| 「待ってよぉ!悪かったってば―!」 後ろから走ってくる足音。 それをわざと無視して、オイラはアーケードをまっすぐに歩いていた。 けど。 途中でペースを落した。 だから、アルフィンが追いつく。金色の頭が横に並んだ。 いつもと同じ、サラサラの髪。ちょっと横目で見て、再び前を向いた。 少しして、何かに気づいたようにアルフィンはこっちを見る。 「・・・・歩くペースも覚えちゃったのね。」 少し不満そうに言った。でも、怒っているわけじゃない。アルフィンが怒ったら、とんでもないことになる。それはオイラが一番身にしみて分かってる。 「そーいうつもりじゃないよ。」 「結果としてそうなってるじゃない。」 その通りだ。 こうやって歩くとき、アルフィンの歩く速度にあわせてる自分がいる。もちろん、クラッシュジャケットのときと、私服でヒールのあるサンダルとか 履いてるときとは違うけど。 今日だって、ミュールを履いてるからそんなに足早には出来ない。 「それはさぁ――」 オイラは言いかけて、言葉を止めた。 「それは何?」 「別に。」 兄貴がそうだったから――なんて言っちゃいけない気がした。 真似をしようと思ったわけじゃない。 けど、なんとなく、いつの間にか同じようにしてた。 きっと未だにアルフィンは気づいてないんだろう。自分が腕を絡ませるから、兄貴がアルフィンの歩くペースになるんじゃなくって、 そんなことしなくたって並んで歩いてくれることを。 そしてそれは、意識して合わせてるとかじゃなくって、もう自然なことなんだって。 それをいつも見てたオイラは、自然と相手の歩くペースってのを感じるようになっていたんだ。
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