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■1546 / inTopicNo.1)  姉弟
  
□投稿者/ 紫音 -(2007/07/22(Sun) 20:02:32)
    「アイスが食べたい。」
    リッキーが言った。
    もう。ほんと、子供みたいだわ。
    あたしは思った。
    けど、この暑さでは、その気持ちも分かるけど。
    見上げる空は、雲ひとつない快晴。ほんと、すぐにでもプールか海に飛び込みたい気分。
    「いいわ。どうせまだ時間はあるし。」
    オープンカフェにリッキーを待たせ、あたしは店内に入った。
    注文はいつも同じ。聞かなくたって分かってる。もちろん、リッキーだって同じだと思う。これだけ一緒の時間を過ごせば、何も言わなくても通じちゃう。


    ダブルのアイスを買ったあたしは、店先のテーブルで待つリッキーにそれを手渡した。
    「やった!」
    嬉しそうにリッキーは、アイスを頬張る。ほんとにおいしそうな顔をするのよ、こーいうときって。
    彼の好みは、チョコミントと、普通のバニラ。
    で、あたしは、いつもストロベリーとキャラメルバニラアイス。
    それで途中で、相手のアイスをお互いに一口食べるの。
    ジョウは甘いものがあまり好きではないから、あたしやリッキーのアイスをつまみ食いする程度。
    それで十分みたい。
    タロスは普段は食べないけど、たまーにお酒の後に、チョコレートアイスとか食べたりする。
    「どーかしたのかい?」
    リッキーが聞いた。
    たまに、鋭いときがあるわ、リッキーって。
    「んー。別に。」
    そういいながら、あたしは店の中にちらりと視線を投げた。
    さっきの店員がちらちらこっちを見てる。
    なんか知らないけど、妙な勘違いをしてるのよね。
    だいたい――
    『あれ、彼氏? それより、俺とデートしない?』
    って言ったのよ。

    どうやったら、リッキーとあたしが恋人同士に見えるのよ??

引用投稿 削除キー/
■1547 / inTopicNo.2)  Re[1]: 姉弟
□投稿者/ 紫音 -(2007/07/22(Sun) 20:08:56)
    ・・でも。
    今では、リッキーはあたしより背が高くなった。
    そんなこと考えたこともなかったけど、確実にリッキーは『男』になっていってると思う。それは間違いない・・・と思う。
    あたしはそう考えるようになった。ちょっと前から。
    リッキーは、今やあたしがジョウに初めて会った時の彼と同じ歳になった。
    で、背もおっきくなった。
    タロスなんか、「食い物が良かったんですかねぇ・・・」なんて、訳の分からないこと言ってるわ。

    驚いたのは、この前の仕事で、負傷したあたしが抱えられちゃったこと。
    そのときは、意識が朦朧としてたから、わかんなかったけど、後から考えるとびっくりしちゃった。
    だってそうでしょ?
    これまでって、ジョウとかタロスには抱えられたことあったけど。
    リッキーよ。あのリッキーが。
    あたしを抱きかかえるなんてあると思う??

    ・・けど、それは現実に起こったわけで。



    「アルフィン、アイス、溶けちゃうよ。」
    いきなり現実に引き戻された。
    もう。なんてムードもない奴なの。
    あ。でも、リッキー相手に、そんなこと言うのも変だけど。
    だいたい、身近にいるのが、ジョウとタロスじゃ、あまり参考にはならないわよね。
    ジョウなんて、少しくらい甘い言葉を囁いてみてほしいもんだわ。
    「へーきよ。この溶けかけもおいしーんだから。」
    あたしは、ニッコリ笑って言った。
    「そうかな。あんまり柔らかくなる前のほうが良くないかい?」
    「だから、あんたはダメなのよ。溶けかけのおいしさも分かるようになんなさい。」
    「ちぇっ・・なんで、そーやって、自分の好み押し付けるかなぁ・・」
    「なんですって?」
    たぶん、周りから見れば、ほんと仲良く話してるように見えるのね。外見も全然似てないし、姉弟って感じではないだろうし。
    「なんでもありません・・」
    リッキーは首をすくめた。面白いことに、何年か経ったことで、こうやってリッキーは上手く逃れることを覚えたみたい。
    素直に引かれると、あたしが黙っちゃうことが分かったのね。
    ちょっと癪だけど。

    「!?」
    何気なく、一瞬だけリッキーは店の奥に視線を走らせた。
    たぶん、視線を感じたんだと思う。あの店員の視線。
    さすがに、ジョウやタロスに仕込まれただけはあるわ。いつの間にか、驚くほどの戦力になってる。
    たぶん、そう感じてるのは、あたしより、他の二人なんだろうけど。
    「・・ねぇ・・あいつ何?」
    不満げな表情。
    「何って?」
    あたしはとぼけてみせた。
    「アイス買うとき話てた奴だろ?」
    どうやら、ちゃんと見てたみたい。こうやって、すぐに周りの人物を記憶しちゃうのなんて、ジョウと似てる。
    ううん。きっと、そう学んだのか、勝手に覚えたのか。
    性格からいって、素直に吸収したのね。
    「そうね。」
    「ナンパされたんだ。また。」
    呆れたようにリッキーは言った。なんか、言いたげな顔。
    前は、結構言いたいことが分かったはずなんだけど、なんか最近はちょっと違う。
    タロスが言うには、あたしは男心が分かってないって。
    ふん。どうせ、そんなの分かんないわよ。
    みんなだって女心は分かってないじゃない。
    こういうときって3対1って不利だわ。そんなふうに思う。
    どうやったって、あたしの負けじゃない。
    「何よ。」
    あたしは思いっきり不満そうな顔をしてみせた。
    「勘弁しろよな・・・俺が兄貴に怒られるじゃん。」
    なんでここにジョウが出てくるのよ。
    それに、あたしは悪くないでしょ。
    何でリッキーがジョウに怒られるわけ?
    あたしの顔を見たリッキーは、わざとらしく大きく息を吐いた。
    なんかむかつく。
    なんなの? この年上みたいな態度は。
    でも、言い返すことが出来ずに、あたしはアイスを頬張った。

引用投稿 削除キー/
■1548 / inTopicNo.3)  Re[2]: 姉弟
□投稿者/ 紫音 -(2007/07/22(Sun) 20:12:46)
    携帯が鳴った。
    それを取ったリッキーは、大きく息を吐いた。
    「兄貴ぃぃ・・・・」
    情けない声を出してる。二面性がある年頃なのかしら。子供っぽいときと、ちょっと大人びたときがある。それが、なんか不思議。
    「遅れるなんて許さないからな。オイラじゃ、ガードしきれないよ。」
    電話の向こうでジョウが何を言ってるか、あたしには分からない。
    ガードって何よ。どういう意味?
    あたしは肩に降りかかった髪を振り払った。
    不満そうな顔をしてたんだと思う。リッキーは、ちらりとあたしを見て、ぼそぼそと小声で話し始めた。
    何を言ってるか、良くわかんない。
    「!」
    3つほど向こうのテーブルにいた男の人と目が合った。
    さわやかな笑顔を作って、片目をつぶってきた。
    なんなの、いったい?
    あたしは、思いっきりそれを無視した。


    「ちぇっ・・」
    ふてくされたようなリッキー。通話が終わったみたい。
    「ジョウ、何だって?」
    「別にぃ・・・打ち合わせ場所変更だって。早く来いとか言ってる・・・」
    低く呟くように言って、リッキーは席を立った。
    その姿をあたしは見上げる。
    いつの間にか、見上げるようになった瞳。
    「・・?・・なんだよ?・・何かついてる?」
    慌ててリッキーは、口元を押さえた。たぶん、アイスが口の周りについてるのかと思ったのね。
    こういうとこって、ちょっとかわいいって思う。
    「ううん。そうじゃないってば。」
    正直には言いたくない。そうあたしは思った。
    それに、男の人ってかわいいって言われるの嫌がるじゃない?
    姉弟って、こういう感じなのかしら。
    あたしはもちろん、リッキーもジョウも兄弟っていないし。タロスの家族のことは知らないし。
    でも、“きょうだい”って、一言で言っちゃうと、それもしっくりこない。
    なんなのかしらね。
    クスクス笑ったあたしを、リッキーは不思議そうに見てた。


    「じゃ、行きましょ!」
    あたしは、立ち上がってリッキーの腕に自分の腕を絡ませた。
    「わ、わぁっっ!!」
    この反応は予想してたの。リッキーは慌てて、腕を振りほどいて仰け反った。
    「な、な、な、何すんだよぉぉ!」
    その顔は、ほんと真っ赤になってる。ほんと、素直だわ。
    「んー。たまには、いいかなって。」
    「よかないよっ!!」
    即答だった。
    おもしろーい。
    あたしの楽しそうな顔を見て、リッキーは気づいたみたいだった。
    「・・・ねぇ、アルフィン・・」
    「なぁに?」
    「からかってるだろ?オイラのこと。」
    「あ・・分かった?」
    「う゛―。 もう、仕事のときだって、兄貴と喧嘩したときだって、助けてやんないからな!」
    「!!」
    やば。
    ちょっとやりすぎたかしら。
    前者はともかく、後者は非常に困っちゃう。
    リッキーは大またでずんずん歩き出した。
    「あん!待ってよぉ!悪かったてば―!」
    あたしは慌てて、その後を追った。
    いつの間にか大きくなった背中。
    いつまでこうやってじゃれ合っていられるんだろう。あたしは、ふとそんなことを思った。


fin.
引用投稿 削除キー/



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