言われ、連れてこられたのがこの店だった。 格調高い店構え。普段は絶対に立ち寄らないと思われる。 「何なんだよ。」 ジョウがまず言った。 いつも思うが、こういう服装は落ち着かない。 「だって、この前の仕事で、みんなボロボロにしちゃったじゃない。フォーマルスーツ。」 確かに間違いではない。 クラッシュジャケットでは目立ちすぎることから、パーティに正装で参加して護衛を勤めた。 案の定、奇襲を受け、彼らは応戦し、その結果、服装は見るも無残な状態だったのである。 「だから、新しいの注文しといたの。丈とか大丈夫よね?」 ざっと皆を見回し、店員が頷いたのも確認した。 さすがに彼女の見立てと言えよう。素材もかなりいいものを使っている。サイズはもちろんしっかりと合わせてあるし、ベーシックな型ではあるが、 白いシャツは襟など一部がそれぞれ異なっていた。そして赤いタイ。 どんな正式行事だろうとパーティだろうと問題ない。 「大丈夫といやぁ、大丈夫ですが・・」 タロスも何と返そうかと思った。 どうも気後れしてしまう。 「もうっ!天下のクラッシャージョウのチームなんだから。これくらい持ってったっていいじゃない。 もし、またこの前みたいな依頼が来たらどーすんのよ! あたし、嫌だからね、ダッサイチームだって言われちゃうの。」 ここまで言われたら、逆らわないほうが身のためだと思う。 下手なことを言って、気分を害されるほうが恐ろしい。 リッキーは黙ったまま、店の鏡に映る自分を見た。 (ふーん。いいもの着ると、それなりになるもんだなぁ) そんなことを思う。 タロスやジョウと違って、ちょっと楽しんでる節があるのは彼らしい。
「あ。そうそう。それからね。」 さらにアルフィンが続けた。 「まだ何かあるのか?」 呆れたように大きく息を吐く。ジョウとしては、一刻でも早く、この服を脱ぎ捨てたかった。堅苦しくて仕方がない。 しかし、彼女の言うことも一理ある。クライアントのランクが上がると、こういった服装が必要になることもあるのは否定できない。 それに、自分で選ぶより、彼女の見立てのほうがいいとも思う。 アルフィンは、店内のテーブルの上に小さな箱を3つ置いた。 それを開け、それぞれに手渡す。 「これって――」 リッキーが目を丸くした。 「カフス。ちょっと気に入ったのがあったから、買っちゃったの。プレゼントね。」 軽くウィンクして微笑んだ。 シンプルなデザインのカフスボタン。クラッシュジャケットのように、タロスにはブラック、ジョウにはダークブルー、リッキーにはダークグリーンのもの。 アルフィンのこだわりが一目で分かった。 「・・・・」 再び3人が目を合わせた。
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